嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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アイソレーション

オオスは射命丸文との雑談から逃げ切った。

守矢神社の布教活動をひと段落させた東風谷早苗と鉢合わせた。

オオスは挨拶の後、早苗の疲れを労わろうと以前訪れた鈴瑚の営む団子屋へ案内した。

 

「ストロベリーバルサミコ酢ダンゴがない!……いや、頼まないですけど!?」

早苗はメニューを見て声をあげた。

以前オオスに案内された時にあった旬のメニューが変わっていた。

早苗は不味くはないがあまりにイカれていたメニューが不人気だったのかと思った。

だが、バルサミコ酢系列は別枠でメニューに記載されていた。

 

「幻想郷は冷凍庫や冷蔵庫は少ないのです。しかし、安価で大量に仕入れる旬の食材を楽しめます」

オオスは店員から渡されたお茶を啜りながら早苗に説明した。

本気を出せばオオスは季節外れの食材を保存できる。だがそれは個人の能力に頼り過ぎていた。

過去に廃棄した団子をオオスは取り出せるが飢饉などに備えた奥の手だった。

どちらにせよストロベリーバルサミコ酢団子は大人気で在庫はない。

早苗の期待には応えられない。オオスは少し残念だった。

 

「いえ、大丈夫です!……すみません。このビワ団子ください」

早苗は旬の商品で無難そうなのを注文した。

早苗はオオスからバルサミコ酢大好きだと勘違いされていないよなと若干不安になった。

 

オオスはチャレンジャーな早苗が猫を被っていると認識した。

前回もオオスが何も言っていないのにも関わらず、早苗はストロベリーバルサミコ酢団子を頼んでいた。

オオスは早苗へデザートのレシピを渡そうかと考えた。外の世界のデザートが恋しいのなら気の毒だ。

オオスは何だかんだ同年代の外の住民である早苗に甘かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オオスは仕事の話が嫌だったのもあり、早苗とついつい話し込んでいた。

早苗は理系であり、ゲームの類も嗜むと言う。オオスは軽く話題を振っていた。

 

「ゲーム?ああ、私は3〇Sなら持っていたよ」

オオスはくだけた口調で早苗に言った。幻想郷に来る3年前に買ったが、素晴らしい。

オオスは据え置き機のW〇iと携帯機3〇S、両方の機能を備えたそこそこの性能のゲーム機を任〇堂が開発しているに違いないと踏んでいた。

出れば必ず売れるだろう。消費者へ高品質の商品を売るにも伝わらない時代になりつつあった。

少し残念に思うものの、オオスはゲーマーが増える新しい時代を予想していた。

 

だが、

「レトロゲーマーなんですか?私もです!」

早苗はオオスが昔のゲーム機を持っている同志だと認識した。

セガサ〇ーン、ドリーム〇ャスト、メガドラ〇ブ。早苗は同年代に仲間がいなかった。

オオスはまだ何も言っていない。早苗は外の世界に未練はない。

だが、ゲームの話題というのは早苗の心のしこりのような部分であった。

早苗には同年代で同じ趣味の人間がいなかった。友達はいたが幻想郷に関して打ち明けるような間柄の人間はいない。

それこそ趣味とは関係ない話である。それでももし同じ趣味の親友がいたら変わったのか。

早苗はそのような考えを無意識の箱に折りたたんで仕舞いこんでいた。

 

オオスは早苗が幻想郷に来た時から早苗の琴線という名の地雷を踏みまくっていた。

 

「……実は流行には疎くてね。今、〇天堂のゲームハードもわからないのです」

オオスは早苗の喰いつきに一瞬固まった。しかし、なんとか誤魔化した。

……確か最新ゲームハードはPS4だったはず。オオスは届く前にこちらに来ていた。そちらの最新機器の話は恐らくできない。

だが、古いハードであれば一通り遊んだ経験はあった。

オオスはレトロゲームと言われて若干ショックだったが、マウントを取るべく頭を回転させていた。

 

捻くれた野郎、オオスは敬語に戻っていた。

だが早苗の前でオオスの口調が乱れるのは稀によくあったのもあり、早苗には気が付かれなかった。

 

「ええっ!?オオスさん、Swi〇ch持っていないですか!?」

これはもう同志に違いないと早苗は興奮して机から身を乗り出した。

オオスは近い近いと慌てて早苗を座らせた。個室なので客は見れないが、店員が来る恐れがあった。

 

