嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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シャーロックホームズの宿敵の再来

鈴仙達が立ち入れないように人払いをした永遠亭の客間にオオスはいた。

オオスと永琳、輝夜の話し合いとなった。

 

輝夜が同席しているのは永遠亭の主としてである。

置き薬の話は後回しにしろと言外に永琳はオオスへ示していた。

 

オオスとしても不本意ながらこれは避けられないと思っていた。

だから、初めに月の話になる。正直、非常に面倒臭い。

何故外と同じことをしなければならないのか。だが、必要な行為としてオオスは割り切った。

 

会話は永琳から始まった。

 

「さて、何故貴方の方から尋ねて来たのか」

永琳はオオスに言う。永琳は前提を確認する必要があると思っていた。

 

「私には意図はわかっても動機がわからないの」

永琳はオオスへ直球で聞いた。

…紛らわしい言葉で聞くとオオスは誤魔化し始めるだろうからだ。

永琳はオオスという人格を想定して一番、最適であろう形で尋ねていた。

 

…永琳の問はオオスに取っても一番嫌な聞き方であった。

 

「どういうことかしら?」

輝夜が永琳に尋ねる。

輝夜は正直、退屈な話を聞かされるのかと思っていた。だが、永琳の態度に興味が沸いた。

 

「貴方は月の異変に気が付いたから尋ねて来た。そのために予め手を打つことにした。

 それが何であれ貴方にとって地上が月の民の騒乱に巻き込まれるのは不本意だから」

永琳はオオスがどこまで掴んでいるのかさっぱりわからない。

だからこそ前提を話す。オオスがこの時期に来た理由は永琳が知る限りそれしかない。

 

「ああ、鈴仙が聞いたっていう月の兎達が噂していた月の都の騒乱の件ね」

輝夜は永琳の意図を読み取り、納得した。

 

輝夜からすればこの件に関してはオオスが知っていようが些細な事なので問題ない。

地上の民が月に干渉できること等、無に等しいのだから。

 

「まあ、大体そんな感じです。月に異変ありというのは見ればわかりました」

オオスも同意した。…月の都で騒乱という噂までは知らなかったが表に出さない。

輝夜はオオスを地上の民としてできることはないと思って言ったようだ。

 

輝夜に他意はなさそうだとオオスは判断した。この情報は些事としてオオスは切り捨てた。

このやり取りにおいて余計な情報は取捨選択の邪魔になる。

…下手すれば八雲紫の邪魔をオオスはすることになりかねない。

 

オオスは、外での自分の本領発揮と行こうではないかと気を張り詰めた。

 

だが、

「何でわかるのかしら?私達は月の民だから月を見ればわかるけど」

輝夜は思わずオオスへ尋ねていた。

率直に言って地上の民であるオオスが月の異変に気が付くことはおかしい。

 

オオスにとって想定外のところから質問が来た。…純粋な疑問だけに面倒臭い。

 

「…そう言われると確かに。貴方だからって納得していたわ」

永琳はオオスが当たり前のように来たのでよく考えたらおかしいことに気が付いた。

 

…初歩的過ぎて吹っ飛ばしていたが、オオスの感知能力は異常な領域にあった。

輝夜が聞かなければ永琳も気が付かないというか忘れていた。

オオスは鬼の世界を訪れて秘宝を貰ったりしていた。

オオスは素で月の異変を感知してもおかしくないと永琳は思っていた。

…よく考えればオオスの気づきは地上の民としておかしかった。

これが次の月面戦争と仮定してもオオスの行動力は異常である。

…普通は少しは躊躇する。こんなに素早く動くことはできないだろう。

 

「…輝夜さん一応、罪人なわけでしょう?捕まったら嫌だから定期的に月を観察していたんですよ」

オオスは正直に話した。

輝夜を連れ去られたくない。オオスが月の異変に気が付けた最大の理由であった。

 

…オオスは月について仮想敵とか何とか理由をつけている。

しかし、本音としては輝夜に帰られるのはオオスが嫌だからである。

 

答えられるかは別として、自分に好意をぶつけて来た初めての相手だからだ。

月を滅ぼしてやろうかというのも面倒臭いのでついつい思ってしまうからに過ぎない。

オオスとしては些細な八つ当たりである。…月側からすればたまったものではない。

 

「…意外な答えが返って来たわ」

輝夜はオオスから想定外過ぎる答えが返って来たので動揺していた。

どう反応して良いかわからない。輝夜は自らの顔が熱くなってきたのがわかった。

 

「…ああ、なるほど」

永琳は納得した。…オオスも何だかんだいって輝夜の魅力に当てられていたらしい。

 

永琳も輝夜を助ける為に月を裏切り、使者を皆殺しにした過去があった。

永琳はオオスの動機に納得した。

永琳とは程度は違えどやれる範囲で助けたいということだろう。

 

「何かおかしなことでもありましたか?」

オオスはおかしなことをしたのか疑問を口に出していた。

至極真っ当なものだと自負していた。…オオスはそれをあまり口に出したくないだけで。

 

「いや、おかしいというかなんというか…」

輝夜は答えに窮した。オオスは極端過ぎる。

 

