嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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私を倒しても第二、第三の私が湧いてきますよ

紅魔館の地下にある図書館。

そこは空気清浄機やらエアコンやら各種設備が簡易的な物ながらも設置された快適空間となしていた。家の主人に断りもなくオオスが押しかけてきては図書館を魔改造した結果、パチュリーは図書館でならばもはや敵なしの状態になっていた。

レミリアもパチュリーの快方を見て喜ばしいので、オオスを段々追い返せなくなってしまっていた。実に忌々しいと嘆いている。なお、オオスは週2~3程度遊びに来ることの何が悪いと言い放っている。始末がない。

 

 

「最近、レミリアさんの姿が見かけないですよね」

パチュリーと小悪魔で紅茶を飲んでいるとオオスがレミリアのことを話題に出す。

なお、咲夜は屋敷の仕事で忙しいので滅多に図書館には来ない。

 

「あら、知らないの?博麗神社に連日遊びに行っているのよ」

パチュリーが意外だという顔をしてオオスに答える。

 

「悪魔が神社にってどうなんですかね。いや、まぁ知らないわけじゃないのですけども」

オオスはレミリアの種族を思い起こして言う。

なお、あの後オオスは一度も霊夢と会っていない。魔理沙は本泥棒しているのをよく見かけるが。

 

「私、神に対していい思い出がなくって。私が外の人間だって話しましたっけ?」

慧音とチルノくらいにしか言ってなかったかとオオスは思い出したように言う。

天狗の文屋は取材取材と煩いので断片的にはぐらかして言ったことはあったが断言はしていない。

 

「あら、やっぱりそうなのね。それにしては色んなことを知っているようだけど」

パチュリーは最初こそオオスが魔法使いなのかと思ったらそうではなかった。

満遍なくあらゆる事物に詳しい昔は良くいた”万能人”と呼ばれる人種だと知った。

魔法と科学が分かれる前の時代の産物であるため、幻想入りした人種と言われても不思議ではなかったが。

 

「私は知らないと即死みたいな出来事が多くって残機1でノーコンティニュー。

 だから、調べて裏とって常にマウント取らないと生きていけなかったんです」

オオスは何でもないように言う。それにしては知り過ぎじゃないかとパチュリーは思うが。

 

「だからレミィにあんな感じなのね」

自分がどうにもならない相手にこそ強気に出る。

パチュリーはオオスが虚勢でも張らないと死ぬという歪んだ人生訓を感じ取った。

 

誰からも指摘されず、そういう相手がいなかったとも。

 

「悪魔だからかついついやり過ぎていますかね?いや、辞める気ないですけど」

そういうパチュリーの心情を読み取ったのかオオスははぐらかした様に言う。或いは触れられたくないのかもしれない。

 

「神に良い思い出がないというのは何かしら?」

パチュリーはオオスの話題転換に付き合うことにした。

それに気になることでもあった。

オオスはどうも神というものを敵視しているように感じられるのだ。悪魔よりも。

 

「ああ、自称神を名乗る連中が…」

オオスが答えようとしたその瞬間。

 

 

地面が揺れた。そして、警報が鳴り響く。

紅魔館内の緊急事態であるとパチュリーは慌てた。

 

 

「地震?地下にいる方ですか、これは?」

オオスは平然と落ち着いて確認を取るかのように言った。

 

「知っていたの?妹様ね。これは」

パチュリーはオオスに端的に説明した。

 

「レミリアさんの妹?力が強すぎて情緒不安定なのですか?」

オオスは自分の推測を述べる。

 

「そんなところ。今から大雨降らすから帰った方が良いわよ」

パチュリーはオオスに帰るように告げる。こういう時の魔法があるが、よりにもよって姉がいないときに使う羽目になるとはと内心で舌を鳴らす。

 

「…ヤバいですね。その前に外でてしまうかもわかりませんよ」

オオスが呟く。パチュリーはオオスがどういう理屈だかわからないがそういう勘が異常に発達しているのを知っていた。だから、天を仰いでしまう。

 

「まぁ、大変!急がないと今日は厄日だわ」

パチュリーはとにかく急いで魔法を発動することにした。間に合わないではなく間に合わせるために。

 

そこでオオスが意外な提案をし出した。

 

「狂気と混沌には自信がありますので、死なない程度におちょくって来て良いですかね」

なんと地雷原でタップダンスを踊るようなことを言い出したのだ。正気の沙汰ではない。

現に黙っていた小悪魔など顔が真っ青だ。

 

「…ありがとう。助かるわ。死なないでね」

パチュリーはオオスの心遣いに感謝の意を述べた。辞めろと言っても時間がない。

 

「…なんのことやら。私はいつもお姉さんをお世話していますと挨拶しにいくだけですよ」

オオスはそう言って笑いながら足早に地下へと向かっていった。

 

 

 

 

地下室の扉が粉々に砕け散った。

その中から少女が出てきた。

深紅の瞳に濃い黄色の髪のサイドテールにその上からナイトキャップを被っている。 

服装は真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用。スカートは一枚の布を腰に巻いて二つのクリップで留め、足元はソックスに赤のストラップシューズを履いている。

少女の名前はフランドール・スカーレット。

オオスは名を知らないが、その少女がレミリア・スカーレットの妹だと確信した。

 

