「ふぃ~、ついつい秋雲氏の部屋に長居してしまった…」
今回の作品はここが良かったとか、ここはこだわりなんですぅみたいな会話でついつい盛り上がり、秋雲氏の部屋に予定していたよりも長く滞在してしまった。だが彼女には感謝してもしきれない、俺の性癖にフィットした良作を量産してくれているのだから。今後ともよしなに…。
「たっだいま~。さーてと、もう一発抜かせてもらいま…」
執務室に戻る道すがら、また頭に木曾のエチエチな姿が浮かんできて、自然と歩幅が大きくなった。込み上げてくる衝動に、体は熱を帯びて仕方がない。
どんだけ魅力的なんだよ木曾!もう俺の専属エロ娘にしてやる!
本人を前にしたらそんなこと口が裂けても言えないけど、現実とは乖離した架空世界の中ではもう木曾は俺のモノなのだ。自分でも気色の悪い発想に思わず苦笑いしてしまうが、それでも省みることなく早足で執務室へと向かう。はやる気持ちは増大し続け、最後はスキップしながら執務室へと戻り、勢いよく扉を開けた…。
「お、おう」
あれ、来客?おいおい、提督不在なのに無断で執務室に留まるなんてどこのどいつだよ。俺は早くやらないといけないことがあるの、用件あるならさっさと済ませろよな………
は?
「…悪いな、邪魔させてもらってる」
え、なんで木曾が…?俺はついに現実と夢を区別出来なくなったか?
「…あー、その、別に大した用事があったわけじゃないんだが」
いや、さっきまで散々妄想で蹂躙しまくった木曾が目と鼻の先にいるのは確かだった。どことなくぎこちない表情で、それでも困ったように笑う彼女がいた。
「ほら、俺が話し掛けた時…少し疲れてるみたいだったからさ」
連日お前の卑猥な姿で抜きまくってるからな
「なんか忙しいなら手伝ってやろうかと思って」
確かにお前で抜きまくるのに忙しい
「あー、別に…それだけなんだが」
俺に任せろと豪快な発言が目立つ木曾にしては珍しく歯切れが悪い。また普段はゆったりと落ち着いて話すのに、今はえらく早口だ。
「ああ、それはどうも…」
「お、おう…」
木曾が執務室にいたことに気が動転し、また彼女の様子がいつもと違うことに違和感を覚えながらも、とりあえず会釈した。彼女も彼女でそれに軽く頷きながら、ぎこちない表情を少し緩ませた。
はて、俺は何か重要なことを見逃してはいないだろうか…?
「その、なんだ…俺は部屋にいるから何かあったらいつでも呼んでくれ」
耳まで真っ赤に染めた木曾が気まずそうに手に持っていたものを机の上に戻した。執務を手伝おうとしてくれていたのだろうか。
「じゃあ、また」
「あ、うん」
視線を床に落としたまま、木曾は手の平を軽く振ると俺の横を通り過ぎていこうとする。いつもより彼女がよそよそしく感じるのは気のせいだろうか。
いや待て、俺が机の上に放り出していたものは書類だったか?違う…。
え、なんかとてつもなくやばい気がするんですが…
「ま、待ってくれ!」
思わず叫んだ。そしてそう言うが早いか、俺は木曾の手を掴んでいた。
「なッ!?」
不意に掴まれたことに驚いたのだろう、木曾は顔を強張らせてこちらを見ると、すぐに俯いた。
「…な、なんだよ」
しかし下を向いていた顔はまたすぐに上げられ、潤んだ木曾の目には俺の顔が映り込んでいた。
「…えっと、その」
「………」
木曾はじっと構え、静かに俺の言葉を待っているようだった。しかしほぼ勢いだけで彼女を引き留めたこともあり、またどんな言葉を伝えたらいいのかなんて俺には皆目見当がつかなかった。
「…お前、ああいうのが好きなのか?」
掛ける言葉も見当たらず、沈黙を貫く俺になんと木曾の方から切り出してきた。木曾の目にじっと見つめられ、その視線から逃れるように下を向いた。
「正直、ひいた」
痛い。木曾の吐息を近くで感じながら、彼女の告げる言葉がひどく痛い。
「…あれ、俺だよな?」
思わず掴む手に力がこもる。体中が熱くてたまらない。
「放してくれ」
素っ気なく告げられ、俺は手を放した。相当な力で握ってしまったようで、彼女は掴まれたところを軽くさすっていた。
「…悪かった」
これからどんな罵声を浴びせられるのだろう、どんな軽蔑した表情で俺を見るのだろう…とてもじゃないが木曾をまともに見ながらそれらを受け止める自信はなかった。だから俺は深く頭を下げて木曾の言葉を待った。
「まあ、でも俺も悪かったよ。無断で部屋に入っちまって」
頭を上げてくれと言う木曾に殴られることを覚悟した俺だったが、待っていたのはいつもの優しい声色で謝る彼女の言葉だった。
「…え?」
「艦隊の指揮を執るのには重圧があるからな…発散するところが必要だったんだろ?」
「えっ?」
「正直、変な気持ちだけどな。でもお前の趣味なんだろ、こういうの」
なんだこの流れは…!?
「なら俺は何も言わないさ」
「ファッ!?」
木曾のまさかの発言に腰が抜けそうになった。え、いいの?
「あれはあれ、これはこれ。現実の俺はここにちゃんといるからな」
フッと勝気な表情で俺を見る木曾だったが、相変わらず耳まで真っ赤である。
「俺は駆逐イ級ごときに負けないし、あんな女々しいこと言わねえ」
木曾の瞳に何とも言い難い怒りを感じたような気もしたが、あえてそこには触れないでおこう。というかバッチリ漫画読んだのね…。
「フッ、やっぱりちゃんと言いたいことは言った方がいいな。しおらしいのはお互いに似合わねえよ」
木曾に背中をバシバシ叩かれる。挙動不審になっていた俺を彼女は豪快に笑い飛ばす。
「さ、これで話は終わりだ。暇なら一緒に飯でも食おうぜ」
きっとかなり無理をしているのだろう。木曾はいつになくぎこちない笑顔で俺の手を引っ張った。少し震えているのか、彼女の後ろ姿はいつもより弱々しい。
ま、本人がそう言うなら問題ないか(笑)
木曾に連れられ、再び無人となった執務室、もちろん彼女のエチエチ漫画は机に置きっぱなしだが問題はないだろう。
なんだかんだ言って木曾はイイ奴なのだから
「おーい、邪魔するクマ~」
「あれ、てーとくいないじゃん」
「ほんとですね。全くどこ行ったのよ、あの変態」
「仕方がニャイ、気長に待つニャ」
しかし木曾はイイ奴かもしれないが、その身内はどうだろうな。それこそ一番下の大切な妹がグチャグチャにされるところなんてみたら…。
「あれ、なんか机の上にあるニャ!」
「ほんとだクマ!これは…漫画クマ!」
「置きっぱなしにするのが悪いんだからね~、てーとく借りるよ~」
「待つには暇ですしね。あれ、これって木曾?」
「「「「は?」」」」
(艦)