オオスが地霊殿のさとりや勇儀に挨拶して季節外れの花々を見に地上に出た前後。
霊夢はオオスを犯人と断定し、偶々側を通った妖怪、妖精含めて退治しつつオオスを探していた。
だが、オオスは未だに見つからない。
…霊夢はここに来て共犯者の存在を思いついた。
何故今まで思いつかなかったのかと、第二の犯人候補の下へ来ていた。
妖怪の山とは反対方面の奥地にある南向き傾斜のすり鉢状の草原。
そこに太陽の畑と呼ばれる場所がある。
夏になると一面に向日葵が咲き誇るが、今は春であるのに向日葵が咲き誇っていた。
ここで向日葵が咲いている時、大体あの妖怪がいることを霊夢は知っていた。
夏の間には、太陽の畑に住んでいることで有名な妖怪。風見幽香は花を操る能力を持つ。
だが、その愛らしい能力とは裏腹に純粋な妖力と身体能力の高さを持つ大妖怪であった。
癖のある緑の髪に、真紅の瞳。白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着用し、その上から同じくチェック柄のベストを羽織っている。
いつも日傘をさしており、それは紫外線を大幅にカットし、雨や弾幕も防げる幻想郷で唯一枯れない花であった。
…ちなみに花を愛でることと虐めが趣味である。風見幽香は生粋のサディストであった。
「今回の異変はもう犯人が分かっているのよ。…あんたも協力者なんじゃないでしょうね?」
霊夢は幽香に異変の共犯者かと尋ねつつ、襲い掛かっていた。
霊夢は陰陽玉まで持ち出していた。
霊夢は幽香へ会話も早々に弾幕を打ち出す。だが、幽香の傘で一蹴された。
戦いつつも、オオスと幽香が仮に共犯だと非常に面倒になると霊夢は冷静に考えていた。
幽香の純粋な強さとオオスの小細工の組み合わせは厄介過ぎた。
オオスは霊夢のゴリ押しで簡単に潰せるが、時間を与えれば何仕出かすかわからない。
そして、幽香は普通に強いので退治は困難を極めた。
霊夢はレミリアからオオスの愚痴を散々聞かされていた。
レミリアは吸血鬼の癖にオオスから逃げ出してくるのだ。
…吸血鬼すら恐れるオオスの嫌がらせとそのしつこさ。
狂気の妹フランドールすらオオスから逃げる選択肢を取ることがあるという話だ。
…オオスは嫌がらせに関してはどんな存在よりも上かもしれない。
オオスに本領を発揮させる時間を与えると霊夢ですら退治は困難を極めるだろう。
さらに、人里や博麗神社を春にしたオオスと花を操る妖怪の風見幽香。…似ている力を使えていた。
もし、オオスと幽香が組んでこの異変を起こしているのならばほぼ無敵に等しい。
霊夢は季節外れの花々が咲き乱れるという脅威を感じない異変ながら今までで一番厄介な可能性を想像していた。
…それが有り得るかどうかは別として。霊夢に勘が別だと囁くがそれは無視した。
霊夢は引くつもりはない。二人纏めて退治してくれると決意した。
…霊夢は激怒していた。収まる気配がない。
「そういうと思った」
幽香は霊夢が自分をこの花咲き乱れる異変の犯人、もしくは関係者だと決めつけると思っていた。
正直、来るのが遅いくらいである。幽香は呆れながらも霊夢の相手をしていた。
霊夢を適当にいなしつつ、どうしたものか考えていた。
幽香からすれば、今の霊夢では適当に考えごとをしながらでも余裕で相手ができる。
…霊夢には珍しく迷いが見られるのだ。異変解決モードの霊夢は容赦がない。
今も問答無用で襲い掛かって来る等容赦がない。
しかし、迷いを持つ霊夢は幽香にとってはつまらない。
このつまらなさは、幽香並みの力を持つ者にしかわからないだろう。
…幽香を見ていない者を虐めても面白くない。
「霊夢の言う犯人は知らないけど。…でも、霊夢の勘はそうは答えていない」
