どうなるのか?!
昨日は散々な始まりだったけれど、無事、俺のちゃんとした高校生活が始まった。
授業はすべてプロヒーローが担当しているなんて、緑谷にとっては天国みたいな環境なんだろうな……。彼、イレイザーヘッドとか、超マイナーアングラヒーローにも詳しかったし、ヒーローオタクっぽいしな。
午前中は必修科目だ。ヒーローだからこそ、馬鹿じゃいかんのだ。カリキュラムは超つめこみでハードなんだが……。
「HEY!!エヴィバディ、ヘンズアップ!!盛り上がれェ!!」
キバタン先生……。じゃなかった、プレゼントマイク先生、ラジオとか個性とか、ファッションとか滅茶苦茶イケイケなのに授業普通……!
あ、八百万さんが手ェあげた!真面目でどんなことにも全力なのは相変わらずだな!あ、耳郎さんがこっち見て手振ってくれてる。ダメだぞ!いくら地味な授業だからって!
けど嬉しかったから振りかえしておいた。アミーゴは大事にしなくっちゃな!
昼はなんと大食堂でクックヒーロー ランチラッシュが一流の料理をお安く提供してくれるらしい。スゲェよ、緑谷ペディア。きっと色々頑張ってきたんだろうな!
「なぁ!一緒に食べようぜ!緑谷!」
「いいの?!鐵くん!あ、麗日さんと飯田くんもいいかな……?」
「うん!」「もちろんだとも!」
おお!新しい友達が増えそうだ!
「あの、私たちもご一緒させてもらってよろしいでしょうか……?」
「ウチらガン無視とか、いい度胸じゃん」
しまったぁ!
俺をせっかく誘おうとしてくれていたのか!申し訳ないな!
「じゃあみんなで一緒に食べようぜ!」
「うわぁ……!友達いっぱいだ……!」「おなかすいた!早く食べよ!」「うむ!みんなで食べれば食事ももっと楽しくなるだろう!」
快諾!優しい!!
「そうだ、これ食えよ!タコスは体にいいんだぜ。」
俺はみんなにタコスをおすそ分けする。タコスは体にいいってのは爺さんたちからの受け売りだ。理由は分からんがたぶん体にいいんだろう!
「えぇ?!いいの?!じゃあ僕のカツあげるよ!」
「俺はカレーだから分けれるものがない……!すまない!」
「じゃあ私は肉じゃが分けたげる!」
「私からは鮭の切り身を、どうぞ!」
「ウチは、サラダ分けたげる。アンタもうちょっと野菜食べたほうがいいよ。」
いやぁ、みんなで食べる昼食がこんなに楽しいなんて!こういうの久々だから本当に楽しい!爺さんたちはたまに喧嘩するし、酒臭いしな!
「そう言えば午後はヒーロー基礎学だよな?教えてくれ緑谷大百科!いったい何をするんだ?!」
「えっと、ごめん。わからないけど、たぶん今日はコスチューム使う訓練とかするんじゃないのかな?みんな被服控除でコス作ってもらってるだろうし…。」
「私、要望通り作ってもらえているでしょうか、不安ですわ。」
「サポート会社は彼らの独断で一部変更を加えることもあるらしいぞ。」
「えぇ?!私あんまりちゃんと書いてなかったからどうしよう!」
「技術者ってそういうところあるよね。」
ヤメテ、耳郎さん!俺も一応技術者の端くれなの!!!
―――
「私がァ……!」
この声は!!
「普通にドアから来たァ!!」
オールマイトだ!!すごいぞ!
クラスからも歓声が上がってる。そりゃそうさ、生ける伝説が目の前に立っているんだもの!
「オールマイトだ…!」「すげえや!本当に先生やってるんだな!」「画風違いすぎて鳥肌立ってきた……!」
うん、オールマイトだけすっごい劇画タッチに見える。これがオーラってやつなんだな!
「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローとしての素地を育成するため、様々な訓練を行う科目だ。単位数も最も多いぞ!」
単位……。落第とかあんのかな?!怖えよ……!
