どうぞ!
淡々と戦闘訓練が進んでいく。
その間、俺はずっと自分に出来ることと、できないことを考えていた。
俺に出来ることはやっぱり殴る!蹴る!ぶっ壊す!!この三拍子くらいだ。
けど、轟くんのように被害を出さずに完全制圧なんてことはできないし、八百万さんのように、防衛ラインをがっちり組み上げることもできない。
瀬呂くんや峰田みたいに、ケガをさせずに捕縛するなんてのは夢のまた夢。
それに合体時は動作のためにCPUのほとんどがその処理に回されるから、耳郎さんや障子くんのように広域索敵もできやしない。
考えれば考えるほど、自分の「個性」が浮き彫りになってくる。
だからこそ、俺には俺の役割が生まれてくるってもんさ!!
勇者の思考はポジティブに!
それで、そろそろみんなの訓練が終わるから、本格的に対戦相手とパートナーを決めなくっちゃな!
―――
「さて、これで鐵少年を除いたすべてのチームが訓練を終えたわけなんだが…。
どうだい、少年!対戦相手とペア、決まったかい??」
「オールマイト先生、決まりましたよ……!」
せっかくの訓練なんだ、胸を借りるつもりじゃなきゃ、もったいないよな!
「対戦相手には、Bコンビ!轟くんと障子くんを指名します!」
クラスメイトから驚きの声が上がる。
「あんなチート『個性』相手にやりあう気かよ?!やだやだ、心折れちゃうよ!」
「鐵ちゃん、大胆不敵ね。」
「鋼の肉体に、折れない魂を持ち合わせた強者ということか。」
上鳴くんに、蛙吹さん、常闇くん、俺だって挑戦するからには負ける気はないんだぜ。
「おぉ!轟少年、障子少年!余裕はあるよな?!」
「はい。」「えぇ。」
良かった、受けてくれなきゃ試したいこともできないしな!
「そして、パートナーは……。君ッ!だ!!」
君のその『
―――
「ねぇ、なんでウチを選んだわけ?
仲の良さなら八百万さんとかの方がよかったんじゃないの?」
と、言うわけで俺と耳郎さんはヒーローチームとして作戦会議をしてる。
「仲の良さで君を選んだんじゃないぜ。君の索敵力と、非殺傷の遠距離制圧攻撃!
それは俺にはないものだ。絶対君じゃなきゃいけない!それに度胸もあるからね!!」
「そ、そうなんだ……。ウチじゃないとダメなんだね……。」
なんか耳のジャックをカチカチ、先っぽ同士を当ててる。癖、なのかな?
「それで、作戦はどうするの?」
耳郎さんが意見を求めてくる。作戦はあるぜ!とっておきのが!!
「耳郎さん、君には……。ゴニョゴニョ……。」
確かに、轟くんの制圧力はなかなかのもんだけど、この作戦なら、勝てるはずさ!!
―――
私がいるのは演習場ではなくモニタールーム。私がパートナーに選ばれなかったことが少々不服ではありますが、彼は自身の能力をよく把握しておりますわ。
きっと、耳郎さんの『個性』が必要だとの判断なのでしょうね……。
「ねね、八百万さんはどういう試合運びになると思う??」
麗日さん、自分で考えるのも訓練の一環ですわよ?
「そうだね、先生も八百万少女の意見、聞いてみたいな!!」
まあ、オールマイト先生が私に期待してくださるなんて!
もちろんお話しさせていただきますわ!!
「まず、轟さんと障子さんのペアは防衛戦になっても脅威であることには変わりありませんわ。
障子さんを巻き込んでしまうリスクはあるものの、ヒーローチームの侵入直後に氷結で完封。
シナリオとしては十分考えられます。」
「なるほど、ヒーロー側の時とは違って、轟くんも障子くんももうすでに建物の中だ。
自由に氷結が打てるわけではなく、大規模な氷結は躊躇するかもしれないというわけだな。
ヒーローチームはその隙を突くのだろうか?」
「いえ、飯田さん。鐵さんの『エルドラ
二人のコンビネーションを崩そうと屋内のインファイトに持ち込んでしまうと、
かえって彼は窮屈な戦いを強いられますわ。」
「あんだけパワーとスピードあるんだから、ぱぱっと殴ってしまいじゃね?違うの??」
「上鳴さん、そのパワーとスピードを最大で扱ってしまえば、核や建物への甚大な被害が出ますわ。それにあの小回りの利きにくい大柄な図体は屋内戦に適しません。」
そう、様々な条件を鑑みても、この訓練はいわば彼の長所をほとんど殺してしまうのです。だからこそ耳郎さんの存在がキーになるはずなのですが……。
「よし!ありがとう八百万少女!!