「ごきげんよう。ここには何度も尋ねているのに会わなくて申し訳ありません」

何気ないような仕草で挨拶するオオス。

それは毎朝、オオスの隣に住む独り身のおじさんに挨拶するようなノリであった。

 

「あなた誰かしら?もしかして人間?」

フランドールは珍しい物を見たという表情で目の前の相手が何か尋ねる。

 

「ええ、私は極々普通の人間です。一般ピープル万歳」

オオスは若干ふざけたように自分の種族を述べる。

 

「だましたりしてない?人間って飲み物の形でしか見たこと無いの」

オオスのふざけた様子を見て若干ムっとしてフランドールは尋ねる。

 

「人間は水にもなるタイプもいますし、何なら自分自身を城に改造した人間も知っています」

オオスは真面目な顔で嘘かほんとかわからないような事を言い出した。

 

「そうなのね。知らなかったわ」

人間という者を知らないフランドールはオオスが大真面目に言うので信じてしまった。

 

「ええ、何なら脳だけ缶詰にして宇宙を飛び回る奴らだっています」

オオスは更にとんでもないことを言い始めた。

レミリアがいれば妹に嘘教えるなと叫ぶこと間違いない。

 

「人間って変態なのかしら?」

フランドールは想像してしまったのかドン引きのようだ。無理もない。

 

「私からすると彼らは狂人ですが、大丈夫。私は普通の人間です」

オオスは安心するように優しい声色でフランドールに言った。

 

「外の世界って怖いのね。出るなとお姉さまが言うのもそうなのかしら」

オオスが全く嘘を言っている素振りがないことと対人経験の不足のせいでフランドールはオオスの話を信じてしまったようだ。

 

「そうなのかもしれません。ただ、あのレプリケーターはゴワウルドよりも厄介かもしれません」

オオスは電波なことを言い始めた。

だが、フランドールは姉のことを言っているのだとわかった。

 

「レミリア!レミリアお姉さまよ!ゴワウルドって何!?」

思わず叫ぶ。フランドールは目の前の男は気がふれているのではないかと思い始めた。

 

「海外SFドラマに出てくる敵キャラクターです。人間に寄生して生きる生命体で傲慢不遜」

オオスは冷静に解説し始めた。オオスはどうやらレミリアのことを心の中でレプリケーターと呼んでいるのかもしれない。

 

「あら、あなた喧嘩売っているのかしら?」

フランドールは何だか自分まで馬鹿にされているような気がした。

 

「私は紙切れ一枚よりも儚く脆い生き物なんです。人間の中でも最弱です。

 私を倒しても第二、第三の私が湧いてきますよ」

オオスは自分の弱さを強調しながら、どこぞのバビルⅡ世みたいなことを言い始めた。

フランドールはゴキブリを知らない。だが、今ゴキブリという存在を教えればオオスの親戚か何かと言うに違いない。

 

「じゃあ、あなたを壊しても大丈夫なのね」

フランドールは沸いてくるなら壊してもセーフと思ったので尋ねた。

 

「フフフ。倒すのは良いけど、壊したら出てきませんよ。

 コインは一個なんですから」

オオスはゲームセンターに筐体を交えて例えてみた。ここ幻想郷では通じないだろう。

 

「それ私のセリフよ!」

何と、フランドールには通じたようだ。フランドールは電波を受信した。

 

「そうこうしている内に誰か来ましたよ?」

オオスは時間稼ぎが間に合ったと悟って外を指し示す。

そこには浮遊する紅白の巫女がいた。

 

 

 

 

「今日はいつにもまして暑いわね。こんなに攻撃が激しいのは、さっきの女の子がおかしくなっちゃったから?」

霊夢は先ほどフランドールと一時交戦して、思い出したかのように引き返したので追いかけてきた。

 

すると、どこかで見たような顔がいた。

「ほら、あっちですよ。あっち。あっちは壊れませんから」

オオスは霊夢を指してフランドールを押し付けようと必死なようだ。

 

「何だか馬鹿にされている気がするわ。この間ぶりね?」

霊夢はレミリアが神社に押しかけてくる原因の一つに苛立ちを覚えつつ挨拶をした。

 

「これは博麗さん。お久しぶりです。ほら、えーと…妹さん名前なんでしたっけ?」

オオスは霊夢に挨拶をし、フランドールの名前を尋ねる。

オオスはフランドールと今の今まで名前すら知らないでべらべら喋っていた。

 

「フランドール・スカーレットって言っているじゃない!?」

フランドールは激昂して名乗った。

 

「今、初めて聞いたんですけど」

オオスは思わず真顔で反論する。

 

「とりあえず、両方退治しても良いのかしら」

面倒臭くなった霊夢はまとめて倒そうかと思い出した。

レミリアもその場にいたらやっちゃえ、やっちゃえ!と言うこと間違いない。

 

「私は人間なので魔法カード『退治されない』を発動します。

 じゃあ、ご機嫌ようフランドールさんと博麗さん」

オオスは早口で魔法と宣言して懐から煙玉を出して地面に叩きつけた。

 

先日の煙玉を改良したのだろう。霊夢が風を起こしても煙が晴れる様子もない。

そして、煙が晴れたときにはオオスの姿はどこにもなかった。

 

「逃げたわ」「逃げたわね」

フランドールと霊夢は同じ言葉を発した。

 

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