次回からはガンガンバトります。
飯を食う前に、俺にはやることが二つあった。
勝つためにやったから、後悔はしていない。
それに心操が自分で考えて、チームのためにと思ってしてくれたことだ。
心操を責めることなんてできやしない。
だからこれはエゴだ。
俺のエゴだが、こうしなければ気が済まないと思った。
目的の集団を発見し、声をかける。
相手は少し驚いたような、そして嫌な奴を見るかのような目でこちらを見ていた。
「さっきの試合、すまなかった。
君たちが傷つくような発言だったけど、決して俺のチームメイトはそういうことしたくてする奴じゃないんだ。
勝ちたくて、チームに貢献したいと思って、あいつにできる全力があれだったんだ。
だから、後悔はしてない。
けど、君たちを少なからず傷つけたことには謝っておきたい。
本当にすまなかった。」
そう言って、俺はオレンジのサイドテールのB組の女の子と、そのチームメンバーに土下座をした。
その子は、まさか俺が土下座をするだなんて思ってもみなかったんだろう。
あからさまにビックリしていた。
「顔上げなって。
別にそんなことで怒ったりしないよ。」
「うぇっ?!
本当か?!」
正直、試合中に結構怒ってたように見えたから、許してもらえるなんて思ってもみなかった。
「そりゃ、試合中は嫌な気分になったけど……。
あの後、動き封じられたんだって気づいたら、作戦だったんだなって分かったしさ。
勝つためにはそういうことも必要になるし、それに、アンタの事も聞いてたんだ。」
「俺のことを?」
「そう、鉄哲ってわかる?
体を鉄にする暑苦しいやつなんだけど……。」
記憶をたどってみると、行き当たる人物がいた。
緑谷がめちゃくちゃ考察しようとしてたやつだ。
嵐みたいに来て嵐のように去っていったんだよな……。
「あぁ、分かる。
急に来て急に帰っていった。」
「ごめんな、そいつ単細胞なんだ。
けど、そいつが、アンタを凄くていいやつだって言っててさ。
アイツが素直にそういう奴ってことは本当にそうなんだろうなって思ったし、現にちゃんと謝りに来てくれただろ?」
「まぁケジメというか……。」
「ならもういいよ、怒ったりしない。
私、拳藤 一佳。
よろしくな!」
なんと、こちらに右手を差し伸べて、握手をしようとしてくれていた。
いい人だ。
もしかしたらB組はこの人を中心に回っているのかもしれない。
姐御肌で、とっても素敵だ。
「俺は、鐵 勇雅だ。
今後ともよろしくな!」
俺も右手を出して、しっかり握手をする。
女の子と握手だなんて、正直ドキドキものだ。
「二人の世界のところわるいね~!
ケタケタケタ!」
突然、手が飛んできて、俺をデコピンしてきた。
手が飛んできたってだけでびっくりしたし、いきなりデコピンされたことにも驚いた。
「あっ、君は試合で腕を飛ばしてた人か!
ごめんな、無理やり吹き飛ばしたりして……。
ケガとかないか?」
心当たりのある『個性』であったことと、試合中にエルドラフィストで無理やり吹き飛ばしたことを思い出す。
手が飛んできた方向を見ると、片手がない女の子がいるが、ちゃんと腕はついていた。
「気にすんなよ~。
『個性』のおかげでケガはないけど、男の子に乱暴にされたのは久しぶりかな?
な~んてね!ケタケタケタ!」
お、おう。
乱暴にされたとか、ちょっとギャルっぽい言い回しでどぎまぎしてしまう。
そりゃそうだ、こちとら鍛えることと開発することしか能がないゴリラ系エンジニアなんだ。
ドキッとするさ。
「あたしは取陰 切奈、よろしく~!」
「お、おう。よ、よろしく……。」
ピースしながら自己紹介をしてきたところを見ると本物の陽キャだ。
またどぎまぎしていたら、今度は銀髪の女の子と、茶髪の女の子も自己紹介をしてくれた。
「柳レイ子……。よろしく……。」
「小森 希乃子ノコ!
アイドルヒーローになりたいから、あんまり男の子とはしゃべれないノコ。
メンゴね。」
すっごくダウナーな子と、見た目に反してけっこうイケイケな子だった。
アイドルヒーローか……。
イメージ戦略とかいろいろあるのかな。
今度緑谷に聞いてみるか。
「おう、わかった。
二人ともよろしくな。」
まさか、B組の人ともアミーゴになれたとは。
いや、今後のことも考えるとアミーゴになっておくべきなんだろうな。
「勇雅さん……!
まさか、女性に粉をかけるご趣味がおありだとは……っ!」
聞きなれた声に、振り返ってみると、なんと、かなり怒ってる八百万さんがいた。
こんなに顔を真っ赤にして怒っているところは見たことがなかった。
本当は別件のことで謝罪と説明をしなくちゃいけないんだけど、まずは誤解を解いた方がよさそうだ!
