そのぶんオリ要素が強まるので頑張ります!
USJ事件終盤ですよ!
―――Side 緑谷
第一関門、水難事故ゾーンのヴィランたちの一掃に成功した僕らは、浮かれていた。
浮ついた気持ちのまま、広場に向かってしまった。
「通用する」。そう思い込んでいたんだ。
ボキリ、という嫌な音とともに、相澤先生の苦痛に満ちた声が広場に響く。
「個性を消せる……。素敵だけどなんてことないね…。」
そんな、先生がやられるなんて。あの「イレイザーヘッド」だぞ…?!
「だって圧倒的な暴力の前では、つまりはただの『無個性』だもの…!」
喜色の入り混じった声で、先生をあざ笑う手だらけヴィラン。
おかしい。先生の『個性』ならたとえオールマイトだったとしても、力を封じられるのに!
「ぐぁぁぁあぁぁああ!!!」
先生が一瞬脳みそむき出しのヴィランを『見た』にもかかわらず、先生の腕がおられてしまう。
まるで木の枝を気まぐれに折るかの如く…。
まさか、素の筋力がオールマイト級だっていうのか…?!
僕たちが水辺に潜んでただ見ることしかできない間にも、先生の頭がわしづかみにされて、ガツン、ガツン、と地面に叩き付けられる。
「緑谷……!ダメだ…。さすがに無理ってわかったろ…?」
「ケロ……。」
峰田くんの諦めの言葉と、蛙す、梅雨ちゃんの呆然としてもれた声が、殊更に僕を震え上がらせる。
これが現実なんだと。これが、残忍な本物のヴィランなんだと。
「死柄木 弔……。ぐゥ…ッ!」
あれは、入口で僕らを分断したヴィラン…!なぜか苦しそうに脇腹を抑えてる。
「黒霧。13号は殺れたか?餓鬼どもはどうだった?」
「13号は行動不能には出来たものの、生徒の一人逃げられました…。
それに、手ひどい傷も与えられてしまいました…。なんなんだ、あの屑鉄の餓鬼…!」
紳士ぶった口調が一瞬乱れた。
屑鉄?うちのクラスには鉄に関する『個性』を持った子はいない。
ということは鐵くん?!よかった、無事だったんだ……。
ガリガリガリ。ガリガリガリガリガリ。
死柄木 弔。そう呼ばれた男がいらだった様子で首元を掻き始める。
「はァ……?逃げられた…?黒霧ィ…!
お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…!
それに、うちに回復キャラいないの知ってるだろ…!なにケガしてんだよ…!」
キャラ?粉々にする?味方を???
こいつ、人を人だと思ってない。仲間を仲間と思ってない…!
命を、命だと思ってない……!!狂人だ。
狂った子供だ。
「さすがに何十人ものプロヒーロー相手じゃ敵わない。
しょうがない。『今回は』ゲームオーバーだ…。
帰ろっか……。」
「カエル?今帰るって言ったのか?!」
峰田くんが、急に落ち着きを取り戻したヴィランの言葉に歓喜する。
けど、そんなに簡単に引き下がるのか?
わざわざオールマイトを、僕のあこがれを、平和の象徴を殺す算段をここまで練り上げてきたやつらが…?!
「あ、そうだ。せっかくだからさァ……!その前に……。」
「平和の象徴としての矜持を…。へし折って帰ろう!!」
一瞬で距離を詰めてきたヴィランに僕らは反応できなかった。
梅雨ちゃんに魔の手が迫ってくる。
僕には、彼女が『崩れていく』ヴィジョンが見えた。
けど、彼女は崩れない。一体どうして……?
「へぇ……?ホントカッコいいぜ…。イレイザーヘッド。」
先生がこっちを見てる?!あんな重傷で?!
やばいやばいやばい!先生の『個性』が切れた瞬間「終わり」だ!
さっきのヴィランとは格が違う!
梅雨ちゃん助けて逃げの一択!!!
「手ェ…離せぇ!!」
「スマァァァァァァッシュ!!!!!」
思い切り殴りつけるとともに、周囲を暴風が吹き荒れる。
けど、痛みがない…?この土壇場で、『個性』を制御出来たっていうのか…?!
