嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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死は須らく等しい

霊夢は風見幽香の言っていた無縁塚が気になり、訪れていた。

そして、無縁塚に来て漸く気が付いた。

 

「…花に惑わされてたけど、よく見たら幽霊だらけじゃないの!!」

霊夢は無縁塚に咲く彼岸花に霊が取り憑いていることに気が付いた。

 

思い返してみれば花と同じく霊の気配がやたら多かった気がする。

 

春雪異変で冥界の行き来によって幻想郷には元々幽霊が増えていた。

…霊夢は花に気を取られ過ぎていたと思った。

 

だが、

「そもそもあの男が紛らわしいことするから…」

霊夢はオオスへ八つ当たりの言葉を吐いた。

 

…最初の、オオスが犯人ではないという自分の勘が正しかった。

だが、オオスは日頃の行いと状況証拠が多過ぎたせいだと霊夢は断言できた。

 

霊夢はどこに感情の行き場をぶつければ良いのかと口に出していた。

 

「何ブツブツ言っているのかわからないが、死に急ぐ人間に警告だ。

 三途の渡し賃は法外だ。お前さんの神社の賽銭ごときでは渡れない」

誰かが自殺の名所である無縁塚に来た霊夢に警告を発した。

 

「渡らないわよ!…ってあんた誰よ」

霊夢は失礼なことを抜かす誰かを睨みつけた。

 

「あたいは三途の川の一級案内人、小野塚小町。

 生きた人間は滅多に渡らせないが…渡し賃さえ払えば連れていっても良い」

小野塚小町は霊夢に飄々とした姿勢を崩さずに名乗りを上げた。

 

「もしかして…あんたが霊達を彼岸に渡していない?

 あんたがサボっているから、幻想郷は花と幽霊だらけなの?」

霊夢はそうだとすれば、容赦しないと思った。

 

そして、

「…よく見ると彼岸花も咲いているな。それにあの紫の桜も」

小町は霊夢から目を逸らして呟いた。

 

霊夢がよく見ると小町の顔には汗が垂れていた。

魔理沙が何かやらかした顔にそっくりだった。

…異変の答えがそこにいた。

 

「アンタのせいか!!」

霊夢は激怒した。目の前の死神のせいで散々変な感情に振り回されたのだ。…容赦しない。

 

「ま、待っとくれ!今回が異常なんだって!前に怒られたから真面目にやってたんだから!!」

小町は霊夢に言い訳をするが、霊夢の耳には届かなかった。

 

 

 

数分後、小町は霊夢にズタボロにされていた。普段の霊夢ならここまでしない。

霊夢のいつも以上のキレっぷりと、霊夢の異様な怖さに小町がビビりまくった結果だった。

 

「ふー…ふー…」

霊夢は取り敢えず落ち着いた。異変の原因に感情をぶつけたからである。

 

「あ、あたいを倒したところで、こんな大量の幽霊、仕事の許容量がオーバーしてるわ!」

小町は漸く落ち着いた霊夢に向かって叫んだ。

 

…小町は自分の服が破れたが、死神の労災でおりるだろうか心配だった。

 

「…あんたじゃ、話にならないようね。あんたのボスを呼んで頂戴!」

霊夢はそんな小町の様子を見て、小町の上を呼び出した。

 

「そんなこと言わないでおくれよぅ。また怒られちゃう…」

小町は今日仕事が遅れに遅れていた。

花の妖怪が悪戯半分で小町を呼び出し、小町をボコボコにして行った後に霊夢が来た。

実に間が悪い。小町は思った。

 

ただでさえ、いつも怒られているのに今回小町は更に発破をかけられていた。

最悪、死神の仕事をクビになりかねない。

例の神様のせいだった。…というのは小町の言い分である。

 

実際は、いつもサボっていた小町にちょうど良い口実であったために利用されただけだ。

 

しかし、

「小町が何時まで経っても霊を運んでこないから様子を見に来れば…またサボっていたのね」

小町のボスが呆れたような口調で現れた。

 

 

空高くから見下ろすその姿は、裁きを下す上位者のようであると霊夢は思った。

 

 

小町のボスは激怒した。あれだけ脅してもこれとは。

小町のサボり癖も大概にしろと言外に表していた。

 

小町のボスの容姿は、緑色で右側が長めのアシメショートという特徴的な髪形であり、瞳は緑色だ。

…目が大きめなせいか若干童顔のように見えるが背丈は高めである。

袖なしの紺色の上着に白いワイシャツや黒い膝丈までのフレアスカート。

閻魔大王の冠と黒いローファー靴に赤と白のリボンをあしらった服装をしている。

靴下は白の短めのソックスを履いていた。

 