「いや、違うぞ八百万さん!
誤解だ!俺は決してそんな趣味を持ち合わせてなどいない!
そんな勇者にあるまじきことをするはずないだろう?!」
もうそれは大慌てで手をやたらめったらに振り回しながらしゃべった。
八百万さんに峰田や上鳴と同レベルだと思われるのは我慢ならない。
「あたしは乱暴されちゃったけど~?」
うげっ、取陰さん?!
なんてこと言うんだこの人!
なんかにやにや笑ってるし!
絶対俺の反応みて面白がってるだろ?!
「勇雅さん!どういうことですか!体育祭の最中ですのに!」
あ~もう、どうしたらいいんだよ!
八百万さんはもっと怒り出すし!
後ろでケタケタ笑ってる声が聞こえるし!
なんなら周りからもクスクス笑い声が聞こえてくるし!
「馬鹿言うな!
俺がそんな不誠実な男に見えるか?!
正義に生まれて正義に生きてもう15年だ!
そんな不義理なことはしたことがないしするつもりもない!」
「え~ん。
一佳、あたしはどうしたらいいの~?」
火に油を注ぐなぁ、取陰さん!
ちょっと苦手になりそうだぞ!!
「それぐらいにしときな、切奈。
ごめんな~八百万。
こいつが悪ふざけしただけで、別に鐵はナンパなんてしてないよ。
試合のことでちょっと話してただけだ。」
「拳藤さん、本当なのですか?」
「嘘はつかないよ。
同じ学級委員なんだしさ!」
拳藤さんは学級委員だったのか……。
通りでリーダーシップがあるわけだ。
「勇雅さん、そうであったら仰ってくれればよかったのに……。」
「いや、言っても聞いてくれなかっただろ……?」
「すみません、なぜだか頭に血が上ってしまいまして……。」
彼女がカッとなることはないと思ってたけど、雄英に来て変わってきているのだろうか。
変化ってのは悪いことじゃない。
激昂するのも時には必要なことだと思うから、いい変化なのかな、と思う。
「ごめんね~。
ちょっと面白そうだったからついふざけちゃった。
反応が初心すぎてさ!ケタケタケタ!」
この人絶対反省してない。
まぁいいか。
こういうおふざけは時には必要だもんな。
「そうだったのですね……。
それでは勇雅さん、お昼にいたしましょう!
緑谷さんは轟さんに呼び出されていましたけど、みなさん待ってますわ!」
「そうだな……。
昼飯前になんかもう、体力ごっそり削られた気がするけど……。
飯食えば元気になるかっ!」
取りあえず飯食って色々話そう!
―――
「いや~!
飯田くんずっこいよ!
あんな超必持ってるなんて!」
麗日さんがご飯をもりもり食べながら飯田を問い詰める。
あの急加速な、すごかった。
耳郎さんがいたから対応できたけど、他の人だったら多分ダメだっただろう。
実際、緑谷チームは反応できてなかった。
あれを隠し玉として握ってたとは、なかなか策士じゃないか、飯田。
「違うぞ、あれは誤った使用法だ。
耳郎くんには対応されてしまったしな……。」
「ウチが音に敏感じゃなかったら、先読みして対応なんてできなかったよ。
ジャックが間に合ったのもギリギリだったし。
大げさによけてくれてたのはラッキーだったよ。」
耳郎さんからすればギリギリだったようだ。
う~ん。
小回りの機動力で劣るエルドラVで飯田や爆豪とどう戦うかってのは俺の課題になるだろうな。
「つか、緑谷、いったいどうしたんだよ?
お前の大好きそうな『必殺技』の話だぞ?
カツ丼も全然進んでないしよ。
本当に大丈夫か?」
緑谷は、一緒に飯を食い始めてから、好物だって言ってたカツ丼をほとんど食べ進めてなかった。
心ここにあらずで、悩んでるような、そんな顔だった。
緑谷は大分迷ってから、俺たちに話し始めてくれた。
「僕はさ……。
力も技術も何もかもみんなに遅れててね。
それでも、僕に期待してくれる人がいて。
君たちみたいに、僕を認めてくれる人たちも助けてくれた人たちもいて……。
だから、応えたいんだ。
頑張って、僕が来たってことを証明したいんだ。」
「やればいいじゃん?
どうしてそれが悩みにつながるわけ?」
耳郎さんの言う通りだ。
お前ならそれができる。
そういう熱を持ってる男だ。
どうして悩むことがある?
「逆にさ、僕とは違って何でも持ってるように見えてた人が、とても苦しんでるのが分かってね。
僕は持ってないことに苦しんできたから、彼の気持ちの全てがわかるわけじゃない。
コミックの主人公みたいな人に簡単に、わかるよ、とは言えない。
僕は憧れに追いつくために彼を倒さなくちゃいけないんだけどね?