さっさと逃げて…、ってあれ…?目の前に黒い壁……?
さっきのヴィラン?!いつの間に?!
というか……。「効いてない」?!
「いい動きをするなァ…。スマッシュってさァ…。
キミ、オールマイトのフォロワーかい…?
まあどうでもいいや…。『殺れ。脳無。』」
腕をつかまれた?!まずい?!このパワーのヴィランに殴られたらッ!!
死ぬ……ッ!!
「間に合えぇぇぇぇぇェ!!!!!!!」
―――Side 鐵
「八百万さん、これ、設計図ね。」
八百万さんに設計図を渡して、『創造』してもらうための準備をする。
これからの俺達の作戦はいたって単純。
俺が耐えて時間を稼ぎ、耳郎さんが遠距離から雑魚共の足止めをし、八百万さんが俺に補給する、というものだ。
俺の役割がみんなの命綱を握っている。
そう考えるだけで、鉄のマスクの下の顔に冷や汗がだらだらと流れる。
「ありがとうございます。五分もかけません。三分で作り上げて見せます。
ですから……。耳郎さん、私とともに戦ってくださいますか?」
ふと見ると、彼女の肩が震えている。
当然だ。怖いに決まってる。
あのオールマイトをも殺せる切り札相手に、ただの餓鬼三人で立ち向かおうっていう無茶を押し通そうとしているんだから。
「一緒に戦うに決まってんじゃん。仲間でしょ。
勇雅、ちゃんと約束守ってよね。ウチ、まだ青春したことないから死にたくないし。」
膝を震わせながら、軽口をたたく耳郎さん。
なんて強い女の子たちなんだろう。
護りたい。護ってあげたい。一緒にまだまだ生きていたい。学校で一緒に学びたい。
そう思わせてくれる友達に出会えて、本当によかった……!
「俺もだよ。せめて初恋ぐらいは済まさねェと死ぬに死ねんさ。
さて……。行くぞ!」
「「「応!!!」」」
三人で一斉に動き始める。
俺が先行して、まずはリーダー格を落とす!!
「……スマァァァァァァッシュ!!!!!」
今の声、緑谷か?!
あの状況、よくわからんが、ヤバい!!
突っ込んで、この装甲で、緑谷を守るッ!!!!
「間に合えぇぇぇぇぇェ!!!!!!!」
ガッシャァァァァァァン!!!!!!
交通事故のような衝突音が響く。
とっさに左腕でガードしたけど中まで響いたぞ……!
やっぱりこの黒肌上裸ゴリゴリマッチョが切り札かよ!ヴィラン連合さんよォ!!
「緑谷返せ…!この変態野郎!!」
あんまりやりたくねェが、手首を握りつぶして骨を折るッ!
って、硬ェ!!おらッ!つぶれろ!!!
「蛙吹さん!峰田くん!!!」
緑谷が必死に味方に手を伸ばす。こんなときにも仲間優先なのね!!!
「つかまれ緑谷!!」
変態ガチガチヴィランの骨の折れる音を確認した後に、すぐに三人を引っ張ってぶっ倒れてる相澤先生のところに行く。
相澤先生がぶっ倒されるなんて…!
『抹消』のイレイザーヘッドが!嘘だといってくれよ…!
「蛙吹さん、峰田くん。相澤先生お願い。入口は安全なんだよね。」
「おう。みんなが確保してくれてる。それと、二人とも!途中で八百万さんと耳郎さんにあったらこう伝えてくれ!
『カップに湯を注いだ』ってな!」
緑谷はとっさの判断で相澤先生を逃がし始める。やっぱりこいつの判断力は頼りになる。
俺も、二人に今から三分で頼むっていう合図を出す。麺が伸びる前に、っていうわけだ。
「緑谷、お前もにげt」
「いや、まずは君にあの黒いヴィラン、『脳無』っていうらしい。
アイツの情報を伝える!
アイツには僕のスマッシュが一切通用しなかった!腕は折れないぐらいだったけど!
