嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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死合

白玉楼の庭で二人の剣を構えた男女がいた。

一人は妖夢であり、もう一人はオオスだった。

オオスは冥界に遊びに来ていた。そして、妖夢に剣での試合を希望した。

 

「改めてこの場に感謝を。妖夢さん」

オオスは感謝の礼を妖夢にした。

自分との差を考えれば受け入れて貰えると思わなかった。

…まして自分の剣術は邪道の極みだ。

 

「お前も剣を使うのだな。だったら言葉は不要だ」

そう言う妖夢の姿は勇ましくそして美しかった。

だからこそ、オオスは自らの剣で示そうと決めていた。

どこまでも邪道であろうとも。

 

「話術も剣術なんですよ。私のね!」

そう言ってオオスは妖夢に突然斬りかかった。

柄を片手に剣を逆さに持ち下から心臓目掛けて一突きしようとした。

 

だが、

「話している間に…卑怯な!」

妖夢はそう言ってオオスの剣を払った。

妖夢のそれは余りに素早い抜刀術であった。

奇襲であり、片手持ちオオスの剣は簡単に弾かれた。

 

しかし、オオスは剣を落とさなかった。

 

「卑怯も何も殺し合うつもりでと願ったはずですよ!」

オオスは弾かれることを想定して既に構えていた。

もう片方の手に刃の部分を掴み、剣が飛んでいくのを防いだ。

 

「なっ!刃を持った!?」

妖夢はオオスが刃を持ってする剣術の正気を疑った。

そして、オオスの剣は明らかに何度も経験した剣技だと理解した。

 

オオスは一歩前に踏み出しつつ右手を剣のグリップから剣身に移して下から振り上げるように柄で『打撃』を行った。

 

「くっ!」

妖夢は辛うじて避けた。斬撃ではなく、顔面狙いの打撃だ。

食らったら即死かもしれないと妖夢は冷や汗をかいた。

 

「これのどこが剣術だ!」

妖夢は弱者であるオオスの剣に恐怖を感じた。

だが、それを恥と思い、かき消すように叫んだ。

 

「相手を殺すこと。一撃で仕留めること。それならば斬る以外でも良いと思いませんか?」

オオスは妖夢に淡々と述べた。オオスに取って剣とは手段であり、道ではない。

 

「それは邪道だ。剣は斬るために存在している。それを何だと思っている!?」

妖夢は師の教えを思い出し、自らの剣にその思いを乗せて斬りかかった。

 

だが、オオスは刃と柄の両方を持ち妖夢の剣に耐えた。

それは変則的な鍔迫り合いだった。

 

「確かにそうです。今のも妖夢さんが剣ごと斬れていれば私は即死。ですが」

妖夢の剣に耐えたオオスは苦悶の表情でありながら減らず口を叩く。

 

オオスは妖夢の剣に対して敢えて踏み出し横へと受け流した。

妖夢の力を自らの力に変える柔術だ。

そして、オオスは自分の刃を握った刃先を妖夢の心臓目掛けて刺そうとした。

 

だが、

「これも駄目か…」

オオスは妖夢が剣先を力技で回避したのを見て基礎能力の差を思い知った。

 

「これで終いか…では、終わりにするぞ!」

そう言って妖夢は体を回転させて横なぎに薙ぎ払った。

オオスの手は痺れ、足は受け流すので潰れた。

手足が使えない剣も動かせない。

 

オオスは妖夢の剣をどうあがいても避けられなかった。

美しい剣筋がオオスを襲った。

 

 

 

「はい、そこまでよ。二人ともお疲れ様でした」

幽々子が妖夢とオオスに試合終了の合図を出した。

 

「ありがとうございます。いやあ、竹刀でなきゃ死んでいましたね」

オオスはそう言って減らず口を叩くも汗は止まらず、もう動けそうになかった。

 

なお、先ほどの一連のやり取りは竹刀による試合であった。

オオスは防具をつけない、真剣にやるという条件付きで妖夢にお願いしていた。

 

「…あれは剣術ではない。…というよりも何だろう?」

妖夢は先ほどの試合を思い出して言う。

オオスと比べて妖夢には汗もほとんどなく余裕があった。

だが、顔には勝ったことへの満足感等はなく考え込んでいた。

試合は客観的に見ても異種格闘技のような内容であった。

 

弾幕ごっことも違う、剣での試合だが妖夢は自分の中で言語化できていないようだ。

 

「剣を使う。鈍らでも。何だったらその場にある棒でも何でもあり。

 私は正当な剣等学んだことがないのです。その場にあるもので生き残るための物です」

オオスは妖夢にそう正直に言った。参考になるかわからない。

寧ろ妖夢に取ってオオスのような剣の使い方は邪魔にしかならないかもしれない。

 

「…私はあれを剣術とは認めない」

妖夢の中で結論が出たようだ。

 

「そうですね。あれはただの殺しの技術。剣の道には程遠い」

オオスはそう言いつつも人を殺めたことはない。人外は別だ。

人型の何かに必死に抵抗するための生み出した我流の技術。

だからこそ、幻想郷では殺しの技術と言っても良かった。嘘ではない。

 

奇しくもそれは欧州の、銃器が発達したため廃れた剣術と似ていた。

 

「お前は何をやってきたの?お前の剣には一切の誇りがなかった」

妖夢は剣に誇りを持たない剣士等考えたことがなかったのでオオスに問いかけた。

 

「生きるため。死なないため。それだけです。

 少し思うところがあったので格上の妖夢さんに挑んでみたかったのですが…」

オオスは先日の鬼との対話。

そして、紅魔館での一件から自らを見直すために試行錯誤していた。

だから、自分の誇れない技術を妖夢と戦うことで見つめなおしたかった。

 

「私はアレを剣術とは認めない。認めはしないが…」

妖夢はオオスの目をまっすぐと見て言葉を続ける。

 

「お前はもう少し誇るべきだ。私相手に剣で挑んであそこまで食い下がったのだから」

妖夢はそう言って足早に幽々子の下へ向かっていった。

 

「…」

オオスはしばらく仰向けになって体を休めていた。

…オオスは情けないことに本気で体が動かなかった。

 

 

 

妖夢はどこかへ行き幽々子がオオスの顔を上からのぞき込んでいた。

 

「悩みは取れたかしら?」

幽々子はオオスに問いかける。やはり勘が鋭いとオオスは思い返した。

 

「…まだ取れないですね。せっかく心配していただいたのに申し訳ありません」

オオスは幽々子に正直に答えた。オオスは得るものはあったと思う。

だが、まだ形になっていなかった。

 

「いいのよ。妖夢も何だかんだ言って楽しそうだったわ」

幽々子はそう言ってオオスにほほ笑んだ。

 

「そうなんですか?」

オオスはそうは見えなかったので聞き返した。

妖夢の普段なら兎も角、『剣』に関してはわからない。

 

「ええ、そうよ。とっても楽しそうだったわ」

そう言う幽々子はとても微笑ましいものを見たような顔をしていた。

 

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