嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!

ドレミー・スイートは夢の世界へやってくる魂と夢の世界のバランスを守るという夢の世界の管理者である。

彼女に知らない夢の存在はないはずであった。

 

だが、

「何なの…これは」

夢の支配者ドレミー・スイートは突如として出現した幾何学模様の門を見て驚愕していた。

 

材料こそ夢の物質でできているが、ドレミーはこんな物は知らない。

…謎の未知の存在であった。

 

ところが空気を読まずにいきなり何者かが門の外から現れた。

 

「さあ、ここならば、夢の世界ならばどれだけ暴れても問題はない」

生身の人間の男が門の中から現れてそう言った。

 

夢の世界の管理人として聞き逃せない問題発言を堂々と男は言った。

…ドレミーとしても確かに暴れても問題ない。だが、それを言って良いかは別だった。

 

「生身じゃないの!?何で人間が生身でここに来れるの!?」

ドレミーは思わず叫んだ。有り得ない光景が目の前にあった。

 

生身でこちらに、夢の世界に、自分の意思で目の前の男は来ていた。

夢の世界と断言していたので間違いなく意図的に起こした現象である。

 

そして、ドレミーは悟った。…この男の正体は自分とは異なる夢の支配者だ。

しかし、ドレミーはそんな存在を知らないし、聞いたこともない。

 

さらに、

「…なるほど、異界の門だったか」

今度は神霊が現れた。ドレミーからして、またしても有り得ない光景だった。

 

「ここは夢の世界です!今すぐ肉体だけでも現に戻さないと大変なことになるわ!」

ドレミーは叫んだ。夢の世界で生身でいれば大変なことになる。

…実体は失われ、夢の世界の自分と現実が入れ替わる。

 

だが、異なる夢の支配者はどうなのだろう。…ドレミーは叫んだ後にふと思った。

 

「ああ、なるほど。『私』が会っていたのか…」

男は何事かを呟いた。

ドレミーは辛うじて聞き取れたが、それが何の意味かわからなかった。

 

「これは失礼を。お久しぶりです。ドレミーさん」

男はドレミーのことを知っているように礼をした。それは優雅な礼だった。

 

「また会うって言ってましたよね。私の名はオオス、否、×××××と申します」

オオスは名乗りをあげた。それは夢の支配者ドレミーが知らない名前だった。

 

 

 

「私の名前は×××××。そして、夢の世界の超越者にして狂気を司る者」

男は神奈子へ名乗りを上げて宣言した。

 

「…司るというのは神であるということかい?」

神奈子はオオスへ問いかけた。

人間として意地の張り合いを宣言していたが、違うのかと問う。

 

「否事を。私は人間だ。どこまで行こうとも人間だ。…その為ならば神すら超越してみせよう」

オオスは神ではなく、人として傲慢不遜に神へ宣言した。

 

「では、夢見の力で創造しよう。…ここならば想像により創造が可能だ」

オオスはそう神奈子へ言った。

 

「ドレミーさんはまた後日。申し訳ありませんが私用が先です」

オオスは唖然とするドレミーに謝罪をした。

 

その瞬間、神奈子から見てドレミーはいなくなった。

 

…瞬間移動でもしたかのように別天地へと移り替わった。

そこは冬景色の美しい土地だった。朧げな月が幻想的な光景を醸し出していた。

…水平線が見える程果てしなく広い土地だ。

 

「これは…」

神奈子は驚愕した。

 

乾を創造する能力の神奈子は坤を創造する能力を持つ諏訪子を思い出した。

諏訪子は大地を創造し、操り、無から創造が可能だ。

しかし、それは神だからだ。神奈子も天を操れる。

 

…ここが夢の世界であるとはいえ、目の前の男はこの場所を創造していた。

 

「かつて、存在したクラネス王はドリームランドにてセレファイスを創造していた」

オオスは淡々と神奈子へ説明するように言う。

朧月を見上げながら神奈子へそう言うオオスは季節外れの雪景色と喪服が容姿とが相まって神すら魅了する程に美しかった。

 

…神奈子はクラネス王もセレファイスという存在のどちらも知らなかった。

 

「ならば、人の身で同じことができぬ道理はない」

オオスは何でもないかのように言い切った。

オオスは神奈子に向き直った。

 

「さて、ここからが本番だ。私の領域で根比べと行こうじゃないか」

オオスはそう言いつつも、神にならぬ身で、人間としてでは勝てぬと悟っていた。

 

霊夢の勘は正しかった。…オオスでは善の存在には勝てない。

 

しかし、

「…やめた」

神奈子は呟くように言った。…神奈子の方が先に勝負から引いた。

 

「何故?今更引くというのか!?」

オオスは激怒した。

ここで退くのはオオスを人間として侮辱しているのかと思い、叫んだ。

 

神奈子はオオスの立場からしたらそうだろうと思った。

 

だが、

「違う。…神として、ここまで力を持ちながら人のままのお前が惜しくなった」

神奈子は本音を言った。…確かに自力の差で神奈子ならばオオスに勝てるだろう。

 