人を吹っ飛ばすぐらいの風を起こせるぐらいのパワーで殴った!けど無傷だった!」
緑谷のマックスパワーは俺と同様オールマイト並み……。
腕が折れない程度って言っても相当なはず。
それを無傷?!
あいつ、硬いとは思ったが異質すぎる!『個性』ってことか!
「ありがとな、緑谷!で、アイツの『個性』の予想は?!」
「『ショック吸収』か『無効』!けど、君の攻撃で圧力が効くことはわかったよ!」
よし、なら作戦を……
「あァ…。脳無の腕が折られた…。ただの餓鬼に…。ムカつくなァ…!
何悠長にしゃべってんだよ……!」
しまった、俺たちの相手は『脳無』ってやつ以外にも手だらけ野郎と黒靄野郎がいたんだった…!
「死柄木弔、奴です。あのカラフル野郎が、私にも手傷を負わせました……!」
「そうかよ…!じゃあ脳無…。さっさと腕治してあの屑鉄をスクラップにしろ…!」
不味い来るッ!!
突っ込んできた脳無と両手を合わせて組み合う。
なんだこのパワーは……!限界ギリギリ出してんのに互角かよ…!
こちとら燃費悪いんだ!このままやったらジリ貧だ…!
さっき傷つけた奴の左腕をひねり上げようとする。
動かない?!手首が折れてなおこんなパワーが出るのか?!
いや、違う!『治っている』!
「おいおいおい、ショック吸収って話じゃねェのかよ…!」
「お前もなんでオールマイト用に改造したサンドバッグ人間の、最高性能の脳無を抑えられるんだよ……!
まァいい。一個は当たってたぜ……?
そいつの『個性』は『ショック吸収』と『超再生』さ…!
別に『個性』が一つだけなんていったりしてないだろ?」
「一人に二つの『個性』?!そんなの、僕聞いたことない!」
「奇遇だな!俺もだぜ!そんなに大盤振る舞いするなよ!!」
「この脳無さえいればオールマイトだって怖くないんだぜ…?
おまえ、強そうだしさ……!小手調べにちょっとやられてくれよ…!」
冗談きついぜ……!
こちとら時間稼ぎのために苦手な耐久戦をやろうってのに向こうさんは耐久特化かよ…!
だが、俺のために頑張ってくれてるやつがいる!!
勇者として!漢として!!負けるわけにはいかないんだ!!
「ああ、そうかい!返り討ちにしてやるぜ!この小悪党!!」
取りあえずは、この組打ち状態を解消しないと話にならん!!
虎の子だ、食らいやがれッ!!
「ボンバッディーロォ!!!」
胸のボディガンダ―の口が開き、ゼロ距離でミサイルを叩き込む。
爆炎、爆風で視界が狭まるが、手を放して一気に距離をとる。
「これでおとなしくしてくれるわけないよなァ!」
黒煙を引き裂いて脳無が飛び出してくる。
そのむき出しの脳みそぶん殴ってやるぜ!!
『ショック吸収』だとしても!
『超再生』だとしても!
ちょっとはビビッてくれるんじゃないかァ?!
「エルドラァ…!フィストォ!!!」
バキン!!!
アレ……?なんで俺の頭が揺れてるんだ…?いってェ…?!
「グアアァァアアアアッ!!!」
「鐵くん!!」
「ハハハ…!クロスカウンターがもろに決まってんじゃん…!
マスクの下の顔はどんなのかな…?!」
な、るほど…!
思わず痛みに声が上がっちまった…!
カウンターもらっちまったのか…!!
マスクも右目を中心にぽっかり穴が開いてやがる。
クソッたれ!アブソル―ト複合鋼ぶっ壊すなんてな…!
「俺のイカした面が台無しだぜ…!
けどな!!まだまだ俺は死なないぞ!」
虚勢だ。
かなり脳みそを揺らされちまってる。
モニターが砕けてエネルギー残量が確認しづらいがもうほとんどねェ。
砕けた装甲が顔に突き刺さってるのか、目が開けづらい。
ボロボロだ。
「ふ~ん…。まァ、脳無の性能も確認できたし…。
プロが来るまで時間もないし……。
死んでいいよ。お前。」
おいおい、お前も突っ込んでくるのかよ…!
