けど、書けない
こんなに悲しいことはない……!
「やばいって!これ死ぬって!あぁ、もうだめだ!怖え、三途見えたマジ!どうなってんだよォ!」
「そういうの後にしようよ。それに、アイツ見習えよ、一番ウチらのことを守りながら戦ってんだからッ!」
耳郎さんが上鳴くんに説教しながらヴィランに蹴りをくらわしてる。いいキックだ!
っと、よそ見してるとッ!
「おら、死ね! クソガキ!!」
「エルドラ・カウンタァ!」
危ない!異形型の『個性』もちが殴りかかってきたのをクロスカウンターで返り討ちにする。
「そうですわ!今はこの数をどう切り抜けるかですわ!」
八百万さんの言う通り!ここを乗り切ることが重要だ!
といっても、俺たちの目の前にはマジに大量のヴィラン。後ろは岩壁。
デビュー前だってのにつらいね!ぶっちゃけ!!
俺たちがなぜ、背水の陣でヴィランと戦っているか。
それは少し前にさかのぼる……。
―――
「全員動くな!あれは…、ヴィランだ!!」
相澤先生の一言で、俺たち全員に動揺が走る。
「先日いただいたカリキュラムでは、オールマイトがいるはずですが……。イレイザーヘッドに13号だけですか…。」
聴覚センサーに入ってきた黒い靄がかったヴィランの一言に、俺は戦慄した。
こいつら、教師陣を把握したうえでの襲撃かよ!
「やっぱり、アレはクソ共の仕業だったか…!」
相澤先生の言葉じりに怒りの感情が見て取れる。
そりゃそうだ。こうしてる間にもボンクラ共が広場をぞろぞろ向かってきてるんだからな!
「どこだよ……。せっかく手間かけてこんなに駒集めてきたのにさァ?
オールマイト。平和の象徴。いないなんて…。子供の断末魔ならいい餌になるかなぁ?」
あの手だらけ野郎、ヤバい!異常だ!
「13号、生徒を守れ。連絡諸々よろしく頼む。時間が惜しい!」
相澤先生が、「イレイザーヘッド」として大群に突っ込もうとする。
「待ってください先生!先生の戦闘スタイルから一番遠い!あなたの得意分野は奇襲だ!」
「ヒーローは一芸だけじゃつとまらん!」
緑谷の制止を、どこまでも仕事人らしいセリフとともに振り切っていく。
刹那、流れるような攻撃でヴィラン共が地に伏せる。
「すげぇ!なんて地力だ!あれは先生に任せて避難しよう!行くぞ緑谷!」
あれなら大丈夫。そう信じて緑谷を促して避難しようとした矢先、目の前に黒い靄が現れた。
「初めまして。我々は『ヴィラン連合』。このたびは僭越ながらヒーローの巣窟、雄英高校に侵入させていただきました。」
悠長に自己紹介?!ご丁寧にどうも!
けどなんだ、目的は?時間稼ぎ?いや、そんなはずはない。
「平和の象徴 オールマイトに… この世からご退場願おうかと参上した次第です。
本来ならばいるはずですが……。まあどのみち私のやることはこれ…!」
宣戦布告?! あのオールマイトを殺そうっていうのか?!
ん?爆豪と切島が突っ込んだ?!
「おらぁ!」「死ねェ!!」
爆音が響く。けど、アイツの個性の性質を考えると!
「その前に俺たちにやられることは考えなかったか?!」
「
「おい二人とも!どけ!!先生の射線に入ってる!」
「私の役目は、あなたたちを散らして!嬲り殺す!」
おォ?!まずい!この黒い靄!ヤバい!
クソッ!どんどん吸い込まれる…!
「みんなぁ!近くのだれでもいい!捕まっとけぇ!」
一番まずいのは、分断されること!
取りあえず近くの奴をがっしりとつかんだと思った次の瞬間。
俺はけっこうな高さから、岩肌に叩き付けられるところだったんだよね。
―――
「俺にも武器くれよォ!それかアイツのエルドラみたいな奴さぁ!」
上鳴、めっちゃビビってるな!今は戦ってほしいんだけどさ!
「おいおい!弱音は勇者のいうことじゃないぞ! オラッ!エルドラ・フィストォ!」
エネルギーはセーブしつつ、ナックルガードで思いっきり殴り飛ばす。
正直、三人を守りながら戦うには、エネルギーが足りない。
だから、マジでみんなには戦ってもらうしかないんだけど…!
「つか、アンタ電気人間じゃん。バリバリっとやっちゃってよ!」
「あのな!戦闘訓練の時見たろ?!ペアだったじゃん!
