小惑星ユリシーズによってユージア大陸で戦争が起きた。私は戦争のさなか、家族を失った。
黄色で13の数字が刻まれた戦闘機に…。
私は黄色の13を殺すため、ヤツを探していた。
年が明けてから4ヶ月の2004年4月6日、エルジア軍は市民に対して電力、ガソリン、閲覧できるテレビ番組に制限をかけた。
また、学校で学ぶ内容には私たちには無縁のエルジア語、エルジアの歴史、エルジアの政治を半ば強制的に学ばされた。
これらにはむかおうとすれば、その場でレジスタンスとみなされ射殺される。
女性、高齢者、子ども、すべて関係なく…。
この生活になってから叔父の生活が豹変した。
叔父はタクシーの運転手であり、ガソリン供給に制限がかかってしまった今の状況では仕事もできない。毎日酒に溺れた生活になってしまった。
収入も何もないので私が働くしかなかった。
叔父のアパートの近くにはある有名な酒場があった。そこの酒場には毎日のようにエルジア軍が酒を飲みにやってくる。
この酒場で働く酒場の親父は敵兵相手に商売するため、市民から軽蔑されていた。しかもエルジア軍がよく使うため、電力、ガソリンの制限がかなり甘くなっている。
私はそこで唯一得意な特技、ハモニカを演奏して敵兵からお金をもらっていた。
以外にも、結構儲かるため生活には支障はなかった。
毎日酒に溺れている叔父も、私の収入には文句を言わなかった。
この頃の私…といえば、少し年上の酒場の娘に恋心のようなものを抱いていた。
酒場一家の唯一の娘であり、なにせ美人だから…。
まぁ、まだ思春期を迎えていない私には早すぎたのだが…。
しかし、いっこうに黄色の13は姿を現さなかった。
毎日のように空を眺めても黄色の戦闘機は飛んでおらず、酒場にもそれらしい人物は見当たらなかった。
そんな毎日を繰り返しているうち、またあの夏の終わりの時期がやってきた。
ちょうど家族を失ってから一年後のことである。
2004年9月19日、この日ようやくISAFが動き出した。
ノースポイントへ爆撃しようと爆撃機を出撃させたがISAFの攻撃を受け全滅したらしい。たいして大きな影響はエルジアにはなかったらしいが、それでもついに反抗作戦に乗り出したのは嬉しいことである。
今日の夜も酒場へ行った。
敵兵の様子はいつもと変わらない。
私はいつものようにハモニカを吹く。
しばらくしたのち、陽気な一団がやってきてさっきまで酒を飲んでいた敵兵をすべて追い出し酒場を占拠した。
彼らの肩には鷹か鷲かはわからないが、金色の鳥が型どられたワッペンがついていた。
さらにその下にはエルジア空軍の階級章が…。
いつも敵兵が来るたび、空軍、陸軍、海軍がランダムに来るので階級章を見分けることができたのだ。彼らは酒場に入るや否や、酒を注文して豪快に飲み始めた。
中年太りしたいかにも彼らの上官らしき男は壁に何かを描き始めた。
それは隊員の敵機の撃墜数を表すものだった。
彼らが言うには5機撃墜したやつはエースと呼ばれるらしい。新しくエースとして認められた者は頭から酒をかぶさられた。
そんな中、どこからか静かなギターの音色が聞こえる。
一同から離れ、長い黒髪が特徴の黒人女性を隣に銀髪の白人男性がギターを弾いていた。
私はこの音色を気に入っていた。
ワッペンや階級章を見る限り彼らと同じ部隊の隊長的存在に見えた。
そうした中酔った一人の隊員が大声で叫んだ。
「我らが隊長【黄色の13】は今日も5機撃墜!総撃墜数64機!」
銀髪のギターの男は少しはにかんでギターを弾き直した。
私は確かに聞いた。
【黄色の13】と…。
そしてその人物が私の目の前でギターを弾いている銀髪の男であると…。
しばらく私は彼を睨むように見ていた。
それに気付いたのか、銀髪の男は口を開いた。
「そこの少年、俺に恨みでもあるのか?そんな睨むような目をしていたら嫌われるぞ。少年の噂は聞いている。ハモニカが得意らしいじゃないか。一人で演奏するのも寂しいだろう?一緒に演奏しよう。」
私は頷き、共に演奏した。
みんな私たちを見ていた。
演奏した曲は…、それは父が好きだった曲だった…。
こんな偶然はあるだろうか。
私は一年前の懐かしい家族を思い出していた。
でも、隣でギターを弾いている銀髪の男に殺されたのだ…。
なんとも複雑な気持ちである。
憎むべき相手は隣にいるのに…。
なんで一緒に曲を弾いているのだろうか…。
私は何もできないまま彼らが帰るのを見送り、叔父のところへと帰った。
その日から彼らは毎日のように酒場にやってきた。
彼らは黄色中隊と呼ばれているエルジア空軍が誇るエース部隊だ。
そしてその隊長である黄色の13はエルジア空軍の中では最強と呼ばれているエースパイロットらしい。
彼らがこの酒場に来るようになったのは彼らが受け持つ防衛空域が変わったからだ。少し前までは東部戦線防衛のためロスカナスにいたらしいが、ISAFが大陸から出て行った今となっては東部戦線にいる必要もない。
そのため彼らはストーンヘンジ防衛のため、近くの町であるサンサルバシオンへとやってきたのだ。
彼らはかつては高速道路にするため、建設途中だった道路とトンネルを野戦滑走路として利用している。この高速道路について市長が高々に演説していたことを思い出す。
結局は野戦滑走路として利用されてしまうという皮肉な運命をたどることになろうとは…。
そこからは毎日のように黄色の戦闘機が飛び立っていった…。
私は黄色の13との決着をつけるため、叔父の台所からナイフを手に入れた。さらに酒に酔った敵兵の懐を狙ってハンドガンも手に入れた。黄色の13にむかって突き付ける言葉も完璧だった。
あとは殺すだけ…。
だが何かが邪魔をした。
それはいつも黄色の13の隣にいる長い黒髪の黒人女性だった。
彼女は【黄色の4】と呼ばれ黄色の13から絶対的な信頼をもっている2番機だ。まるで黄色の13を守るかのようにいつも一緒にいたのだ。
だから手を出すことができなかった。
それどころか、黄色の13は私のことが気に入ったのか私を見つけるたび、演奏しようといってくる。
黄色の13と触れ合ううちに、まるで懐かしい家族のような居心地を感じていた。
そして黄色の13との関係は復讐すべき人間から父親のような存在に変わってしまった…。
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