嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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楽園

満月の夜、永遠亭の姫、輝夜により二人一組で肝試しを行うということになった。

輝夜は自分のペアがすっぽかしたと愚痴り機嫌が些か悪かったが、肝試しは予定通り行われた。

博麗霊夢と八雲紫のペアは途中、満月でハクタクと化した上白沢慧音に襲われつつも進み思わぬ存在と出くわした。

 

 

「あら、不老不死の人間の生き肝を食せば、貴方も不老不死になれるわよ」

紫が霊夢に冗談交じりに話す。

 

「人間やめるのはちょっとねぇ…」

霊夢は呆れつつ否定した。

 

「私は人間じゃないって言うのかい?」

藤原妹紅は満身創痍で霊夢に言い返した。

霊夢達と妹紅は戦闘になった。それは輝夜の差し金であった。

 

輝夜が妹紅へ刺客を送ることはこれまで多々あった。

…ここまでズタボロにされたのは初めてだが。

 

妹紅は不老不死になる蓬莱の薬を飲んだ蓬莱人であった。

 

妹紅は内心自身の千三百年の歴史を振り返り自嘲した。

人間から離れ孤独な日々、輝夜との殺し合いと数少ない理解者の慧音だけが心の拠り所だった。

それが人間を名乗ってよい者なのかと。

 

「人間…?よく分からないわね。

 まぁどうせ、今の幻想郷は人間なのか違うのか判らないような連中ばかりよ」

霊夢は妹紅の内心は知らないが人間と妖怪の区別のつかないような奴らを知っていた。

 

「…人里にも胡散臭いのが善良なる普通の里人とか言っているしね」

霊夢は自分を小馬鹿にする芸やら何やらしてくる馬鹿を思い出した。

 

「よく考えたら今更だわ。不老不死とか言われても大したもんじゃないわね」

霊夢はアレに比べたらマシと判断した。妹紅は人間である。

 

 

そして、

「その通りです!流石霊夢さん!わかっていらっしゃる!」

空気をぶち壊す形で霊夢が言う噂の男、オオスは現れた。

両手を大きく開き霊夢に向かって叫ぶ。感動した!!と言わんばかりの様子である。

 

 

「うわ、噂をしたら出たわ。前言撤回、やっぱりアンタ妖怪の類ね。退治しなきゃ」

霊夢はそうオオスに向かって戦闘の構えを取った。

 

「酷い!妹紅さんが可哀想だと思わないんですかその言い方!!」

オオスはそう言って妹紅を庇うような姿勢を見せた。

 

「私じゃなくてお前だろう!いきなり出てきて相変わらずだな!?」

妹紅は明らかにオオスを狙っている霊夢を見て思わず叫んだ。

 

「どうでも良いわ。もう纏めて退治してくれるわ!」

霊夢がヤケクソで叫んだ。

 

 

だが、

「…」

紫はオオスが現れた時から沈黙していた。

 

「紫?」

霊夢は紫の様子がおかしいことに気が付き一旦手を止めた。

 

「やはり来たわね。外でも中でも『人』の味方ということかしら?」

紫はオオスへ真剣な表情で問いかけた。

 

「…ああ、なるほど。浄瑠璃の鏡でしたか。思ったよりも早かったですね」

オオスは紫の表情で察した。過去を見られる浄瑠璃の鏡。閻魔大王の持ち物だ。

死神経由で閻魔と繋がっていたと思っていたが早かった。

 

「昨日はやり過ぎました。ですが、アレは想定外の事故と思って頂ければ」

オオスは先ほどとは打って変わって真摯に首を垂れた。

 

「知っていますわ。見ましたもの。…発言には気をつけてね。いや、本当に」

紫のシリアスは続かなかった。

 

まさかオオスが文屋に文句を言うためだけにあそこまでやるとは思わなかった。

そして、あの鴉天狗は今度焼くと紫は誓った。

 

「一体何故あんな風になったのか…」

オオスもシリアスが続かなかった。本当にどうしてああなったのかわからない。

ただ文屋に文句を言いたかっただけなのに。

 

「…どうしましょう。教えるのはちょっと恥ずかしいのだけど」

紫はオオスに教えたくなかった。教えたら教えたで鴉天狗が調子に乗る。

やはりあの烏は焼こう。紫は心に刻んだ。

 

 

「急に空気の緩急変えないでよ!訳がわからなくなるじゃない!?」

霊夢は混乱していた。もう訳が分からない。

オオスの隣の妹紅も話の展開についていけずにただただ呆然としていた。

 

