嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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桜の旋風

山奥に咲く桜の秘境。幻想郷一桜の綺麗な場所。

射命丸文がある男に対してそう評した場所があった。

 

それが博麗神社であった。

その日の博麗神社はその言葉通りに満開の桜が咲き誇っていた。

 

だが、桜の花は例年以上に咲き誇り、止む気配がなかった。

舞い散る桜吹雪は、昨年の春雪異変の豪雪に似る程凄まじい量となっていた。

それは毎日掃き掃除がないと降り積もって危険な量であった。

 

「あー。掃いても掃いてもキリがないわ」

霊夢は箒で桜の花びらを集めていたがキリがないことに苛立ちをみせていた。

 

霊夢はここ数日博麗神社を空けていたからか花びらは相当量になった。

…ただでさえ少ない参拝客は桜吹雪が降り積もったために来なくなってしまった。

博麗神社までの道のり、特に階段であるが、滑って危ないのだ。

来るのは階段等関係ない飛べる妖怪くらいである。…博麗神社は妖怪神社になっていた。

 

「巫女として仕事しろって言われてもアンタらが何とかしないとどうにもならないじゃない!」

霊夢は思わず虚空に叫んだ。

 

この花々が咲き誇るのは異変ではないと死神と閻魔大王から聞いた。

それは死神等の領域であり、人間の出る幕はない。…霊夢にはどうしようもない。

だから、毎日掃き掃除しなければ人間が来なくなるのは目に見えていた。

 

怒りで我を失っていた霊夢自身が悪いがそれはそれである。

 

 

博麗神社に突然、一筋の風が吹いた。霊夢は勘で誰が来たか分かった。

霊夢が一昨日まで、正確には四季映姫から説明を受けるまで、異変の犯人として怒り狂った相手であった。

…それは霊夢の勘違いであったが。

 

「今、アンタの相手をしている程暇じゃないの。参拝客でないんだから帰った帰った!」

霊夢は実体化する前に帰るように叫んだ。

 

今の状況で、男に発破をかけられようが、何か正論を言われようが。

…何か言われれば霊夢は再度激怒しかねない。

 

それが何故なのか自分でもわからない程に。

 

だが、霊夢の言葉に反して風は実体とならず、風は止まなかった。

 

「…」

霊夢は目の前の光景に呆然としていた。退治するわけでもなく見つめ続けていた。

 

そして、徐々に風に変化が起こっていた。

 

風が博麗神社の隅から霊夢を中心とした方向へと吹いていた。

…階段も含めたその範囲は広大である。

 

それでも風は止まらない。舞い散った花びらが再び舞い、桜吹雪となって舞い上がった。

 

霊夢はその光景を見て気が付いた。

散った桜の花びらが全て霊夢へ、中心へ集まっていた。

 

…幻想郷でも見られない、幻想的な光景が霊夢だけのために、目の前で繰り広げられていた。

 

それは桜の旋風とも言うべき美しい光景だった。

 

霊夢は言葉を忘れて目の前の光景に魅了されていた。

 

 

 

風が止んだ頃には花びらが全て集まっていた。

その中心となる霊夢の前に大量に桜の花びらが積まれていた。

 

そして、霊夢の想像通りの男が風から実体となって現れた。

…その男、オオスはかなり力を使ったせいか疲れが出ていた。

 

オオスは肩で息を切らせていた。今の風を行使したのはオオスであるのは目に見えていた。

 

霊夢が何かを言おうとする前にオオスが手で制した。

 

「…アドバイスを貰ったが、やはり私は神には祈れん」

オオスの霊夢を手で制しながら、思わず呟いたようだった。

…本人も気づいていないかも知れない。

 

だが、霊夢にはアドバイスが何なのかはわからなかった。

 

霊夢はオオスに言葉にならない感情が口に出そうになる。

だが、オオスは霊夢より先に言葉を発した。

 

「良いか博麗霊夢!私は貴様の言う通り神に祈りに来たのではない!」

オオスにはいつもの敬語はなかった。…完全に逆ギレのように霊夢に叫んでいた。

 

このオオスの叫びは神に祈れない、どうにもならない自分自身に対しての怒りの叫びのようであると霊夢は感じた。

 

「だから、これは貴様のためである!…いいか、断じて神のためではない!!」

オオスは改めて神社の巫女の前で宣言した。オオスの発言は罰当たり極まりない。

 

だが、オオスの目は博麗神社でも、神でもなく、霊夢だけを見ていた。

霊夢はオオスの宣言と目だけを見つめ返していた。霊夢は一瞬、言葉が出てこなかった。

 

霊夢が何か言おうとする前に、また風となり、空となって今度こそ男は消えていった。

 

それは霊夢が参拝しないなら帰れと言ったのを言葉通りに素直に受け止めて帰ったようだった。

 

「…何よ!言いたいことだけ言って!!」

霊夢は虚空に向かって叫んだ。霊夢の顔は赤く染まっていた。

 

それが、怒りか別の感情から来るものなのかは霊夢にはわからなかった。

 

 

 

男は前日の、自身へのアドバイス等を完全に無視して男の本心を霊夢自身へ向けてそのまま宣言した。

…もはや、これで霊夢に退治されることになろうが男にとっては知ったことではなかった。

 

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