オオスは薄荷を摘み、ついでにその辺に生えていた接骨木の葉を摘んできた。
薄荷はハッカ飴や芳香水等に、接骨木は挫傷薬や風邪薬の材料とするつもりである。
案内してくれた雛への礼として飴や香水を作り、後日会った際に渡すつもりだ。
妖怪の山は自然豊かであり、オオスが欲しい薬草の類が沢山あった。
山を妖怪が占拠していなければ善良なる一般里人のオオスとしても有難いのだが。
多少の怪我や病気は自分の魔法薬等で治せる。
しかし、人里において魔の類はあまり良いものではない。
人里へ怪我の類にはオオス以外にもわかりやすい薬草の類の方が喜ばれる。
…パウトのようなオオス特製の薬は全力で拒否されるのだ。
人里で魔法の類は基本的に良く思われていないからだとオオスは思っている。
実際は、オオス特製の魔法薬はほぼ全て毒にしか見えないので拒絶しているだけである。
多少の怪我ならばオオスは無償で治してくれるので里人達は有難いと思っている。
…有難いからと言って受け入れられない物はあると里人は心の中で常に叫んでいる。
オオスの行為はありがたいのだが、加減を知らないというのが人里の総評である。
なお、魔法嫌いの筆頭は大手古道具屋の霧雨商店店主、霧雨魔理沙の父である。
オオスも普通の骨董の類は霧雨商店で購入するが、魔法具の類は本当にない。
だが、オオスと霧雨魔理沙の父は左程険悪な関係ではない。寧ろ、良好なくらいである。
以前、オオスの目の前で店員が割ってしまった骨董品があった。
オオスは気にせずそれを買い取った。
そして、蒔絵直しという技法で骨董品の割れを直して絵画風に仕上げた。
以降、オオスは骨董の知識と技能を買われて霧雨商店から修復の依頼を引き受けている。
そのため、オオスは霧雨魔理沙の父とも懇意にしている。
普通にオオスは骨董の価値がわかるので意外と話が合うのだ。
その際に魔法の話等、オオスは当然しない。
オオスは他人の嫌がることは基本的にしないのだ。嘘ではない。
…やるとしたらやる必要があるとオオスが思っている時だけである。
その基準がオオスしかわからないため、人里の一部でオオスは恐れられている。
オオスは骨董品を観賞用としてだけでなく、封印の素材として便利だから買っている。
人の心を惹きつける名品の類は魂を封じるのにうってつけなのだ。
オオスは怨霊の類が地底から漏れ出た時に備えて幾つか観賞用兼封印用に購入している。
霊夢を信用しないわけではないが、オオスは念には念を入れているだけである。
ちなみに魔法具を購入するなら香霖堂等があるが、あの店主は売る気が無い。…本当にない。
店主の森近霖之助は使い方がわからない道具を集めて売っている。
森近霖之助は名前と用途がわかる能力を持っているようである。だが、使い方はわからない。
…霖之助は使い方がわかると非売品にするのだ。水煙草等がその筆頭である。
オオスは香霖堂で大量の置物と化したコンピュータを購入している客である。
オオス以外にコンピュータを買う者はいない。
数少ない人里にいる外来人も買わない。古い上に壊れているし、電力がないからだ。
技能があれば修復できるし、電力も妖怪と取引すれば良いのにとオオスは常に思っている。
外来人は本当に外で何を学んでいたのだろうかとオオスは教育について偶に考えている。
オオスがいずれフランドールや妖夢の教育に関わる際には注意したいところだ。
常在戦場の心得である。オオスの基本方針だ。心にゆとりを持つオオスなりのゆとり教育だ。
当然、オオスはコンピュータについてニコイチ等で修復している。
故にオオス家ではコンピュータが使用可能であった。
何ならオオスはやらないがコンピュータゲームまであった。
そして、電力はオオス家の地下には『ボロナスの炉』を元に作成した核融合の電力がある。
正直、無駄に電力があり過ぎる。オオスは使い道を模索している。
なお、霖之助はオオスに対し、コンピュータの使い方を説明しろと良く言ってくる。
ならば、オオスの欲する物を売れというと霖之助は黙る。
売る売らないの問答の末、自分で調べるから良いと霖之助は意固地になる。
そして、オオスが次に香霖堂へ訪れるとまた同じような会話になる。
霊夢や魔理沙等も香霖堂へ来ているようなのだが、オオスと鉢合わせたことはない。
霊夢は香霖堂に茶碗まで置いているようである。ただ飯食わせろと言わんばかりに。
霧之助が霊夢はツケばっかりすると愚痴っていた。金すら持って来ないという。
やはり、神に仕える巫女というのは碌な者ではない。オオスは改めて確信した。
オオスが人里に戻る頃には日が暮れていた。紅魔館への土産は明日以降になるだろう。
血の池地獄から取ってきたお土産をレミリアは喜んでくれるだろうか。
オオスとしても血の池地獄がどういう原理なのか気になっている。
人里から離れたところでオオスが見て来た地獄を再現できないだろうか。
そんな些細なことを考えていたら、オオスの下へ慧音が駆け寄って来た。
「無事だったか!?」
慧音はオオスを見てそう言った。随分慌てているようである。
「ああ、何か霊夢さんが暴れていたとか」
オオスは今更ながら博麗神社へ行くことを忘れていた。
神と会ったのは霊夢との関係を多少改善できないかと期待したところがあったのだが。
「何か問答無用で退治してやると言わんばかりだったぞ」
慧音が物騒なことを言ってきた。
「…危ない。凄い危ない」
オオスは思わず呟いた。…そこまで酷い扱いだとは思わなかった。
「まあ、大丈夫だ。何か異変じゃないと説明したから安心しろと閻魔様が言っていた」
オオスは四季と霊夢の弾幕ごっこを思い出して言った。
早急に霊夢と話合わなければ。誰かに仲介を依頼できないものか。
オオスはそう考えていた。落ち込んでいる場合ではない。即退治とは恐ろしい。
「閻魔様って…そういえばどこに行っていたんだ?」
慧音がオオスにどこに行っていたのか尋ねて来た。
「地獄に行っていた」
オオスは旧地獄だが、地獄なのは間違いないと思い言った。
「地獄ってお前…」
慧音は何故か呆れたようだ。信じていないらしい。
「血の池地獄やら灼熱地獄等見て来た。
その証拠は例えばこの衆合地獄の針山だ。血針草という血を吸い上げる多年草」
オオスは慧音に嘘を言っていないことを示そうとした。
懐から地獄にしか生えていない針状の草を取り出す。
多くの血を吸った針はそのままでもマジックアイテムになるものだ。
魔理沙を始めとした魔法使いなら垂涎の品である。何せ、地獄の針山である。
簡単なお土産としてオオスは持って帰って来ていた。
だが、
「この…馬鹿者が!」
慧音はオオスに頭突きをかましてきた。
嘘ついていないのに一体何故だ。オオスは心から思った。