これから先は、君たち自身で考えながら、モニターに注目だ!そろそろ、始めていくぞ!!」
鐵さん、頑張ってくださいまし!!
―――
開始のブザーが鳴った。
まずは作戦のファーストフェイズ!攪乱と索敵!!
分離してるときは、短時間だけど索敵用の電子兵装がつかえる!!
航続距離の低さとバッテリーの短さは耳郎さんの索敵の精度とスピードでカバーできる!
「グランヘッダー!ボディガンダ―!パワーハンダ―!ピンクアミーゴ!!GO!!
音を立ててビルの回りを飛び回れ!」
「そんでウチは、おおよその二人の位置をつかむ!!ウチなら外からでも……!四階!一番東側!」
たしかそこは窓のない大部屋でドアはたったの一枚!なるほど、ガンまもりってわけか!!
「グランヘッダー!サーマルスキャン!ナイスフッターに情報を解析させろ!!」
だいたいの位置さえわかれば、スキャナーもガンガン使える!ヘッドギアに付属してるバイザーに情報がどんどん投影されていく。
よし、敵の位置も核の位置も割れた……!順調!!
―――
「おいおい、ビルに入っていかないぜ?!漢らしくねぇ!!」
「どうして、あのサポートメカをぐるぐる飛ばしているのかしら……?」
「おそらく、あの四機のサポートメカは障子さんの聴覚を攪乱させるためのものでしょう。
あの部屋は防衛には最適ですが、視覚情報が得られません。
障子さんの聴覚情報をうしなうことは、すなわちヴィランチームにとって唯一のレーダーを失うことになりますわ。」
「すっごい!策士じゃん、鐵くん!あんなにロボロボしてるのに!意外!!」
彼は勇敢なところと派手なところが目立ちますが、根は大変思慮深く洞察力も高いお方!失念しておりましたわ!
「索敵は得意な耳郎少女に任せているようだね!即席だがいいコンビだ!」
「ムッシュ!二人が隣の建物に!!」
―――
作戦のセカンドフェイズ!!度肝を抜く突入!!
廊下を歩く行為すら、あのコンビには情報アドバンテージを与えることになる!
なら、爺さんたちから教わった、勇者式ダイナミック突入術を使う時!!
隣のビルに屋上があって助かった。結構間に距離あったからな…。壊した手すりを取って、そこから助走が出来るところまで下がって…。こんなもんかな!
そして、今度は目的の部屋を正面にとらえた、四階のある部屋の窓際にいるはずの耳郎さんに無線をかける。
「耳郎さん!」
「わかってる。タイミングは、任せといて!」
「んじゃあ…!いつでも!」
「どこでも!!」
「「ロックンロォールッ!!!」」
「「「「「とっ、飛び降りたァ?!」」」」」
―――
警戒飛行をしていたグランヘッダー、ボディガンダ―、パワーハンダ―、ピンクアミーゴが一斉に落ちていく俺に向かってくる。
眼下には、ナイスフッターがバーニアをフルスロットルにして上昇してくる。
「よし!合体だァ!!」
グランヘッダー以外の四機が、俺の体に装着されていく。
ナイスフッターとパワーハンダ―がまず四肢に、ボディーガンダ―は、俺の体を包み込むようにして変形し、ガチャンとジョイントがかかる音がする。
背中を押すような感触とともに、ピンクアミーゴが合体する。
最後だ!グランヘッダーが俺の頭を包むようにして突っ込んできて変形。肩に装着されて、ヘルメットを排出する。
そいつをひっつかんでェ!!装着ッ!!
「五体合体ィ!!エルドラV!!!!」
落下の勢いそのまま、四階の壁めがけてェ!!!
「フリーフォール!!エルドラッ!フィストォォォ!!!」
―――
よし!突入成功!
そのままサードフェイズ!核の回収!!勝負は一瞬だ!!
「なっ、背後からの奇襲か?!けど単独じゃ、甘え!」
「抑えさせてもらうぞ。鐵!!」
そうだよな、向かってくるよな!!そう来ると思ったぜ!
