私と13   作:遠い空

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あらすじ

私は【黄色の13】に会うことができた。だか本来なら憎むべき相手が父親のような…、親友のような…、よくわからない関係になってしまった…。


第3章 動き出すISAF

彼らが任務のない日はサンサルバシオン上空で訓練飛行していた。

私は学校をサボって黄色中隊の訓練飛行を見ていた。

本来、学校なんてサボれば射殺されてしまうが、今や黄色中隊とは切っても切れない仲になってしまったので、黄色中隊を言い訳に使えばサボるのも容易だ。

一度射殺されそうになったことがあるが、黄色の13が私を助けてくれたのでエルジア兵は下手に私を殺すことはできないはずだ。

 

 

5機の黄色の戦闘機が甲高い轟音をたて、宙に舞い、鋭く旋回した。

そして空中で急減速し機体が地面に垂直の状態で滞空した。

中年太りした上官は彼らの乗っている戦闘機について熱く語った。

「ボウズ、あの戦闘機はなエルジア空軍の主力戦闘機のひとつ

【Su-37 Terminator Flanker-E2】だ!元々機動性が高いのが特徴の戦闘機だが、黄色中隊の諸君が使えばさらにすごい機動性を発揮するんだ!今の急減速を見たか?あれは黄色中隊が得意とする【コブラ機動】という空戦機動だ!あの機動をすることによって………」

熱く語るのはいいが私にはわからない単語ばかりだったので、理解しようにも理解できなかった。でもコブラ機動とかいう空戦機動は初めて見たがすごいとしか言いようがない機動だった。

 

 

しばらくして、晴れ渡った青空に5機編隊の黄色の戦闘機が美しくカーブを描いて飛んでいた。

その中の一機が鋭く飛行機雲を描いて飛んでいる。

よく見ると黄色の13の機体だった。

彼の機体だけが飛行機雲を描いていたのだ。

彼がなぜエースと呼ばれているのかわからないが、彼が他の隊員とは何かが違うのは確かだった。

彼らの訓練の休憩時間には私と隊員で一緒に遊んだ。一緒にご飯も食べた。休憩時間の中、ギターを持参した黄色の13と私のハモニカで演奏した。

 

 

この時が当時の私の幸せのひと時だった。

 

 

今まさに戦争中だということも忘れていた。

 

 

黄色の13が憎むべき相手だという大切なことも忘れていた。

 

ISAFなんかすぐにでも降伏すれば戦争なんて終わるのに…。

 

 

私はそんなことすら考えていた。

だがそれとは裏腹に戦争は悪化していった。

ISAFはエルジア海軍の誇る無敵艦隊【エイギル艦隊】をすべて撃沈した。しかもほぼ一人の戦闘機パイロットによって撃沈されたらしい。

またISAFはユージア大陸上陸の準備を整えているという噂も流れている。

エルジア軍の空気が慌ただしくなってきた。

時々、暗くなると南の方角に光の筋が見える。恐らくストーンヘンジだろう。

黄色中隊がサンサルバシオンを出て行く日が多くなった。

そのため黄色中隊の訓練飛行を見ることはしばらくなかった…。

 

 

 

 

そんなある日のこと、叔父が姿を消した。

酔った挙句に言ってはいけないことを言って殺されてしまったのか、はたまた自ら失踪したのか…。

住む場所がなくなってしまった私は酒場に住むことになった。

いつも世話になっているので酒場の仕事を手伝った。

黄色中隊がやってくると私は黄色の13に飛びついた。仕事を投げ捨て、今日の出来事を互いに話し合った。

酒場一家と黄色中隊の隊員は呆れた様子で見ていた。

「隊長とあのガキ、本当に仲がいいよなぁー。なーんだか羨ましいなぁー。」

「あの小僧、敵兵にくっついてばかりだな!仕事しろよ!あんにゃろー引っ張り出してくる!」

「やめてお兄ちゃん。まだ小さいんだし好きにさせていいんじゃない?」

 

 

 

 

ある日の夜、酒場が静まり返った深夜。

私は客席を寝床として寝ていた。

トイレで目が覚め、2階にあるトイレに向かおうと階段を上った。

するとある部屋から一筋の光が漏れていた。

その部屋からはキーボードを打つ音が…。

 