幽香は敢えて教えてあげることにした。
霊夢が自身の勘を無視している迷いを指摘した。
だが、霊夢が自分以外に犯人とする人物に幽香は心当たりがなかった。
幽香はオオスが人里をいきなり春にしたことを知らない。
幽香は稀に人里へ行く。
しかし、誰もが恐れる大妖怪である風見幽香に話しかける者はいない。
人里で屈指の変わり者の紙芝居屋は別であった。
あの人間、オオスは幽香を全く恐れていない。
寺子屋通いの花屋の娘とは違い、オオスは幽香のことを認識した上で恐れていない。
本来であれば幽香はオオスに対しては虐めでもして恐怖を植え付ける。
だが、幽香も何故か親近感を抱く極めて珍しい人間だった。
オオスも虐めが大好きなのかもしれないと幽香は思っている。
…幽香は虐めが趣味であった。幽香と共通の趣味で盛り上がれる存在は先ずいない。
人里で二人が会話していると人気が一瞬で消えるのは幽香に取ってもオオスに取っても些事である。
同じく人里で起こった事件は幽香にとっては些事であり、興味を湧く物でもない。
オオスの起こした事件等知らないのも当然と言えた。
人里について知っている妖怪も幽香には基本的に近寄らない。…怖い上に強いから。
話を戻すが、幽香は霊夢の勘が働かないのは当然のことだと思った。
今回の異変は妖怪が起こした物でも、誰かが目的があって起こした物でもないと幽香は知っている。
長生きの妖怪も花に関連した些細な出来事であるため覚えていないかもしれない。
詳細を覚えているのは幽香くらいだろう。
…最も、幽香もオオスから60周年目のあの季節と話を振られて思い出したが。
オオスは人間なのか少々怪しいと幽香は思っている。幽香はそれを指摘はしないが。
「…」
霊夢は幽香の言う通りなので黙ってしまった。
霊夢は気が付けば攻撃の手を辞めていた。
だが、今回に限って霊夢は自身の勘を信じられなかった。
…今回はあからさまな犯人がいた。
自分を弄んでいたであろう憎たらしい男、オオスを思い出す。
わざわざ博麗神社まで訪ねてきて神事をしろと発破をかけにきたのか霊夢は思った。
…その時の自分の感情を思い出すと更に憎たらしい。
霊夢は思わず追い返したが正解であった。犯人はアイツである。間違いない。
「あら?いつもの当てずっぽうの巫女の勘も鈍ったのかしら?」
幽香は霊夢の頑な様子に呆れた。
自分の勘を信じない霊夢等幽香にとって只の巫女である。
幽香は霊夢の醜態に思わずため息が出てしまう。
「…じゃあ、一体どうなっているのよ」
霊夢は率直に幽香に尋ねてきた。
やはり、霊夢らしくないと幽香は思った。
感情を表すにしてももう少し素っ気ないタイプだったはずだが。
「外の世界の人間の数だって限界があるの。後は自然と元通りになる」
幽香は婉曲に霊夢に教えることにした。…自分が直接教えるのは何か違うと思ったから。
「何で外の世界と関係するのかしら」
霊夢は幽香の言葉に脈絡がなく、イラついていた。
「ともかく、あんたの言う事なんて信用できない。
今回、証拠はそろっているのよ。邪魔だけはしないでよね」
霊夢はそう言って埒が明かない幽香から離れることにした。
幽香が犯人でないなら霊夢は用がなかった。
「…無縁塚の彼岸花は凄かったわよ」
幽香はそう霊夢へ呟いた。
…答えを知っている者へ丸投げすることにした。
無縁塚は自殺の宝庫、今この時に自殺者が増えると死神は困るだろう。
誰かが無縁塚にいれば自分の仕事を一時中断するくらいには善良な死神だった。
「花見じゃないんだから!塚なんて行かないわよ」
霊夢は幽香に吐き捨てて去って行った。
だが、無縁塚という場所は霊夢の中で印象に残った。
…霊夢の勘が囁き始めた。