オオスは東風谷早苗を自宅へ案内した。
部下たちは見られて不味いものは片付けておくように前もって連絡を入れていた。
オオスは自宅へいてもいいよと前置きしていたが、正直嫌ではあったので伝えてもいた。
結果、空気を読んで全員引っ込んでいた。
早苗はオオス側の事情を知らないので大きな家に一人でさみしくいるのではないかと心配になった。
「いや、私の家職場でもありますから。普段は人いますからね?」
オオスは早苗に誤解されないように念置きした。
オオスとしてもまさか全員引っ込むのは想定外だったが肝心の片付けはどうなっているかと玄関の戸を開けた。
玄関を開けるとわかさぎ姫がやっていたシ◯マンがそのままになっていた。
「ああ、あれはシー◯ンですね。何故かこちらにも流れ着いたのですが」
オオスは早苗に気取られないように説明した。わかさぎ姫はシ◯マンにハマっていた。
オオスは知らないが、わかさぎ姫は定期的な世話がシー◯ンによりオオスの家に居座る口実にしていた。
今泉影狼はわかさぎ姫の内心を露知らずに友達のゲーム生実況を見に来ていた。
わかさぎ姫は友人の影狼が素で卑しい生態をしていると人間の顔をした魚類の同胞、シ◯マンへ愚痴りたかった。
「3◯Sで出せばよかったのに。惜しいですよね」
早苗はオオスがゲームを出しっぱなしにしていたのかと微笑ましく思いながら言葉を返した。
『そうか3D◯でシ◯マンは出していないのか、そうなると初心者の大量流入の波に乗れなければ』
……オオスは惜しく思いつつも商売とは弱肉強食と切り替えた。
「ノーヒントなのでだいぶ管理に失敗してます。幻想郷にインターネットとかないですし」
オオスはわかさぎ姫の状況を語る。まるでオオスがゲームをしているように聞こえた。
オオスは嘘は言わないで自然な形で早苗へ説明していた。
「……あれ?スマホとかちらほらありません?」
早苗はちらほら見えるスマホを見ていった。ネットを使えないにしては使っているように見える。
「コンパクトシリーズとか熱が酷いですが、これはそういうのはないです」
オオスは早苗の質問と若干ズレたことを言った。話題をスマートフォンの機能へすり替えた。
あれは月面戦争で得た戦利品の機械である。奇しくも操作法含めてスマートフォンに類似していた。性能は月が段違いである。
オオスはスマホが一般化しつつある時代で生活していたのもあり、すぐに解析が完了した。もともと月に住んでいた玉兎達は当たり前だが容易に使いこなしていた。
「ああ、結局廃れちゃいましたよね。高性能大容量の時代には合わなかったんでしょうが」
早苗はオオスの露骨な誘導に引っかかった。早苗は理系なので技術に目が行った。小型化高性能というコンセプト自体は好きだった。
「メガドラ◯ブミニとかミニシリーズもNint◯ndo Swi◯ch ◯nlineのサブスクに流れちゃいましたし。◯ガハードは益々大変そうです」
早苗はゲームの話題に戻して未来を憂いた。未来へ明るい展望を持ちたい早苗だが、個人的嗜好は未来が暗かった。
「あー……そっちいったか」
オオスは早苗に聞こえないように呟いた。
ひょっとして防いだあの事件、自分の行いで技術進化が情報特化になったのかと一瞬考えた。
しかし、個人が世界に与える影響は大したことがない自意識過剰だとオオスは思った。
実際はそうでもないのだが、オオスも早苗も知る術はない。
人類絶滅手前の第三次世界大戦を防いだ事実は良くも悪くも外の世界の技術ツリーへ大幅な修正を加えていた。
「どうしましたか?」
早苗はオオスが黄昏れているように感じ、なにかあったのかと尋ねた。
「いや、なんでもないです。一過性のものは多くとも、情報化社会で流行もまとまらないでしょう?」
オオスは気持ちを切り替え早苗に伝えた。
「そうですね。10年前まではまだ違ったみたいですが、今はあちこちコロコロ変わるので大変でした」
