嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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団子とコーヒー

 

華扇からの絞め技で少し時間をロスしたオオスは、怒られるにしてもこれは酷いと内心で愚痴をこぼした。

先の異変でオオスは華扇を外へ誘導していた。比那名居天子は天人であり、華扇が関与すれば仙人としての将来が危ぶまれた。

まさお君へもマシな人材で紹介した。名前を返すのは嫌だが、どうせ向こうもそんな事はわかっている。

華扇個人を気に入ったのだろう。そうでなければ追い返すか利用する為に悪だくみをする。

オオスはまさおの思考をトレースできるので筒抜けに等しい。安全な相手である。

 

……なのに頭霊夢族だからかなぁとオオスはため息をはき、時間が無い事に気が付いた。

 

「ちょっと、今、ええい、付き合ってもらいますよ」

オオスは華扇の手を取って言った。奥歯の仕込みを噛みちぎり、ある会議の会場へ転移した。

なんだかんだオオスは忙しかった。緋想天の事後処理、博麗神社の再再建の知らせ、通常業務他多数。

オオスは考えるのも惜しいと咄嗟に華扇の手をとっていた。

先ほど話の途中だったからという理由であり、それ以上でもそれ以下でもない。

 

「ちょっ!?」

華扇はオオスの強引さに顔を赤くし、流されるまま転移した。

言い過ぎたかなと内心オロオロしていた華扇はオオスの突然の行為に対処が遅れた。

オオスはよく考えれば華扇を無視して転移しても良かったのではと気が付いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

所かわって、オオスはイーグルラヴィを始めとした団子屋のスポンサー兼オーナーでもある。

月の兎が幻想郷の人里で馴染むにはそれなりの工夫が必要だった。

オオスはまぁ、団子屋の太客だし良いかと華扇を追い出すことなく続行した。

 

「えー……第13回、月団子屋組合総会を開始します。今回はアドバイザーに茨木華扇さんにお越しいただいております」

オオスは何事もなかったのように参加者へ総会というか会議の開始を宣言した。

参加者も慣れたものでオオスの転移術には驚いていない。

 

「確かに客として通っているけども」

華扇は椅子を取り、席に座った。

参加者は各店の持ちよりから好きな団子を頼んで良いらしい。華扇は欲望に目を奪われた。

 

「本日の議題なんですが、私、鈴瑚屋は団子屋というよりもカフェに近くなりつつあります。団子を売りたいのであって、飲食コーナーはおまけなんですけど」

鈴瑚はオオスの振る舞いに動揺せず、当初の予定である自分の相談を述べた。

鈴瑚は華扇をカフェというより食う為に来ている客だと認識していた。

 

「……ええっ、違うの!?」

清蘭は、鈴瑚が最初からそういうコンセプトで経営しているのかと思い込んでいた。

 

鈴瑚としては客がその場で食べる需要を見込んで店を立てた。

その時、オオスが来たら見えにくい個室なら喜んでくれそうと思い部屋数を増やしていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

実はオオスも清蘭と同じ思い込みをしていた。

鈴瑚は当初の予定よりも規模を大きくし、個室まで作って店員として人里の若い女性まで雇っていた。

オオスはこの店ならば頼めるのではと判断し、鈴瑚へ相談していた。

 

オオスは旧態依然の幻想郷でも目に余る家庭内暴力を見て対処していた。

流石にオオス個人では対応しきれない部分でもあった。

オオスは、鈴瑚に夫から逃げて来た女性を鈴瑚屋で匿って貰っていた。

女性たちが自立して生計を立てられるようになるまでの支援の一環として、鈴瑚に協力を依頼した。

 

要は行き場のない女性を団子屋兼カフェで働かせて貰っていた。

店はオオスも関与し、旦那の襲撃があれば正社員である玉兎が対応できた。

 

オオスがやらなくても幻想郷には昔ながらの縁切寺、現代日本で言うなら離婚時のセーフティネットはあった。

しかし、現代日本人のオオス視点では些か配慮が行き届いていなかった。

匿ってある程度世話を見るが、その後の対応が妻の実家へ丸投げされていた。

実家が同情的とは限らず世間体を気にするところもあった。

過去の寺はもっと深く介入していたのだが、今代はそうでもないらしい。

 

オオスは今代の事情を薄々察していた。理解されないのだ。

今でこそ縁切寺はオオスの活動に同調するようになっており、協力関係にある。

だが、理解されない取り組みを孤独に続けていては心が折れた。

オオスが幻想郷に来た頃の縁切寺は先代が亡くなり周囲の援助もほぼなかった。

縁切寺として最低限の取り組みで人里から反感されないように活動していた。

 

今でもなお、オオスの取り組みは旧来の価値観である人里の男衆には中々理解しにくいものがあった。

それでも人里でも目に余ると判断した事案に関しては積極的に協力してくれていた。

 

取り組みに反発する層もいたが、地道な活動で大半は理解を得られていた。

過去に縁切寺の世話になった者が声をあげたのも大きかった。

一見すれば縁切寺が本当に困窮していた時には助けず、今更協力したとも思われるかもしれない。

しかし、会社や組織が成り立たなくなるような状況を外から察するのは難しかった。

 

