オオスは片付けもせずにどこかに出て行ったことを霊夢に怒られていた。
「まぁ、待って。話を聞けば納得してもらえるかと」
オオスは自らを正座させ、睨む霊夢に言い聞かせるように言った。
「…アンタが口を開くと碌なことにならないのだけど」
霊夢はそう言いつつも聞かないでぶん殴ると後で面倒になるかもしれないと思った。
なお、オオスがいない間に魔理沙が来て、神奈子との弾幕ごっこを楽しんでいた。
神との遊びである。…諏訪子も自分もやると言い出して現在、魔理沙は連戦中であった。
「都市伝説が正座させられている…」
早苗は外の都市伝説が正座させられて叱られているのを見て少々唖然とした。
「…何か、早苗の奴アンタのこと知っているみたいなのよね」
霊夢は何故かオオスのことをすんなり受け入れている早苗を見て言った。
…オオスの方も神奈子と諏訪子の神々を知っていたようだ。
霊夢は自分が知らないことにイラっとした。何故かわからないが。
「ああ、私、外来人なのでどこかで聞いたのではないでしょうか?」
オオスは心当たりがないが、オカルト関連で早苗が知った可能性を思い言った。
天狗のことを言うのは神奈子等が居た時で良いだろうと思った。
「…アンタ外来人だったの?…というか人間だったの?」
霊夢はオオスが外来人という事に驚きつつも、それよりも人間だったことの方に驚いた。
「失礼な!私はどこからどう見ても善良なる里人でしょう?」
オオスは霊夢の疑問にイラっとして言い返した。…なお、正座のままである。
「…何か私もあんまり詳しくないんですけど、人間?」
早苗は異界を支配し、悪人や化け物を懲らしめるという都市伝説を思い返しつつ言った。
早苗がその都市伝説を初めて聞いた時、神の領域に近い存在だと思った。
…オバケにあった時、喪服姿の『彼』に祈ると怪奇現象を異界に引きずり込んで助けてくれる。
さらに吉兆に現れるとか何とか。早苗はその辺りの詳細を知らなかった。
…同級生が六文銭をイメージしたと思われるアクセサリーを着けていたのを思い出す。
喪服に六文銭とは三途の川の渡し賃のようだと思った。
早苗は新しい都市伝説にしては随分手が込んでいると印象に残っていた。
ここまで手の込んだものはそうそうなかった。
…誰かが意図的に流しているようだと早苗は陰謀論染みたことを思っていた。
「やっぱり人間かどうか疑われているじゃない。アンタ外で何したのよ?」
霊夢は早苗がオオスを人間か疑う有様を見て取って言った。
「いや、普通に生活していましたよ?」
オオスは霊夢に平然と嘘をついた。
…普通に生活したくとも勝手に邪神が週一以上のペースで攻めてくるのだ。
何度肥溜めに叩き落としたかわからない。
「…まあ、詳しくは聞かないでおくわ」
霊夢はオオスの嘘を勘付いた。だが、これは触れられたくない物だと察して追及を辞めた。
…霊夢も空気は読むくらいにはオオスの雰囲気がおかしかった。
「何かやたら手の込んでいる都市伝説だったので覚えていたんですけど…。詳しくなくてごめんさない」
早苗はオオスに謝罪した。
オオスの方は守矢神社について早苗以上に詳しいのを見て何だか申し訳なく思ったのだ。
…罰当たりな発言やら神奈子との殺し合い等から早苗は目を逸らした。
「いや、どうでも良いんですけど。何で私、都市伝説になっているんですかね」
オオスは早苗の謝罪を困惑しつつも、躱した。
それよりも外で自分は都市伝説扱いなのかと思った。
そんな感じに三人で話していると疲れた様子の魔理沙と楽し気な二柱が現れた。
「早苗―。ごはんー」
諏訪子はいい運動になったと思いつつも、ご飯を早苗に要求した。
その姿はまるで外で遊んできた幼子のようであった。
