第16話、どうぞ!
「この辺りなら多分何が出てきても被害は出ませんよね」
リアナさんから召喚獣のスキルを買った私達は宿を取った後、試しに召喚獣を召喚してみようということでウェルフェンから少し離れた草原へやってきていた。
「それにしても…どんな召喚獣が出てくるんだろうね」
「こればかりは本人の資質によるものですからね。資質が無ければ私のように猫もしくは犬が出てきます」
「ちなみに資質が高いとどんなものが出てくるの?」
「そうですね、書物などに記されている通りなら以前話した通りフェンリルですとか、あとはドラゴンとかが出てきたりするそうです」
「ドラゴン…」
フェンリルはともかく、ドラゴンは生物の頂点だ。下手すれば呼び出した術者が喰い殺されかねないのでは…
「あ、もちろんあくまでこれは書物によるものなので確実にあるとは言えません。書物に記されているものすべてが正しいわけではありませんので」
「でも、もしそれが正しかったら危なくないですか?」
「まあ、一応召喚獣のスキルで召喚したモンスターには一定時間術者への攻撃不可という契約が設けられます。なので召喚してすぐ食べられる…なんてことはありません」
なるほど、それなあら安心して召喚できる。もし、敵対する意思があるようなら召喚したモンスターをそのまま還せばいいのだから。
「では、早速召喚してみますね。まず召喚陣を…確か指に魔力を集めて陣を描くんでしたね」
私は軽く目を瞑って指に魔力を集めて行く。そして、人差し指の先端に淡い光の球体が現れるほど集めるとそれを使って召喚陣を描き始めた。
◇◇◇
描き始めること数十分、そこには巨大な召喚陣が平原の地面に描かれていた。
「ずいぶんと大きな陣になりましたね…」
「召喚陣はこの位ですよ。まあ、すごい人だとこれをもっと小さくできるらしいですけど…」
「こんなに時間をかけて描くのも疲れますから小さくできるのはすごいですね」
「そうだね~」
「…さて、それでは早速召喚しましょう。これって初回は詠唱が必要なんですよね」
「はい。あと、召喚は強さ関係なくかなりの量の魔力が消費されるので気を付けてくださいね」
「わかりました。では…【召喚】!!」
私がそう叫ぶと同時に描かれた召喚陣は七色に輝き始める。そしてそれと同時に異変が起こる。
「えっと…フィーアちゃん」
「なんでしょうかフラメアさん?」
「…なんか召喚陣からものすごい稲妻が走ってるけど…あれは正常?」
「ただのモンスターならこうなりませんね。あり得るとすれば大成功か大失敗のどちらかだと思います…」
「え、あの…大失敗だとどうなるんでしょうか…?」
「魔力枯渇で半日位倒れると思います」
まさかの気絶コースだった。こうなればもう大成功であることを祈るしかない。しかし、そんなことを願っている間にも稲妻はどんどん強くなっていき、やがて…
ズドォォォォンッ!!
と、激しい音共に召喚陣に巨大な稲妻が落ちる。
幸い、音が大きいだけだったようで被害は無く、ただの失敗だったのかと思ったが…
『我を呼んだのは貴様か、人の娘…いや、精霊使いよ』
と、稲妻が落ちた召喚陣から少しずつ現れる白い毛、巨大な体躯、獰猛な牙。そして…私を見つめる深紅の瞳。それはまさしく―――
「フェン…リル…」
フィーアちゃんがそう呟く。まさか、フェンリルが召喚されるとはここにいる私達の誰もが考えもしていなかっただろう。
だが、現れたのは事実。眼前で威圧感を放つフェンリルはこちらをしばらく見つめると口を開いた。
『神獣フェンリル、召喚に応じここに参上した。して、我を呼んだのはお前か?人の子よ』
「…はい。神獣フェンリル、貴方を召喚したのは私です」
『そうか。…まずは名乗るが良い、我にふさわしき者か見定めるのはそれからだ』
「えっと…私は白峰碧です」
『シラミネアオイ…ならばとりあえずアオイと呼ぼう。それでよいか?』
「あ、はい。構いません」
わざわざ確認を取ってくるあたり結構優しいんだろうか、このフェンリルさんは。
『ではアオイよ、今からお前には試練を受けてもらう』
「試練…ですか?」
『そうだ。お前たちはアルヴィラ大迷宮というダンジョンは知っているか?』
「私は知りません。…フラメアとフィーアちゃんはどうですか?」
「私は知らないかな~」
「名前だけなら一応知っています。このラルゴ王国に存在するダンジョンの1つですから」
『名前だけでも知ってるなら良い。場所は知っているか?』
「はい。場所も把握済みです」
『説明する手間が省けて良い。さて、アオイ。お前に課す試練はそのダンジョンを攻略することだ」
正直、ダンジョンの話題を出された辺りで予想はしていた。
だが、ダンジョンにはもともといつか行こうとは考えていたのだ。正直、タイミングが良いともいえる。
『ああ、先に言っておくが死の心配はする必要は無い。我もお前の影となり同行し、命を確実に失うと判断すれば必ず助けよう。だが、そうなった時点でお前には我の主になる資格無しと判断し、お前たちをダンジョンの入り口まで送った後去ることになるだろう』
「そういうところは優しいんですね。フェンリルさんは」
『誇り高きフェンリル族が課した試練で人に命を落とさせるなどあってはならん。故に助けはする』
「一応保険はあるみたいなので少し安心しました。勿論、ダンジョンには真剣に挑みますがいざというときはフェンリルさん、お願いしますね」
『うむ。任せておくが良い。さて、早速出発を…と言いたいところではあるがお前たちにも準備があるだろう』
それはそうだ。ダンジョンと言えば強いモンスターや危険な罠が沢山あるに決まっている。だから、いくら死なないとは言え準備は怠らないようにしなくてはいけない。
『7日後、アルヴィラ大迷宮の入り口に来るが良い。そしてそのまま試練を行う。それでよいな?』
フェンリルさんの言葉に私達は頷く。
『では7日後、再び会おう』
そう言い残してフェンリルさんは書物に書かれていたように雷を思わせるほどの速度で私達の前から走り去っていった。
「さて、私達も早く準備をしましょう。フィーアちゃん、アルヴィラ大迷宮までどのくらいかかりますか?」
「3日ほどかかりますね。なのでそれを考えたうえで出発しないといけません」
「わかりました。それまでに私達は準備を整えてダンジョンでフェンリルさんに助けられないようにしましょう」
「「はいっ!」「そうだね!」」
こうして召喚獣としてフェンリルを呼び出した私は7日後のダンジョン攻略に向けて準備をすべくウェルフェンへ戻っていくのだった―――
碧「フェンリルさんって人を食べたりしないんですか?」
フェンリル「するわけなかろう。人間を食うよりはるかに野生の果物なり木の実を食べているほうが美味い」
フラメア「意外と草食なんだね…」
次回、ダンジョン攻略になる…かも?
お楽しみに!