嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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紙芝居とは万人に与えられた権利であり義務

オオスは紙芝居とは万人に与えられた権利であり義務とほざいた。

だが、阿求も厄神様に近づいて不幸になりたくないとのことだった。

 

オオスは仕方がなく、この紙芝居の安全性を阿求に説いた。

 

オオスはこういう説得方法は嫌なのだが、雛に何度も会話して不幸になっていない自分という実例を示した。

いざとなったら霊夢等を呼びお祓いして貰えば良いとまずは阿求を説得した。

 

なお、厄の無力化についても具体的な方法論を阿求へ説明した。

今回の対策は、風水と流水による流し雛の合わせ技だ。

風水にて厄を逸らし、流水にて流し雛で厄を流し続けることで延々と雛に厄が集中し、集まる。

 

術式の性質上多少、鍵山雛の場所を取るが、観客の厄が取れることにもなり一石二鳥と説明した。

 

流水には紙の簡略化した流し雛を既に大量に自宅に保管してある。オオスは本気である。

それらを、紙の流し雛を安価で売り出し、やがては厄流し祭等と言って祭を開けば人里は活性化する。

 

厄神様という存在にも対応可能な紙芝居屋だと示すこと。

オオスはあらゆる存在へ開かれた紙芝居屋を目指すのだ。

オオスは自身の仕事への向上心を持っていた。

 

「それは紙芝居屋の域を超えていますよ。興行どころか新しい神事になりませんか?」

阿求の戯言についてオオスはノーコメントだ。

 

「霊夢さんも儲かるし、厄も集まる。問題は皆の意識改革です。

 …紙芝居という先行事例を作り出すのです」

オオスは力説する。飽くまでも紙芝居のために。

 

「昨今流し雛の高級化で流さないで家に取っておく家庭が多い。

 …人里には厄が結構溜まっています。これは雛さんと話していて確認できました」

オオスは更に阿求へ補足した。飽くまでも紙芝居のために。

 

人里では本来厄を川へ流すはずの人形が高級化し、流さないようになっていた。

これでは全く意味が無い。元の木阿弥みたいな状況になっていた。

 

…厄神様の鍵山雛が人里で流し雛の無人販売をしているくらいなのだ。

これは結構洒落になっていない。

能力の性質上、人から無視され続けても健気に無人販売所に一人で雛はいた。

オオスとしては人里の厄も鍵山雛も心配なのだが、飽くまでも主体は紙芝居である。

オオスは何度でも強調した。

 

 

 

阿求は滅茶苦茶であるが、オオスの真意とその合理性を読み解いた。

 

なので、

「…なるほど。そう言われると私としても納得できました」

阿求もオオスへ納得の言葉を示した。

そして、オオスが如何に面倒臭い男だということを再認識した。

 

オオスの神嫌いは筋金入りだと阿求は知っている。

人前には出さないようにしているが。オオスも信仰について他人に何か言ったりはしない。

だが、信仰の力は強い。…この幻想郷では外よりも遥かに。

信仰不足を放置しておくことは人里にいずれ害が生じることをオオスは理解しているのだろう。

 

これは要するに、厄神様、鍵山雛を基点とした何重にも渡るオオスの計略だ。

誰にもバレずに信仰の力を人里へ取り入れる準備である。

 

何よりもオオスが自分自身を誤魔化すための行為だった。

 

人里に足らない守りを信仰心の力で補おうとしているが、オオスはそれを認めたくない。

故にオオスは紙芝居という名目で誤魔化していた。

 

鍵山雛が神でないこと、霊夢が巫女ということ。オオスに取ってのギリギリを攻めていた。

 

『祭』などと言い出したのが証拠だった。

祭とは本来は神を祀ること、またはその儀式を指すものだ。オオスが知らないはずがない。

 

「厄流しを簡易的に取り入れ、かつ霊夢さんにも神事を行わせ、紙芝居屋は発展する…ということでいいですか?」

阿求は言葉に出してオオスへ確認した。

紙芝居を最後に持って来たのは、本来の順番はこういうことだと暗に阿求は示した。

 

「…まあ、そうなるかもしれません」

オオスは言葉を濁し曖昧な返答をした。紙芝居が最初でないのが嫌なのだろう。

 

「まぁ、霊夢さんへの説得は貴方ではできませんものね」

阿求はそのオオスの反応に呆れながらも了承した。

 

オオスの提案は滅茶苦茶だが、人里の利にしかならない。

…オオスに利が最も少ないことになる。そして、一番苦労するのもオオスだ。

 

この厄流し祭をするに当たって人里への印象緩和策の紙芝居活動は地道なものになる。

先行事例として定着させるだけでどれ程の労力がかかるのか。

阿求からしてもその苦労はわかったものではなかった。

…幾らオオスの芸が優れていても厳しいことこの上ない。

 

「ええ、ですがこれも紙芝居の更なる飛躍のためには必要な行為だと思っています」

オオスは飽くまでも紙芝居を強調した。

 

阿求から見て、オオスの振舞いは神を認めたくない自分への言い訳でしかなかった。

阿求はオオスが本心を霊夢に打ち明けることができれば良いのにと内心ため息をついた。

オオス程、霊夢のために身を粉にしている者はいないと阿求は断言できた。

…博麗神社が妖怪神社から払拭しつつあるのはオオスの陰ながらの努力の賜物だった。

 

最も、博麗神社には妖怪ばかり集まるので本質的には変わらず妖怪神社だった。

多少参拝客が増えただけマシである。

…阿求はオオスの努力が何らかの形で実ることを祈った。

オオスはそれを望んでいないだろうから口には出さないが。

 

 

 

稗田家を後にしたオオスは阿求のお叱りを避けることに成功した。

更には鍵山雛との約束である紙芝居も了解を取り付けたことに歓喜した。実に良い成果だ。

朝から呼び出し食らった時に行きたくないと思っていたのが嘘のように晴れやかだった。

阿求への説得成功はオオスの予定より大幅に早まった。何よりオオスの計画以上の成果だ。

 

そして、オオスは次の課題である霊夢について紅魔館で相談することを急いだ。

紅魔館へは地底でのお土産も用意している。恰好も稗田家を訪れるため、既に整っていた。

オオスは意気揚々と紅魔館へ向かいながらも、途中の霧の湖でチルノ達へ挨拶に行くことにした。

 

…しかし、この日チルノは霧の湖にいなかった。天狗と一緒にどこかに行ったという話だ。

オオスはお土産を他の妖精達へ一応渡したが、チルノが来る前に全部食べてしまいそうだ。

オオスは仕方がないのでチルノ分は後日こっそり渡そうと決めた。

 

だが、この時のオオスは知らなかった。

 

オオスの想定通り、妖精達はチルノの分の土産までも勝手に食べた。

帰って来たチルノはそれに激怒した。そして、チルノ対全妖精の妖精戦争に発展してしまう。

 

それには射命丸文が新聞のネタとして妖精達を煽りまくって火に油を注いでいたのが背景にあった。

 

それは後日、オオスが文々。新聞を読んで妖精達を止めに入るまで続くことになる。

誰にも気づかれない小さな戦いが勃発しようとしていた。

 

だが、所詮は妖精の話であり、幻想郷全体として見れば実に些細な出来事であった。

幻想郷は今日も平和であった。

 

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