雄英の入試で死者でてないのはきっと奇跡。
あの日以降、俺は受験街道をひた走っていた。
開発!トレーニング!勉強!!ひたすら、がむしゃらに、やれることは全部やっている。
開発とトレーニングに関しては、八百万財閥の力を多分に借りた。
開発に協力してくれたのは、I・アイランドに招聘されたこともある博士、ブッチさんだ。専門は流体金属とロボティクスというまさにうってつけの人材だった。
「よろしくお願いします、ブッチ博士!」
「よろしくね、鐵くん。時間もないし、基本設計図見せてもらっていいかな?」
出会ってすぐにこんな感じに対応してくるような、生粋のエンジニア気質の人で、たいへん助けられた。
「ふむ。基礎設計は出来ているものの、金銭的な面とソフトウェア方面で完成が遅れているようだね。それと『個性』の再現に行き詰っている感じだな。」
「そうなんです!合体機構の兼ね合いもあってシステム面の連携とかも考えると中々……。」
「それ、必要かい?」
「男のロマンですよ!それに、爺さんたちも『勇者に必要なことはな、力と心の合体なんだ』って言ってましたし。」
一つ補足。合体機構を取り除こうとするところは大変ナンセンスだ。
現状、エルドラVは『ブースト』を再現した「グランヘッダー」、『ミサイル』を再現した「ボディガンダ―」、先日も活躍した『熱拳』を再現した「パワーハンダ―」、『ランドローラー』を再現した「ナイスフッター」、そして最後に『チャージ』を再現した「ピンクアミーゴ」の五体で構成されている。
『熱拳』や、『ランドローラー』、『ミサイル』なんかは再現しやすいんだけど、『ブースト』と『チャージ』だけはエネルギーに関連するから、全体のバランスを見てみないことには何ともいかない感じだ。
システム周りに関しては、緊急コマンドを音声入力出来る様にしたり、脳波検知によって合体後の動きを俺とリンクさせる感じで話が進んでいる。
ブッチさんは、いずれは流体金属を導入したいと話していたけど、受験に間に合わせることを考えて先に見送られた。残念!
トレーニングは、八百万財閥が経営しているジムを使わせてもらっている。これが本当にすごい!
個性のトレーニングにも耐えられるスーパーなジムで、プロヒーローも入会してるらしい。同年代っぽい子もいた。よく手のひらから爆発起こしてるのを見かける。目つきが怖いのでスルーしておいた。
だってあの子やばいもん……!爺さんたち風に言うなら「悪の尖兵」って感じの顔だよ!絶対だれか殴ってるって!
勇者としては怖がったりするべきじゃないんだけど、ちょっと苦手だ。たまに会う程度だからあんまり気にはしてないけれど。
勉強に関しては、まさかの八百万さん本人が手伝ってくれた!本当にすごい女の子だ……。尊敬できる人はだれって聞かれたら五番目に来るのは彼女だ。トップ4は爺さんたちだから、実質のナンバー1だ。
家に招待されたときは生活の格の違いに度肝を抜かれたよ。すっごくいい紅茶をいれてくれてたみたいだけど、正直味は分からなかった。
彼女のおかげで、勉強はおおいにはかどって、順調に受験の準備が整っていた。
そして俺の受験ももう目の前になったころ、彼女の推薦入試の合否判定が届いたんだ。
―――
私は、ベストを尽くせたと思います。実技、筆記、それに面接も。面接では、校長の根津先生、そしてミッドナイト先生、エクトプラズム先生が担当でした。
「実技試験お疲れさまなのさ!さて、早速面接を始めていくんだけど、八百万さんには自分がどういうヒーローになりたいかっていうビジョンはあるかい?」
根津校長に問われて、私は一瞬考えて、こう答えました。
「私は……、以前は自分の『個性』があれば、多くの人を救うことができ、そしてそうすることは力あるものの義務だと、考えていました。」
「ということは、今は違うってことかしら。」
ミッドナイト先生に先を促される。
「はい。今年の春に、ある事件に巻き込まれて、その時に考えが変わりました。ヒーローはたとえ力を使えなくなったとしても、誰かを助けるものなんだと、教わりました。ですから私は、逆境のなかでも笑って誰かを救えるような、どんな状況でも負けないような、ヒーローを目指したいと思います。」
エクトプラズム先生が、小さく、けど力強くうなずくのを見て、脳裏に浮かぶあの人が、認められたような気持になりました。
「なるほど。君は明確なビジョンを持っているようだ。ありがとう。面接はこれで終了だ。気を付けてお帰り。」
私は促されるまま、帰路につきました。私はあの人とヒーローを目指したい、どうか受かっていてほしい、そんな願いを祈りながら……。
「あの子、きっといいヒーローになるわね。」
「アア。誰ガ彼女ヲ変エタンダロウナ。」
「誰かはわからないけれど、きっとその子もいいヒーローになるはずさ!」
―――
受かっておりました!私は興奮を抑えきれず、はしたなくて本当はしてはいけないのですが、走ってお父様とお母様のところに行って抱き着いてしまいましたわ。
お父様とお母様は私を祝福してくださいました。とっても嬉しかったのですわ。下学上達、慢心することなく常に精進しなくてはなりませんのに……。
それから、あの人にもお電話で合格したことを伝えましたわ。
「もしもし、鐵さん。今、お時間はございますか?」
「あぁ、八百万さん!今ちょうど休憩していたところだけど……。どうかした?」
「私、受かりましたの!雄英に!」
「受かると思ってはいたけど……!さすがだぜ!おめでとう!!!」
彼から称賛の言葉をいただけて、本当にうれしいですわ。私も、あなたのようなヒーローに、なりたいですから!
