嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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堂々と玄関から入って泥棒すれば嘘つきではない

オオスは妖精メイドに咲夜の場所を尋ねた。

咲夜は客人として来た魔理沙をレミリアとは別の客間にて持て成しているという。

…いつもの魔理沙なら裏口から押し入り強盗である。珍しいとオオスは思った。

 

「魔理沙さんじゃないですか。こんにちは」

オオスは泥棒ではなく客人として入って来たであろう魔理沙に挨拶をした。

 

「おう。相変わらず悪魔の館に平然といるのな」

魔理沙もオオスを見て返事をした。

 

オオスと魔理沙は気軽に挨拶できるくらいには仲良くなっていた。

魔理沙は咲夜から菓子として出された紫色の桜餅を食べていた。

 

魔理沙から見てオオスは魔法の森で偶に見かけ、あちこち危険地帯をうろついていた。

そして、悪魔の屋敷にいても違和感がないオオスに少々呆れた。

 

「玄関から入って来るとは珍しいですね」

オオスはいつもの泥棒を辞めたのかと思い尋ねた。

 

最近、オオスは自分に害がなければセーフ理論で魔理沙を黙認することにした。

なお、これはオオスにとっても極めて異例の対応である。

…魔理沙が泥棒でも強くなってくれる方が人里に利益があると判断したからだ。

オオスから見て魔理沙は日銭を稼ぐという意味でかなり人里に貢献している。

人里では妖怪神社へ行くよりも手軽に妖怪絡みの案件を頼める魔理沙みたいな扱いだ。

…魔理沙が霊夢の仕事を奪っているとも言える。

 

魔理沙は偶に詐欺紛いのことをする。妖怪に騙されない壺とかの類を売りつけている。

だが、魔理沙のそう行った行為は金持ちが対象である。

一応、オオスも確認したが壺に効果はあった。…どう考えても値段と釣り合っていなかったが。

なので、魔理沙の行為はある種の税金だとオオスは無理やり自分を納得させていた。

 

なお、人里に住む酒屋の森岡等は魔理沙がどんな取引をオオスとしたのかと心配している。

魔理沙は死後の魂と引き換えにオオスと取引した。

悪人や妖怪等の一部界隈でそんな噂になっているが、当然ながら魔理沙もオオスも知らない。

知られたら両者から磔獄門の刑は免れないだろう。

 

「ああ、嘘はつかないことにしたんだ。堂々と玄関から入って泥棒すれば嘘つきではないだろう?」

魔理沙は四季に嘘を辞めないと死後に舌を抜くと言われていた。

 

閻魔様に言われた説教をきちんと魔理沙は早速実践していた。…魔理沙の中では。

 

「人間はどうやっても嘘をつくものですよ。心がけは立派ですがお気をつけて」

オオスは嘘つきとして魔理沙へ忠告した。泥棒はツッコまない。税金である。

 

嘘をつかない人間は無理がある。嘘をつかないで平気なのは霊夢くらいだろう。

その霊夢も偶に嘘をつく。…オオスは何かヒントが浮かんだような気がした。

 

だが、

「…泥棒というところにはツッコまないのね」

咲夜がオオスへ呆れたような顔をして部屋に入って来た。

 

咲夜はオオスもついに魔理沙への注意喚起を辞めたことに少し驚いた。

自分の知らないところで何かあったのかと思った。

…昨日会った閻魔様の言うことも一理あると咲夜は思った。

 

「あ、咲夜さん。どうもこんにちは。…こちらお土産です」

オオスはそう言って地獄土産を咲夜に手渡した。霊夢云々は後である。

 

正直、咲夜のお土産が一番大変だったとオオスは思っている。

例外は阿求の土産だが、茨木童子がそもそもいなかったので不可能だった。

妖怪の山に潜伏しているか外にいるのだとオオスは考えている。

 

なお、茨木童子は外の伝承によればかなり悪だという話であった。

そして、他の鬼からも死者を冒涜する術の類を使う性質の悪い鬼であるとの確認が取れた。

同じ鬼の四天王の勇儀は仲間思いではあるとフォローしていたが。

だが、オオスにとって相手が悪であれば問題はない。外で慣れ親しんだ相手であった。

勇儀には悪いが、幻想郷に来て大分平和ボケした自分を奮起するいい機会かもしれない。

 

オオスは対悪特効とも言うべき性質というか体質の持ち主だった。

魔法の森の瘴気や地獄の怨霊、鈴仙の狂気等をオオスが無効化できるのもそれが派生したものだ。

 

ただし、オオスが本心から悪認定しないと全く効力を発揮できない。

善の存在にはほぼ意味がないものでもあった。オオスは途端に糞雑魚になる。

もし、茨木童子が更生していたらオオスに勝ち目はない。

 

