とある世界のとある一幕   作:chee

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ルスモルの相互感情から姉弟愛成分を抽出してみたい今日この頃、黴と羽をくっつけてみたくなったけど頼れるお姉ちゃんはきっとポン(かわいい)。そんな妄想の具現化です。錆黴固定過激派の方は注意。


進め、私の屍を超えて(尊死)

私には弟分がいる。

 

生まれた時からずっと一緒に居る大切な幼馴染。隣の家の、窓越しで隣の部屋に住んでいた私たちはずっと姉弟かのように育ってきた。自分の部屋の扉を閉めて親の視線から逃れ、本来自分だけの世界に浸るはずの(私の部屋)で窓の向こうから笑いかけて来てくれる、ある意味家族よりもずっと家族らしい相手。

 

 

それが、私にとっての葉という存在だった。

 

 

そして私たちは二人でネフホロにのめり込んだ。二人で天下取って、毎日のように戦いに明け暮れていた日々。そんな中で、ソイツは現れた。

 

キングフィッシャー。

 

やかん頭のネフホロプレイヤーにして、後にシャンフロやリアルでもどんどん交流を深めていくことになる私たちの新たな友人の一人であるプレイヤー『サンラク』。

 

 

それが、私たちにとっての陽務楽羽という存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鹿尾野は好きな奴いるのか?』

『馬鹿!鹿尾野には佐備さんがいるだろ』

『あぁ……それもそっか』

『あ、あはは……』

 

なんていう会話は、今日学校でたまたま耳にしたものだった。

 

私からすれば、私と葉の間に今更そんな甘酸っぱい関係が成り立つなんて思えない。葉と十数年かけて積み上げた時間の結果である今の関係こそが貴いもので、()()()を見ることはきっとない。なぜなら私たちは既に家族なのだから。それが、私と葉のスタンスだった。

 

だからこそ、今まで私や葉はこの手の話題を鼻で笑い飛ばしてきた。

 

笑い飛ばしてきたのだが……

 

 

「……葉」

 

「ん?なに?」

 

「葉、好きな人できたの?」

 

「……は?」

 

学校帰りのいつも通りの通学路、いつも通りにゲームの話でもしていればよかったんだろうが、今日はたまたまさっきの葉のどこかいつもと違った態度がどこか引っかかってしまって、そんな柄にもない話題(恋バナ)を振ってしまった。

 

「いや、まって、何言ってるの」

 

この反応は図星の時のやつ。私の目はごまかせない。

 

「……本当にできたんだ」

 

「んぐっ……」

 

言葉に詰まった葉の頬に紅みが刺す。そんな葉の顔は見たこともなくて。ようやくの春の到来を迎えた弟分に私は口角が上がるのを抑えられなかった。

 

「ねぇ、葉」

 

「な、なに?」

 

「葉にとって、私ってどんな存在?」

 

「え、どんなって……まさか……」

 

「んなわけないでしょ」

 

「だよね、うん」

 

葉、落ち着いて。私たちの間に今更そんなフレッシュな恋心が生まれるとでも思ってるの。あまりにも愚か。葉のくせに。

 

「まぁいい。許す」

 

「何を?」

 

「今の私は気分がいいから」

 

「何の話?」

 

気にしないで。こっちの話。

 

葉は頭にはてなマークを浮かべながらもこっちの様子を窺ってくる。弱みを握られたようなつもりにもなっているのだろうか。……いや、流石にそんなことはするつもりがない。

 

「ところで葉」

 

「今度は何……」

 

「件の葉の初恋の相手について聞きたいんだけど」

 

「ふぼぁっ!?」

 

「どこの誰?」

 

やはりこの手の話には耐性がないのだろう。話を振るだけでいい反応を返してくれる。

 

「誰って……なんで言わなきゃいけないのさ」

 

「言い当てられたい?自分の気持ちが筒抜けだったことを知るのは死ぬほど恥ずかしいと思うけど」

 

「その前振りがもう恥ずかしいんだけど!?」

 

「私だって無為に葉の純情を弄ぶつもりはない」

 

「わかったよぉ……」

 

分かったと言いつつも渋る葉。大丈夫。まだ家に着くまではずいぶんある。ゆっくりと聞き出していこうじゃないか。私は「ふふん」と鼻を一つ鳴らした。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「……本当に言わなきゃダメ?」

 

「まだごねるか」

 

 

まぁ、葉が言わなくてもきっと『()()』の事なんだろうなっていうのは予想がついていた。……というか、私を除いたら『()()』くらいしか葉が仲良くできている女の子がいない。

 

 

「葉」

 

「…ん?」

 

「大丈夫。私は葉が誰を選ぼうと応援する。葉の真剣な気持ちを笑ったりしない」

 

