左脳「雨って楽玲だよね」
馬鹿「羽誕!!!!!!めでてぇ!!!!!」
……誕生日ってなんだっけ(呆
教室の中では、どんよりとした妙に重い空気が流れていた。
別に誰かの機嫌が悪いとかそういうわけではないし、クラス中が気まずくなるような大事件が起きたわけでもない。言ってしまうのであれば、『
耳に届くホームルーム中の担任の言葉とぴゅーっと鳴った隙間風の旋律を聞き流し、ため息を一つ。
薄暗く空を埋め尽くす雨雲。今にも雨の降りだしそうな空模様に私が抱くのは………
……なんて
部活がある人達は部活動へ、部活がない人達も『雨が降り出す前に』って言いながら我先にと教室を出ていった。
私も急いで帰ろうかな。
雨にも降られたくないし、帰ってシャンフロにログインすれば、もしかしたら
そうと決まれば行動は早い。
テキパキと荷物を纏める。忘れ物がないことを確認して教室を出て、階段を降りて、下駄箱で靴を履き替える。途中で
そうであれば話は早いのだが。
「そうだ、もしかしたら……」
彼女はロックロールに寄ったりしているかな?私も寄って帰ろうかな?あの娘がいなくても岩巻さんに近況報告もしたいし。
そんな訳で何となく帰りの方針が決まった私が学校を出ようとしたちょうどその時。
「……あ」
ポツポツと、雨が振り始めた。
あちゃあ、なんて漏らしたのは一体この場の誰だったか。下駄箱では多くの生徒が、傘を持っているか持っていないかに関わらず、少しずつ勢いを増していく雨に恨めしそうな視線を向けていた。
雨が降ってると放課後遊びに出かけるのもおっくうだし、ご飯の買い出しがある人はなおさら。制服を濡らして帰ると洗濯が面倒だし、親に嫌な顔をされることもあるかもしれない。
みんなそれぞれ理由はあるだろうが、総じてやはり雨は好きではないらしい。私と向かいの下駄箱で靴を履き替えていた隣のクラスであろう男子生徒が何を想像してか露骨に顔をしかめた。
でも、私はこの雨に『違う光景』をいつも見る。
雨を見るたびに思い出される『あの日』。
それとなく鞄を頭に構えてみれば何となく気分が上がって踵が少し浮いた。
頬が緩む。
ーーーたしか、あの日の彼女はこうやって鞄を頭にのせて雨をしのごうとしてたっけ……
「すとっぷ!ちょっと待った!!」
「わひゃぁっ!?!?」
ずどん!といきなり背中に衝撃。何事!?!?と後ろを振り返ろうとしてみれば。
「ら、ラクハサン!?!?」
「玲ちゃん!!」
「ふぁい!?!?」
そこにあったのはずっと私の頭から離れなかったその顔。
楽羽さんは私の背中から一度顔を離すと、今度は後頭部ーーーそれこそ、
「ん”ん”ーー!!」
「その……はずかしい……の…デスガ」
「気にしない気にしない」
ところで今ぴくッと楽羽さんの鼻が動いたのは気のせいだろうか。気のせいだと願いたい。
「て、てっきり楽羽さんはもう帰ってしまったものだとばかり……教室にいなかったので」
「あぁ、トイレ行ってたから」
満足したのか楽羽さんは『っぱぁーー!』と顔を離してくれた。その妙に満たされたような笑顔がどうしても気になる。何となくその顔を眺めていると、楽羽さんは
「それよりも玲ちゃん、傘忘れるなんて珍しいじゃん」
「ふぇ?」
「入れてあげるから早く帰ろ」
そう言われて、今度は私がきょとん顔……をしたところで、気がついた。楽羽さんに抱きつかれる直前にいったい私がどんな姿勢だったのか。
確か私、『あの時』の楽羽さんのこと考えて。
なるほどそれで楽羽さんは勘違いを……なんてひとりで納得している間に楽羽さんは傘立てから一本の傘を抜き取った。
「ほら!」
広がる傘。
引かれる腕。
そして玄関口から踊りだす二人の足。
気が付けば私は楽羽さんと同じ傘の中。なんとか口から変な声が漏れそうになるのは防いだが、一度こうなってしまえばもう私は楽羽さんの歩くペースに合わせて隣を歩くしかなく。
こ、これ、ひょっとしなくても、あい……あ…い…
「そっち濡れてない?」
「ダイジョブデス」
「そ?」
一層激しさを増していく雨が傘を叩く。その音が激しくなるにつれて呼応するかのように私の心臓の音もどんどんうるさくなっていく。逸る心音に合わせて歩くスピードまで速くなってしまいそうだが、それは辛うじて抑えた。
実は折り畳み傘を持っている、なんて結局言いだすことのできない私は、とりあえず、「あ、傘持つの代わりばんこね」と言った楽羽さんの隣を歩いていた。
学校を出て、
大通りを抜けて、
住宅地へと入り込んだ。
楽羽さんとのあいあい傘での下校なんていう特殊なイベントは私に心中なんてお構いなしにどんどん進んでいく。
(ーーー本当に私の家と楽羽さんの家がそこそこ近所でよかった……!!)
