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雄英高校に無事合格し、俺は指定の制服に身を包む。今日は入学式。俺の初めての、高校生活だ!
爺さん、似合ってるかな?俺、頑張るよ。行ってきます。
俺は元気よく戸を開けて、学校へと出発した。
移動は、エルドラの運搬車兼エネルギータンクとして作った「タンダ―」でする。単車だからタンダ―、にしたらブッチさんに「ダサくない?」って笑われた。
合体機構抜こうとする人の話なんか聞くもんか!
まぁ、タンダ―の性能はかなりのもので、エルドラを積載してるコンテナをけん引しながらでも十分なスピードが出せるような馬力を誇っている。
俺にとって、エルドラは『個性』と同等以上に必要なものだから、このような移動方法をとるしかないんだよな……。
いきなりバイク登校とかで目をつけられたりしないといいな……。
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ちょっと早めに学校についた!そりゃそうだ、バイクだもの。これで遅刻だったら技術者の名折れだ。
駐輪場にタンダ―を停車し、コンテナを少々いじる。このコンテナ、ただの積載用コンテナではなく、簡易整備ベースにもなっている優れものだ。
設定を「バッテリーチャージモード」に設定しておく。これで、太陽光からエルドラ用の予備バッテリーをチャージできるというわけだ。
エルドラはかなり燃費が悪いから、こうでもしないと長時間戦い続けることは出来ない。俺がもう少し操縦がうまかったら燃費ももっとよくなるんだろうけど、それはおいおいやろう!
「おはよう!」
俺は元気よく戸を開きながら挨拶する。挨拶をすることは大事なことだと爺さんたちにさんざん叩き込まれてきたからな。当然さ!
「あ!鐵さん!おはようございます!」
八百万さんだ!真面目な彼女の事だ。きっと早く着くように来ていたんだろう。なんて殊勝な心掛けなんだ。やっぱりすごい人だ!
「おはよう!八百万さん!」
きちっと挨拶を返して、自分の席を探す。アッ、「尾白」っていう子、孤島の席じゃん……。一番端の列だけ六人列なのね……。
俺はどうやら「切島」って子と、「口田」って子の間のようだ。なかよくできるといいな。
「あのさ、ウチのこと覚えてる?」
耳からイヤホンのコードみたいなのが垂れ下がっている女の子が話しかけてきた。あ、この子オールマイトが言ってた耳郎 響香って子だ!
「君は確か実技試験の時の子だよな!覚えてる!あのときケガとか酷くないか聞くの忘れててごめんな!大丈夫だった?」
「あ、ウン。大丈夫だったよ。ウチも、助けてくれてありがとね。あ、耳郎 響香。これからよろしく。」
「おう!俺は鐵 勇雅だ!よろしくな!」
彼女にサムズアップを交えて自己紹介する。よっし、つかみはバッチリだ!
「鐵……。勇雅って呼んでいいかな?」
「別に構わないぜ?」
なんで下の名前で呼ぶんだろう、分かった!文字数だ!呼びやすさって大事だもんな!!
「くろが……いえ、勇雅さん。そちらの方はいったい……?」
「ん?あぁ、実技試験の時に知り合った子!耳郎 響香さんだよ。この人は八百万 百さん!同じ中学の同級生さ!」
「へェ。よろしくね、八百万さん。」
「よろしくお願いしますわ!耳郎さん!」
おぉ!もう友達が二人も出来てる!幸先がいいなぁ!けどどうして八百万さんも突然名前で呼びだしたんだろう?
呼びやすいやり方でいいんだけどな、俺からすれば!
そんなこんなでしゃべってる間に続々と人が入ってくる。入学式の時間が近づいてきたときに、緑色の髪の毛がもさもさッとした感じの少年と、茶髪のうららかな感じの女の子が入口のところでしゃべってたんだけど……。
「お友達ごっこがしたいならよそへ行け。ここは、ヒーロー科だぞ。」
なんだこの寝袋モンスター?!ゼリー飲料一息で食べるのえぐいな?!どんな肺活量してるんだ?!
