ということで、記念です。
一応内容は過去にツイッターに投げた錆黴の短編4作+新作の錆黴1作という風になってます。前4作は以前投げたのと同じものなので、読んだことのある方は最後の1作だけでも読んでってくれると嬉しいです。
【錆黴が今の関係性になる前にそんな時期もあったんじゃないかと思うんです】
最近、
「……」
生まれてこの方一緒にいる私達だが、私達は男女にして、葉ももう中学生。いわゆる“お年ごろ”ってやつだ。そういうものもあるだろうさ。……別に寂しいわけじゃないし。
……でも、葉はそろそろ慣れて。
「……かたぐるま」
そういえば最近してないな。なんてそんな下らないことを考えながら、今日も私はネフィリムに乗る。そうか、私はこの高い視線が好きなんだな。なんてこの緋翼連理に乗りながら気づいたのは少し前の話だったが、今ネフィリムに乗って見ているこの星の光が小さいころから葉の肩の上で見てきた夕陽にどこか重なって見える気がするのはきっと気のせいじゃない。
ゆっくりと機体を発進させる。向かうのは今日の対戦相手。今日も対戦する唯一無二の好敵手。明日からもずっと研鑽を続けるであろう緋翼連理のその片翼。
そんな宿敵を探して荒れ果てた荒野を飛び回る。
このマップでの定跡はリスポーン地点から右回りの迂回路。山脈の裏。自身の機体を地形に隠しながらレーダーを走らせる。
……いつもならこの辺でエンカウントするけど。
葉の戦略眼は私よりも上。葉が本気で考えた新しい作戦があるなら、きっと誰にも、私にも、わからない。
でも、何となくそこからの視線を感じた気がしたんだ。
「……いた」
モニター越しに移る機体。その巨大な鎧の向こう側、コックピットに座っているであろう葉と目が合った気がした。
視線が通る。
射線が通る。
静寂で世界が滞る。
私はこの一瞬が好きだ。
最近どこか私との距離感を測りかねている葉だけど、今だけはしっかりと私の瞳を捉えてる。こんなにも混じりっ気のない真剣な眼差しを、ゲームの中でならいつだって向けてくれる。
今日はどんな手で来るのかな?
それはやっぱりに私には想像もできないけど、……でも。
「今日も、私が勝つよ」
吊り上がる口角に合わせて、2機のネフィリムはエンジンの火を吹かせた。
【別に付き合ってもいない錆黴が電車でイチャイチャするだけ】
電車って本当に「ガタンゴトン」って音がなるんだな。
なんて意外そうでただただどうでもいい事実に気づいたのは夏蓮と二人で電車に乗っているときのことだった。僕は今夏蓮の右隣の座席に座っていて、膝の上には二人分の荷物を詰め込んだ大きなリュックが乗っている。目的地まではまだ遠い。することもないなぁ……なんてボーっとしていると、ふいに僕の手に夏蓮の手が触れた。
「?」
僕の手を持ち上げた夏蓮はそのままリュックの上に僕の手を乗せ、自分の手を同じリュックの反対側にのせると、そのままリュックの中の水筒によってできた膨らみの裏側に自分の手を隠した。
そしてそのまま少し様子をうかがう夏蓮の手を見て、悟った。
ーーーあ、これ暇つぶしに付き合えってことね。
僕はゆっくりと
あまり冷房の利いていない暑い電車の中に一瞬の冷気が走って、夏蓮の目の色が変わった。
……トントントンッ!!
夏蓮が素早く
一旦仕切り直しだ。今僕に使える
今度は僕の方から動く。花蓮側のリュックの側面すれすれまで大きく膨らんで一気に距離を詰め、射撃をしながら少しずつ夏蓮を誘い込む。
「……(今ッ)!!」
夏蓮を
「……」
夏蓮の指が僕の腿を叩く甘いようなむず痒いような刺激に注意を割かれそうになるが、頑張って頭の隅に追いやる。……が、このまま撃ち合ってると僕の集中力が先に音を上げそうになる。タイミングを計って距離を詰め、サイドポケットに一度隠れ…………
……同時に夏蓮が動き出した。
「ッ……!!」
僕の
零距離の射撃。核を撃ち抜かれた僕の負けだ。
あぁ……負けたかぁ……。
そのままふと夏蓮を見ると夏蓮は正面を向いていて視線が合わないが、ポケットの中で再び夏蓮の手がうごめき始めた。トドメでも刺されたか?