「早速だが、今日はこれッ!戦闘訓練!」
えぇ?!いきなり?!救助とかもっと基本的なことじゃないのか。最近のヒーローは戦闘力が重視されてるもんな…。
「それに伴って、要望に沿ってあつらえたコスチューム!!着替えたら、グラウンドβに集まるんだ!」
おぉ、やっぱり緑谷大百科すごいな。大当たりじゃん!
これも最高の勇者になるための道!頑張ろう!!
―――
「恰好から入るってのも大切なことだぜ!少年少女!!自覚するのだ!今日から自分は、ヒーローなんだと!!!」
確かにそうだな…!俺だって最初はカッコばっかりのヘボ勇者見習いだったからな!
「いいじゃないか!みんな!カッコいいぜ…!さあ、始めようか!有精卵ども!!!」
よっしゃァ!Let`s GO!!
―――
後ろの方に緑一色のジャンプスーツを着た少年がいる!あれ、緑谷じゃん!なんか、節々から感じるオールマイトリスペクト!いいね!
「やっぱりちゃんと書いとけばよかったよ……。パツパツスーツんなった。恥ずかしい……。」
おぉ、どことなくスペースルックなのが麗日さんだな!
「ヒーロー科、最高!」
峰田……。お前ダメだろ。
「素敵ですわ!勇雅さん!」
お!後ろから話しかけてきたのは八百万さん……、露出度たっか!目のやり場に困る!
「あ、ありがとう…!憧れなんだよ、コレ!」
俺のヒーロースーツは基本は爺さんたちのスーツと同じデザインだ。カラーリングはネロ爺さんみたいに深い赤色なんだが、スカーフともともと黒色だったところはゴールドにした。
そして胸元には爺さんたちの絆を示す五色のエンブレム!さらにヘッドギアには各種機能を盛り込んだおかげでちょっと大きくなった。
戦闘はエルドラで行うから、このヒーロースーツは、搭乗まで身を守るための防具で、あとはちょっとした武器と救急キットとかを持ち運べるようにした。
「あ、そろそろ説明始まるみたいだよ!行こう!」
説明聞いて分かったことが二つある。
一つ、オールマイト、たぶん先生に向いてない。
そもそも生徒の前でカンペ読んじゃダメだろ?!ナンバーワンヒーローという威光があるから何とも言われないが、ちょっと信頼感に欠けるぞ!
二つ、オールマイトは天才肌。
まァ、予想はしてた。けどさすがに人ぶん殴ることを基礎訓練なしでいきなり実践はぶっとびだぜ。
もう今は大分廃れつつあるけれど、柔道や剣道といった武道において、組み方や打ち方を知らずにがむしゃらにやれってのと同じだ。ちょっと危ない気がする。
危なかったら中止って言ってるから大丈夫だとは思うんだけど……。
それで?くじびきの結果は……。
A:麗日 緑谷
B:障子 轟
C:峰田 八百万
D:飯田 爆豪
E:青山 芦戸
F:口田 砂藤
G:上鳴 耳郎
H:蛙吹 常闇
I:尾白 葉隠
J:切島 瀬呂
K:鐵
……俺一人じゃん!
「お、独りぼっちは鐵少年か!君はみんなの演習が終わった後、パートナーを一人指名して、戦いたいチームを選んでくれよな!!」
なるほど、観察し、分析し、己に足りないものをサポートしてくれそうな相手をみつける、これも訓練だな!
「じゃあ、最初はヒーロー側Aチーム!ヴィラン側Dチーム!他のものはモニタールームへGO!!」
ひえ……。「悪の尖兵」風の少年、爆豪くんがヴィラン側か……。緑谷、麗日、頑張ってくれよ…!
