嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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あーもー!本当にアイツは面倒臭いわね!!

紅魔館の謁見室に来訪したオオスは微妙に疲れた顔をしたレミリアに謁見していた。

側には咲夜はいるが、パチュリーもいた。

 

パチュリーがいるのは珍しい。オオスは自身の来訪目的がわかっているからだろうと思った。

 

「こんばんは。新聞で読みましたよ。苦労していそうですね」

オオスはいつもと変わらぬように装い、レミリアに礼をした。

 

「何かしら?今忙しいのだけど。それと新聞って何かしら?」

レミリアはオオスの挨拶も早々に苛立っているようである。

無理もないとオオスは思っていた。

 

だから、ここからの話で更に機嫌を損ねられるのも覚悟の上だ。

 

「では簡潔にご説明します」

オオスはそう言うと今朝の『文々。新聞』の切り抜きを見せた。

 

「記事内容は珍品泥棒について。ですが、記事内容はいい加減な憶測で意味はありません」

オオスはそう記事内容を罵る。絵面は良いが内容は陳腐だ。

オオスは少々射命丸にクレームを入れるつもりだ。

 

文も絵面が面白いから記事にしただけだろうが、何かあったのかも知れない。

…悩みでもあるのだろうかとオオスは思った。

 

「捏造記事ね。今度来たら捕まえておきましょう」

咲夜はオオスの記事の切り抜きを見て呟いた。

それは別件で是非やって欲しいとオオスは思った。

 

オオスでは天狗である文を撒けても勝てない。だが、咲夜なら問題ない。

 

「それは是非やっていただくとして、問題はこの写真です。

 咲夜さんが魔理沙さんの八卦炉を盗む瞬間を捕らえたものです」

オオスは記事の写真を皆に見える様に見せびらかす。

 

そこには寝込みの魔理沙から八卦炉を盗んで窓から出て行こうとする咲夜の姿があった。

 

「これを見て月ロケット理論の八割出来上がったと見てやってきた次第です」

オオスは紅魔館の面々が自分達以外には喋っていない事実を述べた。

 

オオスは魔理沙の八卦炉をロケットの推進力の参考にしようとしたと推測している。

レミリア達がロケットで月へ行こうというのが確信し、念のため確認しに来たのだ。

 

「貴方がそういうのならばやはり間違っていないみたいね。レミィ。やっぱり無理だわ」

パチュリーがオオスの推測を聞いて諦めたような声でレミリアに言った。

そこにオオスが言い当てたことへの驚きの顔はなかった。レミリア達も同様だった。

 

レミリアは宴会前のオオスの想像通りに月へ行くロケットを作ろうと画策していた。

月のスパイと目される輝夜達と仲良さげなオオスは放置して自力で作成していた。

 

だが、あまりにも開発に必要な物が多く困り果てていたところにオオスが来た次第だった。

オオスが月ロケット計画を知っていて来たと言われても全く驚く余地がなかった。

 

「うー…ちょっと待ちなさい!そういうアンタは出来るんでしょうね!?」

レミリアは逆ギレをした。

というよりそれを見計らって来たオオスの意地の悪さにキレた。

 

 

「もう出来ています」

オオスは結論を言った。

 

 

「…なっ!」

レミリアは絶句した。咲夜も驚いているようだ。

流石に出来ていると返されるとは思っていなかったようだ。

 

だが、

「ああ、やっぱり元々作っていたのね」

パチュリーはオオスが話を持って来た時点で気が付いていた。

 

オオスは永遠亭の連中と異変前から接触していたようだと咲夜から聞いた時点でパチュリーは察していた。…何となく認めたくなかっただけで。

 

「…月の内部構造は元々歪です。この幻想郷からなら更に特定可能でした」

オオスは自身の科学知識や測定結果、諸々の実験を通して理論はとっくに完成していた。

 

オオスは永遠亭のことを黙らざるを得ない事情があるとはいえ申し訳なさがあった。

だから、敢えて本当のことを言いに来たのだった。

 

