嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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嗜好

妖怪の森で散策している姿を姫海棠はたてに念写されたオオスはそそくさとその場を後にしていた。

 

妖怪の森は未だに人類には禁足地である。融通の聞かない天狗等に現行犯で捕まれば面倒になった。

写真が一枚程度ならば幾らでも誤魔化せると思い込んでいるオオスは自分の容姿に無頓着であった。天狗程面食いな種族はいなかった。

 

不本意ながらオオスは幻想郷を地味に混乱させている新興勢力『癲狂櫟林』の黒幕である。

……何故、癲狂櫟林では下剋上が起きないのか。オオスは外の世界での若者の上昇志向の低下が幻想郷にまで及んでいないか心配だった。

 

オオスは自分を神とする宗教と関わりたくない。客観視に欠けるオオスは信仰の自由を律儀に守っている。そして信仰心による団結力を甘く見ていた。邪神ならば幾らでも相手にして来たのでよく分かるのだが善なる神を認めたくないオオスはその辺の機微に疎かった。

 

天狗の面食いセンサーに引っかかり、自宅や職場では宗教の偶像として崇められていた。

そのような状態であるが、悪いことをしている気がないオオスは単純に妖怪の森に居た事に関して言いくるめるのは容易だと思っていた。

オオスの考えている言いくるめそのものに関しては正しい認識であるが、オオスは客観視が未だにおかしく色々ズレていた。

 

オオス的には癲狂櫟林のトップとしてだけでなく商売等の部下でもある彼らに気を使っていた。

以前、天魔の事を鳥籠の中にいると評したが自分も人のことを言えなくなってきたなと思った。

 

なお、誰がどう見ても形骸化している善良なる里人というオオスの意識は根強い。

妖怪達の新興勢力のラスボスという立ち位置はその範疇を逸脱している。オオス的にはバレなきゃ問題ないと抜かす辺りダブスタの極みである。

 

何ならオオスが黒幕ですかと問われても誰もYESと言わなければ無罪と確信している糞野郎だった。

 

情報監視社会の外の世界で最後まで身バレせずに死に逃げ(死んでない)したオオスは八雲紫達が排除しないラインのギリギリを見極めていた。

 

 

 

そんなオオスは妖怪の山を降り、魔法の森に下った。

魔法の森は瘴気に満ちた禍々しさを感じ、妖怪すらあまり好んで立ち寄らない。

 

そんな魔法の森だが魔法使いにとっては有益な地であり、オオスも畑や植物園をこっそり作っていた。

オオスは普通の人間が来れば瘴気で心身がイカれる空気を深呼吸していた。

普通の森林浴と変わらない感覚で空気が美味しいと思っていた。根本的に頭がおかしい。

 

「森林浴はここでも出来る。少し植物が人食いだったりするだけで大した違いはない」

オオスはそう言って散策を再開しようとした。だが、何も考えないで行われるはずだったオオスの散歩の前に霧雨を薄っすらと感じ取った。

 

「これは魔理沙か?……洗濯物が乾かないとか言いそう」

オオスは現状は誤差の範囲である霧雨に感想を述べた。

あの猿……天人の小娘が気質を集めている以上、時間経過すると洗濯物も干せなくなる濃い霧になるだろうと把握した。

 

「いっそのこと雨ならば部屋干しもありだが、霧雨だと部屋干しも面倒だろうに」

気質の天気を観察したオオスは魔理沙の中に湿った重いものを感じ取って呟いた。

 

カラッとしているように見えるが心の底ではこうなっていると思うと中々に興味深い。

ちなみに魔理沙はこのオオスの考えを知ったらぶん殴った。乙女の心に土足で入るようなとでも霧雨に似合わず顔を真っ赤にして叱りつける。

 

オオスは幸運なのか不幸なのか、魔理沙を避けるように移動していたので出逢わなかった。オオスと会っていたら魔理沙はこの段階で異変に気がついていた。

 

「……気質が強い傾向にある人間や妖怪だと結構失礼なのでは?」

オオスは魔理沙はどうでも良いと思っているが、アリス・マーガトロイドや岡崎夢美等と出会ったら不味いかもと認識した。

オオスにとって魔理沙は泥棒なので扱いが雑である。魔法の森の友人達についてはそれなりに気にした。

 

魔法の森は本来ならば気質の天気よりも瘴気に目が行くので気が付きにくい。

だが、オオスの研ぎ澄まされた感性では否応なしに察してしまう。

 

オオスは人が狂う瘴気を完全に無効化出来る。強大な妖怪たちの妖気等がある妖怪の山よりもオオスには瘴気漂う魔法の森では鋭敏に感性が働いていた。

魔法の森と同じくらい人気の無い博麗神社だと神性や結界で有耶無耶になる。気質の天気の影響はまだそこまで問題ではない。

 

「……こいしの気持ちがわかったような気がする。異性の心をズカズカ覗き込む趣味はない」

オオスは古明地こいしを思い出した。思考や嗜好が読まれてもオオスは気にしないが他者の思考を読み取ってしまうのは少しばかり気にした。

ここに至ってもさとり妖怪への忌避感はないのがオオスがオオスである由縁である。

そして、人の思考をほぼ正確に模写出来るオオスだが深層心理まで覗くような真似はしていない。

異性の知り合いや友人が増えすぎた現状だとオオスは問題なくとも相手が後で顔合わせづらくなるかも知れなかった。

 

なお、オオスは必要ならば異性だろうが一切の躊躇もなく心の中を探索する。

例えば今泉影狼やイーグルラヴィの面々の夢の世界にズカズカと入り込んでいた。

オオスは能力的には気質を読むより酷い権能の持ち主である。それはそれと気にしないのが糞である。

 

「あの天人はしばいたら喜ぶからな……。変態だ」

オオスは比那名居天子を罵倒した。本心である。

根本的にサディストであるオオスだが、マゾヒストに褒美を与えるような事は嫌であった。

……天子が苦痛を苦痛と感じる者であるならばオオスは嬉々としていたぶりに行っていた。オオスは悪魔のような感性をしていた。

 

オオスは色々考えた末(3秒間)に気晴らしであったはずの散策のデメリットに気が付き、魔法の森を後にした。

ぶらつくという意味で散策にはなっているが、一々気にすることが多かった。オオスは段々と現状に苛つき始めていた。

だが、現在は異変を起こした天子は仕置きすれば喜んだ。

……クソガキの我儘に付き合っていられないオオスは天子の喜ばないタイミングを見計らっていた。

 

オオスは悪魔以上の悪魔の感性、外道であった。

紅魔館の小悪魔は同じ悪魔としてオオスの嗜好を称賛するのは間違いない。

なお、オオスは人間なのでもし小悪魔から悪魔として称賛されても喜ぶことはない。

悪魔という種族ならばそういう風に感じるのだろうと異様に高い自己肯定感も相まって寛大な対応で受け流すだろう。

この後、実際にそのような会話が二人の間で発生した。悪魔共の会話にパチュリーは呆れた。

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