「この時代に、神秘を喪った時代に、だ。…お前のような存在が現れた」

神奈子は神として感動していた。…神奈子はもはや失われたと思っていた。

 

「この気持ちがお前にわかるか?幻想として自己を否定されて、新天地に来て、だ」

神奈子は神としてではなく、個人として本音をぶつけていた。

 

「…お前は外の人間だろう?うちの早苗と同じ、否、もっと何もないただの人間だ」

神奈子はそうオオスに言い切った。

 

神奈子はオオスの本性を神として見抜いていた。

 

神奈子は戦いの最中で悟った。

オオスは何の神秘を持たぬ一般人から生まれ、始まっていた。

 

オオスは素の身体能力であることをここ、夢の世界に来て神奈子は改めて確信した。

早苗や霊夢のような超人的な身体能力を持たない。

オオスの生まれは、神秘を否定された世に生まれた、ただの一般人だった。

 

戦神に相当する側面を持つ神奈子はそれが確信できた。

 

それがここまで、神に等しい権能を有して現れた。その意味するところの奇跡。

…神奈子は昔に戻ったような気になったのだ。

 

そんな感情を持った神奈子はオオスと戦えなかった。

 

「…戦う気力を失くした。そんな相手と戦ってお前は嬉しいのか」

神奈子はオオスへ問いかけた。…自分でも意地の悪い問いだと思った。

 

「…これだから神というのは碌でもない!!」

オオスは呪詛を吐いた。

 

…こんな状態の神奈子に勝っても負けてもオオスには意味がなかった。

 

…この自己中心的な神は、鬼と出会う前のオオスそのものだった。

オオスは命を懸けて萃香に、真逆の同類に会おうとした自分と重なった。

 

「もう良い!勝負はお預けだ。…糞が!」

オオスは優雅な振舞い等お構いなしに感情のまま悪態をついた。

 

そして、幾何学模様の金属でできた門が現れた。

ここは×××××の領域だから自由自在に出すことができた。

オオスは神奈子ごと問答無用で夢の世界から守矢神社へ転移させた。

 

 

 

守矢神社にまたしても門が現れた。

霊夢と早苗は守矢神社の片づけを、もう一人の神である諏訪子としていた。

 

「帰って来たね」

諏訪子は門の外側から神奈子の気配と誰かの気配を感じ取って言った。

 

そして、門が開いた。

 

「神奈子様!」

早苗は神奈子を見つけて抱きしめていた。

異界に行って戻ってこないのではないかと心配してしまったのだ。

 

「おお、早苗!どうしたそんなに抱き着いて」

神奈子は早苗の幼い頃を思い出して嬉しそうに言った。

 

そして、

「…」

あからさまにイラついているオオスが現れた。

 

「この馬鹿!」

霊夢はオオスを見てぶん殴った。

 

「ぐへぇ!」

オオスは思わぬ一撃をまともにくらい吹き飛んだ。

…霊夢は感情のままに拳を叩き込んだので、オオスの安否を心配した。

 

だが、

「…残機が一また減った。霊夢さん!次やったら私死にますからね!!」

オオスは平然と立ち上がって霊夢にそう言った。事実である。

 

「無茶苦茶にもほどがあるわ!!」

霊夢はオオスの無事を見て怒った。…もう少し堪えろと思った。

 

「なるほど、身代わりか」

神奈子は興味深げにオオスの術を分析していた。

ここまで見事なダメージの転写は神奈子も見たことがない。

 

…死んだと思ったら生きていました。初見では神奈子でも危ないかもしれない。

 

「霊夢さんのせいで次戦う時の手札が一枚減ったんですけど」

オオスは霊夢に愚痴った。…オオスはまだ神奈子と戦う気だった。

 

「まだ戦う気なのかい…」

神奈子は呆れた。…オオスの意地は神をも凌ぐと認めた。

 

「今回は私の負けで良いから、家で飯でも食っていけ」

神奈子はオオスにそう言った。

神奈子は実に機嫌が良かった。…幻想郷に来てかつてを思い出した。

 

しかし、

「そういう風に勝ちを譲られると嫌なんですけど」

オオスは本当に嫌だと言った。

 

「…神奈子。こいつ大丈夫なの?」

諏訪子は思わず尋ねた。諏訪子から見てオオスはどう見ても懲りていない。

 

「大丈夫だ。…多分」

神奈子もちょっと不安になった。

 

「じゃあ、ご飯にしましょうか」

早苗は明るい笑顔でそう言った。

 

「…それで良いの?アンタは」

霊夢は早苗の様子を見て、呆れて言った。

 

「私、わかったんです」

早苗は霊夢の問に返すことにした。

 

「この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」

早苗は笑顔で宣言した。…早苗は何か悟ったかのような自信満々の表情で言い切った。

 

「いや、幻想郷でもこれはないわ」

霊夢は幻想郷の博麗の巫女として言い切れた。

 

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