「月の表と裏。望遠鏡に取り付けるCCDカメラが幻想郷の技術で再現できました。

 赤外線での宇宙空間測定、更には今回の異変で太古の月を見られた。ほぼ百%可能です。」

オオスはレミリア達がわからないであろう専門用語を捲し立てる。

そこには優越感等なく、ただできるという事実だけを淡々と述べる。

 

オオスは行けると断言できた。魔法の森での実験結果でもう十分だった。

異変前でも可能だったが、今回の永夜事変によってオオスは月の都とやらに確実に行けた。

 

 

「ですので、はっきり言って私は月に行く技術も能力も持ち合わせています」

オオスは重ねて結論を言う。月には行けると。

 

「…ですが、それはレミリアさん達の考えた物とはまるで違います」

オオスはロケットで行くつもりなどない。撃ち落されたりしたら恐ろしい。

黄金の蜂蜜酒も同様だ。オオスの考える限り、撃ち落されること等ないかもしれないが。

だが、それよりももっと確実な手段が存在した。

 

オオスの手段、それは太古の魔術師エイボンが使用した魔法の応用であった。

オオスの奥の手の一つ。それは黄金の蜂蜜酒ではないものだった。

汎用性は黄金の蜂蜜酒が上だが、信頼性はこちらの方が上であるといったところか。

 

「敢えて言います。私は月に興味がありません。私を動かすのならば相応の対価を求めます」

オオスは意地の悪いことを言った。

レミリア達の目的の物は目の前にあると伝えた。

 

 

沈黙が場を支配した。

 

 

無理もないとオオスは思った。

オオスは今回、敢えて手札を晒すような愚行をしていた。

 

普段のオオスなら絶対にしないであろう行為だ。

 

だが、オオスが何かする際は相談すると約束していた。

今回の拉致は想定の範囲内だった。

オオスはそれで拉致されましたでは申し訳が立たないと改めて考えた。

例え、それが永遠亭と敵対する可能性があったという事情があっても、だ。

 

 

これはオオスなりの誠意だった。それが伝わるかはともかくとして。

 

 

沈黙を破ったのはレミリアだった。

 

「アンタ悪魔よりも悪魔ね…」

レミリアはそう顔を隠し、呟いた。

 

「でもね」

レミリアは一呼吸おいた。

 

そして、

「ここまで来て引き下がれるわけないでしょう!?」

レミリアは叫んだ。

だが、そこには先ほどまでの不機嫌さはなく晴れ晴れとした怒りであった。

 

「今回は諦めるにしても、今の方向で可能なら問題ないわね!パチェ!咲夜!」

レミリアはパチュリーと咲夜に振り向き叫んだ。

 

「ええ、可能よレミィ」

パチュリーは不敵な笑みでそれに答えた。出来ると確信できただけで今回は十分だった。

 

「お嬢様がそうおっしゃるのなら」

瀟洒なメイドはそう主に答えた。それは主に仕える従者の鑑だった。

 

「…素晴らしい!」

オオスは本心からレミリア達を讃える言葉を発した。

レミリア達の姿はこんなことで悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなるほど見事であった。

 

「それにアンタに貸し作ったらろくな事がないもの。自分達でやるわ。自分達で」

レミリアはシッシッと犬でも払いのけるような態度でオオスに出て行くように言った。

 

「…では、これにて失礼を」

オオスはそれに優雅な礼をもって応じ、退散した。

 

 

 

オオスが帰って数分後、レミリア達はまだ謁見室にいた。

 

「レミィ、流石にアレはないわ」

パチュリーはレミリアに言った。

オオスの意図は隠しているつもりなのかも知れないが見え見えだった。

 

「うー…だって、こんなに頑張っていたのにもうできているとかぬかすんだもの…」

レミリアは先ほどまでの覇気はなくパチュリーの言葉に返した。

 

だが、

「問題ありませんわ。お嬢様」

咲夜はレミリアに言い切った。

 

「それを気にするような人間ではありません。寧ろ、嬉々として揶揄ってきますよきっと」

咲夜は笑顔でレミリアにそう言った。

 

「あーもー!本当にアイツは面倒臭いわね!!」

レミリアは今後のオオスの嬉々とした行為を想像し、嘆き叫んだ。

 

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