「八百万さん、俺も頑張るからさ、雄英で会おうぜ!」
「はい!」
大丈夫、あなたは受かりますわ。だって、もうヒーローなんですから!
―――
彼女の合否判定から、俺は今まで以上に頑張った。だけど、エルドラが完成したのは入試前日、つまり昨日の事だった。
そう、そして俺は今雄英高校の校門を前にしている!
頑張るぞォ!
「なぁ、あいつ、なんでコンテナ後ろにつけたバイク押してんだ……?」
「さぁ?実技のもちこみかなんかじゃないか?」
周りの声は気にしない!!
―――
午後、昼食を終えて、実技入試の説明が行われる。筆記はたぶん大丈夫だ。むしろ実技でどこまでやれるかだろうな……。
ちゃんと説明聞いて頑張らないと!
「Hey!受験生のリスナー!今日は俺のライブへようこそー!エヴィバディ、セイ、Hey!」
プレゼントマイク!キバタンみたいな髪型してるけど、凄いヒーローだ!説明にトッププロヒーローを駆り出すなんてすごいな!
「演習場には仮想ヴィランを三種類用意したぜ!それぞれの攻略難易度に合わせてポイントが割り振ってある!各々のやり方で、ヴィランをぶっ飛ばして、ポイントを稼いでほしい。
もちろん!同じ受験生を攻撃するみたいなアンチヒーローな行いはご法度だ!」
市街地におけるヴィラン退治……。エルドラはパワーがありすぎて周りに被害を及ぼしてしまうこともあるかもしれない。周りに注意して、丁寧に一体ずつ潰していこう!
けど貰った資料には四つシルエットがあるけど……?
色々考え事していたら、なんかカクカクしてる男の子が質問していた。あの子凄いな!
「オーケーオーケー。ナイスなお便りサンキューな、受験番号7111くん。」
「そいつは0ポイントのヴィランさ!ゲームでいうところのお邪魔キャラ!演習場を所狭しと暴れまわっているから、倒せないことはないが、意味もないし、上手くさけることをお勧めするぜ!」
巨大なヴィランなのかな……?それを避ける……、それはむしろアンチヒーローな行いなんじゃないだろうか……?
「さて、最後にリスナーへ我が校から校訓をプレゼントするとしよう、かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った…『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』だと!更に向こうへ――『Plus Ultra』!!。それでは皆、良い受難を」
爺さん、どんなピンチでも勇気と闘志があれば、殴って壊せるよな!頑張るぞ!
―――
突然始まった演習試験。ウチは『個性』のおかげで音には敏感だから、一番に飛び出せたと思った。
けど、私の前にカラフルなロボットが飛び出していったんだ。
「エルドラ・カタラータァ!!!」
彼(?)の大きな掛け声と一撃を皮切りに、一斉にみんなが散らばっていった。
ウチは索敵と戦闘がまんべんなくこなせるから、順調にヴィランを撃破してたんだけど……!
地下から轟音が鳴り響いて、巨大なヴィランが出現したんだ。
皆と同じように、逃げようとしたんだけど、瓦礫に下半身を押しつぶされてしまった。
骨とかは折れてないけど、動けない!
「くっそッ!こんなのどうしたらいいんだよ!動けッ!!」
ウチは何とか瓦礫を押しのけようとするけど、押しのけられない。『個性』での破壊も試したけど、瓦礫が多くて破壊しきれない。
目の前には迫ってくる巨大ヴィラン。
「ちっくしょォ!!」
「絶体絶命な状況で悪態をつく……。それは
こいつ、一番初めの時の?!
驚いていたら、瓦礫をのけて、私を担いで安全圏に運んでくれた。
「あ、ありがとう!ってアンタ、なんであいつに向かっていくの?!」
わざわざ助けてくれたのはありがたいけど、どうして何の意味もない戦い仕掛けようとしてんのさ?!
