オオスは忌々しい守矢神社で酒盛りをしていた。霊夢や魔理沙も一緒である。
…後片づけをしていたら、日が暮れて山を下りるのは少し危なかったからだ。
「貴方達が信仰を失う前に幻想郷に来るのはわかります」
オオスは神奈子に言う。
神としてではなく個人として見ることで嫌悪感を失くして話していた。
オオスとしてはこの神は一度失敗しているので何だかやらかしそうなのだ。
天魔には交渉のために大丈夫とは言った。一応、それはそれで嘘ではないのだが。
「その通り。新天地へ向けて私達は来たわけだ」
神奈子はオオスの発言に同意した。新天地に来てご満悦だ。
…何せもう天狗との交渉の糸口まで確保できたのだ。
後は外で考えた方法で信仰を集めれば問題ない。神奈子は確信していた。
「私に黙って勝手に転移したよね。私達ではないよ」
諏訪子は神奈子の様子に思わず愚痴る。もう勝手に転移したのに文句はない。
…ジリ貧でもう未来はないと諏訪子も思っていた。
新天地で楽しくやれるのは確信できた。
「…貴方は山の妖怪から信仰を得るつもりなので?」
オオスは一応、守矢神社の方針を確認することにした。
人里に集中せざるを得ないオオスでは妖怪の山にある守矢神社にあまり来れない。
…この機会を逃すと修正や忠告はできなかった。
「それもそうだが、山に信仰が集中すれば幻想郷のパワーバランスが崩れる。
だから、麓の博麗神社に分社を作りたかったわけよ」
神奈子は妖怪の山に神社を構えた問題点を自ら言った。
神奈子はオオスが問題視していることを察して言った。神奈子は妖怪の山だけを見ているわけではない。
…神奈子は自分だけ良ければ良いという神ではないとオオスへ強調した。
「私からすればたまったもんじゃないのだけど」
霊夢は酒を煽りながら神奈子へ文句を言う。実際、問題大ありだった。
「…これだから侵略者は困る」
オオスは過去の神話から神奈子に愚痴った。
「神奈子さんは昔の失敗を懲りていないんですか?」
オオスは神奈子が諏訪子の信仰を消せず、利用する形で発展した経緯を知っていた。
ある種の失敗と妥協の産物が守矢神社だと暗に非難していた。
「…まぁ、良い。今は酒の席だ。無礼講として許そう」
神奈子はオオスの意図を読み取りイラっときた。
しかし、酒の席ということで流した。
「霊夢さんと分社の件は相談してくださいね」
オオスは霊夢に投げた。後は霊夢と守矢神社の問題だった。
「それよりも、今後どうやって信仰を得るつもりですか?」
オオスは神奈子に幻想郷の神としての在り方を聞いた。
「信仰の押し付けで失敗したのが貴方の外での結果でしょう?」
オオスは諏訪子を見てから神奈子へ言った。そこには遠慮も躊躇もなかった。
「まぁ、私の信仰が結局なくならなかったからね」
諏訪子はオオスに同意した。諏訪子から見て神奈子は失敗していた。
「…幻想郷に来る前に既に手段は考えていたんだよ」
神奈子は私に考えがあると宣言した。
だが、味方の諏訪子までオオスと一緒に攻撃してきたので少し声を落とした。
「幻想郷に足りない物とは何だかわかるかい?」
神奈子はオオスに言った。外から見て学があれば気が付くはずと暗に言った。
「将来的に言えばエネルギー。近況で言えば力そのもの」
オオスは近況の力そのものを方針としていた。
エネルギーの問題は人里に住むオオスからすればまだ先だ。
エネルギーの問題は妖怪の山に住むことになった神奈子の視点だとオオスは思った。
「…そう、エネルギーだ。私は科学でもってそれを為そうと考えている」
神奈子はエネルギー不足を取り上げた。環境保護という外の在り方は幻想郷に波及する。
外の環境保護という考えにより、連続している閉鎖空間である幻想郷もまたエネルギー不足という事態になりかねなかった。
…神奈子には、オオスの言う近況の不足の意図が読めなかった。
「貴方もそれなら受け入れられるし、譲歩できると思うんだがね」
神奈子はオオスへ言った。神奈子は暗にオオスに協力しろと言っていた。
「外の科学は信仰によって発展してきた。それ故に外の問題は悪化した」
オオスは歴史全体を俯瞰した視点で言う。
…神奈子のやり方の問題はないが、本質を見誤っているとオオスは思った。
「私は外と同じ失敗をすると思いますよ。貴方のやり方では」
オオスは神奈子の目を見つつ断言した。失敗するから考え直せと暗に言った。
「ちょっと!何を言っているのかわからないわよ!」
霊夢は叫んだ。…外の話をされても意味が分からない。
「反省は科学に先行すべきです」
オオスは霊夢を無視して言葉を続けた。
反省ができなかった故の、歴史の汚点を俯瞰して言った。