絶体絶命…!大ピンチ!!
すまん、緑谷!
ごめん、八百万さん、耳郎さん!!もはやこれまで!!
「死ねェェ!このモヤ野郎!!!」
この『爆発』に声!
「よく来たな爆豪!そのままそいつ抑えて動かすな!」
「俺に指図すんじゃねェ!クソメカ野郎!!」
状況好転…かな?
「あ~……。出入り口がとられた…。こりゃあ…ピンチだなァ!」
なに嬉しそうにしてんだよ、このクソッたれめ…!
「脳無、いけ。」
まずい、まだ反応できない!あいつを抑えられるのは、俺しか!!
焦る心と裏腹に、動かない体。
けれど、絶望よりも速く、地面に『氷結』が走る。
「対オールマイトのヴィラン。速いが、壁を作れば関係ェねェ。」
轟!助かったぜ!!
けどあの氷の壁もすぐ砕かれる!なら!
「助かった!今の一瞬で追いついたぜ! 」
俺が抑える!!
この布陣…。
爆豪が逃げ道を抑え、轟が時間を稼ぎ、俺が抑え込む。
相手の情報の分析は緑谷がやってくれる。
あとは、あの死柄木って野郎を見といてくれる奴がいれば!
「おっらァ!つか爆豪!おいてくなよ!」
切島…!これでこっちのピースは完全にそろったァ!!
「すまん、お前ら…。一緒に戦ってくれ。みんなを守るぞ!」
「おう!」「うん!」「あぁ。」「指図すんなっつてんだろクソが!!」
「はぁ…?!クソクソクソクソ……!ただの暴力装置のくせに…!
俺達としょせん同じのくせにィ…!へらへらしやがって……!
むかつくなぁ……!」
死柄木からあふれ出す独りよがりな殺意が俺達を飲み込む。
あと数十秒……!あと少し!あと少しなんだ……!
―――Side 八百万
勇雅さんが突撃し、そのすぐ後に衝撃音が響き渡ったことに、一抹の不安を抱きました。
けれど、すぐにそれを振り払い『創造』に集中します。
私が彼を助けるのです。しっかりするのよ、百!!
「八百万!雑魚は絶対近づかせない!だから頼むね!」
耳郎さんだって、私を守るために広場の仕留め切れていなかったヴィランたちに遠距離攻撃で権勢をし続けてくれています。
仲間を信じて、自分の役割を果たす…!
「耳郎ちゃん!八百万ちゃん!!」
「おーい!おーい!!二人とも!!」
あれは、蛙吹さんと峰田さん?!
逃げてきたんですね…!担いでいる人は相澤先生?!
なんて痛ましい……。
「耳郎ちゃん。鐵ちゃんからの伝言よ。
『カップに湯を注いだ』って言ってたわ。どういう意味かしら?ケロ。」
始まった……!まだ構造と材質を完全にイメージできていない…!
三分とは言いましたが、もっと急がないと…!
「おっぱじめたのか…!こっちの作戦の『時間制限』だよ!
勇雅が動けなくなるまでに、補給をしてあげないと…!」
「おいおい、あいつ動けなくなるのかよぉ?!
あいつも緑谷も…無茶だってわかってるのに…!怖いはずなのに…!
どうしてあんなにカッコいいこと出来るんだよぉ…。」
「峰田ちゃん、それはあの子たちが『ヒーロー』だからよ。
八百万ちゃん、耳郎ちゃん、私たちにできることってあるかしら?」
今私が出来ること…!
「お二人とも、まずは相澤先生の救護を!
それから、入口で待っている皆さんに戦闘態勢を…!
計算が甘かった。耳郎さんだけでは…抑えきれません。
出入り口の死守を…!
お願いします…!」
早く、早く、早く!もっと早く『創造』するのよ!
爆風に衝撃音。戦闘音が続いている。
あと何秒、彼は戦えるの?
あと何秒、私に残されているの?
