とある世界のとある一幕   作:chee

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簡単に今回のユニバースの設定を説明しますと、まず、楽郎と永遠が付き合ってます。そして、紅音と瑠美が付き合ってます。そんな2カップルのハロウィンのお話。

このお話は楽郎&永遠Side。紅音&瑠美Sideは次の話で投稿してます。一つページをめくると一つ部屋の壁を超える。そんなお話です。


ハロウィンという名の恋人たちの宴 SideA

「ちょっとお兄ちゃん早く起きて!!!」

 

気持ちのいい土曜日の朝……はとっくに過ぎていてもう昼過ぎ……に始めた昼寝からたった今目覚めてもう夕方。やっべぇ、一日をほぼ寝て過ごしてしまった。

 

「……今起きる」

 

「ねぇ、お兄ちゃん今日の予定わかってる?」

 

今日?えっと、今日は……

 

「これから紅音と永遠様が遊びに来てくれるんだよ!!やけに静かだからゲームでもしてるのかと思ってたら何も準備せずに寝てるし!!……このまんま永遠様を迎えるなんて許さないよ」

 

俺と永遠が付き合いだしてもう数か月。さらに瑠美が学校の同級生である隠岐紅音と女同士でのお付き合いを始め、瑠美の新しい恋人こと紅音がまさかの秋津茜だと発覚してからたまに2人で我が家に遊びに来るようになった。

 

最初はそりゃもう驚いたよ。瑠美が唐突に恋人連れてきたら見た目が秋津茜のアバターそのまんまだったのだから。紅音が遊びに来た日にふと思いついて永遠を家に呼んでみればもうびっくり。驚きをを隠せなかった紅音から順に怒涛のリアルバレラッシュが始まり、今ではもう完全に打ち解けてしまったのだ。

 

 

「……あいつら何時に来るって言ってたっけ」

 

「30分後だけど」

 

……携帯に目をやる。

 

「瑠美、紅音から何か連絡来たか?」

 

「……??いや、何も来てないけど。確かに紅音から何もメッセージがないのは珍しいかも?」

 

……まさか。

 

 

ぴんぽーん。

 

 

唐突に鳴り響くチャイム。その時俺の頭の中に浮かんだのは、まるでいたずらが成功したときの子供のような笑顔で笑う外道(俺の彼女)の顔と、その後ろで何故かしてやったり顔をしている紅音(瑠美の彼女)の顔だった。

 

 

「……おにいちゃん?」

 

「……5分稼いで」

 

「……3分」

 

「……わかった」

 

「すぐに準備終わらせて、着替えて、部屋もかたづけて」

 

「了解」

 

 

……世の彼氏たちはこんな()()()()()()()()()()()をも笑って許すのだろうか。

 

だがしかし、俺は。

 

「今日こそは言ってやる。ビシッと」

 

 

……まぁその前にまずは永遠を迎え入れる準備をしなければ。こんなとっちらかった部屋に招くようじゃ彼氏の威厳なんてないも同然だからな。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「あれぇ?どうしたの楽郎くん。ひょっとしておねーさんの色気に声も出なくなっちゃったのかな?」

 

 

急いで最低限の準備を整えて玄関へと辿り着いた俺を待ち構えて居たのは、普段着とはまるで違うハロウィンの衣装に見を包んだ永遠と紅音。

 

そのマントに隠された衣装が妙に際どくて、それでいてちゃんと違和感なく似合っていて、うまい反応を探して必死に頭を回すが、何も返すことができない。

 

流石はトップモデル天音永遠。自分を活かす衣装を完全に理解してる。すげぇかわいい。

 

 

「……ほんとに言葉を失ってるって顔だね!これぞサプライズ!いい刺激になったでしょ?」

 

「……まぁな」

 

「ふふん!」

 

俺の不貞腐れたかのような声を聞いて永遠は満足げに鼻を鳴らした。

 

 

「おにーさんおにーさん、私はどうです?」

 

 

紅音の衣装も永遠程ではないがある程度攻めたデザイン。大事な妹分に着せる衣装としては若干不安になる露出だが、意外と気にならない。紅音の快活な雰囲気が全面に出ていてとても良く似合っている。

 

「いいんじゃないか?」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

俺に褒められてこちらも満足げ。ご機嫌そうにマントをはためかせている。

 