輝夜をあからさまに避けるか、危険を顧みずに近づいて来るか。

オオスのそれは加減がわかっていない無邪気な子どものようだと輝夜は思った。

 

「そういう風に思うのなら、普段の姫様への対応変えた方が良いと思うのだけど」

永琳は本題から逸れるのを承知でオオスへ言った。

…オオスと輝夜の関係性は永琳にとって気恥ずかしくて見ていられない。

永琳は駆け引きなしにして素でオオスへ注意した。

 

だが、

「それは置いておくとして」

オオスは全く関係ない話をだらだら続ける気がなかった。

甘い雰囲気等お構いなしであった。

 

「おい」

輝夜は思わずツッコんだ。自分の乙女心を返せと思った。

 

「…ああ、面倒くさいわね」

永琳はオオスの面倒臭さに呆れた。

…オオスは本音と建前の使い分けが極端過ぎる。

 

永琳はオオスが情を理由に譲歩させるのはフェアじゃないと思っているのだと理解した。

オオスなりの誠意だと永琳は確信したが、それにしてもやり方があるだろうに。

 

「一番、お二人にとって最悪なのは今存在が月へ明るみに出てしまうこと。

 私が嫌なのは輝夜さんもそうですが、人里に月の民が干渉、攻撃をしてくること」

オオスは月へ幻想郷側が攻め込むと知っているにも関わらず平然と宣った。

オオスは面の皮が厚いことこの上ない。

 

「…ないとは言い切れないわね」

永琳はそう答えた。月の民は地上の民の命等気にも留めない。

…いざとなれば簡単に浄化等と言って地上を殲滅することも大して厭わない。

 

そして、オオスの動機を聞いたせいで永琳の中ではオオスの訪問の真意が二通りになってしまった。

…オオスが幻想郷の妖怪側と絡んで攻め込む準備をしていた可能性もあった。

 

オオスが失敗を見越して永遠亭と二重スパイをして備えている可能性もなくはなかった。

…永琳としてはそちらの方が有難かった。永琳の勘はオオスがこちらで来たと思っている。

だが、オオスは輝夜のためと言い切っていた。…これでは読めない。

本当に月の異変を感知して来ただけの可能性もある。

永琳が下手に疑ってかかると今度は妖怪側にオオスが頼りに行くのも考えられた。

 

この永琳の判断を鈍らせること、それこそオオスの罠である。

二重の解釈を用意することで下手にツッコませないようにする。

最も、輝夜の好意云々はオオスの想定外であった。…オオスは他に用意していた。

予めどう転んでも対応できるようにしておくのはオオスの得意分野であった。

 

あらゆる手で絡み取る。敢えて目立つことで行動を制限させる。

大きな異変で小さな本命を達成させる。その逆もある。

…探偵でありながら、シャーロックホームズの宿敵の再来と評される外の探偵がいた。

 

「輝夜さんを利用するような形になって私、不本意なんですけど」

オオスは思わず溢した。これはオオスの本音であった。

月のせいでこうなった。月には仕返ししてやるとオオスは決意した。オオスは本気である。

 

「…それは気にしなくて良いわ」

輝夜はオオスに言い切った。

何であれ自分を想って行動してくれたのは嬉しかったからだ。

オオスが例え自分を利用していたとしても嬉しいことには変わらなかった。

 

…惚れた弱みというのは酷いものだと輝夜は思った。

 

「…貴方が内通する可能性が減っただけでも良しとしましょう」

永琳はオオスの本音で妥協することにした。

それにこれ以上の結果を求めてもかえってややこしくなるだけであると永琳は確信できた。

 

輝夜が嬉しそうなのもある。

だが、オオスが例え妖怪と永遠亭の二重スパイでも永遠亭にメリットしかなかった。

オオスの行動力に永琳は呆れた。

予め行動で示すことでどう着陸しても良いように備えていた。

たった一つの行動でオオスは立ち位置を確保した。

 

元々、月の異変というよりは、妖怪の第二次月面戦争であると永琳の勘はいっていた。

オオスからそれを引き出そうとした面は確かにあった。

だが、今回のオオスの言動と行動でわからなくなった。

 

…今までと同じように情報収集に専念することには変わりはない。

しかし、仮にオオスが妖怪側だと発覚しても永琳は情報収集に専念することには変わりなかった。

今の、例月祭の前ではそうなる。…どう情勢が動くか永琳にもまだ判断つかないからだ。

従って、この段階でのオオスの行動はただ単に永遠亭勢力へ誠意を見せたことにしかならない。

 

常人ならば判断にもたついてどちらも無碍にしてしまうだろう。

オオスは永琳から見て最適解を勝ち取っていた。

オオスは第三者、言うなれば外交官としての立ち位置を獲得していた。

 

永琳はオオスの外の職業は探偵ではなく、フィクサーが正しかったのではないかと思った。

 

「ああ、後本題の置き薬について話しても良いですか?」

オオスは忘れられそうな本題を改めて切り出した。

 

「…もう少し余韻に浸らせてくれても良いでしょうに」

輝夜は思わず溢した。永琳も同感であった。

 

…オオスは空気を敢えて読まない。読めないのではなく読まないのであった。

輝夜はこれこそオオスが持つ一番の理不尽な力だと思った。

 

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