急がなきゃ、急がなきゃ…!
焦れば焦るほど、『創造』のコントロールが乱れる。
「八百万、落ち着きなよ。焦っちゃだめだ。
集中して。ただアイツを助けることだけに。」
耳郎さんの声が私を落ち着かせてくれます。
集中するのよ、百!
もう少し、あともう少し…!あと少しなんです…!
―――Side 鐵
「しょうがない…。全部『壊す』しかないなぁ…。
まずは黒霧の奪還だ…!
脳無、その屑鉄を本気で殺せ。それで黒霧を回収しろ…。
俺は餓鬼をやる…!」
来たッ!
「かかってこいやぁ!!エルドラ・フィストォ!!」
かすむ眼で見極めろ…!
一発一発に限界のエネルギーを込めて…!
殴り、殴られる。ひたすらの殴打の応酬。
けど脳無は無傷で、俺のエルドラはどんどん装甲がひしゃげていく。
エネルギーもどんどん削られてしまう。
「ッ、クソっ!エネルギーが足りないッ!少しだけ、少しだけ足りないッ!!」
エネルギー不足によって生まれた隙を突かれて、弾き飛ばされる。
抑えきれない!!
「ば、爆豪!そのモヤ離して逃げろッ!!」
爆豪は持ち前の反射神経で、紙一重で俺が逃がした脳無から逃げる。
かなり大規模な爆風で、なんとかまにあったって感じだ。
死んでもおかしくなかった。
「てめェ、抑えとけや!!」
爆豪本人は、心の中では目で追えなかったことに恐怖していたが、それを押し殺しながら罵倒する。
「悪いね…!それにもう俺はガラクタになる…!みんな、逃げてくれ…!」
間に合わなかったか…!悔しくて泣けてくる…!!
「勇雅さんッ!!出来ました!!!
射出します!!!!受け取ってください!!!!」
「ちゃんと受け取れよ!勇雅!!!!!いくぞぉッ!!!!」
つながった…。微かな、細いたった一本の希望の糸が…!
つながった……!!
「かっちゃん!正面最大威力で威嚇爆破!!
轟くん!かっちゃんの爆破の後に氷でおっきい壁造って!!
切島くん!!爆風からみんなを守って!!鐵くんの立ち位置がずれないように!!
一瞬だけ時間を作って!!
これでいいよね!!鐵くん!!!」
ホントに…!未来でも見てるんじゃないか…?!
ありがとよ、緑谷!!
大砲の発射音とともに一気に動き始める。
俺の正面に切島が『硬化』を使って立ちふさがる。
その直後に爆豪のキレ散らかす声とともに桁違いの『爆破』と『氷結』がヴィランを襲う。
一瞬脳無の体がぶれたところが見えたから、たぶん、対応されてるだろう。
けどいい。それでもいい。
「届け物」が風も、悪意の闇も切り裂いて飛んでくる。
「バッテリー、パージ!! エルドラチャーーッッジ!!!」
背中のバッテリーケースにかなりの衝撃とともにバッテリーが突っ込まれる。
エネルギーの充てんする音が聞こえてくる。
ありがとう八百万さん。
ありがとう耳郎さん。
ありがとう緑谷。
ありがとう爆豪。
ありがとう轟。
ありがとう切島。
これが勇者!
五体合体!エルドラV!!!
さぁ、フィナーレと行こうか!!!」
負ける気がしない。
みんなの思いのこもったエネルギーが俺の中に流れ込んでくるような気がする。
俺の魂がそれにこたえようと、ビリビリとしびれるような力を湧きあがらせて来る。
「殺せ殺せ殺せ殺せ!!!!脳無ッ!!!!!!」
あんだけ怖かったお前が、今じゃ雑魚にしか見えないよ、脳無。
俺は死なない。
皆の思いを背負っている限り、俺は負けない!!!!
「『ショック吸収』だか『超再生』だかしらんがなぁ!!!!」
何度もやったように脳無と正面から組み合う。
けど、今度は俺の方が優勢だ。
上からねじ伏せるように!地面とサンドイッチするかのように!力いっぱい押し込む!!