電気を『纏う』だけだ!オレは! 操れるわけじゃねぇ!巻き込んじまうの!」
「おい。対策してねぇのか?!上鳴!」
「そうだよォ!それに、ジャミングで連絡全然つかねぇしさぁ!頼りにしてるぜ!三人ともォ!」
「男のくせにウダウダと……。勇雅みたいに、度胸見せろ!おらッ、人間スタンガン!」
ぇえ?!蹴っ飛ばすことないじゃん!
「おい、ちょっ、待って!」
やばい、ヴィランとぶつかる!
Bibibibibii!!!!
あ、通電してる。案外正解だったのか。
「あ、効いてんじゃん!オレつえぇ!おい、鐵!俺カッコいいだろ!俺を頼れ!」
「あぁ、かっこいいよ!そのまま頑張れ!」
「真剣に!実戦ですのよ!」
八百万さんの言葉に気が引き締まる。
「なにだべっとんだ餓鬼がぁ!」
まずい、カバーできん!
と思った矢先に、耳郎さんの音響攻撃!
予備動作なし、ロスタイムゼロで打てるのが強力だぜ!
「この数、ずっと抑えとくのは無理だ!俺の得意分野じゃない!」
このエルドラV、もともと範囲攻撃兼遠距離攻撃は一つしかない。
それも威力が高いからおいそれとは使えん代物!
「任せてください!時間がかかりますの。大きなものを作るのは…ッ!」
流石だ、八百万さん!打開策があるんだな!
背中を突き破って出てきたのは…シート?
なるほど!そういうことか!
「勇者式退避ッ!!」
「なんだァ?あのシートは…。」
マヌケめ。その一瞬の躊躇が命取りだよ。
「厚さ100ミリの絶縁シートですわ!上鳴さん。」
「なるほど!それじゃあ、俺は!くそ強ェ!!」
BIBIBIBIBIBIBIBI!!!!!!!
上鳴くんが最大出力で放電する。はなれてなかったら危なかった!
というかすごいスパークだなッ?!光学センサーが白飛びしちまうぜ!
「八百万?!服が超パンクになってるよ?!上鳴、勇雅!こっちみるな!」
「それより索敵頼む!!まだ残ってるかもしれねェ!地面も探ってくれ!」
爺さんたちの教え!
「悪党は倒したと思った時こそ牙をむく」
「12時の方向!上鳴のすぐ近く!地面の中!」
ほらな!場所さえわかれば……!
「エルドラァ!フィストォ!!」
「がはァッ!」
地面後と殴りぬくと、どうやらヴィランに直撃だったらしい。
しかし、ちょっとパワーを出しすぎた。思ってたよりエネルギー残量がない。
「コスチュームの『創造』終わりましたわ!あら、上鳴さん……?」
そういや上鳴がさっきからしゃべってない?
てっきりドヤ顔するもんだと…。
「う、うぇ~~~~い」
「なんじゃその顔?!」
「ぶっは!!!!」
「あ、あの…大丈夫でしょうか…。」
俺と耳郎さんが思わず笑ってしまう。
こんな顔相手にしてるのに、真面目に心配してあげてるのやさしいなァ…。
って、笑ってる場合じゃねぇ!
「みんな、入口に戻るぞ。他の奴が心配だ。」
「そうだね。けど、ここからじゃ、時間かかるよ?」
「俺が『跳ぶ』。八百万さん、ワイヤーかなんかで俺にみんなの体くくりつけてくれ!」
「わかりましたわ!急ぎましょう!」
たぶん、相澤先生だって「無茶を承知で突っ込んでる」。
だったら、さっさと戻って相澤先生が撤退戦に持ち込めるようにしなくっちゃあな!
「勇雅さん!いつでもどうぞ!!」
「OK!! 最大出力!エルドラァ…!ジャンプッ!!!」
「ちょ、ウチ、絶叫系苦手なんだけどぉぉぉぉぉおおお!!!!」
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえい!!!!!」
みんな!勇者が今行くぞ!!!!
――― Side 麗日
私だってぇ!デク君みたいに、飯田君をサポートするんや!
「理屈はよくわからんけど!こんなん着てるってことはさあ!実体、あるんじゃないかなぁ!」
よし!触れた!これで、後は!
「いけ!飯田君!!!」
成層圏まで飛ばす感じで投げ飛ばすッ!
「ぬぁぁああああああ!!!」
ゲートが、開いてく!外の光や…!
私らを助けてね、飯田君!