けど、何とかしてあげたいって思っちゃうんだ。」
「優しいな、緑谷くんは。」
「緑谷さんの美徳ですわね。」
「デクくんらしいよ!」
飯田も、八百万さんも、麗日さんも、それが緑谷らしさだってことがわかってる。
優しすぎる奴なんだよ、緑谷出久という男は。
いつもこいつは他人を見てる。
いや、他人しか見ていない。
自分よりも誰かを優先してしまうような男だ。
「僕はどうすればいいんだろう。
彼に何かしてあげられることがあるんじゃないのかって、考えちゃう。
そんな余裕があるような力を持ってるわけじゃないのにさ…。」
「どっちもやれよ、緑谷。」
「へ……?」
俺の言葉に、緑谷は素っ頓狂な声を出す。
「お前が勝って前に進むのも、そいつを助けるのも、一緒にやっちまえばいい。
お前から人助けをとっちまったら緑谷出久じゃなくなる。
お前がどうしようもないくらいに人助けに突っ走っちまうから、みんなお前に期待したくなる。
お前が誰かを助けようとするから、俺達だってお前を助けようと頑張るんだ。
だからさ、どっちもやれよ。
お前の自慢のそのパワーで、そいつの心のわだかまりをぶっ壊せ!」
緑谷は、そんな手があったのかって感じに驚いた顔をして、自分の拳をじっと見つめた。
そして、納得したのかただ一言。
「うん!」
と元気に笑って答えてくれた。
「そういやパワーの調整出来てきたんじゃないか?」
「そうそう、緑谷のパワーでウチのジャックはじかれちゃったよ。」
「へへ、人に向かって使うようになってから調整出来始めてさ……。
まだちゃんとコントロールできてるわけじゃないんだけどね?」
つくづく優しいやつだ。
人を傷つけたくない一心でコントロールを無意識的につかむなんてな。
楽しみだ。
早くこいつとぶつかりたい。
「八百万~、ちょっと時間いいか~?」
「急用なんだよ、おいら頼まれたんだ!」
次の戦いに思いを馳せていると、上鳴と峰田が八百万さんを呼び出しに来た。
いったい何の用事だってんだ?
こいつら二人は色ボケがすぎるから、ちょっと心配だ。
目配せをすると耳郎さんと麗日さんもついていってくれるようだ。
まぁ、大丈夫だろう。
ってしまった。
八百万さんにちゃんと心操のこと説明しなくちゃいけなかったのに……。
そうしてそのまま俺たちは分かれることになったわけなんだが……。
まさか、ここでの慢心があんなことに繋がるなんて俺は全く予想してなかったんだ……。
―――
『さぁ、昼休みを終えていよいよ最終種目発表ォ!
っと、その前に、予選落ちのみんなに朗報だぁ!
あくまで体育祭、全員参加のレクリエーションもちゃんと用意してんのさ!
本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層もりあげ……ってあれ?』
プレゼントマイクの放送が中断される。
そりゃそうさ……。
『何やってんだ、あいつら…。』
俺が聞きたいよ、相澤先生…!
『どうしたA組!なんだそのサービスは!』
なんで女子がチアの服着てんだよっ!!!!
「峰田さん上鳴さんだましましたわね!!」
八百万さんの怒りの声と、血走った眼をしてる峰田、サムズアップしてピンクな空気を漂わせている上鳴。
状況は大体読めた。
この事態は俺の慢心によって引き起こされたようなもの。
俺が決着をつけねばならん。
「上鳴ィ!峰田ァ!そこになおれェ!!」
俺は怒気をあらわにして、二人に詰め寄る。
途中で誰かに組み付かれて、少し動きが阻害される。
俺を止めようとしていたのは緑谷だった。
「だ、ダメだよ鐵くん!
最終種目前に問題起こしちゃダメだ!」
「いいや、あの色ボケ共は成敗しなくてはいけない!
俺が警戒を怠ったからクラスメイトがあのように弄ばれた!
勇者式おしおきをせねば俺の気がすまんっ!」
なんだかわからないが俺は猛烈に怒っていた。
とにかく成敗しなくてはいけないという義憤に駆られていた。
しかし、上鳴は俺に言い訳をし始めたのである。
「待てって!俺達男子高校生なんだしさ!
女子の可愛いカッコみてェじゃん、チアとかサイコーじゃん!
お前もまんざらじゃないだろ?!」
いやいや待て待て。
お前たちの一方的な欲求を押し付けることがいいわけないだろ。
本当にヒーロー志望か、この淫獣共。
続いて峰田が女子たちを指さして言う。
「そうだぞ、上鳴の言う通りだぞ!