「なんじゃッ、この、衝撃波ぁ…!」
「クッ、脳無に近づけない…!援護できない…!」
爆豪、それと黒霧とかいう奴が必死に俺と脳無がおこす嵐にあらがっているのが見える。
「本物の勇者というものは!!最後には一発でやっつけちまうのさ!!」
限界を超えろ!!魂をも燃やせ!!ジェネレーターが焼き切れるくらいに赤く燃え上がれ!!!
「必殺ッ!!!!! エル・インフェルノ・イ・シエロ!!エルドラ―ドォ…バーストォ!!!!!」
両腕を限界まで後ろに引き絞り、推進力をのせて!!
貫通力重視で拳を組んでいたエル・インフェルノ・イ・シエロではなく!!
挟み込んで、すり潰すようにィ……!!
ダブルフックで殴りぬくッ!!!
「脳無が負けるわけないだろ!!脳無!!!」
止められたッ?!
ギリギリ顔に当たってない?!
俺の最大スピードに手の割り込みが追いついたのかよ…!
だが、まだだ!!
俺が本当の勇者なら!!!
届けさせてくれ!!応えさせてくれ!!!
俺の思いを!!みんなの希望を!!!
ウォオオオオオオォォォオ!!!!!!」
俺の中に流れる衝動が、電撃のように暴れだす。
エルドラVがまるで俺そのものになったかのような錯覚とともに、力が沸き上がる。
「鐵……!ダメなのか…?!」
「いいや、切島くん……!抜けるッ!!」
脳無の手を貫いて、左右から顔面を挟み込む!!
「アッディオース……!アミィーゴォォォオオォ!!!!」
脳無の顔を殴りぬく!!!
殴りぬかれた脳無は、天を仰ぐようにして膝をつく。
頼む!立つな!!そのまま寝ててくれ!!
「おい…脳無!立て!脳無!!立て!!」
死柄木の焦った声に、全く反応しない。
やった……!俺の勝ちだ……!!
あ、でもヤバい。
これ、中学の時と同じだ…!
全身の痛みと、薄れていく意識。
まだ、倒れちゃだめだ…!
脳無の『超再生』がまだ発動するかも…!
あー、くそ、ダメだ…。
意識が薄れていく中で、俺たちの望んでた声を聴いた。
「待たせたね……。ごめんよ、少年少女……。」
「けどもう大丈夫……!私が、来た!!!」
遅いぜ、オールマイト……!
―――Side 緑谷
「私が、来た!!!」
オールマイト……!けど、今日の活動時間はもう残ってないはず…。
知ってるんだ、毎朝リアルタイムで更新されるヒーローニュースをチェックしてるから!
二つの市にわたって三件も事件を解決してる!
もう限界なんだ!だから!!
「オールマイト!あの黒いヴィランを誰の声も聞こえないところまでぶっ飛ばして!!
たぶん自分で考えてない指示待ち人間なんだ!だから!」
「任せなさい、緑谷少年!」
「TEXAS!!!!! SMAAAAAAAASH!!!」
オールマイトの一撃が、力なくうなだれる脳無をUSJの天井もぶち抜くほどのスピードで吹き飛ばした。
「すげェ…。これがナンバーワンの力……。」
轟くんが驚いてる。
「オールマイト……!いきなり来て俺の脳無を……!
ヒーローなんて、しょせん社会公認の暴力装置だ!
ヴィランと何が違う…!それを世の中に知らしめようと……!」
「Enough!! そういう目をしたやつは自分が暴れたいだけなんだぜ?
本物の思想犯の目は静かに燃えるもの!
そんな暴論はいたところで、私の怒りは揺るがないぞ……!」
「あぁ、あの餓鬼共のせいで全部狂った……!
脳無なら、脳無なら何も考えずに殺しに行けるのにィ!!」
死柄木のいら立ちが見て取れる。
けど、オールマイトだって限界だ。
マッスルフォームから戻るときの煙が漏れてる。
それに、鐵くんだって動けないんだ……!
だって腕の装甲が砕け散って、ボロボロの両腕がむき出しになってる!