…オオスは目の前の存在が土着神の頂点だと知っているのでギャップに驚いた。
というか何故蛙なのか不思議だった。蛇じゃないのかアンタなどと内心ツッコんでいた。
「神二人に連戦とかキツイぜ」
魔理沙は愚痴りつつ、ただ飯を貰いに守矢神社の直会殿に入って来た。
…内心宝物を奪えないかと罰当たりなことを考えていた。魔理沙は魔理沙であった。
「私もある意味連戦だからね」
神奈子は魔理沙の愚痴に答えるように言った。
…実際、オオスとの殺し合いを含めれば連戦であった。
「霊夢がいるのは納得なんだが、何でお前がいるんだよ」
魔理沙はオオスを見てツッコんだ。
博麗神社と違って本当の神々のいる空間に神嫌いのオオスがいることに違和感を覚えた。
「かっとなって喧嘩を売りました。本来はアレですが、仕方がなしに」
オオスは端的に自分がいる理由を述べた。
神に喧嘩を売って、それが一時停戦になったので飯を食べるのだ。
「…よくわからんが分かった」
魔理沙はオオスの言葉を理解するのを放棄した。そんなことより腹が減った。
「今日はオオスさんが出て行く前に置いて行った山菜を中心としたご飯です」
早苗はそう言って諏訪子達へ夕食の内容を説明する。
「…今更ながら何で春の山菜が沢山あるんですかね?調理楽で良かったんですけど」
早苗は何故秋に春の山菜があるのか今更ながら疑問に思って言った。
…下ごしらえが済んでいたので春の山菜を楽に調理できて有難かったが。
「何かこいつ魔法の森で春の山菜を研究しているらしいからその関係じゃないか?」
魔理沙はオオスの魔法の森での実験を思い出して言った。
なお、魔理沙はオオスの実験の表面的なことしか知らない。
そして、魔理沙はオオスが危険な魔法薬の材料まで栽培していると知っていたら盗みに行く。
「本当は天魔という方に用があって土産として持って来たのですが、何か面倒臭くて」
オオスの本来の目的としては天魔に挨拶して、季節外れの山菜を持って行こうかと思っていた。
オオスは前々から山に忍び込んでいるのがバレているようだった。天狗の術を使っていたのだから当然である。
なので、謝罪と今後の取引を含めた会話を天魔へ持って行こうと思っていた。
元々無理だと思っていたのに、神奈子との殺し合いが始まった。
仕方がなく捨てるのも嫌なのでオオスは早苗に置いて行ったのだった。
なお、もし叶っていた場合、天魔は他の者を追い出してでもオオスと話をしようとしていた。
「天魔って言うと確か、天狗達の親玉だよな」
魔理沙は呆れて言った。会えるわけがないだろうと思った。
「つい先ほど会ってきました。何でも守矢神社の神々と秘密裏に話があるそうですよ」
オオスは淡々と、そして平然と天狗の予定する秘密会談をばらした。
「何だか結構丁重に持て成したいとか何とか」
オオスはそう神奈子と諏訪子に言った。オオスとしては善意でばらしていた。
話が円滑に行くように内通者がいた方がこの場合は良いとオオスは判断した。
「…神としては有難い話なんだけど何でそれを知っているんだい?」
神奈子も天狗と話したいと思っていたので渡りに船だった。
だが、オオスに何故それを知っているのか尋ねた。…何となく察した。
なお、霊夢はキレる寸前であった。
「ちょっと弛んでいる天狗に挨拶してきました」
オオスはそう言って天狗の扇や剣を収納空間からバラバラと落とす。
…オオスにはこれらを返す暇がなく持って帰って来てしまっていた。
「…天狗の武器だよな。これ」
魔理沙は思わず指摘した。…一つか二つくらい持って行っても良いかと思った。
「これ返してきてもらって良いですか。面倒なので」
オオスはそう言って神奈子に渡した。…魔理沙に泥棒されると不味いと思った。
