嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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厄流し祭

初夏を過ぎ、深緑の季節。オオスは人里の夏祭りに新しい行事を作ることに成功していた。

…阿求のお陰である。

オオスは稗田家の権力を使い、鍵山雛の厄流しを効率的に『祭』の形で実現していた。

 

オオスはこの日、厄流し祭についての紙芝居で祭りの参加者全員に何度も内容を解説していた。

 

「厄流し…厄払いとは、古くいえば平安時代の陰陽道まであります」

オオスは陰陽師が厄を払う様子を紙芝居にして解説する。

 

「有名な物語だと、『源氏物語』に出てくる光源氏の義母、藤壺中宮とその妻、紫の上が当時の厄年といわれる37歳にあたり、厄払いをする様子が描かれています」

オオスは紙芝居で簡略化した図式で源氏物語を解説していた。

 

オオスのそれは、もはや紙芝居ではなく、解説講座みたいになっていた。

なお、藤壷はこの年心労で亡くなるがオオスは無視した。

 

「中国では12年ごとに、つまりは干支毎に厄年とし、金色や赤色のものを身に付けることで、災厄から身を守るという風習があります」

オオスは赤や金の衣服や装飾をした人々の様子を紙芝居で指名していた。

…もうオオスは紙芝居という名の諸外国の厄払いを解説し始めた。

 

なお、商魂逞しい河童は赤、金のネックレス等を販売していた。

オオスも霊夢を煽って博麗神社の装飾具やお守り等を販売させていた。

 

だが、河童の方が上手のようである。

オオスの紙芝居を下にコマーシャルのような物をしていた。

…河童印の何とやらという感じの映像を流していた。テレビのようだ。

 

あれでは霊夢の販売方法では勝てない。

オオスは神を応援するような真似はしたくなかったので梃入れできなかったことを反省した。

だがそれは来年の課題となるだろう。

 

「イギリスでは、一般的には男性は4のつく年、女性は7のつく年がよくない年とされています」

オオスは鍵山雛の流し雛以外にもメインイベントを考えていた。

…河童にグッズ販売で負けてもこれだけは確保できると自画自賛した策であった。

 

「また、同国では年の数だけ木の実や木を集め、3日間外気にさらし、近所の庭先で焼くことで厄を祓えるとされています」

オオスは紙芝居で焚き木を囲み、祝っている様子を示していた。

これは神ではなく、風習である。オオスとしてもギリギリセーフのラインだった。

 

「焼く際、多くの人に見てもらうことで厄祓いの効果が高まるとされています」

オオスはそう言って、霊夢の方へ注目を向けた。

 

「霊験灼かな博麗神社のお祓い済みの小枝よ!安いわよ!後、お賽銭も入れて頂戴ね!!」

霊夢はこれでもかという位頑張って宣伝していた。

どうも河童の売り上げに対する鬱憤を晴らしているようだ。

 

オオスが用意していた大量の小枝なのだが、霊夢はお祓い等もしていたようだ。

その霊夢を魔理沙が手伝っていた。

…あの様子だと売り子がどう頑張っても足りないので雇ったのかもしれない。

 

「見ての通り、今回は厄神様へ流水のような形で厄を流す以外にもイベントが用意されています!」

オオスは声を張り上げた。要は霊夢が売っている小枝を燃やす焚き木だった。

 

「お焚き上げやどんと祭に近いものと思ってください」

オオスは例え話として皆に言った。神の行為を助けているわけではない。

神儀ではないのでセーフとオオスは自らに言い聞かせる。

 

オオスは霊夢が余計なことを言っているとも思ったが、ギリ許容範囲だ。

 

「いつも以上に厄を流す機会として、大量に流し雛が用意されています!」

オオスは厄神様、鍵山雛の方を指し示した。…紙芝居はもはや無視である。

 

オオスは普段の紙芝居で鍵山雛に厄を流しつつあった。

雛曰く、人里から相当量の厄を流せているとのことだった。

 

雛はオオスの方へ手を振って応えてくれた。

…いつも以上に大きな渦上の流し雛装置を用意していた。

直径10m位の円の中心に鍵山雛はいた。里人達は紙製の流し雛で厄を流していた。

 

「火事にならないように細心の注意を払っています。見てわかるとおり、円を描くように下には水が張り巡らせています」

オオスは今回新たに企画したイベントの焚き木の安全性を謳う。

 

「更に、いざとなれば私がここら一帯を雨にします!」

オオスは人外の術を行使すると宣言するが、誰も驚かない。

オオスの異変事情はもはや周知の事実と化していた。

 

…阿求に色々理屈つけしてもらい、オオスは半分人間を辞めているがまだ人間であるという感じになった。

オオスとしては不満だが、致し方がないと思っている。

 

「…前に博麗神社だけ晴れにしたのはこれの予行です」

オオスは前に起こした小規模な異変の真意を語る。

 

霊夢が花見を見たいらしいことは聞いていたが、ついでに利用させて貰った。

博麗神社に直接異変を起こすという偉業は妖怪達の間でも評判だった。

河割異変のすぐにそれとかマジかよ…という感じであった。

 

…何か、妖怪達からオオスは拝まれ始めているような気がする。

オオスは些事として流してはいる。気にしたら負けだ。

 