真奈さんが聞いたら勢いで高そうなワイン開けちゃいそうなこの状況。テンパって何が何だか分からなくなってる一方で、どうしても、こう、嬉しさが、染みわたってくる。
「玲ちゃん今日シャンフロインする?」
「夜はしようと思ってます」
「最近一緒にやってないけど、最近何してるの?」
「私は基本ユニーク関連の情報集めでしょうか……」
私たちの間の会話は基本ゲームに関する事。ゲームの話であれば、一度話し始めればするすると口から流れるように出てくる。
「楽羽さんの方はどうです?」
「私の方はねぇ……」
楽羽さんは本当に楽しそうにゲームの話をする。
時に跳ねて、時に体を揺らして、時に歩調を踊らせながら。
その楽しいっていう感情が時折触れる肩の感触を通して私にも伝わる。
これだから私は楽羽さんと話すのが好きなのだ。
「で、玲ちゃんは今日は何やるつもり?」
「そうですね……今日は…ぅひゃあ!?!?」
突然の浮遊感、そしてお尻から全身に響くような衝撃。
話に夢中になりすぎていたのだろうか。それともこの状況に浮かれすぎていたのだろうか。
雨に濡れたタイルにつるっと足を滑らせた私は気が付けば尻餅をついてしまっていた。
「ちょ、大丈…ぎゃ!?」
「びゃぇっ!?!?」
起き上がろうとすれば今度は頭への衝撃。
数瞬遅れて気づいたのだが、私がぶつかったそれは楽羽さんの頭だったようで。
放り出される傘。
そうして今度は二人して尻餅をついてしまう。
「ご、ごめんなさっ!!」
「あ、大丈夫大丈夫…………ところで玲ちゃん、『びゃぇっ』って何……」
「ーーーッ!?!?」
「ぷっ」
いや、違うんですよ?私普段からそんな声出してるわけじゃないですからね??
でも、誤魔化す間もなく。
「あっはは!ひー!なにそれ!!」
「ら、楽羽さん!!」
吹き出す楽羽さん。
恥ずかしい。
恥ずかしいのに。
「はーーっ……ぷっ……ふふっ…………」
傘を落として大雨の中濡れながら大笑いしている楽羽さんのその笑顔が、あの日初めて見た楽羽さんの笑顔に重なって。
「はーーっ!……おかし……」
あの日私が目を奪われたその笑顔が、今、私に向けられているのが、こんなにも嬉しいから。
「っ……ー……ふっ……」
今度こそ二人とも立ち上がる。
でも、こうして何事もなかったかのように帰ろうなんてどうしてもできなくて。何故か二人でもつれあうように崩れた。
さっきまでも相当だったけど、今の状況もこれはこれでもう可笑しくて仕方がない。
もたれかかっている楽羽さんの笑い声と体を直接打つ雨粒の律動だけが私の中に響いていた。
というわけで羽誕(誕?)滑り込みでした。
今日は羽概念が生まれてから一年間で笛に投下された羽二次を読み漁ってました。
…………もっとあってもよくない?推しの供給が足りないのだが?2年目年以降も一緒に羽概念こねくり回していこうな。供給待ってますね。