「……お兄ちゃん、紅音を口説こうとするのやめてくれる?」

 

「……楽郎くん、イエローカードだよ」

 

「だからちげぇっつの!……とりあえず二人とも家上がんな。いつまでも玄関にいてもしょうがないだろ」

 

「うん。そうさせてもらおうかな。じゃ、紅音ちゃんと瑠美ちゃんもグッドラック!君らのお兄ちゃん借りてくよ!」

 

「はい!永遠様も頑張ってください!」

 

「よし、部屋行くよ楽郎くん!」

 

「わかった」

 

 

もう慣れたと言わんばかりの足取りで我が家の廊下を歩く永遠。向かう先は俺の部屋だ。

 

その後ろ姿が我が家にやけに違和感なく馴染んでるのが、どこか嬉しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、意外と片付いてる」

 

「急いで片付けたからな」

 

「楽郎くん、瑠美ちゃんに時間稼がせてたね?」

 

「永遠が予定の時間より早く来るからだろ……」

 

「でも、サプライズにはなったでしょ?」

 

「それはまぁ、そうだが」

 

 

俺の部屋に来た永遠がついさっきまで俺の寝てたベッドに腰を下ろす。その衣装のせいかどこかいつもと印象が違って見えて、あぁ、やっぱこいつはトップモデルなんだなって、当たり前のことを考えながらおれも机の椅子に腰を下ろした。

 

「楽郎くんはさっきから全然リアクションくれないけど、こういう衣装は好みじゃなかった?」

 

「好みじゃないわけじゃないんだが……反応に困るというか……」

 

「……あっ」

 

永遠が自分の状況をみて固まる。際どい衣装を着て彼氏の部屋に上がり込みベッドに腰かけているこの誘っているともとれる状況。

 

普段うるさいのになぜか今日は瑠美と紅音がおとなしいのも合わさって妙な沈黙が流れる。

 

「……楽郎くん」

 

「なに?」

 

「えっち」

 

「……ッ!!」

 

そう言った永遠の顔はどこか赤みを帯びていて色気に溢れていた。俺の前では子供っぽい一面も見せる永遠だがやっぱりこいつも大人の女性で、流石の俺でも意識せざるをえないというか……

 

「……」

 

勢いで逸らした目をゆっくりと目を覚ますと、そこにいた永遠はしてやったり顔。

 

「いやー、やっぱり楽郎君は本当にいい反応をくれるね!」

 

「うぐっ……そんな煽り方して、俺の理性が固くて良かったな!」

 

「まぁ、そこらへんは楽朗くんを信用してるしね、それに……」

 

 

「私、楽郎くんが相手だったら……」

 

 

若干俯いた上目遣い。自分を見旅行的に見せる方法を十全に承知してる永遠しかできないこの誘い文句。その瞳の奥には俺をまだまだからかってやろうっていう意思があからさまに見て取れるが、やっぱり永遠が少し本気を出せばその破壊力は段違いで。

 

 

「………」

 

 

無言で立ち上がって永遠の方へ歩みを進める。

 

「えっ、ちょっ、楽朗くん?」

 

「……」

 

「楽郎くん、おねぇさんそういうのは勢いで進むのは良くないと思うなぁ……なんて……」

 

「……永遠」

 

 

「ひゃあ!?!?」

 

 

ずざざざっ!!!!どがん!!!!

 

 

「いだっ!!!」

 

俺の突然の行動に思い切り後ずさって後頭部を壁に打ち付けた永遠。うずくまってた顔をあげるとそこには仕返しに成功して笑う俺の顔があった。

 

「いやー、やっぱり永遠は本当にいい反応をくれるな!!」

 

「……楽朗くん、そういうとこ本当にムカつく」

 

「まぁ、性根が腐ってるのはお互いさまってことだな」

 

「ぐぬぬ、否定できない」

 

子供のようなふくれっ面で抗議を送ってくる永遠を笑いながらあしらう。やってる顔だけに言えば年を考えろって突っ込みたくもなるが、これで可愛いから俺の彼女は本当に困る。

 

「とりあえず何かゲームしようぜ。こないだやってたゲームの続きでどうだ?」

 

「えっあの鬼畜ゲー?」

 