そのまま夏蓮の指が
「……」
「……」
そのまま、指と指が絡むように……
「……」
「……あ、夏蓮、次の駅で降りるよ」
「うん」
僕たちの声は別に上ずるようなこともなく、いつも通りだった。
【お題『モルドする』】
『モルドする』という言葉がある。
「モルド」
「なに?」
「焼き鳥の共食い」
「ぶっふぉぁ!!」
炎を纏ったサンラクが焼き鳥らしき食べ物を鳥の覆面のくちばしに突っ込んでモルドを笑わせる様子をみんなで眺める。
今となっては
私の記憶を見返してみれば、あんなにいつも一緒に居たのに、
そんなことを、ちょっと思い返してみる。
◇
『なんか夏蓮ちゃん怖い』
『佐備、面白くない。笑わねぇし』
『なんかむすっとしてて感じ悪いよね』
『話しててもつまんないし』
昔から、私は自分の感情を表現するのが苦手だった。
昔の私はクラスの中心にいるような男子が大きな笑いを取っても表情一つ動かないような子で、よく雰囲気を壊すなと言われ続けてきた。
面白いとは思っていたんだ。
でも、どう笑えばいいかわからなくて。
結果周りの人との交流がだんだん減っていって、ゲームにのめりこむようになっていった。
でも、それでも私の傍に、私だけの傍に居続けてくれた大切な幼馴染が一人。
当時はまだ普通に笑っていた男の子。
どんなときでも一緒にいてくれた男の子。
その時から私の世界は、私と
この頃から息はピッタリだった私達だけどやっぱりまだ小さかった私達にはまだ
葉が何を考えているのかわからなくて。葉が何を言いたいのかが分からなくて。私が何を葉に対して思っているのかが分からなくて。
その日は疲れていたのか体調を崩していたのかよく覚えていないけれど、どこか調子が悪くて、やたらとイライラして、葉に当たってしまった日があった。
「夏蓮、大丈夫?」
「大丈夫って言ってるでしょ」
心配をしてくれていることはわかっていた。だけど、学校のみんなはきっと私が調子を崩した程度じゃ心配すらしてくれない。なのに、葉だけはこうしていつも心配してくれた。それがその時はどうしてかわからなくなってしまった。今考えてみれば、それは私が葉を大切に思っているように、葉も私を大切に思ってくれているからだ。とても簡単なことだけど、その時は本当にそんなこともわからなくなってしまって。
「葉には……関係ないじゃん」
「関係なくはないよ?夏蓮の事だし」
「だから関係ないって言ってる!わたしといてもつまらないでしょ!!」
「楽しいよ。僕は」
葉はそう言って、笑った。
◇
その時、気づいた。葉がいつも笑っていることに。他の子たちが私と話してもつまらなさそうにする中で、葉だけは私にずっと笑顔を向けていてくれたことに。
「焼き鳥の踊り食い」
「おど……ぶっふぁ!!」
私にはサンラクが変な恰好で謎の踊りをしながら焼き鳥を食べるあの光景に声をあげて笑う事なんてできないけれど、モルドは大爆笑。やはり、モルドは笑いのセンスが完全に一つズレてしまっている。
だけど。
もし、彼の笑いのツボが他人に比べてズレてしまっていることが、昔から感情表現の薄い私に笑顔を向けるために調整されてしまったものであるのだとしたら。
「……」
彼が『モルドする』のを見て私は、愛されてるなぁ……なんて、そんなことを考えながら頬を緩ませてみた。
【ルストめし】
「ご馳走様でした」
先に食べ終わった僕は先に食器を台所に運んで桶に食器を漬けるための水をため始める。