「持っていないです。P〇4は持っています」

オオスは、早苗が自分を憐れむとかではないと察した。だが、何を興奮しているのかまだ悩ましかった。

一応、書類上は所有しているゲーム機を挙げた。……知名度的に考えれば、しばらく幻想郷入りしそうにない。

 

「うちもP〇5は買ってもらえませんでした」

早苗はオオスをP〇信者かと思ったが、寛大な心で受け入れた。

早苗は興奮していた。何様なのだろうか。

 

「うーん。実はP〇4は一度も使わないで来てしまったんですよね。Xbox 〇neも」

オオスはこれ多分、アレだと早苗の好みに気が付いた。

確認のために多分、早苗の琴線に触れないだろうゲーム機を挙げてみた。

 

「Xb〇xは残念でしたね。セガ〇ターンのような大ブームを……」

早苗は、オオスがなんでもやるタイプかと納得しつつ、売れなかった事を慰めた。

オオスは理解した。理解したが早苗への想定が甘かった。

 

東風谷早苗は外の世界に未練なく来た現代人だ。たかがゲームでもある。

しかしどれだけの孤独かをオオスはまだ理解できていなかった。

 

「コア層にはウケると思うんだ。SE〇AもM〇も……」

オオスとしてもこういう話をする相手がいなかった。

オオスは早苗とは雑談の範囲内である程度で済ませる予定だった。

しかし、オオスは気が付いたら話し込んでいた。

早苗がこの話題に飢えていた。オオスは無意識にそれ察したからでもあった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

30分後、早苗はオオスとSE〇A談義に花を咲かせていた。

オオスは気圧されていたが早苗は気が付かない。そしてオオスは余計なことを口走ってしまった。

 

オオスからすれば慣れない会話で気圧されていたとはいえ普段ならあり得ない醜態だった。

 

「ス〇ージャッカーのテーブル筐体があるんですか!?家に!?」

早苗はオオスに掴みかかっていた。店員が慌てて止めようとするがオオスは手で制した。

オオスはあくまで一個人として早苗に対応する事に決めた。癲狂櫟林は関係ない。

 

「……幻想郷に流れついていた筐体があり、机として使われていたのを貰いました」

オオスはため息を吐いた。どうしよう。

 

オオスは最近の異変により博麗神社が目立ち過ぎたと分析していた。

守矢神社が焦って何かをやらかさないか不安だった。

オオスは守矢神社へ向けた飴らしきものを用意していた。旧暦の10月、外では忘れかけている行事である。

少しばかり霊夢には悪いが政治的バランスをオオスは考慮していた。

……いや、やっぱり悪くないよなとオオスは思い返した。霊夢は無実なのに魔女裁判をかけてきていた。

 

「今から遊びに行っていいですよね!?」

早苗はオオスの内心を察することなく、欲望の赴くままにオオスへ尋ねていた。

早苗は未婚の風祝が異性の家に一人で行くという状況に気が付けなかった。

 

「あ、はい」

オオスは思わず早苗に同意してしまった。しまったと思うが時既に遅かった。

 

「S〇-1000、セガ・マ〇クIII……セ〇に溢れているなんて幻想郷は素敵ですね」

早苗は目を輝かせてオオスの手を取り言った。早苗ですら存在しか知らない機体もあった。

 

「そ、そうですね」

オオスは幻想郷に流れ着くということの意味を早苗に伝えるのを辞めた。

オオスは幻想郷へSE〇Aハードばかり流れ着くので回収していた。状態の良い品やニコイチで修理して稼働できる状態になっていた。

 

オオスは自分のコレクションが褒められ、早苗が来ることによる諸々の問題を棚上げしていた。

絶対、神奈子はクレームを入れてくる。オオスは物凄い嫌だった。

 

 

「同年代が遊びに来る事なんてなかったな」

オオスは早苗の会計を払いつつ、聞き取れないような小声を漏らした。

 

「何か言いましたか?」

早苗は声が聞こえた気がして尋ねた。早苗はまだオオスが会計を済ませたと気が付いていない。

 

「なんでもありませんよ」

オオスは早苗へそう言ってこれからを考えた。

早苗がオオスの抱える問題に気が付いていないならまだ何とかなる。

オオスは現状に頭を抱えつつも変な高揚感を抱いていた。

 

 

ちなみに早苗はオオスが頭を悩ませている間に異性の家に一人で行く状況に気が付いた。

オオスが拒絶しないので早苗は気が付かない振りで押し通した。

早苗側も気恥ずかしさから若干ヤケクソになっていた。

 

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