嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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月の兎

大暑の次候、土潤溽暑の満月の日。その日、18m程の布のような物が月から舞い降りた。

 

オオスは魔法の森で実験をしていたところだった。

満月の例月祭で永遠亭と関わらないように敢えてしていた。

しかし、オオスは見てしまった。…見て見ぬふりもできない。

 

「…ついに来たか」

オオスは月から何者かがやってきたのを悟った。

そして、それは博麗神社の方へ落ちて行った。

 

「面倒臭いが、特に用事もない」

オオスは野次馬根性で博麗神社へ行ってみることにした。

…計略もあるが、誰にもわかりはしない。オオスは確信していた。

 

 

 

その日の霊夢は八雲紫から発破をかけられたこともあり、神降ろしの練習をしていた。

 

「『天石門別命』」

霊夢は神降ろしで天石門別命を呼んだ。博麗神社に一瞬大穴ができた。

 

「…天石門別命ではダメね。隙間を使うような妖怪がいるのだし」

霊夢は前に神降ろしをした際に紫にあっさり交わされたのを思い出して呟いた。

 

霊夢は何かが起こると勘が囁いていたので普段とは違い真面目に訓練していた。

 

だが、

「それ、空を飛べる相手には効果薄いですよね」

思わぬ男が霊夢に声をかけてきた。

 

「アンタ…こんな夜更けに何の用かしら?」

霊夢は普通の里人は出歩かない時間帯に博麗神社に来た理由を尋ねた。

 

「何か空から落ちて来たみたいなんで、探しているのですが…」

オオスは霊夢の様子等お構いなしで辺りを見回す。

 

そして、

「誰!?」

霊夢は何者かの気配に気が付いて後ろを振り向いた。

 

「妖怪兎?…罠でもかかったのかしら」

霊夢は怪我をした妖怪兎を見て呟いた。

 

「ふむ。怪我?スペースデブリにでもぶつけたり…なんて」

オオスは霊夢の良くわからないことを呟いていた。

 

「さあ、霊夢さん。これを飲ませましょう。一瞬で回復しますよ」

オオスはそう言って見るからに毒の液体を懐から取り出した。

 

「…!この妖怪になにするつもりかしら!?」

霊夢は思わず身構える。

 

しかし、

「いや、治療ですってば」

オオスは平然と宣った。…霊夢の勘は嘘ではないと言っている。

だが、霊夢から見て明らかに毒物である。

 

「ああ、もう面倒な」

オオスはそう言ってあっという間に消えた。

 

「糞!どこから!?」

霊夢は何度もこの光景を見てきた。

しかし、最近増々隠れるのが上手くなったオオスを見つけられない。

 

「はい。グイッといきましょうね」

オオスは妖怪兎の口に液体を流し込んだ。

 

「殺す気か!」

霊夢は思わず背後から現れ、妖怪兎に毒らしき物を飲ませたオオスを殴りつけた。

 

「ぶへら!?」

オオスはもろに霊夢の拳を食らって吹き飛んだ。…やり過ぎたかと霊夢は思った。

 

だが、

「一回、死亡とか殺す気ですか」

オオスは何でもないように直ぐに立ち上がった。

 

…もう一発お見舞いしてやろうと霊夢が思ったその時、

 

「…なんとか地上にたどり着いたようね」

妖怪兎が目覚めて何事かを呟いていた。

 

「…大丈夫かしら?」

霊夢が妖怪兎に駆け寄る。しかし、よく見ると怪我も何もかも治っていた。

 

「…言ったでしょう。治療だって」

オオスは首が痛むのか後ろ手を当てて言い切った。

 

「あんなん毒にしか見えないわよ!」

霊夢はオオスにツッコんだ。…明らかにヤバい物だった。

 

「貴方が助けてくれたのかしら?一応、お礼を言うわ。ありがとう」

妖怪兎は何だか自然体な傲慢さを感じる礼を言った。

 

「何で月の兎が、玉兎が地上にいるんですか?」

オオスはわけのわからないことを言い出した。

 

「…?月の兎なんて来るわけないじゃない」

霊夢はオオスにツッコんだ。

 

