嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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お釈迦様の掌

 

オオスは異変の元凶の天人もといクソガキのご尊顔を一方的に遠視した。

 

感想としては加減を知らない猿、いや、猿の妖怪の部下が比喩に用いるのも失礼である。

 

オオスは自宅に戻り、紙芝居の確認で乱れた心を落ち着け(5秒)、資料を確認した。

 

以前、勝負師として月の都に潜入した際、入手した資料をオオスは再び目を通していた。

 

 

「ああ、うん。うん、ああはい」

オオスは思わず言葉を漏らす。オオスは一瞬で全てが理解できた。

 

紫も天子も驚く程にオオスの推理は完了した。

 

 

異変に霊夢が中々来なければ博麗神社を地震で破壊して呼びつける。

 

ついでに博麗神社に比那名居家を縁を加えることで外部から干渉する気である。

 

オオスが知らせようにも近づいたタイミングで博麗神社を倒壊させる気だと認識した。

 

クソガキの癖に妙に手の込んだ事をしやがるとオオスは怒りを越えて冷静になった。

 

紫にメッセージを送るにしても考えないとならない。霊夢の対応もである。

 

オオスの行動は基本変わらないが、変えない方が最適だと分析した。

 

どんな爆弾が来ても対応できるように組んでいたが、思案しそうになるのを抑えた。

 

今のオオスの個人的な感情で動いては天界を本気で滅ぼしかねない。

 

紫への連絡を考えることでオオスは自分を落ち着けることにした。

 

 

そして大事なことだが、犯人が比那名居家、天人くずれと称される一族であると確信した。

 

 

最後のは今更と思うかも知れないが、オオスの保有する情報は完璧ではない。

 

月の都では怪しまれない範囲で探索した。様々な資料や情報はあるがかなり薄い内容である。

 

月の都からすれば天界に関わる気はほぼない。月の都の民や神々は長命である。

 

上位の者程、下手に知識を共有するよりは独占しておく性質があった。

 

そもそも月の都の文章は月人文字という独自の言語で書かれている。

 

オオスは月の都へ直接乗り込むという暴挙もあり、読み書き出来るが使いはしない。

 

 

オオスは外の世界で空前絶後の探偵である。だが、全知全能ではない。

 

オオスはここに至ってようやく名居神を思い出した。日本書紀に出てくる名居神である。

 

『比那名居』という名前で気づくべきだったとオオスは後悔した。

 

最初から知っていれば幾らでもシバキ倒せた。名居神は外の世界でも有力な地震の神だ。

 

今回の異変の首謀者のクソガキは名居神の縁者といえば推理は簡単である。

 

名居神ならば天人でもおかしくない。比那名居というのは恐らく分家か従者筋の家系だろう。

 

だが、このようなクソガキまで天界に居るのはオオスの想定外であった。

 

…退屈だからといってここまでの事を仕出かす馬鹿がいるとまでは思わなかった。

 

 

後の話になるが永琳は鈴仙から異変について話を聞いた。永琳は名居家の縁者と看破した。

 

ただし、従者や縁者の家ごと天界に召し出すことが良くあるのを知っていたからである。

 

鈴仙が動く頃には要石の存在も知られており、永琳はすぐに推理できた。

 

 

オオスは致命的なミスと嘆いている。しかし、月の賢者である永琳すらオオスの持つ情報のみで推理しろと言われたら厳しい。

 

感知する頃にはオオスと同じく異変を防ぐのは不可能、詰みであると判断し、後手で対応を迫られることになる。

 

天界の諸事情を知らない者が地震の神である名居神と結びつけ、首謀者の本質を対面もしないで見抜くのは化け物染みた推理力だった。

 

 

 

オオスは本気で怒りが収まらなかったので直接紫に連絡を入れていた。

 

連絡する方法は知らない振りをしていたが、本気になれば特定できた。

 

かなり前の話になるが、射命丸文が八雲亭に侵入し写真を掲載していたことがあった。

 

式神である八雲藍に教育的指導を行っていた愛の鞭である。

 

醜聞ではなく偏向報道であるとオオスは思っている。

 

藍が初対面でオオスのことを妖怪か何かだと思っていた事を根に持っているわけではない。

 

 

「というわけで、紫さんはどうしますか?」

オオスはいきなりスキマに引きずり込まれたとは思えない程冷静に尋ねていた。

 

藍は何でここにオオスが来ているのか知らないので驚いていたが、黙々と仕事を熟していた。

 

下手に関わればまた何度もぶたれると思い、お茶と茶菓子は出してひたすら仕事をしていた。

 

 

「例えば、博麗神社を壊す…どういう意味かわかりますわね?」

紫はオオスの投下してきた爆弾を再度確認した。いつもと違って胡散臭い口調は一切ない。

 

冗談では済まされない事をオオスは口に出していた。

 

 

割りと直球で言葉に出し、凄まじい威圧感である。藍は戦闘かと勘違いしてしまった。

 

藍は主人である紫に空気を読めとスキマに叩き落された。

 

ついでにスキマ内で唐突に現れたボロボロの列車にはねられた。

 

