オオスは謁見室から移動して客間に来ていた。
なお、オオスの座っていた椅子は撤去された。
オオスが予め用意していた椅子は豪華過ぎた。
謁見室にあるとレミリアとどちらが上かわからなくなる。
レミリア直々に撤去命令が出された。オオスは渋々撤去した。
レミリアに気づかれないように運ぶのは結構大変だったのだ。
そして、客間にて妖精メイドが新しく紅茶を二つ持って来た。
オオスとレミリアはテーブル越しに向かい合って、椅子に座り紅茶を飲みつつ話していた。
「アンタは霊夢のことをどう思っているのよ?」
レミリアは何だかお節介なおばさんのような口調でオオスに尋ねた。
レミリアの幼い姿と口調の違和感が凄いとオオスは思った。
「非常に単純な思考の持ち主です。怒る時は怒り、笑う時は笑う。
裏表のない性格ですね。良くも悪くもですが」
オオスは自身が把握している霊夢の性格を述べた。
淡々と分析した結果を報告する研究者のようだとレミリアは思った。
…パチュリーでもこんなに淡々とは言わない。
「いや、そういうことではなくて…」
レミリアは呆れてオオスに言った。そういう意味ではない。
「ああ、嫌いか好きかで、ですか?」
オオスはレミリアの意図を把握した。好悪で聞いているのかと納得した。
「そうよ。それ!」
レミリアは恋愛話に華を咲かせる女学生のような気持ちでオオスに同意した。
「…嫌いではないとしか言えませんね」
オオスは本当に霊夢について嫌いではないとしか言えなかった。
だが、初対面の時、オオスは霊夢にいきなり退魔針を投げつけられた。
紅霧異変の時だ。オオスは今でも覚えている。…あれは本当に酷かった。
「…そういうのだから霊夢も邪見にするんじゃないかしら?」
レミリアはオオスの回答に呆れた。そういう回答は求めていない。
オオスの答えは実につまらないとレミリアは思った。
レミリアから見て霊夢がオオスをどのように思っているのかはまた違う気がする。
レミリアは何度もオオスについての愚痴を霊夢に溢していた。
…霊夢に言う他の愚痴とオオスの愚痴とでは微妙に反応が違うのだ。
「ああ、なるほど。余所者で胡散臭い。好悪の感情もない。
だから、どう扱って良いかわからない」
オオスはレミリアの反応から霊夢の感情を推察する。
オオスは八雲紫とは違い接点が左程ない。これが一番しっくりきた。
…だが、オオスは口に出しつつも、何か微妙に違うと思った。
「…というか宴会芸で霊夢の真似していたわよね。何で霊夢と仲良くできないの?」
レミリアはオオスの見事なまでの霊夢の物真似を思い出した。
あれくらいわかっていれば少なくとも嫌われないようにすることはできそうなものである。
「それとこれとはまた別ですよ。私あんまり友達いませんし」
オオスは心が読めるからこそ嫌われる古明地さとりを思い出した。
…オオスも友達が多いとは断言できないからどうにも上手く表現できない。
「…友達いたことに驚きだわ」
レミリアはオオスのような性格で友達がいたことに驚いた。
レミリアはオオスが虐め大好きのサディストとばかり思っていた。
そのため、レミリアはオオスの友達というとパチュリーくらいしかいないと思っていた。
…レミリアが見る限り、パチュリーからすると違うが。
オオスは面倒見が良過ぎだとレミリアは思う。
オオスの面倒見の良さが自然過ぎて親友であるレミリアでも気が付くのが遅れた。
「いますよそれは。まぁ外ではいないというか裏切られましたが」
オオスは幻想郷に来てよかったと思っている。友達が何人もできた。
…大概人外の友達ばかりなのが少しだけ気になるが。人間が少ない。
「…そういう重い話急に振らないでよ」
レミリアはオオスが稀にする外の話が重すぎることを再認識した。
オオスがどんな人生だったのか少し気になるが、聞くと心を病みそうだ。
「ああ、すみません。何か普段話さないことまで話していますね」
オオスはつい慣れ親しんだレミリア相手のせいか自分の口が軽くなっていたと反省した。
この間もアリスとの会話でオオスは漏れ出していた。気をつけたい。
「…駄目だわ。私にはわからないわ」
レミリアはお手上げだとオオスに言った。
…よく考えてみたら人間と仲良くなる方法等、吸血鬼の自分に相談するのはおかしい。
「いえ、ありがとうございました。
私自身が霊夢さんをどう思っているか今まで考えたことがなかった。大きな進歩です」
オオスは心から感謝の意をレミリアに示した。…オオス一人では思いつかなかった。
オオスは一人であれこれ考えるよりも他者に相談することの大切さを改めて学んだ。
「普通、真っ先に思いつかないかしら?」
レミリアはそれを真っ先に思いつかないオオスを疑問に感じた。
オオスならすぐに出てきそうなものであるとレミリアは思った。
寧ろ、オオスの得意分野ではないかとレミリアは思っていた。
「人間って面倒臭いんですよ」
オオスはそう言いつつ、自分でも何故真っ先に考えなかったのか疑問に思った。
…レミリアからの問で好悪について外で考える経験値が不足していたと漸くわかった。
その答えは出るのが早かった。他者との本質的な関わり合いが足りないとオオスは自覚した。
四季映姫の言う通りだったとオオスは再認識した。オオスには客観視が足りない。
「なので、同じ人間の咲夜さんに相談してきたいと思います」
オオスはそう言って席を立った。
同じ人間の咲夜ならそういった心理もわかるかも知れないと思い、尋ねることにした。
オオスはレミリアに優雅な礼を持って部屋を後にすることにした。
妖精メイドに淹れて貰った紅茶は話している最中に飲み切っていた。
「…同じ人間ね」
オオスが去り、部屋に一人になったレミリアは思わず呟いた。
レミリアは大分冷めてしまった紅茶を飲んだ。
…妖精メイドが代えを持ってくると言ったが構わずに。