壊れたマスクの中の目に、力がない!
僕だけが気付いてる二人のピンチ……。
来るな、来るなよ……!
「落ち着いてください、死柄木弔!
たとえオールマイトといえどもここまで遅れてきたということは消耗しているはず!
衰えたという情報だってある!
子供をうまく利用して、私たちで協力すれば、殺せる!
それに、あの餓鬼は殺しといたほうがいい!!」
「そうだな……。そうだよ……!
何より…、脳無の仇ィ!!!」
まずい、来た!!
死柄木と黒霧が鐵くんとオールマイトに迫る。
僕が二人を、二人を助けるんだ!!!
「二人から……、離れろォ!!」
「浅はか……!」
まずい、こいつ僕が飛び込んでくるのを読んで?!
足も折れた…!ダメだ、僕じゃ……!
BANG!BANG!!!
銃声?!もしかして……!
「待たせたね!動けるものをありったけ連れてきた!」
「1-A組 委員長 飯田天哉! ただいま戻りました!!」
飯田くん……!!ありがとう!!ありがとう!!
「くそ……。ゲームオーバーかよ……!黒霧、帰ろう…ッグ?!」
死柄木の隙を一瞬でスナイプ先生が撃ち抜く。
さすが『ホーミング』!すごいや!
「くっ、死柄木弔!撤退を!!」
「この距離から確保できるものは?!」
「僕、だ……!」
13号先生?!凄い出力だ!どんどん吸い込まれていく!!
「援護します!!」
今度は耳郎さん?!
音の『個性』!プレゼントマイクみたいだ!!
「今回は失敗だったけど……!
次は必ず殺すぞ……!平和の象徴……!オールマイト!!!」
尽力むなしく、死柄木の捨て台詞とともに、主犯格たちは跡形もなく消えてしまった…。
「み、緑谷少年。無事かい…?」
「お、オールマイト……僕何もできなかった……!」
「そんなことはないよ。あの一瞬が、私と鐵少年を救ったんだ…。
また、助けられちゃったなぁ……。ありがとう、緑谷少年。」
半分マッスルフォームが解けかけている状態のオールマイトが僕に笑いかけてくれる。
安心感と嬉しさと、全身の痛みで、僕は意識を手放した。
―――Side 耳郎
「ケガはないかしら?大丈夫だったら、ゲート前で集合してね。」
ミッドナイト先生が、安否の確認と、移動を促してくる。
「ウチは大丈夫、です。勇雅…、鐵とか、他に戦ってたやつらは無事ですか?!」
「確認中よ。きっと大丈夫だから。先に行きなさい。」
まだわからないのか……。仕方ない。
今だってそこら中に倒れてるチンピラを先生たちが捕縛している。
仕方ない。ウン。
「八百万、立てる?一緒にいこ。」
「えぇ。なんとか……。間に合って本当によかったですわ。
それに、守っていただいてありがとうございました。」
「言ったでしょ、仲間だって。ほら、いこ!みんな待ってるよ。」
あいつの無事を心配しつつ、ゲート前にみんなで集まる。
警察の人がたくさん来ていて、あぁ終わったんだなって実感に包まれる。
「あの、デク、じゃなかった、緑谷くんは無事ですか?
