八意永琳の画期的な治療(大本営発表)により鈴仙が回復した。
回復した鈴仙はその足でてゐを探しに行かされそうになった。
まず、永遠亭の警備網を突破して輝夜から身を隠しているオオスの件は防犯上問題である。
永琳的にはほぼ無関係だが客観的第一候補のてゐは呼び出さなければならなかった。
オオスは病み上がりの鈴仙にそれはないだろうと思いながら懐から笛を取り出した。どの口が言うのだろうか。
オオスが笛を鳴らして5分もしない内にてゐが出て来た。てゐは面倒そうだから少しばかり避難していた。
友人であるオオスが呼んだから出てきてやったので鈴仙は感謝すべきと貸しにする気でいた。
当然、鈴仙は入れ違いでてゐ探しに行っている。
オオスはてゐを呼んだが鈴仙に教えていない。思っただけである。
てゐも鈴仙が自分を探していると知っていたが教えていない。言われていないからである。
永琳はオオスが鈴仙に教えないのを看破した。
てゐを見つけられないのは鈴仙の努力不足なので教育が必要である。永琳は心のメモ帳に記した。
永琳はオオスの一連の動作に関して、鈴仙を気遣っていないようで気遣っているのがわかった。奇妙だが一定の合理性が存在していた。
端的に言えばオオスは下手に鈴仙に優しくすると輝夜にバレたら拗ねると思っているらしい。
永琳は目の前の男が面倒な性分だと改めて思った。
……こうは言うが永琳は輝夜に聞かれたら当然のようにオオスの行動まで全て話す。
永琳のチクりにより鈴仙はストレスで胃がやられるのは確実だった。
なので、永琳に見られている状況ではオオスのやり方が最適にならざるを得なかったりする。立派な老が…もとい糞上司である。
更にオオスは自然体で鈴仙の持ち物を忘れそうな場所に移動させていた。
ついでに視線を誘導して鈴仙があそこに忘れたかもしれないと思わせる工夫をしていた。
永琳が命じた携帯品を失くしたとあれば鈴仙は叱られるかもしれない。
オオスは永遠亭の細かな規則に関してはそこまで分からなかった。
だがオオスは月にて軍隊上がりの玉兎のルーズさと叱りつける綿月依姫の拷問を知っていた。
何なら第二次月面戦争後に月で荒らし行為をしていた際、オオスはその光景をよく見ていた。
賭場を荒らしまわり神々を巻き上げていただけなのに撤退しなければならなかった。
オオスは治安維持とかぬかす悪逆非道の依姫へ怨嗟が湧いていた。
それはともかくとしてかの綿月姉妹の師匠が八意永琳だった。
この邪悪で悪辣な傲慢を体現した依姫と似たような教育をしているだろうとオオスは推測していた。
鈴仙が大事な携帯品がない事に気が付き、それを探す途中で永遠亭に置き忘れた。
このような筋書きに鈴仙が『気づいて』戻って来る時間をオオスは計算していた。
失態を誤魔化せるなら誤魔化したい。何だかんだ玉兎達によくある隠蔽を鈴仙から読み取っていた。
オオスは友である迷惑をかけたてゐにだけはこのささやかな悪戯を明かした。そして歓談していた。
「いざとなったら使って良いですから。巻き込んでごめんね」
オオスは本気で無関係のてゐに謝罪した。
オオスはこのネタ晴らしについて、てゐに判断を任せると胸襟を開いて説明していた。
「まぁ、いいさ。それより聞きたいことがあるんだけどさ。この間、香霖堂で……」
てゐはどのみち怒られるから貸し1だと年おきしつつ、ちょっと気になる話題を聞いた。
それは雨宿りで入った香霖堂で見かけた本の内容だった。
宇宙で活躍するひまわり云々と書いてあったが途中で雨がやんでしまっていた。
外で暮らしていたオオスならば知っているのではと聞いてみる事にした。
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「ひまわり7号かー。そういえば私が幻想郷に来たくらいに8号が打ち上げるんだったか」
オオスは外の世界のまさかの話題を懐かしんでいた。
オオスも少しばかり気になっていたが諸事情で早苗には聞きにくい話題だった。
「ひまわりってそんな定期的に宇宙へ行くの?」
てゐはオオスが懐かしんでいる様子から本が正しいと察した。