式神であり、更に元が九尾の狐である藍は耐えられはするがガチで死ぬかと思った。

 

勘違いしてもしょうがない空気であったとはいえ客人であるオオスに攻撃を加える気だったので容赦しない。

 

オオスも躾の範疇だなと藍への所行を無視している。今大事な話なので殺すなら後にしてほしかった。

 

 

「倒壊した場合、急いで再築しなければ博麗大結界に綻びが生じるでしょう」

オオスは言い切った。最悪は博麗大結界が消滅だが、紫が目を光らせれば問題ない。

 

 

「……天界に昇った猿は与えられた役職に怒り反逆した結果、山に閉じ込められるのです」

紫は今回の騒動の首魁である比那名居天子を調べていた。故に天子を猿、孫悟空に喩えた。

 

オオスの推理が正しいとわかるし、そうなるかもしれないと予測していた。

 

だが、避けられぬと確定したので手に持つ扇子の中骨がミシリと音が出そうになる。

 

 

「それが神へと昇華され讃えられるのは兎も角、三蔵法師も9度輪廻したことでしょうに」

オオスは紫の尋常ではない怒りを感じ取り、沙悟浄を持ち出した。

 

三蔵法師が天竺まで経典を持ってくる旅のお供の妖怪だが、三蔵法師は前世9回も天竺に向かい全部沙悟浄に食われて死んでいた。

 

9回も死んで10回目で孫悟空を供につけてようやく喰われずに進めた話がある。

 

 

オオスのは簡単な言葉遊びである。紫が落ち着くような話題に合わせてもいた。

 

9回喰われた相手を知らずに供にする三蔵法師の豪胆さを持って落ち着いてという意味でもある。

 

天子は正直どうでも良いが、紫の品性まで損なう怒りは悲しいという意味も含まれている。

 

妖怪である紫を聖人として持ち上げ、クソガキをさり気なく貶している。

 

 

「あらあら……それを貴方が言うのはどちらの意味かしら?」

紫はオオスの言葉を聞いて少し落ち着いた。

 

動揺を隠すように、藍にすら気取られていないが相手が相手なので、紫はオオスに問いかけた。

 

僧の最高峰の称号である三蔵を賜った仏神ともいうべき存在である。

 

オオス的にはその喩えは大丈夫なのか知りたくもあった。

 

 

緩急激しすぎる感情のやり取りは式神、コンピュータみたいな存在である藍は処理能力を超えていた。

 

純粋な妖怪ならば兎も角式神としてプログラムされているので死と喜びが出入りしている感情の応酬は堪えていた。藍はとりあえず橙がいなくて良かったとだけ思った。

 

 

「非力で慈悲深く、その上融通利かないのはヒロインみたいですよね」

オオスは紫の問いかけをズラして回答した。

 

西遊記として出てくる三蔵法師を登場人物として評価している。

 

つまりは、オオス的には神仏関係ないと返していた。

 

 

「……」

紫はオオスの真意を理解したが、一瞬固まった。

 

自分の事ではないとわかっているのだが、ヒロインという言葉がクリティカルしていた。

 

 

「融通効かないというのは違いますが、慈悲深いという意味では…ってどうかされましたか」

オオスは紫の変化に気づくのが遅れた。ついでに余計なことを言っていた。

 

もしもこの場に萃香が居れば間違いなく絶句する。どうしたらこういう言葉が出てくるのか。

 

 

「はぁー…何でもありませんわ。ええ」

紫は全力で誤魔化しにかかった。オオスに他意はないのはわかっている。

 

今の紫はかなり上機嫌であった。すぐに思考を埋め尽くす怒りが邪魔してしようがない。

 

紫は天子はぶち殺すとして、美しく残酷に屠ることを決めた。

 

 

「霊夢には何とかするわ。結界も何とかしておきましょう」

紫は纏めに入ることにした。もっと会話したいところだが、流石に日を改めたい。

 

オオスは紫が冷静になったのを悟り、今回は問題ないと判断した。問題しかない。

 

 

「だけど……」

紫はオオスが好き勝手に動けば色々利益になると確信していた。

 

ただ、あのような猿に会わせて良いものか悩んだ。紫なりの乙女心である。

 

紫はオオスが自分を大妖怪と尊敬してくれていることを知っていた。

 

私的な感情で阻害するのはそのイメージを崩しかねないと一蹴した。

 

オオスは普通に気にはしないだろうが、それはそれであった。

 

 

「どうされました?」

オオスは紫が感情で悩んでいるのは察した。

 

天子を無視して欲しいのかもしれないと推測したが、具体的な感情は読み解くには言葉が足りない。

 

 

「何でも無いわ。前回言った頼みたいこととして…」

紫はオオスに探られない内に否定した。そして、単純な依頼をした。

 

流れは決めたので後は掌で右往左往する猿を躾けるだけである。

 

ただ、オオスが別件で仕出かしそうなのだけが紫としても不安だった。

 

どんな形で落ち着くにしろ幻想郷にとって利益にはなるがまぁ碌でもない事は間違いない。

 

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