天界の天人こと比那名居天子が倒壊した博麗神社の再建を担ったということでその落成式が執り行われようとしていた。
オオスは人里の善良な里人として渋々ながら足を運んでいた。上っ面だけは綺麗な天子が参加者へ向かってスピーチをしていた。
オオスはガン無視して氷の妖精チルノと喋っていた。
夏で暑いから大変だよねと語りつつ、変な天気で偶に暑くないとチルノが返答していた。
気候の変化に関してパチュリー・ノーレッジがオオス達の会話に入って来た。
話題はペラペラ喋る天子へ向いていた。……天子の頭の桃に見える果実についてである。
「頭の桃は漬物にするの?そのまま食べた方が美味しいじゃない!漬物石は要らないわ」
チルノは天子の周囲に浮く石で漬物にすると解釈した。
チルノにとって要石も漬物石も大差ない。
「保存するにも仙果は長持ちします。漬物石は要らないのです」
オオスはチルノへ賛同した。あの漬物石本当に要らない。オオスは本心から同意していた。
「……漬物石は古臭いわね」
黙っていたパチュリーは言葉を漏らした。オオスが天子の話題を口にするのを何となく気に食わなかった。
咲夜はレミリアのフォローをしていた。レミリアから離すのは気が引けた。
仕方がないと思いつつ、同調してくれそうなアリスはどこにいるだろうと目で探す。
……アリスは目も髪も服も全て赤い、見慣れない女と話していた。風見幽香も近くにいた。
オオスがパチュリーの目線に気が付き、アリス達の方向へ会釈した。
パチュリーは慌てて目線をオオス達へ戻した。オオスは魅魔というのはこの世界にもいるのか考えた。
岡崎夢美の見た幻想郷にオオスの幻想郷での知り合いが何人かいたので気になっていた。
「珍しい。いや、魔法は科学の先を行くと考えれば……」
オオスは平行世界まで想像し、漬物石という原始的な化学反応を考察していた。
考え過ぎていたので、パチュリーが比那名居天子の話が嫌だと気が付くのが遅れていた。
「無粋よ」
パチュリーは珍しく察しの悪いオオスへ一言述べた。
「あ、はい」
オオスはパチュリーに気圧されて言った。同時に自らの脳内で色々先走ったと反省した。
「お前の読んでいる物は古人の糟魄のみ。漬物石に見えるならば滑稽ね」
比那名居天子はパチュリーの読む書物を評した。
パチュリーは異変に真っ先に気が付いていたが天子をガン無視し、萃香を犯人と誤解していた。
天気を萃める事で異変を引き起こしていると読み違えていた。
緋想の天気が書物に記載されていないが故の誤りだった。天子はパチュリーが頭でっかちだと指摘していた。
「……」
パチュリーは言い返そうと思ったが、今回の異変に関してはその通り過ぎたので黙った。
ここで喧嘩腰になっても自らの品位を損なうと抑えようとした。
関係ないと男は言うだろうが、オオスはパチュリーの友人である。
「滑稽な事をやるのが紙芝居屋なので褒め言葉。感謝しますよ、天人殿」
オオスは自分に言ったなこの野郎とキレた。オオスの京都弁は先ほどの察しの悪さとは裏腹に冴えわたっていた。
「あっ!そうだ、凍らせてあげようか?その桃」
チルノは空気を読まず、思いついたように天子へ提案した。
自分が凍らせればシャーベットにでもなるだろうとうんうんと頷いていた。
「……調子が狂うわね。忘憂の物の輩かしら?」
天子はオオスからの予期せぬ横やりとチルノの有難迷惑へたじろぎつつ返した。
天子はパチュリーではなくオオスへ向けた言葉にも取れるなと穏便に京都弁を選んでいた。
「終わったら酒でも飲みましょう。きっと美味しい酒になるでしょう」
オオスは楽しい式になるだろうなと思い本心から天子へ語り掛けた。
まるで天子のミスをフォローしているように聞こえる。
オオスは軽く周囲を見渡し、天子が粗相をしていないと周囲を宥めるように振舞っていた。