…神奈子は神秘の塊の癖に科学信仰が過ぎるとオオスは思った。
「私が断言しましょう。貴方のやり方は失敗します」
オオスは神奈子のやり方を否定した。
神奈子はオオスが同じ考えないし近い考えだと思っているようだと確信した。
だが、オオスは神奈子の方針とは似て非なるものである。…ある意味逆だった。
「科学は反省をより方法的に利用するに過ぎない」
オオスはそう言い切った。
オオスは科学よりも先に教育に重きを置いている。だからこそ紙芝居屋をしていた。
「…失敗から得た教訓を元に既に考えているんだ。そういう理屈の上なら問題ないはずだ」
神奈子はオオスの賛同を得られないことを惜しみつつ、自分の考えでやると宣言した。
…外の科学と宗教を合わせれば幻想郷だからこその独自のエネルギーが開発できた。
神奈子は核融合炉を作り、幻想郷のエネルギー問題を解決するつもりだった。
オオスもそれを見れば乗るだろうと考え直した。
「なら良いですが。…私は忠告しましたからね」
オオスは神奈子に何を言っても無駄だと確信した。
神奈子は聡明だが、些か性急過ぎるとオオスは思った
オオスは嫌悪しながらも信仰を認めたのは科学を受け入れる土壌を作るためでもあった。
つまり、神奈子とは考え方が逆なのだ。…これでは合うはずがないとオオスは思った。
「…さっきから意味わからんな。二人の会話」
魔理沙が二人して話している内容がわからなかった。なので、早苗に解説を振っていた。
「要するに信仰の集め方で揉めているんですよ」
早苗は魔理沙にもわかるように簡単に言った。
「信仰をまず広げるか、良く考えてから広げるか」
早苗なりに解釈しなおして魔理沙へ言った。
…科学云々はわかりにくいだろうと多少の誤謬を承知で説明する。
「私は神奈子様の方が正しいと思います」
早苗は科学信仰者として神奈子が正しいと思った。
エネルギー問題が解決すれば、後からいくらでも解決の時間はあると思った。
…何故、オオスがそこまで反対するのか早苗には理解に苦しんだ。
エネルギー不足の現代日本から来たはずなのに。
「こいつが信仰について論ずるとか、烏滸がましいわね」
霊夢は早苗の話を聞いて、オオスの意見に呆れた。
だが、
「神奈子のは大丈夫かなぁ…」
諏訪子は思わず呟いた。
「何だい?諏訪子は私の味方だと思ったんだけどね」
神奈子は諏訪子の呟きに反応して言った。
「いや、あっちのが正しそうなんだよ。何となくだけど」
諏訪子は実際幻想郷に来て時間があると思った。
だから、良く考えてから行動しろというオオスの意見の方が正しいと思った。
神奈子が幻想郷に守矢神社を勝手に移転したこと自体は悪いと諏訪子は思わない。
しかし、それとこれとは別なのではないかと諏訪子は思った。
「何となくでは科学的ではないよ」
神奈子は諏訪子に笑って言った。
神奈子は諏訪子が幻想郷に勝手に移転したことをまだ根に持っているのかと思った。
「神奈子さんのは観念的な物を行っているに過ぎません」
オオスは神奈子の科学は科学でないと反論した。要するに理論がないのだ。
「実在に関する科学でない以上、科学からの信仰は不完全な形となり現れるでしょう」
オオスは理論なく科学を利用すれば、信仰も必然的に不完全な信仰となると宣言した。
「意味わからんぜ」
魔理沙はオオスの意味不明な言葉の羅列に思ったことをそのまま口にだした。
「戯言だ。問題ないよ」
神奈子はそう吐き捨てた。そして、オオスの空論に呆れた。
神奈子からすればオオスの意見は役に立たない理論家そのものだった。
「それよりも飲もうじゃないか!折角の酒盛りだ。楽しく行こう!」
神奈子は外の酒含めて客人達に振る舞うことを宣言して言った。
「おお!そうだな!」
魔理沙は大喜びで神奈子に同調した。
ただで豪華な食事に珍しい酒である。喜ばないはずがない。
「…諏訪子さん。個人として忠告しますが、神奈子さんを良く見といてくださいね」
オオスは神奈子の説得を諦めて、諏訪子に依頼した。
オオスからすれば神奈子も早苗も科学の本質を理解していない。
何かやらかさないか不安だった。
オオスの話を聞かない以上、神奈子が何を仕出かすか読めない。
…そして、何よりもオオスにはそれを止める時間がない。
「まぁ、見ておくよ。失敗する前に止められるかは保証できないけど」
諏訪子はオオスの忠告だけ聞いた。
神奈子はどうせ諏訪子の意思とは勝手に動くだろうと思った。
その後の酒の席では、オオスは気分を変えた。オオスは宴会芸を披露した。
オオスは内心の不安を隠しつつ、先ほどの無粋を失くすかのように振る舞った。
後日、神奈子達が本当に厄介なことを仕出かすことをオオスはまだ知らない。