ふと夏蓮の方を見るともう茶碗に残った米ももう少し。台所から帰るついでに
「さすが葉。わかってる」
「夏蓮、すきだよねぇこれ」
「うん」
僕が用意したのはただの
「たらこは逃げないから、落ちついて」
「大丈夫」
「何が?」
「たとえ逃げ出しても、絶対に逃がさない」
「そうじゃないんだよなぁ……」
逸りながらも慎重に醬油を垂らしている夏蓮の視線はネフホロの対人戦で
「……その視線の意味を聞いても?」
「聞きたい?」
「……葉、あまりにも愚か」
「なんで!?」
「少しずつご飯を食べ進めて最後に残ったこの僅かな白米、それをたらこずくしで食べるなんて贅沢に対してのその失礼極まりない馬鹿にした視線、あまりにも罪深い。私はこの瞬間のためにお米を食べ進めてきたと言っても過言ではないのに」
「そこまでなの……??」
「ふん」
たらこに醤油を垂らし終えて満足げに僕を一瞥。そこまでのことだったらしい。
ここで、一度夏蓮の好物を振り返ってみたい。
昔から子供にしては珍しいトマト好きという好みに加えて、ラーメン屋に行けばドギツい辛さの担々麺、そしてこのたらこ。ここまで振り返ればわかると思うが、そう、赤いのだ。自分の好き嫌いに関しても見た目から入るタイプなのだ。この佐備夏蓮という女は。
そんな夏蓮は僕が食い下がらないのを確認するとすぐに視線を茶碗へと戻し、一気にご飯を掻き込んだ。
「……むふぅーっ」
……でもまぁ、こうして満足げに食べている夏蓮を見るのは僕も好きなので、別にこれでもいいかなんて思えてしまって。
「満足っ…!!」
やっぱり僕は、美味しそうに食べる君が好きだ。
【時は入違って夢焦がれ】
◇
【夏蓮】
夏蓮:たすけて
◇
そのメッセージをもらったのは昼寝から目覚めた夕方だった。
今日は夏蓮の家に親戚が遊びに来るということでネフホロにはログインせず暇を持て余していた僕。今頃夏蓮は親戚の人達と楽しい会食でもしてるはずなんだけど……
「……どういう状況?」
『どうしたの?』と返せば、『いいから早く来て』とのことなので、とりあえず夏蓮の家に向かった。……と言ってもすぐ隣なんだけど。
チャイムを鳴らせば、『開いてる』とのチャットが飛んでくる。え、これ入っていいの?
「お、おじゃましまぁーす……」
恐る恐るドアを開けた。すると、中から聞こえてきた様子はあまりにも僕の想像と違ってずっと静かで、ただ
『…う!……く…て!!』
『ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
……赤ちゃんの泣き声?
状況はよくわからないけれど、その泣き声の向こうで夏蓮の『葉!早く来て!』という声が聞こえた気がして。僕はリビングへと足を進め、その扉を開けた。
「夏蓮?どうしたの急に呼び出して……」
そこにいたのは大声で泣き叫んでいる赤ちゃんを抱えてわたわたしていた夏蓮だった。
「え?どういう状況?この子のご両親は?」
「この子を私に預けて大人はみんな飲みに行った。とりあえずこの状況を何とかして……!!」
「何とかしてってどういう事!?」
「わかんないけど何とかしてッ……!!」
夏蓮は泣き止む様子のない赤ちゃんを抱える腕をプルプル振るわせながら珍しく本気で焦り倒している。こんな夏蓮の様子はめったに見れないもので。
「……ふふっ」
「……なぜ笑っている?」
待って、夏蓮の目があまりにも笑っていない。ただ夏蓮の様子がどこか微笑ましく見えたのが口から少し漏れただけでそこまで怒る!?