それに、鐵くんも!」
「そうだ!緑谷くんと鐵くんがまだ出てこない!大丈夫なのですか!!!」
飯田と麗日が大きい声で警察の人に詰め寄ってる。
ウチだって気になる。早く教えてほしい。安心したい。
「あぁ。二人とも、ケガは大きいが無事だよ。リカバリーガールの治癒でどうにかなるそうだ。」
「よかった……。」
「よかったですね、耳郎さん!」
隣の八百万が私ににっこり笑いかけてくれる。
「うん。アイツなら大丈夫だってさ、信じてた。」
「私もですわ。」
ウチと彼女は顔を見合わせて笑いあう。
「ねぇ、下の名前、なんだっけ。」
「百、ですわ!」
「じゃ、こんどから、ヤオモモ…いや、百って呼ばせてよ。」
「まぁ!!なら私は響香さん、と!」
この戦いを経て、なんだかまた仲良くなれた気がする。
なんか、嬉しいな。
ロックを聴いてるときとは違う、けどあったかい気持ちに包まれる。
「えー!じゃあ私もそう呼びたい!!」
「麗日……。じゃあ、あんたはお茶子だね。」
「お茶子さん!」
三人で輪になる。
その輪の外には飯田がいて、
「仲がいいことはよいことだ!だが、やはりあの二人がいないと寂しいな!」
そうだよ…。だからさ、早く治して一緒に帰ろう。勇雅……。
―――Side 鐵
目が覚めた。体はすごくだるい。というか眠い。
「あ、起きたよ、緑谷少年!」
「おはよう!鐵くん!よかったよ~…!」
緑谷と…、誰だ?このおじさん…。
「おぉ、緑谷…!で、貴方は?」
「八木さ!学校関係者だよ。よかったよ。
二人とも、もうお帰り。もう時間も遅い。
それと、君のエルドラV。取りあえず八百万財閥のエンジニアチームに送られるそうだ。」
「あ、ありがとうございます。
じゃあ、緑谷……。帰るか!」
「うん!」
エルドラの修復は八百万財閥でやってくれるのか…。よかった。
基にしたデータがかなりアングラなものだから、信頼できる所じゃないとな。
保健室を出て、緑谷とともに廊下を歩く。
「なんで緑谷はケガしてるんだ?」
「あの後、オールマイトと君が狙われてさ……。思わず飛び出しちゃったんだ。
調整ミスっちゃってさ!」
「じゃあ、お前は俺のヒーローだな。ありがとな、ヒーロー。」
「君は脳無を倒してくれたじゃないか!鐵くんは僕らのヒーローだよ!」
「く、くく…!」
「ふふ、ふふふ…!」
「ワハハハハ!!」「あっはははは!!」
顔を見合わせて笑いあう。よかった、本当によかった……!
「なに、向き合って笑ってんだ馬鹿。心配かけさせんな!」
後ろから背中を平手でバシッとたたかれた。
誰だ??
「じ、耳郎さん!」「い、痛いよ耳郎さん。」
「二人ともけが人なんですのよ!」
「デクくんと鐵くん元気そうでよかったよぉ~~!!」
「緑谷くん!鐵くん!!無事で何よりだぞ!!!」
八百万さんに、麗日さん、飯田!!
「ほら、さっさと帰るよ!
それと…、ありがとう。お疲れ様。」
なんだよ…!ツンデレさんめ!
「あぁ、帰ろう!」「うん!疲れておなかすいちゃったよ!」
みんなで笑いあいながら帰るこの時間が、どれほど貴重でどれほど暖かいものなのか。
俺たちが守ろうとしているものっていうのは、こういうささやかなものなんだろう。
頑張ろう。今度は、心配かけないように……!
―――Side ???
「あァ、畜生……。何発撃ってきた、クソ…!
先生、話が違うぞ…!!オールマイト、全然弱体化してないじゃないか!
それに脳無!!生徒にやられたぞ!
どうなってんだ!!」
『ほう……?
見通しが甘かったと、叱ろうと思っていたが…。生徒にやられたのかい?』
「あァ、鉄のヨロイ着こんだやつだった…!
それにオールマイト並みのスピードにパワーの餓鬼もいた…!」
『ほほう!面白いことになってるね…。
弔、鉄のヨロイといったね?なんて言ってたか、覚えているかい?』
「勇者だとかなんとかって言ってたぞ…!クソ、思い出すだけでムカつく…!」
『勇者か…。僕にも因縁のある勇者がいるんだよ…。
僕がオールマイトよりも憎らしく思っている奴等さ…。
五人いて誰も殺せなかった…。
あぁ…今でも思い出すよ、僕の友人の計画が打ち砕かれたとき、初めて感じたあのくやしさ…!
いいね…!
闇もまた、決して滅びたわけでなく。
今か今かと、時を待っている……。
書き終えた…!
USJ編、完ッ!
次は日常回書きます(断言)