「俺ん家にあるゲームなんてクソゲーばっかだからなぁ。アナログゲーならなおさら。虚無ゲーよりは鬼畜ゲーの方がまだ楽しめるだろ?」

 

「まぁ、それはそうだけど」

 

「よっしゃ。じゃあやろうぜ」

 

 

ちょっと大胆なことをしてしまった。

 

……なんてことを永遠から顔を背けてゲーム棚に向かってから考えて少し顔が熱くなる。

 

永遠と付き合い始めてから幾度となくこの手のからかい合いをした。やっぱり、柄にもないことはするもんじゃないなと、毎度のように深く反省した。やっぱり恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

「…………すぅ」

 

 

ゲームを始めておよそ二時間。俺が飲み物を取りに部屋から出ていた間に永遠が寝落ちしていた。

 

「やっぱ気ぃ張ってたんかな。よく寝てる」

 

部屋に入ってからずっと陣取ってた俺のベッドでそのまますやすやと寝ている永遠。その寝顔からは完全に力が抜けきっていて、とても心地よさそう。

 

その顔にかかった髪を指ですく。

 

あらわになったその顔を覗き込むと、想い人の整った寝顔が眼前に現れた。

 

こうして気を抜いて俺のベッドで眠る永遠を見ていると、今更ながら『永遠、本当に俺の彼女なんだなぁ…』って思う。付き合ってみて分かったが、普段からいろんな人の目に晒される事もあってか永遠は自分のパーソナルスペースの管理にとても敏感で、こんなに誰かに自分の懐を許したところは見たことがない。付き合い始める前からそこそこ距離感の近い俺達だったが、寝顔を見せるまで気を許されていたかと言われれば絶対にそんなことはなかった。

 

 

 

「永遠……好きだ……」

 

 

 

ポロっと口からこぼれた本音。普段こんな事を本人に言おうものなら一週間は煽り倒されそうなのでなかなか言うに言えない大切な言葉。

 

あぁ、やっぱりまだ面と向かって言うには恥ずかしいな。

 

永遠が寝てくれていて良かった。恥ずかしさから一度そらした視線をもとに戻すと、寝ている()()()永遠と目が……あっ…………た………………

 

 

 

「「ッ〜〜〜〜!?!?!?」」

 

 

 

二人して後ろに飛びのいて、俺は床に、永遠は壁にそれぞれ体を打ち付ける。壁に後頭部から突っ込む永遠には既視感があるが、正直それどころじゃない。

 

 

「と…永遠!?いつから起きて……!!」

 

「楽郎くんこそなんでッ……こんな!?!?」

 

「ま…まさかさっきのも全部寝たふりで…」

 

「違いますぅ!!ちゃんと寝落ちしてましたぁ!!それなのに起きたらいきなり楽郎くんが変なこと言ってるし!!」

 

「へ……変じゃねぇだろ!だって俺ら……」

 

「ぁぅ……」

 

二人で顔を赤くして取り繕うこともできずに喚き散らす。

 

 

「…………ねぇ楽郎くん、もう一回言ってよ」

 

 

「んなっ!?」

 

「ちゃんと起きてる私に、面と向かって」

 

「俺だって恥ずかしいんだぞ……」

 

「しってる」

 

そう言って笑った永遠の顔は、モデル業で見せるのとは違う力の抜けたその笑顔は、あまりに魅力的すぎて、()()()()を引き出すには十分すぎた。

 

 

 

「……好きだ」

 

 

「…………」

 

 

 

もっと俺が渋ると思ったのか、いきなり好きだと言われるのはどうも意外だったらしい。永遠は一瞬鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして、再びその顔を紅に染めた。

 

 

 

「ッ〜〜!!!だから不意打ちは卑怯っていったじゃん!!!」

 

 

 

永遠の叫び声が響いた。

 

でも、悪いな。ちょっとやそっと恥ずかしいくらいじゃ漏れ出る本音を抑えきれないくらい俺はお前のことが大好きなんだ。




永遠に一番似合う表情はきっと赤面だし、策略家の永遠の想像を超えてくるからこそその不意打ちからの照れはとても美味しい。

それでは次は瑠美&紅音Sideです。

楽郎を「お兄さん!」って呼ぶ義妹紅音概念から始まった世界線なのに楽郎と紅音の絡みがほぼなかった…………まいっか!!
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