もしあの子とあの子がそんな出会い方をしてたら面白れぇなぁ……っていうだけの捏造文です。
全国中学・高校生春の総合体育大会 陸上の部200m中学生女子決勝
優勝-○○○○
準優勝-○○○○○
3位入賞-○○○○
4位入賞-隠岐紅音
5位入賞-○○○○
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未だ寒さの残る春先、少し暖かくなってきたかななんて思ったものの風が吹けばやはり寒い、そんな季節に行われたのは中学最後の大会。陸上を3年間やってきた私にとっては集大成になる大会。スポーツ推薦で高校を決めた私にとっては3年間のスタートダッシュにもなる大会。
予選を抜けて、県大会を抜けて、そしてたどり着いた全国大会。私は寒さなんて一切感じないくらいに昂ってしまっていて。
走る前も、
走ってる時も、
走った後も、
ずっと、ずっと、脳が沸騰するように熱くて。体中を血がどくどくと巡っているのがわかった。
全国各地から集まった強豪たちを相手に、胸を借りるつもりで全力で挑んだ。
その結果が、4位。
正直こんなにいい結果を残せるなんて思っていなくて、私の努力の成果が想像以上に通用したことがどうしても嬉しくて。
本当に嬉しくて。
試合が終わった後も控室でずっと一人で呆けてた。
試合の熱が抜けなくて。肌を刺すピリピリの感覚がtれなくて。みんなの応援の声が耳にこびりついてはなれなくて。
最後の大会が終わってしまった。
全国という大舞台で活躍できてしまった。
そんな非現実感の中でどれだけかもわからない時間を過ごして。
「…………閉会式行かなきゃ」
ふらふらとした夢見心地な足取りで私は控室を去った。
◇
「えぇと……?」
迷子である。
閉会式では各競技での上位選手の表彰があって、それに私が出なきゃいけないからその選手用の集合場所に行かなきゃいけないんだけど……
「……ここ、どこ?」
いったい何がいけなかったのか。ずっと浮ついた気分だったから?特に道も調べずにやり場のないテンションに任せて走り出してしまったから?……全部な気がする。
……そんな訳で、気が付けば私は全く知らない場所にいた。
「おっかしーなぁ……方向はあってたと思うんだけどなぁ……」
とりあえず現在位置を把握しようと地図を広げる。
えぇと、あそこに見えてるのがサッカーのスタジアムで、こっちにあるのが剣道と柔道の会場になってた体育館だから……
「あれ、君どうしたの?迷った?」
唐突に声をかけられて「えっ」と振り返ってみればそこにいたのはサッカーのスタジアムから出てきた一人の高校生くらいの男子。後ろには彼のチームメイトらしき人たちが集まってきている。さっきまで試合をしていたのだろうか。
「観客席はあっち。案内いる?」
「ありがとうございます!でも、私が行きたいのは客席じゃなくて……」
「その娘だれ?うぉっ、すげーかわいいじゃん!」
「お、ほんとだ、可愛い娘いる。どしたん?」
「その!私は入賞選手の集合場所に……」
「ん?なになに?どうしたお前ら」
「え、その娘誰?」
「その、えっとぉ……」
私に気づいたチームの人たちがだんだんと集まってきてただ一言聞こうとしていたことが聞けない。あっという間に囲まれてしまってもうてんやわんやだ。
「あ、あの!わたし……」
「こっち!ほら、ついてきなよ」
「あ、ちょっ!」
いきなりグイッと手を引かれてしまう。どうやらサッカーの試合を見に来たと勘違いされてしまったみたいで……って違う!わたしが行きたいのはそこじゃなくて……
「ちょっと待った」
……へ?
1チーム分の人数に囲まれてガヤガヤしていたはずなのになぜか凛と通りぬけていくような声。私も他の人たちもみんな一瞬で静まり返ってしまった。
「僕の知り合いに手を出さないでもらえるかな」
一瞬の沈黙の後に少しずつ騒がしさが戻る。
「……だれ?」
「え、なに?」
「あ、この子もかわいい……」
知らない
「アカネ、こっち」
密集していた中から私の手を掴んで引っ張りぬいてくれたその体にグイッと引き寄せられ、思わず飛びついてしまった。
「じゃ、行こうか」
「……は、はい」
そのまま男子の集団を呆気にとったまま私たちはその場を去った。
なんだかそれが救い出されたお姫様みたいな気分になってしまって少し楽しいなんて場違いなことを考えてしまったけど、きっと大会から浮ついてたせいだ。
そのまま小走りでしばらく走った後、少し開けた広場に出た。
「あ、あの!京
「あー…うん。そう。あと、
そう言って京
「……ってヤバ!私、行かなきゃいけない所があるんです!」
「あ、各競技入賞選手の集合場所ね、わかってるよ。行こう」
「え!何で知ってるんですか?」
「僕陸上見てたからね。知ってる顔がいてびっくりしたよ」
「あはは、流石にキャラメイクが
「まぁね」
さっきは京極さんに手を引かれて走っていたけど、今度は二人横に並んで歩きだす。さっきまでのどうしようにもなくなっていた私を助けてくれた京極さんの隣はなんだか、迷子だったときと比べてずっと心強くて、きゅっと、京極さんの制服のブレザーの袖先に自然と指が伸びた。
「あはっ、そんな可愛いことしなくてもちゃんと連れてくよ?ていうか、私も目的地そこだし」
「えっ!?っていうことは京極さんも……」
「そう。剣道で3位だから」
「すごいじゃないですか!」
「いや、まだまだ。まさか東にあれだけの剣士がいたなんてね……」
「でもすごいですよ!!」
「ーーッ!!」
「……へへっ」
ちょっと顔を赤くする京極さんが可愛くて思わず笑みが溢れた。普段はサンラクさんたちに煽られたりしてばっかりだったから意外と褒められ慣れてないのかな?そのまま目を覗き込むとしっかり見つめ返してくるんだけど時々視線が泳ぐのがなおかわいい。
「ほ、ほら、もうすぐ着くよ」
「あ、ホントですね!……えへ、ありがとうございます、京極さん!」
「うん。どういたしまして」
「京極さんは頼りになる先輩です!」
「う、そ、そういうのはいいから。そんなに歳が離れているわけでもないし。……あれ?茜って中3だよね。じゃあ2歳差かな?」
思い出したように話題を逸らす京極さん。今日、その話題のチョイスは!
「実はですね……今日誕生日を迎えたので1歳差です!」
ふふん!と胸を張って見せると、京極さんの顔が綻んで……
「そっか。おめでと」
「ありがとうございます!」
キザな風にも見えるように私の頭を撫でた京極さんはそれでもやっぱり絵になっていてかっこよくて。
「へへっ」
来年も陸上で全国に出たらまた会えるかななんて。
また見てくれるのかななんて。
そんなことを既に考えてしまっていた。
全国中学・高校生春の総合体育大会 剣道の部高校生女子決勝トーナメント
優勝-○○○○
準優勝-○○○○
3位入賞-龍宮院京極
4位入賞-○○○
5位入賞-○○○○○
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もしこの二人が気を許しあって、互いに意識し始めるようなことになったら、きっと二人ともくるっくる空回り始めてとてもかわいいと思うの(百合厨並感)。この二人の全力ですれ違ってずっこけて慰めあって照れあう系ラブコメも見たい(捏造過多)。