よく見てみろよお!
鐵、耳郎と八百万めっちゃ似合ってるだろ?
緑谷も麗日のチアあったら元気になれるだろ?
おいら達だって元気を分けてほしいんだよ!」
そう、この言葉に俺は乗せられてしまった。
はっきりと見てしまったのだ。
八百万さんと耳郎さんを。
確かにこの性欲の化身たちの言う通り大層似合っていた。
可愛らしい服装に美人なクラスメイト。
これにドキリともしないやつは失礼にもほどがある。
もしそんなやつがいたら会ってみたいものだ。
俺は見惚れてしまったことを自覚すると、この二人を叱責することが出来なくなってしまったと同時に、己を深く恥じた。
結局目をそらすことも出来ずに立ち尽くしてしまって、どうしようもなく俺はまだまだ未熟であることを知った。
それは緑谷も同じだったようで、俺を掴んで止めようとしていた手には力がなく、ぼーっと麗日さんを見ていた。
「しょせんはお前らも、男なんだよなぁ!」
峰田の勝ち誇ったようなセリフがひどく憎らしかった。
「どうして私は峰田さんの策略にかかってしまうのでしょうか……。
ですけど……。」
「あいつら、馬鹿だけどさ、ウン。
その、なんだろう。」
「ちょっと頑張っちゃう?
百ちゃん、響香ちゃん!
へへへ……。」
俺も緑谷も、その時は自分の心の制御に精いっぱいで全く気が付いていなかったけど。
三人の女の子は、結構乗り気になってくれたようだった。
―――
『一波乱あったけど、みんな楽しめレクリエーション!
それが終わったら最終種目!
総勢16名のトーナメント!
一対一のガチバトルだぁ!』
タイマンか……。
思いっきりやろう!
なんか心のもやもやもぶっ飛ばせる気がする!
「さて、それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうよ!
組が決まったら、レクリエーション挟んで開始になります。
トーナメント参加者は、レクの参加は自由よ!」
ふーむ……。
参加すべきかしないべきか……。
ここはエルドラVのメンテナンスとソフトウェアの微妙な最適化に時間を使った方がいいかもしれんな。
「それで、上位四チームで合計十五名なので、一人五位の鉄哲チームから参加してもらうわ!」
ほう、あの元気な子がいるチームだな。
誰が出てくるんだろうか?
「塩崎、お前出てくれ!」
えぇっ?!
失礼かもしれないけどさ。
君、こういう場で出場を渋るタイプじゃないだろ……。
「どうしてですか、鉄哲さん?
私は汚らわしい手口で勝利をつかんだ身、出場するのは……。」
汚らわしいやり方ってなんだ……。
本当に酷いやり方をしそうな子じゃないし、プライドとか自分のルールにかかわることで何かあったのかな?
「お前は自分のやりたくないことでも、チームのためにやってくれた!
それに、俺は一方的にA組の事悪く見てた!
そんなやつが胸張って出場できるわけがねぇ!」
そういって鉄哲は俺の方を見た。
まさか、気にしてんのか。
「別に、俺たちに遠慮することはないぜ?
出たいなら出ればいいと思う。」
俺は鉄哲という男には参加する資格があると思っていた。
自分が間違っていたと認めることが出来る。
自分になにかしらのルールがある。
そんな男が反省してるなら、それでいいと思った。
「プライドの問題だ!
塩崎、俺の気持ちも持って行ってくれ!」
「鉄哲、あいつ『個性』丸かぶりだけど、男らしいぜ!」
切島からの高評価が入った。
うん、俺も男らしいと思うよ。
「わかりました…。
いただいたチャンス、無駄には致しません。
ミッドナイト先生、私が出場させていただきます。」
塩崎という女の子も覚悟を決めたのか出場することに決めたようだ。
鉄哲の言う通りなら、きっとこの子も心操のように私を滅することが出来る人のようだ。
楽しみだ。
「ホントにアンタらさぁ……。
青臭!
サイコーよ!
オッケー、塩崎さんの出場を認めます!」
青春ジャンキーミッドナイト、大興奮である。
心なしか鼻息が荒いように見えた。
「それじゃあ一位のチームからくじを引いてって!」
くじが一本、また一本とひかれていき、そしてすべてのくじが引かれた。
「抽選の結果こうなりました!」
トーナメントツリー左側
第一試合 緑谷VS心操
第二試合 轟VS瀬呂
第三試合 塩崎VS鐵
第四試合 飯田VS発目
トーナメントツリー右側
第五試合 切島VS耳郎
第六試合 常闇VS八百万
第七試合 上鳴VS芦戸
第八試合 麗日VS爆豪
ほほう……。
こいつは面白くなりそうだ…!
ちょっと麗日さんが心配だけど…!
ヒロイン関係はアンケート案件なのか
私、気になります