紫と話し合いをした翌日。
オオスは紙芝居がある日なのであまりウロウロせずに適当に天気を弄って遊んでいた。
幻想郷に広まる天気はその人々の気質に反応し、天候が変わる仕組みである。
「気質に干渉し、森羅万象に及ぼしている。能力は制御ならばもう少し…」
オオスは今回の異変を起こした馬鹿に愚痴っていた。独り言のような物である。
紫に比那名居天子とかいうクソガキについてオオスは聞いていた。
名居家に仕える一族である比那名居家、その総領娘らしい。跡取りみたいな存在である。
天気は雪になり、雨になり、霰となり、霞となる。最後は夏の日差しで乾かした。
オオスは赤く揺らめく剣を日差しにかざした。大体コツは掴んだ。
「緋想の剣とか言ったか。天人にしか使えない剣は」
オオスはそう言って剣を一閃させた。これくらいしかできないのが悔やまれる。
一閃とはその通りの意味で光である。気質の乱反射により特定の波長で共振する。
「さて、紙芝居に行くか」
オオスは共振した気質を見極め、取り込みその場を後にした。
取り込むと言ってもそこから自身の世界に送るだけである。一時的だが我慢して欲しい。
天界で待機している天子はオオスがガチで来ないので無視して他が来るのを待っていた。
天人なら皆やっている釣りみたいな物だとオオスや萃香は言う。
他方、天子からカツアゲして土地の一部を掻っ払い酒を飲んでいた萃香はその能力により気がついた。
これは別に自分へのメッセージでもないと判断した。どうもやりたいようにやるらしい。
「萃めている。だが、釣りではないね、これは」
萃香は天子と似て非なる事をしている誰かさんをそう評した。
魚釣りと肴ではまるで異なる。意味合いが違う。
面倒な事をして苦労でもしたいのかと思って、野郎の年が16だったことを思い出した。
「若いうちに苦労を積むのはどうなんだい?なぁ」
萃香は暇そうにしている天子に突っかかりに行った。
酒の肴に桃しかないのはどういうことだと詰め寄った。勝手に来ておいて烏滸がましい。
「酒は微酔に呑め。酔って人に絡むような呑み方は最悪よ!」
天子は萃香を罵倒した。その通りだが、お前が言うなとオオスなら言う。
「うっさいなぁ。あんたがそれを言うか」
萃香は天子に酒臭い匂いを漂わせながら迷惑かけているのは同じだと突っぱねた。
その頃、オオスは天子をモデルにしたクソガキとみみっちい小鬼の醜い争いを描いた紙芝居をやっていた。
「妍あれば、必ず醜ありてこれが対をなす。見た目が美しくても中身が汚けりゃドブみたいなもんだ」
オオスは作中の二人をど腐れとしてこれでもかと貶しつつ、同時に一面だけを見るなと言った。
オオスの紙芝居に聞き入っている者はそのまま聞き入っている。
紙芝居が聞けなかった子ども用の冊子をオオスは数量だが販売していた。
その冊子で今回の紙芝居の話を読んだ者はお前がそれを言うなとツッコんだ。
冬に本として編纂し、編集の手が入る前の感情が紙芝居の中には含まれていた。
その冊子は結構なレアとしてコレクターの間で評判になった。
他にも感情が含まれている冊子はあるが、あからさまな恣意的な感情が出ている。
オオスとしては私的な感情が入ってしまったのであまり騒がないで欲しいと思った。
だが、一度は売った物を取り返したりはしなかった。オオスにとっては特に問題のある内容ではない。
モデル二名の関係者が読めば笑うだろうし、二人が読めば喧嘩を売りに来るだろうが。
外でやったような特定の相手のクソコラを世界中にばらまくよりはマシである。
オオスはこの程度で済むのだから感謝して欲しいくらいであると本気で思っている。