「いや!お楽しみは、これからさ!!」
「最大出力ッ!ロックビート!!!」
そう、二人を抑えるのは俺じゃない!彼女さ!!
俺にないもの!広範囲の遠距離!!ブーツからの大音量攻撃!予想以上だな?!
「があッ!」「これはッ?!」
動きが止まった!!こいつでしまいだ!!
「エルドラタッチ!!!」
回収!成功!!!
「ヒーローチーム!!Wiiiiiiiiiiiin!!!!!」
よっしゃァ!!!勝てたァ!!!!
「耳郎さん!!!」
隣のビルに向かってサムズアップ!ありがとう!君のおかげで勝てた!!
「かっこよかったよ!ヒーロー!」
窓枠に足をかけてサムズアップを返してくれた!ヒュウ!うれしいぜ!!
「ふたりとも、大丈夫か?」
「あぁ。」「問題ない。」
よかった!けが人ゼロ!講評を聞きに戻るぞ!!
―――
「MVPは鐵少年だ!!いやぁ、隣のビルを使う発想は大胆だったね!飛び降りはちょっと不安だったけどさ!!」
ごめんなさいオールマイト!!けどほかに作戦が思いつかなかった!
「よし、みんなはどうして鐵少年がMVPになったと思う?今度は八百万少女のサポートなしで答えてみよう!!」
あっ、手を元気よく上げようとしてた八百万さんが超しょんぼりしてる……。オールマイト!それがナンバーワンヒーローのやることか!!
「先生!発言よろしいでしょうか!」
「いいぞ!飯田少年!!」
「では、鐵くんはまず、耳郎さんの索敵を妨害されないように、障子くんの索敵を先に妨害していました。
耳郎さんが索敵している最中に氷結を打たれてしまったら、彼女は行動不能になってしまう。それを避けて空を飛べるメカで妨害をして、真の思惑を悟らせなかった。
続いて、突入は壁を破壊していましたが、部屋の真ん中ではなく核よりも遠い側を破壊していました。そして壁に大きな開口部を作ることで、耳郎さんの『個性』の経路を作った。
意表を突いた効果的な奇襲でした。」
おお、褒められるとこんなに嬉しくなるもんなんだな……!飯田、ニマニマしちゃう気持ち、今ならわかるぞ!
「その通りだ!飯田少年!侵入経路を強引に作り出して意表をつくってのは常とう手段だ!けど、さらにそれすらも囮にして耳郎少女の制圧攻撃を叩き込んだのはいいコンビネーションだったぞ!」
本当に彼女じゃなきゃできない作戦だった!感謝感謝だな!グラッチェ!耳郎さん!!
―――
「お疲れさんッ!!みんなよく動けていたよ!緑谷少年以外は大きなけがもなく、無事に終われてよかった!初めての訓練にしちゃあみんな上出来だったぜ!」
「相澤先生の後にこんなまっとうな授業…。なんか、拍子抜けというか……。」
ウンウン、分かるぞ!蛙吹さん!!他にも何人かうなずいてるしな!!
「まっとうな授業もまた、我々の自由さ!私は緑谷少年に講評を伝えてくるから……。みんな、着替えて教室にィ…。お戻りィィィィィィ!!!!!!」
うわッ、すっごいスピード……。
今日の授業、大変だったけど学ぶことが多かった!!
次回に備えてエルドラの整備もしておかないとな!!
―――
「自己紹介兼ねてさ!反省会しようぜ!反省会!」
上鳴くん、見た目にたがわずイケイケだな!まあ、雄英に来る人なんて大半はイケイケ系だろうけどな!
「いいんじゃん!やろうぜ!俺も『硬化』で出来ること色々研究したいしさ!爆豪は?」
「うっせェ。」
「ノリ悪ィー…。」
『テープ』の瀬呂くんがノリっていうとなんか面白く感じる……!わかんないけど!
「鐵くんと響香ちゃんすごかったよね!敵取ってくれてありがとう!!」
「一応、同じクラスメイトだから敵ってのはいいすぎじゃないか?まあ、リベンジするなら今度は自力でやれるように、頑張ろうぜ!」
『透明』女子の葉隠さん!けっこう根に持ってたのね!完封は悔しかっただろうしな……。
「いやー、耳郎さんには助けられたよ。ホント、今日の訓練、ありがとう!グラッチェ!」
「いいっていいって。ウチは作戦教えられたままやっただけだしさ…。」
「謙遜しなさんなって!」
謙虚でいい子だ!耳郎さんが雄英での友達第一号でよかった!