オオスは外の世界で活発に成りつつあったSNSで危機を拡散できるだろうと推察した。しかし、幻想郷にそのようなものはない。ひっそり潰れるのが大半だとため息をついた。

 

こういった事をするので縁切寺は勿論、本当にオオスへ感謝する層はいた。

結果、オオスを信仰する者が増えている。都合よく新しい湖にはオオスの神社まであった。

オオスはこうした社会支援は里人たる自身の義務であり責務と認識していた。

オオスの中では社会貢献と信仰が結びついておらず、未だによく理解していなかった。

 

オオス本人は紙芝居屋としているが、土地や妖怪との取引等でかなり稼いでいた。

その分を還元するのだからと自身の行動に対して利益を期待していなかった。

 

他方で、オオスは自分の価値基準が幻想郷にとって不味いかもしれないとも考えていた。

幻想郷で軽い暴力は男女問わずにいつもの挨拶でもある。何ならオオスも良くやり返す。

おおっぴらに取り締まれば反撃できない旦那側が殺される危険性もなくはなかった。

あからさまな暴力は人里でも協力してくれていたが隠れた暴力はどこまで対応できるだろうか。

 

オオスはこのような取り組みが、活動家のようで為政者目線であると自覚していた。

客観視に欠けるがやり過ぎれば幻想郷の無秩序の秩序を壊してしまう。それだけは避けたかった。

 

そんな殊勝な事を考えているオオスだが、行き過ぎた家庭内暴力をした者は磔になっていたりする。

玉兎という武力に加えてオオスの監視があるのを人里はなんだかんだ受け入れているのだから気にする方が今更だった。

自身の客観視の無さを自覚し、改善しようとする姿勢は育まれていた。

それでもオオスの現状は改善にはまだまだ遠かった。

今回でいえば、華扇が何に対して怒ったのかを腰を据えて聞く時間が足りない。このような小さな不幸も重なっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

話は団子屋の鈴瑚屋についてに戻る。

鈴瑚は自身の店がカフェや茶屋になっているのを認めた。

しかし、それでも自分の店が団子屋だという事は世間に伝えたいという話になった。

 

オオスは紙芝居屋が本業であると自認しているが、なんだか可哀そうだと思った。

確かに紙芝居屋ではあるが、副業でないかと人里の大半は思っている。何なら鈴瑚達も思っている。

 

そんなこんなで各々が案をあげていき、一番マシなのはどれかと多数決を取った。

ちなみにオオスの案はカフェ面が強化されてしまうものであり、今回は没になった。

オオスが外で考案した宇宙を体感できる真空圧コーヒー、サテライトアイスコーヒーはもはやカフェでしかない。

オオスはコーヒーに合う団子を開発してやろうと張り切っていたが迷走していた。

首絞めされて脳がバグったなどと愚痴ったオオスは華扇に叱られた。華扇は人聞きの悪いこと言わないで欲しかった。

 

オオスの案は部分的に採用になり、後に第一号として八雲紫が飲みに来た。

前々からこのコーヒーを飲みたかったらしい。まるで過去の事を話すようだとオオスは思った。

 

ちなみに採用されたのは茨木華扇の大食い大会である。華扇以外は華扇らしい案と納得した。

 

「えー……茨木華扇さんの案。団子大食い大会が可決しました。食い意地張っていますね」

オオスは茨木華扇の案を率直に評価した。

参加者全員が奇をてらっていたが、一番これが団子屋としてアピールになると賛同していた。

純粋に団子を食うのだ。誰がどう考えても団子が喉につまらないかが不安であり、対策は必須だった。

 

「ち、ちょっと!私がそんな……」

華扇は提案というかなんか、その言ってみただけなのに本当にやるとはなどと必死に取り繕っていた。

 

この店の団子が美味しいのが悪い。華扇はそう結論付けて落ち着いた。

華扇の前には空の皿と串が大量に置いてあった。

清蘭達は黙っていたがこの仙人は遠慮がない、食いすぎであると思っていた。

 

「これ華扇さんが優勝するのでは?……では、次の議題をお願いします。清蘭」

オオスは未来予知不要の未来の光景を口にし、次の議題を持ってきた清蘭へ呼びかけた。

 

「……も、もうー!!」

華扇は言い返したいが目の前の空皿の山を見て言い返せなかった。

 

華扇は大食い大会に参加しない事を決意した。

そもそも仙人だし?清く節制しなければならないのだ。

……ただ、大会で餅が大量に余って捨てなければならないならそれは仕方がないかもしれない。

 

華扇はオオスから悪い影響を受けていた。ダブスタ仙人である。

オオスは華扇への好感度的にダブスタ糞仙人と言わない。

近い未来である大会で優勝してしまい、顔を真っ赤にした華扇にはなんの慰めにもなりはしない評価である。

 

余談だが、霊夢は華扇の優勝を素直に賞賛した。霊夢も参加したが華扇には遠く及ばなかった。

華扇はその笑顔が一番ダメージを受けた。魔理沙は節制が徳とされる仙人だろお前と内心ツッコんだが言うのは控えた。

 

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