オオスはそんな闘争本能むき出しの内心を表には一切出さない。

日頃の鬱憤を晴らすべく対茨木童子へ向けて感情をため込むのである。

 

そんなオオスの内心等知らない咲夜はオオスの土産を受け取っていた。

 

「これは何かしら?」

咲夜は禍々しくも神聖な気配がする黒い箱を見てオオスに尋ねた。

 

「地獄でも銀食器が売っていたので買ってみました。地獄の銀で作られたナイフセット。

 何でも地獄の釜で魂の欲望を溶かすと金属が出るらしいんです」

オオスは咲夜へ土産の説明した。

 

オオスは地獄の釜で出る金属が地底の収入源と見聞きしていた。

 

地獄は魂の悲鳴が金属に変換される仕組みになっているらしい。

悪行を認め、心底悔いて初めて地獄から解放されるという話だった。

だが、常日頃より苦しむ魂に過去を反省する余力は少ない。地獄から転生するのに時間が相当かかる。

そのため、永遠と苦しみ続ける魂の悲鳴により、地獄には貴金属の類は豊富にあった。

 

その中でも銀は希少であった。…悪人の純粋な信仰から来る反省が金属となったものだ。

そのためかなり希少であり、高かったがオオスは土産について無粋なことは言わない。

 

「どう考えても今の説明聞いて喜ぶ奴いないだろう。ってか地獄って…」

魔理沙は呆れた。年頃の少女に渡す物ではない。咲夜が一般的な少女かは兎も角として。

…魔理沙はオオスの言う地獄を比喩かと思っていたが、どうも違うことを悟った。

 

「生きたいという欲望から水銀は多いのですが、銀というのは信仰、神聖さを持つ金属です」

オオスは魔理沙の反応に補足説明を加えた。

 

「いや、水銀はヤバいだろ。今の話聞いて喜ばないって絶対」

魔理沙は咲夜も気の毒にと思った。

魔理沙からしてもどう考えてもヤバいものを土産に渡されていた。

オオスの土産は魔理沙みたいな魔法使いしか喜ばないだろう。

 

しかし、魔理沙の予想とは異なる光景が目の前にはあった。

 

「あら、ありがとう」

咲夜はオオスの土産に心から喜んでいた。

魔理沙はここまで素直な笑みを見せる咲夜を見たことが無かった。

 

「…マジかよ」

魔理沙は絶句した。…これが良いのかと疑問に思った。

 

「実用的な物の方が喜ぶかなって思ったのですが、正解でしたね」

オオスは咲夜の反応を見て、自らの判断に誤りはなかったとホッとした。

咲夜が嬉しそうで良かった。

 

「どんな実用性だよ!」

魔理沙は思わず叫んだ。狂気染みた会話が己の頭上で飛び交っていた。

 

「地獄でも信仰を失わなかった霊の欲望です。普通の銀より吸血鬼等に効きます」

オオスは魔理沙へ実用性をアピールすることにした。極めて実用的である。

 

「下剋上を勧めるなよ!」

魔理沙はオオスへ更にツッコんだ。オオスはレミリアを殺す気かと思った。

 

だが、

「うん。いい感じねこれ」

咲夜は魔理沙とオオスの会話等お構いなしに早速貰った銀のナイフを投擲した。

 

ナイフは魔理沙の帽子を掠めた。

 

「お前、いきなり投げるなよ!あぶねぇ!!」

魔理沙は咲夜に叫んだ。本気で危なかった。

 

「そういう魔理沙さんはお土産いりませんか?

 魔法使い用のお土産に針山地獄の針を貰って来たのですが」

オオスは魔理沙の悲鳴等無視して会話を続けた。

悪魔の屋敷に来ておいて意外と小心者だとオオスは思った。

 

最初の頃、というか紅霧異変の頃の咲夜はオオスに対し、ナイフ投げどころか毒入りの茶を平然と出していた。

オオスから見て咲夜は随分マシになった。

今では人に優しいくらいであるとオオスは思っている。ナイフ投げくらい些細なことだ。

 

そう思いつつも、オオスは魔理沙へ土産として地獄の針山の針を数本差し出した。

オオスは地獄の針山からかなりの数を持って帰って来ていた。

 

オオスのそれは摩多羅隠岐奈が警戒する程であった。

隠岐奈はオオスが地獄の針山をあれだけ抱えて、具合が悪くならないのか疑問だった。

好きなだけどうぞと言ったさとりさえもオオスの遠慮のなさには引いた。

だが、心を読めるさとりは隠岐奈と違いオオスが何故効かないのかわかった。

しかし、それでも躊躇すべきであるとさとりは思った。一般里人が聞いて呆れた。

 

「…多くの血を吸った針は確かに曰くつきのマジックアイテムだが」

魔理沙は魔法使いとして希少価値がわかる。

だが、咲夜にツッコんだ手前素直に喜べない。

 

