これも以前ツイッターに投げたやつの供養です。せっかく短編置き場作ったのに1作しかないの寂しいなと感じたので。
短いですが、さっと読んでいただければ幸いです。
(今はみんなオーズの一挙に夢中でこっそり投げても気づかんやろの精神)
時系列はコミカライズ版のとてもかっこよかったリュカオーン戦翌日です。
真昼に、目が覚めた。
珍しいこともあるもんだ。俺達レッドキャップゴブリンは夜行性だから今は巣のゴブリンのほぼ全員が寝ている。
目が覚めてしまったものは仕方がない。もう一度寝るにも目が冴えてしまったため、とりあえず散歩を始めた。
巣の中を歩き回っていると、とあるゴブリンがいないことに気が付いた。
所詮俺たちはモンスター。開拓者と戦えば死ぬことも多く、ゴブリン一匹一匹のいるいないなんて気にしていたらきりがないのだが、奴は俺が戦闘中の時はよく駆けつけてくれて、ともに多くの開拓者を退けてきたいわば戦友だ。レベルも高いのでそうそう死ぬこともないだろうが、こんな真昼間から何をしているのだろうか。
巣を出てみた。
昼間の四駆八駆の沼荒野は危険だ。開拓者と戦闘になっても仲間が寝てるため助っ人が見込めない。だが奴らは俺達のことを見るなり襲い掛かってくる。だから、開拓者に見つからないように動き回らなきゃいけない。夜ならすぐにでも喧嘩を売るんだがな。
「グギャッ…」
眩しい。
やっぱり日光は苦手だ。視界が悪い。眩しくていろんなものが見えにくい。こんな昼間から活動しているゴブリンたちは一体どんな目をしているんだろうか。
「ギャッ…ギャッ…グギャッ…」
「グギャギャッ…」
「……ギャッ」
数体のゴブリンと遭遇した。やはりこの時間帯に出歩いているレッドキャップは珍しいようだ。かなり驚かれた。
それより、意外な話を聞いた。どうやら、昨日の晩に『夜襲』が四駆八駆の沼荒野に現れたという。あの犬は嫌いだ。俺達よりもずっと頭が回るくせに何を考えてるのかが分からない。奴の餌食になったゴブリンも多い。
「……グギャッ」
昨日の晩に戦いに出てから巣に帰ってきてない
大きな穴の開いた地面。砕け散った岩。見るからに激しい戦闘の痕跡の残ったこの場所で、俺は一人立ち尽くしていた。その戦闘跡は俺たちのような小さなゴブリンじゃあどんなに激しい戦いをしても残すことのできない圧倒的な“理不尽”の跡。こんな激しい戦いの中にゴブリンなんぞが巻き込まれたらひとたまりもなかっただろう。
「…ギャッ?」
近くには誰もいないと思っていたが、沼に一匹のマッドフロッグが浮いているのを見つけた。奴もこの騒ぎを聞きつけて見に来た輩なのだろうか。
「グギャッ。ギャギャギャッ??」
オイお前。この辺で耳に傷跡のあるレッドキャップゴブリンを見なかったか?
「………」
マッドフロッグは何も答えない。
ただ、無防備にも腹を出したままただ空を仰いでいる。俺の声に反応するそぶりも見せない。ただぷかぷかと沼に浮いていた。
「グギャギャッ…ギャッ。グギャッ?」
ここで『夜襲』が暴れまわったらしいな。何か聞いていないか?
「………」
マッドフロッグは何も答えない。
問いかける俺には目もくれず、ただ空を見上げていた。まるで、そうしていることだけがこの世の心理だとでもいうように。
「……グギャッ」
そうかい。気持ちいい昼寝を邪魔して悪かったな。
聞きたい話は聞けなかった。アイツの行方も分からねぇ。このまま巣に帰ってもよかったが、なんとなく、ただ気まぐれに、このマッドフロッグのように沼に身を任せてみた。
浮く。ぷかぷかと。
そのまま目を閉じると、急激に眠気が押し寄せてきて。
……あぁ、そういえば今、真昼間だったっけ。
そのまま、俺は意識を手放した。
「……ゲコッ」
…『ゲコッ』じゃ何も伝わんねぇよ。馬鹿。
その日の夜、『昨日レアモンスターが現れた』と聞きつけて現れた開拓者を仲間も呼ばずに一匹で片っ端から斬り捨てたというレッドキャップゴブリンがいたとかいなかったとか。
そのゴブリンが最終的にどうなったか。それを知る開拓者はいない。
一匹のマッドフロッグと一匹のレッドキャップが沼でプカプカお昼寝してる絵面、すごい癒やされるなって。
こういう小さな山なしオチなしの日常の断片もいいですよね。
感想お待ちしています!!!