―――
「勇雅さん、どのような展開になると思われますか?」
スタートの合図とともに、八百万さんから声がかけられる。
なんだか他のみんなからの目線も感じるけど……。
「まず、緑谷はヒーロー、ヴィランに対する理解度が非常に高い。なら、馬鹿正直に正面入り口から侵入するってことはないはず。麗日さんと協力して二階から侵入するのが最適解だ。」
「おぉ、本当だぜ!鐵、よく読めてるな!!」
いや、彼の考察と洞察力が高いからこそ、今彼が出来る最善のことをやってくるだろうって予想がつくんだよ。切島、本当にすごいのは緑谷さ。
「あっ、でも爆豪が一人で飛び出して行ってる!」
芦戸さんが爆豪の素早い行動をしっかり目で追っている。いい反射神経を持っているんだろうな。
「おそらく、爆豪くんは緑谷に何かしらの因縁がある。だからこその単騎突撃。彼の個性の性質上、防衛戦は出来んだろうしな。緑谷を舐めて奇襲で速攻ケリをつけるつもりなんだろう。」
「なんだ、アイツ?!どんどん緑谷と麗日の方に向かっていってる!けど、舐めてるってどういうことだよ?」
「因縁ってのは両者の間で起こるもんさ!だから当然、緑谷には予想がついてる。俺なんかよりよっぽど爆豪くんの思考をトレースできるはずだ。そして、彼の研究癖と考察癖を考えるならば!」
「爆豪さんの奇襲は失敗に終わる、ということですわね。」
八百万さんが俺の言葉を引き継ぎ切った直後に、緑谷が爆豪の爆破を顔面すれすれで回避していた。
「すごい、緑くん!よくよけたよ!!」
(ほう?結構先読みが得意なんだな、鐵少年!『個性』に頼らずに戦えるように、練り上げてきていたか!)
「そして、緑谷は次に爆豪くんを完全にコントロールして一撃を加える!」
爆豪の雑な右の大振りに対して、投げを決めていく緑谷。緑谷、お前も『個性』以外の武器を、強みを、育ててきたんだな!
緑谷と爆豪の一連の攻防にクラスメイトのテンションがガンガン上がっていく。
緑谷、よく考えてる。戦いの中でも思考が止まってない。カルロス爺さんの若い頃ってあんな感じだったんじゃないかな。
爆豪くんは確かにセンスの塊だ。反射神経、『個性』のコントロール。自身の『個性』を呼吸同然に扱えている。
けど、それ以上に、緑谷の予測がとてもいい。多分、昔からの因縁ってやつが、彼に爆豪くんの研究を促したんだろうな……。
すぐに逃げに徹したのも、爆豪くんとの正面衝突をさけて、飯田に二対一の状況を押しつけようって魂胆だろう。勝ち筋もちゃんとイメージしている。
「ストップだ爆豪少年!!殺す気か?!」
殺す?!さっきまで冷静だったけど、いきなり心臓がバクバクしてきた!えっ、爆豪くん緑谷を殺す気なのか?!
一瞬パニックになった瞬間に、モニタールームを揺らすほどの振動と、爆音が鳴り響き、モニターに映像を出力するカメラは閃光でホワイトアウトしていたり、爆風でぶっ壊れたりしている。
「爆豪、アイツ相当クレイジーだって!殺しちまう!中止した方がいいんじゃねえのか?!オールマイト先生!!」
あ、やっぱり切島もパニックになるよな。他のみんなもかなりビビってる。
「爆豪少年!次うったら即強制終了で君らの負けにするからな!屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く!ヒーローとしてもヴィランとしても愚策だ!それは!大幅減点だからな!」
至極当然だ。むしろ今中止しないのが温情とすらいえるだろう。こうなると飯田が不憫でならない……。
また戦闘が再開され、爆豪くんのテクニカルなコンボが緑谷に思いっきり入る。
轟くん、八百万さんの批評が入り、芦戸さんと常闇くんからは批判の声が上がる。
「正直これは……。勇者の鉄拳制裁が必要になってくる案件だぞ…。正義講座五時間コースも必須だな…。」
俺も、どちらかといえば、ヒーローらしからぬ戦いは好まない。勇者は勇者にふさわしい戦い方をしなければ、ただの暴力装置と変わらない。
ん?けど、緑谷、なぜわざわざ逃げ場のない窓際に逃げたんだ……?