てゐは本物のひまわりが宇宙にあると思い込んでいるので人工衛星ひまわりとは微妙にズレている。
「初代ひまわりが確か1977年だから7号の約30年前だったはず。……結構定期的に行くね」
オオスは生まれる前の宇宙関連の知識は全て入れていた。なのでスラスラとてゐに語っていた。
細かい人工衛星の位置情報まで入れないと人類全体に迷惑をかけかねない作戦を実行した事もある。
宇宙の邪神共はどいつもこいつも隕石クラスはないとダメージにならなかった。
幻想が消えた外の世界において強力な魔法武器を使えるのは少数であるので核程度ではダメだった。
「見直したぞ、ひまわり」
てゐはオオスの真剣な表情からあのちっぽけな花を見直していた。
オオスも人工衛星ひまわりを高く評価していた。
「凄いよひまわり。日本の天気予報してくれるんだ」
オオスはてゐに賛同した。オオスは人工衛星ひまわりの本を読んだと認識している。
てゐは人工衛星ひまわりの本をちら見していたので合っている。……読むまでは行っていないのですれ違いが続いていた。
「花の寿命は儚いな」
てゐはひまわりが何度も宇宙に飛び立ち今8代目なのかと感心した。同時にその儚さを憂いて言った。
「ねー。儚い」
オオスは同意した。ひまわりの花も人工衛星も時間経過で次に変わる。
オオスもてゐもうんうんと頷き合っていた。誤解は誤解のまま進行していた。
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「……ひまわりって多分違う意味なんじゃ」
オオスの読み通りに帰って来た鈴仙は二人のやりとりを聞いて小声でツッコんだ。
オオスの読み通り過ぎて永琳に不携帯をバレなかった。
オオスは永琳にバレると読んでいたがそこは外していた。ヒデェ野郎である。
「はぁ……ウドンゲ、貴方些か無粋じゃないかしら?」
永琳は鈴仙のツッコミを聞いて機微に欠ける弟子兼ペットを嘆いて溢した。
永琳はすぐ戻った鈴仙を訝しみながらもそういう事もあるかと流していた。
「し、師匠に言われるなんて」
鈴仙はボソッと溢した。
鈴仙は病み上がりの状態で迷惑系ウサギてゐの捜索を命じたので微妙に恨みがあった。
「あら?薬の量が足りなかったようね」
永琳は鈴仙の態度にイラっと来た。聞こえないと思ったのか、年だとでも言いたいのか。
永琳はオオスのせいでキレやすくなっていた。
「ひ、ひぃー!お助け!!」
鈴仙は永琳の逆鱗に触れたと察して目の前で呑気に喋っている二人へ助けを求めた。
「騒がしいようなので帰りますね」
オオスは鈴仙が叱られていると察して面倒にならないうちに帰る事にした。
輝夜も流石に気が付いてこちらに来るだろうとオオスは気が気でなかった。
オオスは輝夜が迷惑系天気娘天子と変な反応を仕出かさないか不安だった。
「またなー」
てゐは鈴仙という玩具が仕出かす気配を察した。
これの良い所は自分に害が及ばない事である。
てゐは下手すると自分まで巻き込みそうな友人オオスの帰りを喜んで見送っていた。
「またないで!いや、違う、待って!?」
鈴仙は混乱して叫んだ。待たないで去れという意味ではない。
鈴仙の言葉を聞いてダッシュで帰ろうとするなとオオスに叫んでいた。
「ウドンゲ。……いや、邪魔なのも帰ったし。鈴仙、少しばかり仕置きが必要みたいね」
永琳は泣き縋る鈴仙を見て間接を鳴らしながら宣言した。
鈴仙が泣き叫んで縋っているのを輝夜が見たらどうなるか。
絶対面倒臭くなるのでオオスは本気で逃げていた。永琳からしても面倒だった。
オオスが輝夜の索敵外に出たと察した永琳は輝夜に有らぬ誤解をされないように鈴仙を仕置きしておかなければならなかった。
本当に面倒臭い。鈴仙に締め技を決めながら永琳はため息を吐いた。
騒ぎに気が付いて来たがまだ何も知らない輝夜は鈴仙が沈むまでのカウントを取った。
10カウントで鈴仙はフィニッシュをした。鈴仙はまた気絶した。
一連のイベントをこなした輝夜は一体これは何なのかと尋ねた。……永遠亭は今日も愉快になった。