「…何故それを」

妖怪兎はオオスに臨戦態勢をとった。そして、姿が消えた。

霊夢は辺りを見回すがまるでどこにいるか分らなかった。

 

だが、

「無駄ですよ。月の光学迷彩は解析済み…そもそも効きもしませんが」

オオスは妖怪兎の首ねっこを掴んだ。

妖怪兎の動きはオオスには完全に見えているようだった。

 

「ぐはっ!」

妖怪兎は首根っこを急に掴まれてうめき声をあげた。

それと同時に何が起こったのかわからないという反応をする。

 

「やめなさい!」

霊夢は神社で戦おうとする二人を止めた。

 

「…失礼を。月の兎さん。初めまして。私の名はオオス。

 幻想郷の善良なる一般里人にして紙芝居屋を営む者です」

オオスはいつものような戯言をほざいていた。

 

「…何者ですか」

妖怪兎はオオスへ警戒していた。

 

「挨拶は大事ですよ。それにあなたの傷を治したのも私。

 スペースデブリにでもぶつかったんじゃないですかね?大方」

オオスは自然体を崩さずに霊夢のよくわからないことを言う。

 

「…確かに三寸級のにぶつかったかも」

妖怪兎はオオスの話に同意したようだ。

 

「ひょっとしてえ…」

霊夢が永遠亭の月の民のことを漸く気が付いた時、オオスに手で制された。

 

「なるほど、挨拶は大事だと習わなかったのでしょうか?」

オオスは妖怪兎、否、月の兎に声をかけつつ霊夢にどこからか同時に声が聞こえた。

 

『この方に霊夢さんが関わると厄介です。ここは適当に相手をしましょう』

オオスの声であった。よく状況がわからないが、霊夢の身を案じているのは伝わった。

 

「私を月の兎だと断じる貴方は誰なの!?」

月の兎はオオスを警戒しまくっていた。

…オオスは何がしたいのか霊夢にはわからなかった。

騒動を返って大きくしているような気がする。

 

「私の名はオオス。貴方は変装が下手くそです。

 …地上の兎に化けるにしても、羽衣にしても。三流の兎にしか見えない」

オオスは月の兎を煽りに煽っていた。

 

「…何故体力が回復している?」

月の兎は自分の体の異常に気が付いたような反応をしていた。

 

「地上の薬です。正直、医者代払ってもらいたいのですが」

オオスは平然とあの毒物を薬と言い切った。だが、効果は確かなようだと霊夢は思った。

 

「私は霊夢さんの顔を立てて、貴方を見逃します。霊夢さんの顔を立ててですよ」

オオスは霊夢の顔を立てて見逃すという。

しかし、勝手に話を勧められると霊夢も困るのだが。

 

「何が月で起こったかなんて興味の欠片も無いですが」

オオスはそう言って話を打ち切った。

…霊夢が口を挟もうとしたタイミングで何度も邪魔をする。

 

「強いて言えば真っ直ぐあちらへ向かいなさい。貴方の助けになるでしょう」

オオスはそう言って迷いの竹林の方角を指し示した。…永遠亭の方角である。

 

「…さっぱりわからないんだけど!どういうことよ!?」

霊夢は自らの頭越しで話されるのに憤慨して叫んだ。

 

だが、

「…ありがとう」

月の兎はそう言って姿を消した。

 

「…霊夢さん。ごめんなさい」

月の兎が消えたのを確認してオオスは霊夢に謝罪してきた。…真摯な態度である。

 

「じゃあ、何があったのか説明しなさい」

霊夢は当然のように聞いた。

 

しかし、

「私にもさっぱりわかりません」

オオスは心底わからないという風に答えた。…霊夢の勘は本当だと言っていた。

 

「…じゃあ、何?アンタ適当に煙に巻いて永遠亭に行かせただけ?」

霊夢はイラっときた。それならそうと言えば良いのにと思った。

 

「いや、殴るのタイム!死んじゃう。本当に」

オオスは見苦しいことを言っていた。

 

霊夢は死なない程度にオオスをぶん殴って気絶させた。

…よくわからないがスカッとした。

 

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