「…いや、待て。地獄って何だ、今更だけどさ」

魔理沙は本当に今更ながらツッコんだ。

 

「私は地獄に遊びに行っていたんですよ。昨日まで」

オオスは何でもないように言った。実際隠す程でもない。慧音も阿求も知っている。

何ならあの後、慧音には詳細を話していた。

 

そして、オオスは血の池地獄だけは地獄巡りに次があればもう一度見たかった。

溺れているセーラー服に驚いて、血の池地獄を調べるのを素で忘れていた。

 

「…危ないな。霊夢がお前退治しようと躍起になってたぜ。昨日まで」

魔理沙は霊夢の暴走っぷりを思い出した。

 

オオスが地獄で遊んでいたことについてはスルーすることにした。

考えるだけ無駄だと魔理沙もわかってきた。

 

「聞きました。本当に危ない」

オオスは本当にギリギリだったと思い出した。

 

オオスはよくよく考えれば霊夢とオオスは無名の丘、太陽の畑等、何度かニアミスしていた。

襲われなかったのは奇跡に近いとオオスは思っている。

 

少なくとも外でのオオスならやられていた。平和ボケが過ぎたとオオスは反省していた。

この奇跡は幻想郷の環境か、霊夢の運か自分の神化が原因か、オオスもよくわかっていない。

 

「地獄に行っていたって普通に違和感なく答える奴は退治されて当然じゃないか?」

魔理沙は霊夢に一度退治された方が良いのではないかと思い始めた。

 

普通に地獄で遊んできたとか言う奴は頭がおかしい。人間でない。

 

「じゃあ、魔理沙さんはお土産いらないと」

オオスは魔理沙から針を取り上げようとした。…純粋にイラッと来たのだ。

 

「待て待て!誰もいらないとは言っていないだろう」

魔理沙は慌てて懐に針をしまい込んだ。

こんな希少なものを奪われてたまるかと魔理沙は思った。

オオスの土産は完全に自分の物扱いであった。

 

「どうぞ」

咲夜はオオスの席の前に紫の桜餅を差し出した。

 

「ありがとうございます。…紫の桜餅ですか」

オオスは咲夜に感謝を言いつつ、ふと無縁塚の桜を思い出した。

 

「そういえば昨日行ったのですが無縁塚の紫の桜は綺麗でしたね」

オオスは素直に感想を述べた。オオスからしても怪しく心を惹かれる物があった。

 

「そうね。確かに綺麗だったわ」

咲夜も同意した。

咲夜は無縁塚にある紫の桜をイメージして桜餅を作っていた。

 

「…お前らも行っていたのかよ。霊夢も行っていたみたいだし本当に僅差だな」

魔理沙は本当にオオスが僅差だったと思った。

 

そして、今朝見て来た霊夢の具合からオオスに会わなくて良かったとも思った。

長い付き合いの魔理沙からしても今朝の霊夢は少々アレだった。

 

「おや、二人とも閻魔様に会ったんですか?」

オオスは魔理沙と咲夜に聞いた。どうやら四季は自分の他にも結構説教していたらしい。

死神が来るまで随分暇だったのだろうか。オオスは思わず小町へ一言言いたくなってきた。

 

「ええ、何かお説教されたわ」

咲夜は最近改善しつつあるが、他人に冷たいと言われたことを思い出した。

 

「嘘つくなって言われたぜ」

魔理沙は嘘つき呼ばわりで酷いと思った。

 

「お前は何か言われたか?」

魔理沙は流れでオオスに尋ねた。

 

「もっと客観的に考えろって言われました」

オオスは魔理沙の問に素直に答えた。隠すことでもない。

 

だが、

「ああ…確かに」

咲夜は凄く納得していた。…オオスのはドンピシャだと思った。

咲夜はオオスへの説教を聞いてもう少し他人へ配慮した方が良いかと思い始めた。

 

「咲夜が凄く納得しているみたいだが、何かしたのか?」

魔理沙はオオスに耳打ちして聞いた。

オオスに客観視が足りないのは誰の目からも明白であるが、咲夜の反応が気になった。

魔理沙は咲夜に聞かれたら面倒な類かと邪推した。

 

「いや、特には」

オオスは素で魔理沙に返した。特に何もしていない。

 

「ああ、そうだ。私も反省しまして」

オオスは四季の言う事を踏まえて反省したという。

 

なお、反省の材料は目の前にあるがオオスはまだ気が付けない。

 

「霊夢さんに退治される前に印象を緩和したいんです。

 …何か良いアイディアありませんかね?」

オオスは本題を忘れるところだったと二人へ改めて尋ねた。

 

今ここにいるのは丁度人間が二人。…特に魔理沙は霊夢と仲が良い。

何かヒントを掴めれば良いがとオオスは思った。

 

 

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