「では、改めて宣言します」

オオスは空気を変えて宣言する。

元々、オオスはこの場にいる三人に用があって輝夜に断りを入れて抜け出して来ていた。

 

「私は私です。私の結論です。最早悩むことなどない。今宵はそれをお伝えに参りました」

オオスはそう言って紫と霊夢に首を垂れた。

その姿は真摯であり、誇りを感じられる所作だった。

 

「このような無粋な真似ではない形でまたお会いできれば幸いです」

そう言ってオオスは風となって消え、妹紅と共に消え失せた。

 

 

 

オオスと妹紅が消え失せた後、霊夢と紫だけになった。

 

「…いよいよ萃香の真似までできるようになったわね。絶対人間でないわアイツ」

霊夢はオオスの明らかな人外の術の行使に呆れて言う。

オオスが元々人間ではなかったのならば、人里の外で見かけたらしばくべきかと考えていた。

 

だが、

「霊夢。一つだけ教えておいてあげるわ」

紫はその霊夢の様子を見て、敢えて一つだけ教えてあげることにした。

 

「彼は人間よ」

紫は満月を見上げ、自身が見た彼の『神話』に思いを馳せた。

 

 

 

一方その頃、人里の慧音の家前にオオスと妹紅は風から人へと変わり、着陸した。

 

「慧音!大丈夫か!?」

妹紅は慧音がやられたと人里へ向かう途中でオオスに聞かされた。

慌てて慧音の家に駆け込んだ。

 

「ああ。…妹紅の方が大丈夫か?肝試しとか言ってそちらへ向かったが」

慧音は寧ろ妹紅の方が大丈夫か尋ねた。

 

「何だかよくわからない。お前は輝夜側だと思っていたが」

妹紅は自身へ治癒の術をかけたオオスの方を見て言った。

 

「オオス!何をしたんだ!」

慧音はオオスの姿を見つけて思わず叫んだ。

妹紅に何をしたのかと暗に言う。

 

「いや、慧音。一応?助けてもらった形になったんだ」

妹紅はオオスと共に風となったかと思うと人里まで送られていた。

取り敢えず助けられたのは間違いない。妹紅はそう思った。

 

「満月で感情の起伏が激しい。…だから、本来関わらないかと思っていた」

オオスは慧音の様子を見て言った。

オオスの、本来の予定では妹紅と慧音の問題に嘴を挟むのならばもう少し先にするつもりだった。

 

その間に解決していれば妹紅に初対面時に言ったように慧音を揶揄う材料としただけだ。

それが一番であった。

 

「オオス?」

慧音はオオスが何を言いたいのかわからず名を呼んだ。

 

「妹紅さん。私も不老不死とかこの楽園ではどうでも良いことだと思いますよ。

 …貴方は人なんですから」

オオスは不老不死程度で悩む妹紅へ一言言いたかった。

 

しかし、奇しくもオオスが言いたいことは霊夢が言ってしまった。

なのでオオスの出番は余計だったと自嘲していた。

 

あの巫女は素でオオスの計画を上回る。羨ましい限りだ。

 

「ようやく言えました。…今日は遅いのでまた後日」

オオスはそう言うと礼をして風となって消えた。

オオスが初めて妹紅の存在を知った時から言いたいことが言えた。もう十分だった。

 

 

「…また消えたか」

妹紅はオオスが消えたのを見て呟いた。

 

「妹紅、オオスと知り合いだったのか?」

慧音は事態が掴めずに妹紅に尋ねた。

 

「アイツ慧音に言ってなかったのか」

妹紅はその慧音の言葉を聞いて、オオスが自身へ初対面時についた嘘を悟った。

 

「…ああ、そうか最初からこうするために」

妹紅はオオスが自身の悩みを見抜いていたと察した。思わず手で顔を覆った。

 

オオスは部外者が口出ししたくないから慧音を介して無理やり口実を作ったのだと理解した。

 

「妹紅?」

慧音は妹紅の様子を見て戸惑いを見せていた。

 

「嘘が上手すぎるぞ」

妹紅はオオスの初対面時の独り言を思い出した。

 

『取繕って後悔するよりも強引にでも行動しようと決めていたのです』

一年も前から妹紅という異物を仲間に入れる為に画策していた嘘つきを思い出した。

 

「慧音も気をつけろ。アイツは嘘つきだ…悪い奴ではないが」

妹紅は手を顔から離して慧音に忠告した。

 

「そうか、ここは楽園だったわけか」

妹紅は心から安堵して呟いた。

 

ようやく生きることができそうだと妹紅は思った。

 

 

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