「あの、勇雅さんは、他にも候補がおりまして…?」
「八百万さんと、蛙吹さん、常闇くん、あとは青山くんかな。俺にない安定性とか、遠距離攻撃持ちとか、そういう基準でピックアップしてたよ。」
「そうだったんですね!よかったですわ!!」
なにがよかったんだろうか……?
「ねえ、鐵ちゃん、梅雨ちゃんと呼んで?」「鋼鉄の拳闘士に見初められていたとはな……。」「僕のきらめきに気づいてくれたかい☆同じ「ゆうが」って名前同士でね☆」
「わかったぜ、梅雨ちゃん!あと青山、俺一応、『勇雅』も本名だけど、もう一つ名前があるんだぜ!」
「二つ名を持ちしもの……!」
さっきから常闇はところどころ中二病だな?!
「そうなの?鐵ちゃん。」
「おう。俺の爺さんたち、ネロとかホセとかバリヨとかカルロスって名前なんだ。
外国人っぽいだろ?その爺さんたちが俺にも日本の名前以外の名前をつけてくれたんだよ。」
「なんてお名前なんですの?」
「秘密さ!爺さんたちの昔の仲間の名前を借りてて、大事なものだからしまっとけってさ。」
そう、爺さんたちの昔のお仲間の名前は隠しておかなきゃならないらしい。理由は知らない。けど勇者には隠しておかなければいけないことは多い。
だから、俺は細かいことは気にしてないのさ!
「お!緑谷帰ってきた!!」
おお!帰ってきたか!よかったよかった!
皆の輪にもまれてるけど楽しそうだ!
「あの……。かっちゃんは…?」
「さっきまでいたんだけどさき帰っちゃったんよ…。」
ここは、背中押してあげなくっちゃな!友達として!
「緑谷、いって来いよ。何があるかは俺も知らん。けど、伝えたいことがあるなら、伝えるべきだ。」
「うん!!」
あ、けど廊下を走ると飯田がうるさいぞ!!
―――
僕は、鐵くんに背中を押されて、かっちゃんを追いかけていた。
かっちゃんには、伝えなきゃいけないことがあるんだ!
「かっちゃん!」
校門前で、かっちゃんを引き留める。
「かっちゃん!」
「あァ?」
ひっコワイ…!けど、お母さんにもいってない秘密……!伝えるべきことは、伝える…!
「これだけは…、君には言わなきゃいけないと思って…。僕の『個性』は人から授かったものなんだ。
誰かからは、絶対言えない。言わない……。けど、コミックみたいな話だけど、本当の事なんだ。
おまけに、まだろくに扱えもしなくて、全然ものにできてない状態の『借り物』で……。だから、使わず君に勝とうとした。
けど、結局勝てなくて、それに頼った……。僕は、まだまだで……。けどいつか、この力を自分のものにして僕の『
ハッ?!だましてたんじゃないって言いに来たつもりだったのに……!
「借り物…?わけ分んねェこと言いやがって…!これ以上コケにしてどうするつもりだァ……。あァ…!だからなんだ?今日、俺はテメエに負けた…!
そんだけだろうが…!そんだけ…!
氷の奴を見て……!敵わねェんじゃって思っちまったァ!
ポニーテールの奴の言うことに納得しちまったァ!!
あのメカ野郎が……!とんでもなくデカい壁に見えた!クソッ!クソ!クソが!」
かっちゃんの……初めての、挫折…。
「なァ、デクゥ!こっからだ!俺はこっから!一番になってやる!!俺に勝つなんて……、二度とねえからな!!」
―――
「何話していたのかしら?」
「男の因縁ってやつです……!」
「そうなのでしょうか……?」
「この距離じゃ、ウチでも聞き取れないや。」
「あれは、男の因縁だな!間違いない!」
あの二人は、いつかきっと、真正面からぶつかって、ドンドン成長していくんだろうな……!
俺も、負けないようにしないと!!
主人公はかっちゃんにロックオンされました!
あと、主人公は距離感が近づくと呼び捨てになります。
女の子はさんづけですがね!意外と初心!