「はい、静かになるまで8秒かかりました。君たちはつくづく合理性に欠くね……。」
なら不審者だと思われないような恰好をすればいいと思うんだが……。それにあなたは誰なんだ。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
なるほど、担任の先生か。全く信用できないけど。
「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。」
うん、寝袋から出てきたのは体操服だった。やっぱ不審者だろこのオッサン!そう言ってくれよ雄英高校!!!
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「「「「『個性』把握テストォ?!」」」」
なるほど。俺にはさっぱりできないことがわかったぞ。いきなり着替えさせられたはいいが、参加できないとなるとちょっと寂しい。
「入学式は?!ガイダンスは?!」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出てる暇ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。それは先生側もまたしかり、だ。」
いや、学校なんだからちゃんと行事には出た方がいいと思う。入学式楽しみにしてる親御さんとかどうするのさ?
京兆さんと造さん今頃泣いてるよ??
「中学の時にやったことあるだろ?個性禁止の体力テスト。」
ガサゴソとポケットをいじって取り出されたのは携帯端末。画面には体力テストの項目が書かれている。
「いまだに国はこんなもののデータを取り続けている。まぁ文科省の怠慢なんだが……。合理的じゃない。で、入試次席の爆豪。お前、ハンドボール投げの自己ベストいくらだった。」
「67メートル。」
「んじゃ『個性』使って全力で投げてみろ。円からでなきゃ何してもいい。」
「そんじゃあ……。死ねェ!!!!」
あ、あの子!前スポーツジムで見かけたことある「悪の尖兵」って感じの子じゃん!投げる時の発言聞いて確信した!この子やばい子だよ!
けどやってることはすごいな。投げてボールが手を離れる瞬間に起爆。爆風をうまく乗せて投げ出した。けど、射出角とタイミングは相当シビアなはず。
入試次席って聞いて納得だな…。それだけの実力がある。
記録は705.2メートル。さすがだ。
「面白そう!」「『個性』全力で使っていいのか!」
生徒の中から楽しそうな声が上がる。けど、それはこの手のタイプにはダメだろうな……。
「面白そう、か。ヒーローになるための三年間をそういう腹積もりで過ごす気か?なら……、そうだな。トータルの記録が最下位のものは除籍処分にしよう。」
ほれ来た。この人はヒーローという言葉を夢のある職業ではなく、責任ある職業ってとらえてる感じだもの。何より目が夢追い人って感じじゃない。仕事人って感じだ。
けどちょっと、残酷すぎるぞ。せめて補習とかにしてくれよ…。不味いな…。
「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、ここが、雄英ヒーロー科だよ。」
B組の子が来ていないのでそれは撤回した方がよさそうだ。
「除籍って…。まだ入学初日ですよ?!初日じゃなかったとしても理不尽すぎる!」
「自然災害に大事故、身勝手で馬鹿なヴィラン…。いつ降りかかるかわからない災厄。ヒーローは常にそういう理不尽を覆していくもの。放課後マックで談笑したかったのならおあいにく、これから三年間、雄英は君らに試練を与え続ける。全力でな。君らも全力であらがえばいい。『PLUS ULTRA』さ。」
やっぱりこの人はちゃんとした先生なんだろうな。色々心の中でボロカス言ってごめんなさい。俺はずっと本物の勇者の背中を追いかけてきたから、分かるんだ。この人が本物だって。
「それと、入試主席の鐵。俺は『無個性』を言い訳にさせるつもりはない。お前のサポートアイテムは素晴らしいが、それがなきゃお前はただの無力な一般人だ。悪いがお前じゃヒーローにはなれない。何かしらの対策を講じてなければ、即刻除籍にするよ。」
「無個性?!」「けど入試主席だって!」「無個性…。僕と…。」「勇雅さん……。」
三者三様な反応が上がる。八百万さんが心配そうな目で俺を見てくる。けど、大丈夫。それくらいなら対策はしてある!
「エマージェンシー・コール!Let`s GO!! エルドラ―ドッ!」
俺がいきなりヘッドギアをつけて、大声で叫んだのをみて、相澤先生ですら驚いた顔をしてる。
そう、これが対策!ジャミングされないようにいろんな波長を介して俺の音声をエルドラ各機に転送!それを受けたエルドラは位置情報をもとに俺のもとに来る!