なお、さり気なくオオスは立ち上がり、正座を辞めていた。
オオスは霊夢のお叱りを回避しようと企んでいた。
「えーと…取り敢えずわかった」
神奈子はオオスの意味不明さにツッコむのを止めて取り敢えず了承した。
「アンタまさか天狗のところに喧嘩売ったんじゃないでしょうね?」
霊夢はブチきレイム寸前だった。オオスはまた碌でもないことをした。
「いや、挨拶しに行っただけですよ。その証拠にご飯前に帰ってきました」
オオスは霊夢の怒りを宥める為に頑張って食事前に帰って来たと主張した。
「…いや、武器強奪しておいて挨拶はないぜ」
魔理沙はオオスへツッコんだ。天狗の道具が奪えないことへの八つ当たりの感情もあった。
「流石に泥棒は嫌だったんですけど、返す雰囲気じゃなかったので」
オオスは他人ごとの様に言った。
「…喧嘩売っているというんじゃないかい?それは」
神奈子はオオスの反応を見て思わず呟いた。
「…神奈子?やっぱり大丈夫じゃないと思うんだけど」
諏訪子は神奈子が大丈夫というから守矢神社の内部までオオスを案内した。
だが、オオスはテロリストに近い存在ではないかと諏訪子は思った。
「祟り神の頂点がこの程度の些事を気に病むとは…」
オオスは驚愕した。まさか祟り神の頂点がこのような些事を気にすると思わなかった。
「いや、何か素で驚いているようだけど私そこまで悪い神様じゃないからね」
諏訪子はオオスが自分に一体どんなイメージなのかと憤慨して言った。
「つまり、コイツは祟り神より性質が悪いってことで良いのか?」
魔理沙は結論を述べた。内心呆れた。
「…外では守り神に近い扱いされていましたよ?」
早苗は一応、オオスをフォローするように言った。
だが、
「神とは失礼な!…外に文句の一つでも言いに行ってやりたい」
オオスはキレた。よりにもよって神扱いとは凄まじい風評被害だと激怒していた。
「ええ…」
早苗はオオスの返しに引いた。自分は何か気に障るようなことを言っただろうかと思った。
「…何か疲れたからもういいわ。ご飯にしましょう」
霊夢はオオスに怒るのを辞めた。…何だか色々疲れたのもある。
だが、外でのオオスは悪い存在ではないようだと知って安心した途端、怒る気が失せたのだ。
霊夢は不思議な気分だった。…怒りが丸め込まれたような気もしなくもないが。
「ごはん。ごはん♪」
諏訪子は純粋に夕食を楽しみにしていた。スキップで食事処に向かう。
それに神奈子もついて行く。…その身長差から二人が親子に見えなくもない。
「知っています魔理沙さん?あの神、祟り神の頂点なんですよ」
オオスは思わず魔理沙に耳打ちした。
…諏訪子の無邪気なはしゃぎ様に誰かに言いたかった。
「…そうなのか?」
魔理沙はオオスの耳打ちを聞いて、よくよく諏訪子を見た。
「お前の方が祟りっぽいんだが」
魔理沙は無邪気な諏訪子と神へ喧嘩を売るオオスを見比べてそう言った。
「そうですか?」
オオスは神扱いしない魔理沙の返しに気を良くして聞いた。
「というかお前、外来人だったのな」
魔理沙はオオスの反応を無視して言った。
…今思うとオオスは香霖堂でパソコン購入する等していた。
オオスは外来人だと隠していないようだと悟って魔理沙は言った。
「…何故か人里にいる外来人からも外来人って扱われないんですよ」
オオスはそんな魔理沙の様子を見て、思わず小さな悩みを打ち明けた。
何か人間じゃないように扱われているような気がするのだ。
「やっぱりお前、祟りか何かなんじゃねぇの?」
魔理沙は呆れてオオスに言った。
なお、守矢神社の夕食は大変美味であった。
…忌々しい神の社でなかったらなお良かったとオオスは思った。