 

……だから。

 

 

 

「お姉ちゃんに全部話してみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モルド!おっすー!!」

 

「お、おはよう。()()()()

 

 

約束の時間、私が向かいのカフェからこっそり見守る中、件の二人がついに待ち合わせに現れた。

 

『サ、サンラクが……好きかもしれない』というのは昨日の通学路で葉から聞いたこと。まぁ、ぶっちゃけ予想通りというか、大本命で面白みもなかったというか。

 

だが煮え切らない葉は『僕だって本当にサンラクが好きが分からないんだよ!』と言っていた。なら、確かめるしかないじゃない?というわけで、葉にちゃんと気持ちを自覚させて覚悟を決めさせるために、そしてうまくいけばこのまま二人をくっつけてしまうために、私は今回のデートを計画したわけだ。

 

どうやって約束を取り付けたかと言えばとても単純。ネフホロをやってた時にゲーセン機(リアル)での対戦を吹っかけて、後は私がバックレるだけ。完璧すぎる計画。

 

 

「こら、こっち(リアル)じゃ私はサンラクじゃないぞ」

 

「あっ……うん、陽務、さん」

 

「あははっ、何緊張してんの?楽羽でいいってば」

 

「ていうか、ら、楽羽だってさっき僕の事モルドって呼んだじゃないか」

 

「たしかに」

 

 

うわっ。葉があそこまでやりづらそうにしてるの始めて見た。葉は基本的に興味ない相手にはとことん興味ないし、あそこまで緊張しながら他人と話すことなんてないんじゃないかな。っていうか葉がそわそわしてるとこっちまでそわそわしてくる……

 

「で?ルス……じゃなくて、夏蓮は?」

 

「あぁ…夏蓮は……ドタキャン………」

 

「ドタキャン?」

 

「……ネフホロで野良に喧嘩売られたからボッコボコにしてくるって」

 

「でも夏蓮なら瞬殺できるでしょ?」

 

「あぁ…確かに…」

 

私のことはいいんだよ。ほら、葉、もっと楽羽に言う事あるでしょ。ほら!……うぅ、じれったい。

 

「まぁ、夏蓮の事だし片付いたら何か連絡よこすでしょ」

 

「それもそっか」

 

「じゃあ楽羽。このまま立ち話をしててもなんだし、とりあえず移動しようか」

 

「オッケー。いつものゲーセンでしょ?」

 

「そのつもり」

 

「じゃ、行こうか」

 

「うん」

 

やっとこさ動き出した葉と楽羽二人並んで歩きだしたその絵面がちゃんとデートに見えてちょっと感動。私も距離を離して追跡する準備をせねば。とりあえず、もう少し距離が離れるまで見守って……

 

「そういえばさ、葉」

 

「なに?」

 

 

 

「これ見ようによってはデートになるけど大丈夫?私、夏蓮に怒られない?」

 

 

「ーー!?!?」

 

 

ーー!?!?

 

 

 

何事でもないようにそう宣った楽羽。いや、私としてはそう見えるように今回の計画を立てたわけなんだから全然いいのだけれども。全くいいのだけれども。うん。構わないのだけれども!

 

「だ、大丈夫なんじゃない?」

 

「あ、そう?」

 

 

……いやー、葉につられていちいち動揺してしまうのはどうなのだろうか。だけど、葉にとっては勝負のデート。私の半身ともいえる弟分がそれだけの覚悟を決めて今日に挑んでいるのだ。仕方がないだろう?

 

 

 

「なら、せっかくだから手でもつないでみよっかぁ?」

 

ーー!?!?

 

「っ!?!?………え、遠慮しとく!!!」

 

「あっははは!!なに?葉!めっちゃいい反応すんじゃん!!」

 

「ぅぇ……頼むから勘弁して……」

 

「あー。おもしろ」

 

 

バタン!!と、思わずテーブルに突っ伏した。勝手ににやける顔が元に戻らない。葉の珍しい反応もかわいくて。二人の会話一つ一つが織りなすあの空間がどこまでも尊くて。もう、見てる私の方が先に限界を迎えてしまいそうだ。

 

私も復活まで時間はかかったが、なんだかんだ騒ぎながらもすぐ隣を歩く二人を近年まれに見る笑顔で見送ると、私も移動の準備を開始した。

 

 

 

「……やばい。これめっちゃ楽しい」

 

 

 

葉の勇姿を見逃さないため、私は二人の追跡を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーートイレで鉢合わせしてすべてバレるまであと41分。




モルドにいい顔したいけど別に自分が恋愛経験豊富というわけではないので奮闘するも空回りして結局くっついた黴と羽に温かい目で見られてそう。
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