早苗は色々変わり話題についていくのも大変だった女子高生時代を思い出して言った。オオスも似たようなことがあったのかなと早苗は考えていた。
「流行り廃り。……そういえば、亥の子ってご存知ですか?」
オオスはゲーム脳早苗が少し切り替わったと察して囁いた。これを逃すと延々とS◯GAの話で終わるかもしれない。
「いのこ?……ひょっとして亥の子餅ですか?栗餡のスイーツですよね」
早苗は流行り廃りはともかく先程食べた団子屋を思い出し、連想して聞き返した。
「ああ、小布施栗を見立てているのか。なるほど興味深い」
オオスは早苗の出身、諏訪を思い出して小布施町の特産品を思い出して言った。
著作権とかは無いのだが、幻想郷の団子屋で真似てもセーフか否かを考えた。栗を猪に見立てても良い。
「……確かそうだったような。それがどうかしましたか?」
早苗は記憶を辿って間違いないかと思い返した。確かに友達が小布施の北斎館の帰りに買ってきていたまんじゅうか何かだったはずだ。
「いや、昔は亥の子餅を季節で食べるのが流行っていたんですよ。旧暦の10月最初の亥の日に猪を型どった餅を食べる。古代中国から由来です」
オオスは宗教染みた事を言いたくないので少し省いて説明した。
「日本だと稲刈りの季節と被り、また、陰陽五行説ならば亥は水にあたり、日を鎮める。
火災除けの加護があると炉を使い始めるのに好ましい日とされています」
オオスは陰陽五行なら巫女などの方が詳しいだろうとそれ以上の説明をやめた。
加護に関しては地震と火事は連鎖反応で怖い。宗教的な力でも対策をしておきたかった。
「へぇー……でも今は夏ですよね?」
早苗はオオスの真意に気が付かずに疑問を口にしていた。
早苗は風祝として現人神としての力や才能は高かった。しかし、オオスの想定ほどには知識が足りていなかった。
「夏ですね。暑い暑い」
オオスは早苗の言葉を聞いて手で扇ぐ真似をした。
オオスは、諏訪子へオオスが何を話したかを報告すれば意図は伝わるだろうと推理して引き下がった。
早苗はSE◯Aをしに来たのだ。これ以上は無粋にも程があるとオオスは思いとどまった。
余談だが、炉の安全を祈る『亥の子』は核融合炉にも範囲に含まれなくもない。
神奈子はこれでオオスが核融合炉に賛同したと誤解した。
オオスは外の神なら核の危険性を共通認識していると思っていたのですれ違っていた。
オオスは神奈子の権能ならば風力発電か水力発電だろうと推理していた。
実際、神奈子も風力も水力発電もやるつもりだった。
しかしながら、幻想郷ならば核融合を使えると見込んで来ていた。最初から核融合は計画に織り込み済みだった。
妖怪の山の山頂にある守矢神社とオオスは物理的に距離が遠く、オオスは対応が後手になっていた。
オオスは麓の妖怪たちが主体となった『癲狂櫟林』をトチ狂った守矢とあからさまな名前にしていた。
オオスはこのような名前にすることで、一強になりつつある妖怪の山勢力や守矢神社を下手なことをさせない、見張る役割を作ろうとしていた。
善神である神奈子が幻想郷に来ていきなり核開発をやりましたなど、オオスでなくとも想像できるわけがない。
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「熱い日に暑い話題でゲームまで熱暴走は嫌ですよ!」
早苗は冗談混じりに手で扇ぐオオスへ声を大きくして言った。
早苗はオオスの部屋へ案内されているが通り沿いにならぶゲームの筐体を見ていた。
もはや外の世界でも見ることができないような価値があると早苗は察していた。
オオスはゲームなどの文化財保護区画へ早苗を案内していた。
幻想郷に流れ着くものは忘れ去られたものや流行り廃れたものだった。
故に外の人間からしかわからない価値があった。八雲紫は意識していないが、これらも外への交渉材料になりうるとオオスは踏んでいた。
オオスも知る有名なタイムトラベラーは一つの機器のために過去へ来た事があった。