「クッ…。応援を呼ばれる…。ゲームオーバーだ…。」
ざまあないで!って、アレ?なんかすっごい大きい音が聞こえてくるんやけど…。
「ぎやぁぁぁぁぁぁ!!!」
「みなさんどいてください!!!」
「黒靄野郎ッ!くらえっ!フリー・フォールッ!カタラータァ!!」
耳郎さんに八百万さんに鐵くん?!空飛んでるやん?!
あっ、黒い靄のヴィランに「いい蹴り」入った!
ともかく…!無事でよかった!!
―――Side 鐵
「ごばァッ!!」
よっし、こいつ実体ある!殴れるなら倒せる!
運よく、いやこいつにとっては災難かもしれないけど!
軌道上にいてくれてありがとな!
「着地する!舌かむなよ!」
「はい!」「うぇい…。」「やだやだやだぁ!」
耳郎さん、ホントに怖かったんだな…。ごめんよ。
どすん、と着地してすぐにワイヤーを外してやると、
「馬鹿ぁ!」
ガツン、と蹴られてしまった…。
「す、すまん…。」
本当に申し訳ない。生きて帰ったら何かおごろう。そうしよう。
「みんな~!無事やったんやね~!!」
「麗日さん!そちらもよくご無事で!」
二人が手を取り合って喜んでいる。
ただ、水を差すようで悪いが…。
「みんな、すまん。俺は相澤先生の援護に行く。」
「おいおい、わざわざ死にに行くことねぇじゃん!あぶねえよ!」
「いくらお前が強いからと言って、許可しかねる。」
瀬呂と障子に反対される。わかってはいた。けど!
「たぶん、広場には『対オールマイト用ヴィラン』がいる。
俺たちが飛ばされた先はただの町のチンピラレベルだった。数は多かったがな。
けどそれじゃあオールマイトを『殺す』なんて口が裂けても言えやしねぇ。
確実に、奴等には切り札がある。
さすがの相澤先生でも、オールマイトとやりあえるレベル相手は危険すぎる。」
「だったらなおさら!」
「忘れたか?俺のエルドラは、パワーだけなら『オールマイト並み』なんだぜ?
緑谷よりは安定してそのレベルのパワーが出せる。俺なら、抑えられる。
それにエルドラには装甲だってあるんだ。死にはしないさ。」
そう。俺の勘だが、あの「黒い表皮の異様なヴィラン」がオールマイトキラーだ。
あの目には何もなかった。「虚無」だった。異質すぎた。
「お待ちになってください。
この私に、あとどれだけ戦えるか正直におっしゃってください。
行くかどうか決めるのはそのあとですわ。」
「フルパワーで暴れるとしたら、もって5分。」
「そんなんで行かせるワケないよね。
まあこんな時でも嘘つかないってのは尊敬するけどさ。」
八百万さんも耳郎さんも、なんか察しが良すぎるよね!
「もしそれでも行くというなら、私を連れて行ってください。」
「ダメだよ、八百万!危なすぎるよ?!八百万は生身なんだよ!」
芦戸さんが八百万さんを止めようとする。
俺だって止めたい。けど、俺は行かなきゃいけない。
それに、どのみち彼女の力を借りるしかない。
「わかった。正直、無理を承知で頼み込むつもりではあった。
八百万さんには直接戦闘には参加せずに、あるものを作ってほしい。」
「なんですの?」
「エルドラのバッテリーだよ。戦闘中にバッテリーを交換すれば、戦い続けられる。相当危険だけどな。」
俺にはこれしかない。この手段しかない。
彼女を危険にさらさないと、俺は戦えない……。
「分かりました。構造と材質を教えていただけますか?」
「即答?!おいおい、やめとけって!」
砂藤くんからもストップがかけられる。
俺だって嫌なんだよ…!けどさ、もう誰にも泣いてほしくないんだよ…!
「ねぇ、勇雅。これ聞いて、ちゃんと答えられるならさ。
ウチもう止めない。八百万の護衛するよ。作るのに集中させてあげたい。」
「分かった。ちゃんと答えるよ。」
『勝って、みんな生きて帰ってこれる?』
ひどく、ひどく重い質問だった。
勝つこと。生きて帰ること。
不安な要素は山ほどある。
けど、だからこそ!
今俺が言うべきことは!
「……あぁ、出来る。いや、『やる』んだよ。」
「分かった。麗日、芦戸、ケガしてる人の介抱お願い。ウチらいってくるよ。」
みんなの息をのむ音が聞こえる。
「「「「「「帰って来いよ!ヒーロー!」」」」」」
本当に…。本当にうちのクラスの奴らは……!
見てろよ馬鹿共……。
反撃、開始だ…!
次回でUSJを書き終わりたいところ……!