まさか、爆豪くんを誘い込んでいるのか?!
二人が激突していく!けど、緑谷のフルパワー、当てたら確実にトマトみたいに爆豪くんをぶっ潰しちまうぞ?!どうするんだ?!
脇を締めてる?!アッパーか?!
緑谷のはなった拳がビルの床も天井も屋上もぶち抜いて、状況を一気に好転させた!麗日さんも追い打ちかけて核を回収!!
雑だが……、雑だが!熱い、魂のこもった一撃だった!いいパンチだ!
自損覚悟なところは感心しないが…。彼はいい、ヒーローになるぞ!!
刹那の攻防ではあったが、ものすごく心をたぎらせてくれた!ナイスファイトだ!四人とも!!
―――
講評が始まった。爆豪くんの様子がちょっと心配だが、まァ、大丈夫だろう。ああいうやつは立ち直るのも早い。
「ま、今戦のベストは飯田少年なんだけどな!」
と、オールマイトはあっけらかんと述べる。最後の大破壊がなければ、緑谷だと思ってたんだけどな……。あれ以外勝ち筋が残されてなかったのも事実だし……。
「勝ったお茶子ちゃんか、緑谷ちゃんじゃないの?」と、蛙吹さんが質問する。ちゃん呼びなのね、かわいい。
「なんでだろうなー。そうだなー。わかる人ッ!」と、オールマイトが挙手を促すと
「はいっ!」と八百万さんが手を挙げる。逆にこの子が手を挙げなかったら心配だよ。
「オールマイト先生、それは飯田さんが状況に一番順応してたからです。
爆豪さんの戦闘は私怨丸出しの独断。それに先ほどおっしゃっていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。
緑谷さんも同様。受けたダメージから見ても、あの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。
麗日さんは中盤の気のゆるみ。そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。張りぼてを本物の核として扱っていたならあんな乱暴な行為は出来ませんわ。
相手への対策を講じ、核の争奪戦をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。」
あ、飯田、なんかすっごい嬉しそうな顔してるぞ。けどごめん、横の二人死にそうな顔してるし、なんなら一人ぶっ倒れてるから、その顔待って。あと、俺も言いたいことあるんだよ。
「ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘えから生じた反則のようなものですわ。」
「あ~っと、補足していいか?」
「えっ、鐵少年、まだあるの?!もう八百万少女が言ったのであってると思うんだけど?!」
「はい。俺が注目したのはどれだけ有効に戦況をうごかしたか、という点です。その点なら緑谷以外はほとんどゼロ点だ。」
「ほう、続けて?」
「戦った爆豪くんが一番分かってると思うけど、緑谷は目の前の戦闘だけじゃなく、飯田の行動を含めて全体を予測し、勝ち筋をちゃんと考えて行動してた。
爆豪くんはヒーローの分断に成功こそしたものの、終始緑谷に遊ばれてた。途中で偶然発見できてなかったら、飯田は麗日さんと緑谷と二対一での戦いを強いられてたはずだ。
麗日さんは、作戦の立案には携わってなかったようだし、積極性がないのがよくなかった。
飯田は硬すぎたな。ガン待ちするのは間違ってはいないが、後詰が来ることをもっと想定しておくべきだったな。これが実戦なら、もっと大量のヒーローが押し掛けてくる。
そういった意味では、緑谷が爆豪と飯田を引き離した作戦は、実戦的だといえるんじゃないですかね。」
オールマイトがなんかうなってる……。俺まちがったこと言ったかな……?
「ウン!二人ともいい講評だった!今の講評をもとに、よく考えて訓練に励むように!」
どうやら正解だったらしい!
俺もパートナー決めなきゃいけないし、ちゃんと見て学ぶぞ!!
なんと戦闘せず!!
次回こそは!必ず!!