「し、四季様!」

小町は思わず自らのボス、閻魔大王の四季映姫・ヤマザナドゥに縋るような目で叫んでいた。

 

だが、

「アンタがこの死神のボスよね。この花の異常はあんたらがやったのかしら?」

霊夢は小町を無視して四季に問いかけた。

 

「この花、いや霊達は、自分たちが死んだことに気が付いていない。

 というよりも自分の死を気が付きたくない。そういう霊は不安定だから体を持ちたがる」

四季も小町を無視して霊夢に返答する。

 

小町は完全に蚊帳の外である。小町は体育座りに顔を埋めていじけた。

…四季はその小町の様子を見ていじけている暇があれば仕事をしろと思った。

 

だが、四季は霊夢への問に答えることを優先した。

…彼もそう望むだろう。まだ知らない内に片づけるのが最善であると四季は判断した。

 

「行き場を失った霊は花を拠り所にする。

 今の幽霊は外の人々。死を予期することができなかった無念の霊達」

四季は花に取り憑く霊が外の世界からやって来たと説明した。

 

「もしかして、この花全てが……外の人間の霊って事?」

霊夢は幽香の言葉を思い出す。

 

『外の世界の人間の数だって限界があるの。後は自然と元通りになる』

霊夢は幽香の言葉は遠回し過ぎると思った。

…これではわかるものもわからない。

 

「花は性格、つまり魂の質を表す植物だから霊と相性が良いの。

 …花は霊にとっての着物と例えた人間もいたわね。

 向日葵には明るい人間の霊が宿り、彼岸花には孤独な霊が宿る」

四季は花と霊との関係を霊夢に説明する。

 

「そう…わかったわ」

霊夢は完全に得心がいった。つまりこの異変は人間の管轄ではない。

 

「あんたらに何とかして貰わないと困るわ。私じゃどうにもならない」

霊夢は改めて四季になんとかしろと迫った。

 

「…貴方はそんなに困らないでしょう?」

四季は霊夢を見つめて言った。その目は霊夢だけを見つめていた。

 

…霊夢は誰かを思い出した。だが、霊夢は誰なのかわからなかった。

霊夢は似たような気配を誰かから感じた気がした。

 

「花にいる霊達も生きているつもりでいられる…放っておいても良いんじゃないかしら」

四季は霊夢に吐き捨てた。

 

「…そういう問題じゃないのよ!このままだと私がサボっている様に見られるんだから!」

霊夢は激怒した。

 

…折角、博麗神社に参拝客が出始めて来た矢先にこんなことになったのだ。

そんな言い分が霊夢に認められるかと思った。

 

「…貴方は大した理由もなく大勢の妖怪を退治してきた。妖怪では無い者も退治した事も少なくない」

四季は霊夢の罪状を読み上げる。

 

「さらに巫女なのに神と交流をしない。それを正そうとした相手には恩を仇で返そうとした」

四季は淡々と霊夢に巫女としての仕事を今まで放棄していたのを非難した。

 

「そう、貴方は少し業が深すぎる」

四季は霊夢だけを見つめていた。その目は閻魔大王としての責務があった。

 

「…」

霊夢は四季の言いたいことは大体認めた。

 

「このままでは、貴方は死んでも地獄にすら行けない」

四季は霊夢の問には答えを返さずこのままだと行く末の罪を示した。

 

「…地獄に行けなければあの世に行くまでよ」

霊夢は四季の言葉を軽口で返した。

 

「閻魔の裁きはそんなにやさしいものではないわ。決定を覆すことは不可能よ」

四季は霊夢の軽口を否定する。

 

閻魔の裁きから逃れられる者はほとんどいない。

生きとし生ける者全て、死は須らく等しいのが本来あるべき姿である。

 

「失礼ね!妖怪退治は仕事だし、仕方が無いじゃない!」

霊夢は自らの職務を語る。

 

「人の秘密を暴くのも、紛争を起こすのも、犠牲を伴う決断を下すのも。

 …それが仕事の人もいる。仕事だからというものは罪の免罪符には決してならない。

 だからこそ、罪を少しでも減らすために常日頃から善行を積む必要がある」

四季は霊夢に反省するよう促した。

 

霊夢は四季のその発言にだけ強い違和感を覚えた。

霊夢に対して言っているようで言っていないような気がした。…霊夢の勘でしかないが。

 

「貴方を倒して、この花達を戻してから考えるわ」

霊夢は取り敢えず異変を解決しようといつものように仕事をすることにした。

 

「…紫の桜は、罪深い人間の霊が宿る花。

 貴方はその紫の桜が降りしきる下で、断罪するがいい!」

四季は霊夢に答えるように断罪を宣言する。

 

そして、弾幕ごっこが始まった。

 

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