「神に祈るのではなく…ではなくて皆さん安全にお祭りを楽しんでください!」

オオスは思わず本音が漏れたが、祭りの宣伝を一先ず終えた。

 

オオスは祭りの期間中、何度も手を変え、品を変えて注意喚起を促していた。

 

 

関係者控え室に入ったオオスは神に関する事柄を多く見て疲弊していた。

 

「ああ、疲れた」

思わず声を漏らした。肉体より精神が疲弊する。

 

「霊夢が博麗神社の宣伝とお賽銭まで要求するとは…」

オオスは愚痴る。霊夢は商魂逞しいが、結構な商売下手だった。

 

オオスが霊夢に一々関わって修正するのも面倒臭かったので、案を作成して霊夢に投げていた。

…ほぼオオスの原案を変えない代わりにお祓い等絡めていた。

 

そこへ阿求が入って来た。誰もいないから愚痴っていたのだが、オオスは一先ず辞めた。

 

「…それが狙いだったんでしょうに」

阿求は呆れて呟いた。オオスに聞こえない程度の声で。

 

「阿求さんどうもこんにちわ。いや、盛況ですね」

オオスは阿求へ挨拶をした。最大級の礼をもって挨拶する。

 

「お疲れさまです。まぁ、私も手をまわしましたが…あなたの紙芝居どんだけ効果あるんですか」

阿求はオオスに思わずツッコんでいた。

 

オオスの紙芝居が神芝居の間違いではないかと思う程簡単に祭りの開催は簡単だった。

阿求は最近、オオスは妖怪ではなく神に近い存在ではないかと疑っていた。

 

神話上、神嫌いの神はいなくはない。

だが、特定の神に対してであり、神全般が嫌いな神等聞いたことがない。

 

…オオスが行動できない間、阿求は稗田家の力を使い里人の本音を聞き出した。

概ねそんな似たようなことを思っている者が多数いた。

オオスには黙っておくことにした。面倒臭いことこの上ない。

絶対自己否定をし出すと阿求は確信している。

 

「流水なんでレミリアさん参加できなくて申し訳ないですが」

オオスは阿求のツッコミをスルーして呟いた。

 

レミリアには先日、この祭りを開催するのは、オオスは神に屈するわけではないことを愚痴ってしまった。

なお、パチュリーはオオスの力説具合に呆れた。愚痴というより神を冒涜する演説であった。

レミリアも変に感化されていた。オオスは本心から言っているのが伝わったからだ。

 

パチュリーはオオスに言動に気を付けるように注意した。

オオスの弁舌は人を良くも悪くも感化させる。もはや魔法以上の領域であった。

 

「ああ、紅魔館の…」

阿求はこの行事に悪魔を呼びたいと抜かすオオスの真意がわからなかった。

 

阿求はオオスと深く関わるようになったからこそ、オオスがよりわからなくなっていた。

…そして、それが更に深みに嵌っていることに阿求も気が付いていた。

だが、阿求はもはや気にはしていなかった。今更であった。

 

オオスは阿求と話しつつ、祭りの進行状況の報告書の束をざっと読んだ。

オオスが既に手配した祭りの監視網であった。

 

「河童の出店で詐欺紛いの物を売りつけている。…まぁ祭りだし問題ないな」

オオスは気になった点をチェックしていた。

 

なお、許容値を超えればオオスはしばきに行く所存であった。

…それは人妖問わず予め警告済みだった。

 

「いや、普通に注意しましょうよ。そこは」

阿求はオオスにツッコんだ。…阿求の知る普段のオオスなら磔にしても可笑しくないのだが。

 

「祭りならば多少騙されても…悪質なら気が付かれないように私がやっておきます」

オオスは阿求にはもう隠さずに暗躍を仄めかした。

 

「はぁ…わかりました。では、私は他に挨拶回りがあるので」

阿求は稗田家当主として挨拶回りを再開することにした。

オオスが紙芝居という名の定時の注意喚起が終わったのを見計らって様子を見に来ていた。

 

「ああ、そうそう。…例の件はもう大丈夫です」

阿求は去り際にオオスへ告げた。これだけでオオスはわかるだろうと確信しつつ。

 

「ありがとうございます。お体に気を付けてくださいね」

オオスは共犯者、阿求へ労わりの言葉をかけて見送った。

 

阿求が去ってオオスは休みながらも計略を考え直していた。

 

「…このタイミングであの一帯を確保できたのは大きいな」

オオスは阿求の仕事に感謝した。

 

「粉屋は、皆自分の水車に水を引く…か」

オオスは人が皆自分の都合の良いように事を運ぼうとするのを知っていた。

 

だからこそ、オオスは自身の行為に自信を持つ。

欲望と資質は人間をどこまでも高めてくれる。

 

「さあ、人の欲望を利用させてもらいましょう」

オオスはそう言って祭りの様子を見に行くことにした。

 

「取り敢えず、河童に警告と雛さんへの挨拶。水回りの確保。天候を操る魔法の確認…」

オオスはブツブツとこれからの予定を確認し出した。

 

阿求の手前オオスは休んだ振りをしたが、実は全然休んでいなかった。

 

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