失った世界では人類規模のプロジェクトを動かすこともあり得た。……そうでなくてもコレクターの収集癖と影響力は馬鹿にできない。
「大丈夫です。この一帯は一定の湿度と温度で保たれています」
オオスは早苗を落ち着かせるように声をかけた。
とはいえ、道具は使ってこそなので部下が望めばオオスは提供していた。そのためか癲狂櫟林ではゲームが流行しつつある。
あからさまに使えば幻想郷の管理者である紫から警告をくらいそうなのであまり表に出さないようにしていた。
「そうなんですね。良かった」
早苗はホッとした。オオスが雑に扱う人物ではないと思っていたが、人類の宝が失われるのではないかと恐怖していた。
「まぁ、稀に力加減をミスって壊しちゃうんですけどね」
オオスは早苗が安堵した様子を見てポロッと言った。妖怪に使わせるので力加減がたまにミスっていた。
余計なことを言ったオオスだが、本人の言い分的には早苗の好感度が高すぎるので下げておきたかったとのことだ。
いや、オオスの本音としては早苗の好感度を下げたくない。
だが、癲狂櫟林のボスとして馴れ合いすぎると良くないと冷徹に分析していた。
……その後、オオスは早苗からこっぴどく叱られた。
早苗から正座させられたオオスは一部の隙もない正論にさらされた。
オオスは二度と物理的な破壊が起きないように管理することを早苗に誓わされそうになった。
だが、
「いや、妖怪でも遊んでもらって普及したいじゃないですか」
オオスは遊んでもらわないとゲームも可哀想だと早苗へ言い換えした。
早苗としてもSE◯Aの同士が増えるなら喜ぶべきことだと飢えていた感情があった。
「じゃあ、私もこの子たちの面倒を見ます!!」
早苗はオオスへ宣言した。子どもたちは私が守るという母を感じるが、相手はゲーム機だ。
客観的に見ればゲームに駄々をこねる子どもに見える。諏訪子がいれば子供の頃の早苗を思い出した。
早苗としても9割自分が遊びたいのだが、オオス一人に管理させたら貴重なゲームが知らないところで消えかねないと判断した。
オオスは形あるものいつかは滅びるという価値観なので早苗の懸念もあながち間違いでもなかった。
「ええ……」
オオスは早苗にドン引きしたが、言い返す理由が思いつかなかった。
いや気持ちはわからなくもない気がするが、そこまでするかと困惑していた。
癲狂櫟林という早苗の実家に喧嘩を売っているところのボスなんだがと遠い目をしていた。
「部下達と相談するから待って」
オオスは早苗へ落ち着かせようと最後の抵抗を試みた。
早苗も帰れば落ち着くはず、神奈子のみならず諏訪子も反対すれば落ち着くはずとオオスは自身の脳内で可能性を羅列した。
ここで早苗を強引に返せばその可能性の羅列は機能していた。オオスは早苗にだいぶ甘かった。
「部下の方々に反対されたら私が説得します!」
早苗はオオスへ居座ると宣言した。早苗は帰ったら保護者2柱に反対されるのを重々理解していた。
だからオオスの言質を取るまで帰らない覚悟を決めていた。こうなると早苗は強かった。
「ええ……」
オオスは早苗の頑固な態度に困惑した。
よく考えるとオオスは同年代の異性である早苗を部屋に連れ込んだ形だと気がついた。
流石にあまり長居させると早苗の風聞も気になる。オオスは部下へ連絡を取ることにした。
人間の少女がオオスの所有するゲーム機が適切に管理しているか確認をしたいと伝えた。
オオスが年頃の少女を自室に連れ込んだと聞いた美濃吾妻は頭が真っ白になった。
とりあえず問題なさそうなので頷いてオオスに任せると返事をした。吾妻はオオスの私物に口出しする権利もない。
……権利に口を挟める間柄の女性の登場だと吾妻は解釈した。まぁ、間違ってはいない。
しかしながら、これは相手が東風谷早苗であるので、癲狂櫟林として吾妻から見て大丈夫かという仕事の話だった。吾妻が気がつくのは早苗の帰宅後だった。