……オオスは八雲紫がいないと察した。オオスは自分が気配すら感じないのは見事だと感心した。
「ええ、そうね。落成式は酒を用意してあるわ」
天子は周囲の視線を向けられたのを自覚し、オオスの言葉に同意した。
天子は、オオスが自分に傅き、侍従のように振る舞うことにご満悦だった。
天子は正面から戦えばオオスに余裕で勝てるのだと面の良い身の程を弁えた振る舞いだと認識した。
……天子は異変前にオオスを拉致監禁してやろうとして恐ろしい気配を感じたのを素で忘れていた。
「……ああ、なるほど。ちょっとレミィに声をかけてくるわ」
パチュリーは絶対この後何かあると察した。オオス自身は動かないのだろう。
オオスは河童のバザーでの川割異変のように、現行犯で逮捕されるような事もする。
しかし、本気になったら月面戦争で捕まらず、神々からさえも逃げ切れていた。
パチュリーは、オオスが何の打算もなく天子へ傅くような振る舞いをしないと知っていた。
……するならこの後痛い目に合う。レミリアの傍に居た方が良いだろうとパチュリーは判断した。
「またねー」「また後で」
チルノとオオスはパチュリーを見送った。
「……そろそろ時間ね」
天子は落成式の挨拶をする為、気分良く壇上へ向かった。
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「……神社は長い間、何故風化もせず、壊れもせずに同じ形で、信仰を保てたのでしょうか?」
天子は挨拶の問として定期的な改装を行う式典遷宮が信仰を守ったと語っていた。
オオスは一人、気配を察して後を向いた。
「定期的な工事ではないさ。……形なくとも魂は宿るのだ。それは様々な形で現れる。やがて人は芸術として生み出す自覚を得た」
オオスは天子の気配が消えたのを察して言葉を紡ぐ。いなくなった者への言葉は誰も聞きとらない。
「人の世が織りなすものに全く同じ形などない。……同じ木が無いように水の流れが変わるように」
オオスはそう言ってから周囲を確認した。
比那名居天子の神隠しに混乱する人妖達へ向けてオオスは対応を始めた。混乱する人々を博麗神社から少し距離を取らせた。
人の営みが完璧ではないように、博麗霊夢も混乱していた。
今回、終始被害者である霊夢にオオスは同情していた。……この時は。
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その後、比那名居天子はズタボロの状態で戻って来た。同時刻、博麗神社は再度倒壊した。
当然のごとくオオスは霊夢から疑われた。
異変と無関係でも天子にムカついてボコりたそうなのはオオスである。全員共通の認識だった。
これだけはオオスも否定できず、一番怪しかった。
幸い、霊夢の勘がオオスは無関係であると告げたため、追及は比較的軽く済んでいた。そこに八雲紫がさらっと自分が犯人だと言うので矛はそちらに向いた。
余談だが、霊夢による魔女裁判で吊し上げを喰らったオオスは弁護士をレミリアに依頼していた。
だが、レミリアは罪を認めるようにオオスを説得してきやがったので憤慨していた。
レミリアはオオスへ悪魔ならば負けを認めるのもまた美学と語って聞かせていた。一応、オオスは悪魔ではない。
……真犯人として紫が名乗り出た。レミリアは固まった。オオスは満面の笑みを浮かべていた。怒りで頭が沸騰していた。
パチュリーは前もってレミリアに多分オオスは犯人ではないだろうとは伝えていた。
だが、オオスなら比那名居天子をボコボコにしたそうだと言われるとそれ以上の反論できなかった。
オオスを知る者達はオオスが妙に相手へ遜るのはそれ以上に仕返しをしてやるという意味だと思い込んでいた。
なんならオオスに好意的な東風谷早苗ですら、そうかもしれないと思っていた。
オオスは割とショックだったようだが、誰がどう見ても普段の行いが悪い。