慧音に無礼を謝罪し、紙芝居をしていた空き地にある丸太に腰掛けて甘味を食べながらオオスは慧音と話始めた。
割とどうでも良い話をして10分程経ってからオオスは本題を切り出した。
「この二週間の紙芝居では敢えて外国人の格言を入れたお話を何度かしました」
オオスは今回のカーネギーの他にも様々な外国人の格言や聖書等から引用してお話を作っていた。
「そうだな。私がここに来たのはそれも大きいかもしれない」
慧音はオオスの知識に違和感を覚えていた。気になって来たというのもある。
「更に言えば、子どもを通して寺子屋にいるあなたに私を知っていただけるかと思いまして。…まぁ半分くらい趣味でやっていましたが」
そう言ってオオスは先ほどの発言に補足を入れる。
「趣味なんだな」「趣味なんです」
どうでも良いことで二人は笑みを浮かべた。
そこから話題が寺子屋で子ども達が授業中頻繁に寝るだの、私の授業より紙芝居のが良いのか等恨み節やら愚痴やらを慧音が溢し始めたところでオオスは本題に再度戻した。
「実は確認したいことが2点だけありまして、一つはもう既にお気づきであろう私含めた外来人について」
オオスは、第三者から見てもそれはもう割と強引に話を戻した。
面倒臭いなこの人とか思っているかもしれないが、それは表には出さないようにした。
「それは言わなくても十分わかっているんじゃないか?」
慧音はあからさまに話を逸らされたことに不満気なようだ。
実際、オオスと話していたがその辺を理解していないとは思えない口ぶりであった。
「独学の危険性は外で嫌という程学んだのです。
それに…信用できる教師が先生しかいらっしゃらなかったので」
オオスは本心からそう述べる。本人的には一切他意はない。
「もう一つの方なのですが…これは本当に上白沢先生にしか頼れそうになくて」
もうあなたしか頼れないのですと言わんばかりの表情で慧音の目を見て言うオオス。
何故か慧音が目を逸らしたが、オオスは話を続ける。
「博麗神社の巫女では恐らく知らない。背後にいる“保護者の方”は聞いても言わないだろうし、興味がない可能性が高い」
「幻想郷の歴史を知りかつ確実に人の味方であるあなたにしか聞けないことなのです。
それは…」
それはオオスにとっては文字通り致命的なことであった。そして外の世界にとってもだった。
「予想していましたが、やはりそうですか。
外来人とは基本的に妖怪の食物ないし、アレな存在、と」
まず、慧音から外来人についての解答を貰い、外来人って碌でもないなとオオスは思ったようだ。
「…もう一つの方はすまんがわからない。
少なくともそんなことを気にした人間はこれまではいなかった。
まぁ、いたとしても危険なここよりも外への帰還を優先していたのだろう」
人よりは長く生きる慧音だが、オオスの疑問は盲点であった。
そしてオオスが何故そのような”些事””を気にするのかもわからなかった。
「いや、ありがとうございます。やはり、話を聞けて良かった」
オオスは自分の中で答えが出たようだ。
慧音にはそれがどのような内容なのかはわからないが。
「これからどうするつもりなんだ?…外に帰るのか?」
慧音は目の前の男が明らかに外に帰りたがっているとこれまでの会話の中でわかってしまった。
慧音は何となく残念そうだった。
「…悩みますが、答えが出ない以上は何が起こるかわかりません。
余生をここで過ごそうかと思います。これからはあんまり目立たないようにして」
オオスは本当に悩んだ末というような顔で答えていた。
だが、
「無理だと思うぞ」
慧音が話の腰を折って否定する。
「えっ」
オオスは慧音の即答に困惑したようだ。
「教師として言わせてもらうが…」
慧音はオオスに呆れたような、出来の悪い生徒を諭すような口調で言う。
「お前は良くも悪くも客観視が欠けている」
話は終わり辺りが本格的に暗くなり始めた。
オオスも慧音もそろそろ帰ろうということになった。
「本はありがたく貰っていく。また何かあったら私に相談に来ると良い」
そう言って慧音は丸太から腰を上げた。
「ああ、それと」
背を向けて歩いたと思ったら慧音が突然振り返ってオオスを見る。
「私のことは慧音で良い。団子ご馳走さま」
そう言って今度こそ慧音は足早に去って行った。
慧音を見送るオオスであったが、ふと些事を思い出した。
「鈴奈庵で時間があれば手伝うと本居さんに言わされたな。
…まぁ、そんなに混まないだろう。問題ないな」
オオスは客観視が欠けていた。