「あんなデカブツが暴れていたら、町は無茶苦茶になる。本物の勇者には、本物の戦いには、避けていい戦いなど一つも存在しない!」
そういって、あいつは爆音とともに巨大ヴィランに突っ込んでいく。
巨大ヴィランの拳が、あいつにあたると思った瞬間、あいつはその拳を両腕でがっちりと止めていた。
「すっごいパワー……!」
「重い一撃だ!だが、このエルドラVには通用せんぞ!ディアマンテェ!クラッシュゥ!!!!」
今度は力任せに腕を引き裂いた?!どんな『個性』使えばそうなるんだよ?!
「エネルギー、トリプルオーナイン!あと一撃分!ならばッ!勇者らしく決めてやろう!!」
そいつは背中から蒼炎を噴き上げて、巨大ヴィランのどてっぱらめがけて突っ込んでいく。
「必殺!エル・インフェルノォ……イ・シエロォ!!!」
訳が分からないほど強い衝撃と風があたりに吹き荒れる。凄い、訳が分からないけど、とにかく凄い!!
「アディオ―ス!アミーゴォ!!」
『試験終了ォ~~~!!!!』
爆音と、キメ台詞と、試験終了を告げる声。
三つの音が響き渡って、ウチの入学試験は終わった。
あいつ、ロックだった。きっと受かってるだろうな。ウチも受かってるといいな!
――――――
やりすぎた。
実技の直前に、爺さんたちのエピソードを思い出して勇気づけたり、完成して合体したエルドラVを装着してテンションが上がりすぎてたりで、初っ端から全力だった。
巨大ヴィラン跡形もなく消し飛ばしたらダメだろ?!というかあんな威力でぶっぱなしたら俺がヴィランになっちまうぞ?!
「はァ~。受かってるといいなァ……。」
あれだけやらかしちまったから……受かってない可能性の方が高そうだけど……。
―――
「今年は豊作ですね」
「まさか0ポイントに向かっていくどころかぶっ飛ばしちゃう子が二人もいるなんて。」
「片方は倒した後木偶の棒になってるし、もう片方は被害とかの計算をせずブッパ。合理的じゃない。」
「いやでもホント凄かったぜ!もう叫んじまったしな!YEAH!!!ってよ!」
「確かに、凄い子ばかりだね。これなら、一人ぐらいは枠を増やしてもよさそうだ。」
「増やすんですか?校長。」
「うん!オールマイトがせっかく教鞭をとるんだからね!素質があるのなら、多くても問題ないのさ!頼むよ、相澤くん!」
「はぁ……。」
「しっかし、こいつマジでカッコいいぜ!せりふ回しとかさ!オールマイトみてェだぜ!」
「山田、しつこい。」
……勇雅の心配は杞憂かもしれない。
―――
届いた!雄英からの書類!!けど、なんで封筒なんだ?微妙に厚いし。開けてみると映写機らしき装置が入っていた。
「私が投影されたァ!」
「お、オールマイトォ?!なんでェ?!」
なんでナンバーワン、ナチュラルボーンヒーローのオールマイトが雄英の書類に?!
「なんでって思ってるだろう?HAHAHA!それは私が今年から教鞭をとることになったからさ!」
すげェ!感動的だ!彼は俺が尊敬する人ランキング第六位なんだ!身近じゃないからナンバーワンではないけど、実質ナンバーツー!
「さて、君の成績だが……。筆記は問題ないね!理数系がよくできていたよ!さすがエンジニアだ!」
おォ、褒められた!感動的だ!!
「で、実技試験。君のヴィランポイントは58。十分合格圏内なんだが……。予想はしているだろうが、減点が入る。最後の君の一撃は、やりすぎだった。夢中過ぎて加減を忘れてヴィランを殺しちゃいました、じゃ話にならない!40ポイントの減点!当然、不合格だ!」
だよなァ……。わかってはいたんだよ。実際。けど……。八百万さんたちに手伝ってもらったのにこんな体たらく……。なっさけないなァ……。
「おっと、まだトイレに立ったりするなよ?だって君、落ちてないんだもの!」
は???????
「HAHAHA!ヴィランポイントの他に、我々が審査していたポイントがもう一つある!名付けて
正しいことをなしたものを!ヒーローの素質あるものを落としてしまうようなヒーロー科なんてあってはならない!救助ポイント60ポイント!なんと1ポイント差で主席合格だ!おめでとう!
ちなみに、君が助けた少女、耳郎響香少女も合格してるぜ!来いよ!鐵少年!!」
「ここが君の!ヒーローアカデミアだ!!」
やった……!やった……!!!!俺はやった!ありがとう爺さんたち!!ありがとう、八百万さん!!
俺の勇者への道はこっからだ!
エルドラメンバーなら間違いなくやらかすであろうミス。
それは全力全開ブッパです。
我らが主人公も当然やってくれました。
当たり前だよなァ!
さて、雄英高校で彼は何を学んでいくのか!こうご期待!