「五体合体!エルドラV!!勇気とパンチが!アミーゴだ!!」
緊急合体成功!勇者らしい名乗りも出来たし!完璧だ!
ここに来るまでにエルドラが事故とか引き起こしてないといいんだけど……。
「相澤先生、そんなことぐらい、とっくに対策済みですよ!『個性』把握テストですけど、俺はこいつを使ってもいいですよね?!」
これが却下されちまったらおしまいだ…!
「見込みアリ、だな。ただ記録が出せなきゃそれも除籍だ。使ってもいい。」
にやりと薄笑いをして俺の求めていた答えを出してくれる。
この人、俺たちを試してる。だったら全力でそれにこたえるのみ!!
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『50M走』
「ウオオォォオォオオ!!衝撃の二足歩行ッ!!!」
「記録、3秒29。」
「すごいな、あの鉄の体で走れるなんて!漢気あるぜ!」
『握力測定』
「ディアマンテ・クラッシュ!」
「しまった!壊しちまった!」
「機械だからデータは変わらんだろう。もう片方はやらなくていいぞ。両方測定不能だ。」
『幅跳び』
「これは脱いだ方がよさそう。」
「以外と堅実や!」
「記録、6M。」
『上体起こし』
「これも脱がないと可動域がとれない…!」
「エレガントじゃないね☆」
「記録 40回」
『長座体前屈』
「可動域ィ!」
「あ、これウチ、ジャックで押せばいいじゃん」
「記録 57cm」
『ハンドボール投げ』
「よっし、行くぞォ!弾丸ッ!ボールシュートォ!!」
「あのボールの強度、どうなっておりますの…。」
「記録 3651m」
『持久走』
「エルドラで走ってもエネルギー足りそう!」
「なるほど、彼のパワードスーツは燃費に問題を抱えてるのかブツブツブツブツ……。」
「そんなことより指痛くないのか…?」
「記録 2分 46秒」
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よし、全力は出した!結果は4位!あんまり工夫ができなかったな…!
「あー、ちなみに除籍は嘘な。君たちの全力を引き出すための『合理的虚偽』。」
緑谷って子と峰田って子が特に悲壮そうな顔してた。飯田って子もカクカクしながら驚いてたし、みんな「本気」だと思わされてたんだろうな。
凄い先生だ、相澤先生!
「嘘つき……。」
はい、八百万さん、小さい声でそんなこと言ったら色々悪者になっちゃうのでやめてあげようね!
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「なぁ、鐵!俺は切島鋭児郎!さっきのロボットかっこよかったぜ!『無個性』だから、あれつくったのか?」
「おう!俺はヒーローになりたかったからな!頑張って作ったんだ!俺一人の力じゃないけど!褒めてくれてありがとうな!」
切島くんはすごく素直でいい子だった!仲良くなれそうだ!それにエルドラの良さもわかってくれたし!
雄英なら、『無個性』であることを僻まずに頑張れそうだ!
「勇雅さん、一緒に帰りませんか?」「勇雅、帰ろうよ」
おォ、お友達二人にお誘いがきた!うれしいな!なんか滅茶苦茶にらまれてる気がするけど気にしないぞ!
「オッケー!けど、俺バイクだからなぁ…。駅まで送るよ!」
「ぜひよろしくお願いしますわ!」「うん、よろしく!」
そういうわけでお二人をお送りすることになった!
「一応、後部座席と、コンテナのところに座席がついてるから、そこの二席で乗っけていけるんだけど、どっちがいい?」
「では、じゃんけんで決めませんこと?!」
あ、いつものプリプリモードだ。これ見ると元気が出るなぁ。
じゃんけんの結果八百万さんが後部座席になった。色々とやばい気がするが、俺は勇者だ。乗り越えるさ!
安全運転で二人を駅まで送り届けることが出来て本当によかった。というか、後部座席に女の子を載せたことなんてなかったから緊張した…。
「じゃぁ、二人とも、また明日!」
「ええ、お元気で!」「またね」
二人に手を振って俺はグリップを思いっきり捻る。
明日に向かって全速前進!!!!!!
「八百万さん、中学のころのアイツってどんな感じだったの?」「それはですね、彼は凄い方で、私が三年生のころ………。」
切島くんなら絶対エルドラの良さがわかる!
そう信じてる!