「なんだろう……お腹すいたのかな?」
「さっきお母さんが哺乳瓶飲ませてたけど」
「じゃあ……おしっこ?」
「オムツならさっき変えてたけど」
「……ぼくにはもうわかんないや」
「アキラメナイデ」
二人してあれやこれやと解決策を出そうとするも、当然ながら赤ちゃんをあやす心得なんて僕たちは持っていない。こうしている間にも赤ちゃんは泣き続けていて、なんて言うんだろう。どうにもこの泣き声に何かを急かされているような気がしてしまう。
「夏蓮!とりあえず……ゆすって」
「どうやって!?」
「こう……こう!!」
「こう!」
『ネットで調べる』なんて簡単なことも思いつかない僕たちは、二人でひたすらにテンパりながら赤ちゃんが泣き止むまでひたすら交代で赤ちゃんをゆすり続けた。
……そして。
「……すぅ……すぅ」
結局赤ちゃんは泣き疲れたのかそのまま寝てしまった。
「……これはこれでどうしよう」
「とりあえず、ゆすり続けた方がいいのかな、起きないように」
「わかった」
僕の言っていることが正しい方法かなんてわからないのに、それでも真剣な顔してゆすり続ける夏蓮を見ていると、何度でも笑みがこぼれてしまう。なんでだろうか。
「さっきからなに?その薄ら笑いは」
「いや、いずれ夏蓮が子持ちになったらこんな感じなのかなぁ…って」
「………………はっ」
「何でそんな心底馬鹿にしたように笑うの」
「ねぇ、葉」
「ん?」
「その私の子供、一体誰との子供なんだろうね?」
「ッ……!!!」
想像した。いや、
「自分で言ったのにそれで照れてりゃ世話ない」
「う、うるさいなぁ!」
こういう時だけはあまり感情を顔に出さずに済む夏蓮が少し羨ましい。多分今僕は全く誤魔化せてないだろうなって分かっちゃうほどには顔が熱くて、もう頭が焼き切れてしまいそうだ。
「からかわないでよ……」
「それは無理な相談」
「ぁ……ぅぁぅ……」
「「あ」」
夏蓮に抗議の視線をあしらわれていると急に聞こえてきたその声に、僕らは二人して間抜けな声で応えた。
「よ、葉!起きちゃったどうしよう!」
「まだ泣いてないから大丈夫だよたぶん!」
二人でおそるおそるその顔を覗き込む。今この子が泣きだしたらもう正直僕たちじゃ手が付けられない……
「……ぅ……ぅ……きゃっ」
「わらっ…てる?」
「たぶん……」
夏蓮と目を合わせてぱちくり。とりあえず、最悪の事態は回避したようだ。しかしそれにしても。
「か、かゎぃぃ」
「うん。本当にかわいいね…………夏蓮、何か話しかけてみたら?」
「え!?話しかけるって何を?……そもそも言葉わかるの?」
「流石にまだじゃないかなぁ」
「どうしよう……」
「ほら、赤ちゃんの気持ちになって」
『どうしよう……』なんて何度も繰り返しながら一人で混乱していく夏蓮を何となく眺める。さて、悩みに悩んだ夏蓮はなんと話しかけるのやら。
「ぁ…ほら……ほーら……ばぶぅー……」
「ばー……ばぅぁーー!!」
「ぶっふぉぁ!!!」
ば、ばぶぅ!?赤ちゃんに話しかけようとして、赤ちゃんの気持ちになった結果の一言が『ばぶぅ』って……夏蓮にこんなあざといことができるなんて……!!
「葉……お願いだから今ツボるのだけはやめて……」
今までにないくらいに顔を赤くした夏蓮が掠れたような小さな声でつぶやいた。ここまで恥ずかしがる夏蓮も珍しい。肩も震えていて、流石にこれ以上笑うのはかわいそうだとは思ったけど。
「ほら、夏蓮。次はべろべろばーって」
「葉の前じゃ死んでもやらないから……!!」
「えぇー。いいじゃん別に」
「うっさい。くたばれ」
今の僕らじゃこんなにも手探りだけれども、いつかは。それこそ、僕らはもう16歳。あと『
「ぁー……ぅー……きゃぁーー!!」
こうやって、また二人で子供をあやす日も来るのだろうかなんて、機嫌よく笑ってるこの子を二人で眺めながら、僕らは何となく笑みをこぼすのであった。
無理やりすぎた4年要素。推しをばぶらせるのは全人類の夢です(違う)。
5編の中でどれがよかった!気に入った!などあればぜひ教えてください!
5年目のシャンフロのさらなる盛り上がりを願って!
改めて4周年おめでとうございます!!!!!!!!