 

部屋を覗くと酒場の親父がディスプレイに向かって何かをしていた。

その時、後ろから何者かに捕まった。

それは酒場の息子だった。

部屋の中に強引に連れ込まれた。中には酒場の親父の他に酒場の婦人、酒場の娘がいた。

彼らは一家そろってレジスタンスのメンバーだったのだ。

エルジア軍の管理が甘いこの酒場はレジスタンスにとっては最高の場所だった。密かに敵兵から人物情報やISAFとエルジアの戦況などを盗んでおり、その内容をまとめていたのだった。

「このクソガキめ!勝手に人の部屋を覗きやがって!敵兵とイチャイチャしてるガキだからな!下手に敵兵に情報を流されたらまずい。殺すぞ!」

私はその言葉を聞いてとっさに逃げ出した。

しかし、酒場の息子にすぐに捕まった。酒場の親父がナイフをむける。

 

 

まだ死にたくない。

 

 

まだ死にたくない。

 

 

その時だった。

 

 

やめてという声が聞こえた。

 

 

それは酒場の娘だった。

 

 

「なんで殺さなきゃならないの?まだ子供でしょ!エルジアの人間じゃないんだから許してあげて!お願い、許してあげて…。」

 

 

そう言って私をかばった。

 

 

酒場の娘は半分泣いていた。

 

 

彼女は酒場の親父と息子を睨みつけていた。

 

 

流石に酒場の親父と息子は殺すのをやめた。

そして酒場の娘は泣きながらも笑顔で私が見てしまったものを秘密にしてと頼んだ。

だがこれは私の幼さゆえのことである。

もう少し大きければ本当に殺されていたかもしれない。

実はかつて英雄的な存在で、1997年に起きたクーデターに立ち向かったと言われている。

それに対し私は酒場に居候していた…。

 

 

 

 

「もうすぐよ、もうすぐで連合軍が大陸に上陸するわ。」

酒場の娘がそう呟く。

連合軍がここに攻めてきたらどうなるの、と私が尋ねる。

「もちろん追い出してやる。エルジアの人間をみーんな!」

だが酒場の娘は内心そう望んでいないことを私は知っている。

実は黄色の13に好意を抱いていたのだ。

それは黄色の4を嫉妬の眼差しで睨みつけているので私でもわかった。

二人の関係は謎に包まれていた。隊員に聞いてもはっきりとした関係はわからなかった。

だが、ずっと一緒にいるということは何か特別な関係があるのだと私は思った。

彼女は不動の2番機で隊員の入れ替わりがあっても決して2番機の座を渡さなかった。

 

 

 

 

いつものように黄色中隊が酒場にやってきた。

今日はみんな疲れているように見えた。理由は黄色の13から聞いた。

ISAFの人工衛星打ち上げを阻止するため、ユージア大陸南東にあるコモナ諸島のロケット発射施設に空爆を仕掛けた。多数の戦闘機に最新鋭のステルス爆撃機を用意して…。

敵であるISAFは少数の戦闘機隊だった。しかし、中にとんでもないパイロットが存在したのだ。

そう、あのエイギル艦隊をほぼ一人で撃沈したパイロットである。

そのパイロットのおかげで戦闘機隊は全滅、ステルス爆撃機も破壊され作戦は失敗に終わった。

黄色中隊もこの作戦に参加していたが、黄色中隊の隊員が被弾して全機撤退したのだ。その後、エルジア軍総司令部から嫌になるくらい説教を食らったらしい。

「今日現れたパイロット…。あいつはとんでもない強さだった。だがまだ俺には及ばん。あいつがもう少し強くなって戻ってきたら…、その時が潮時だな。それまでにISAFの奴らがやられないことを祈りたいが…。」

黄色の13は今日あったパイロットのことを語っていた。

 

 

彼の性格ははっきりとは覚えていない。

 

 

覚えているところをあげると、戦果よりも仲間を大切に思い、たとえ被弾したとしても5機の状態で帰還することに誇りを感じる男。

 

 

また自分を超える強者との戦いを望んでおり、弱者は見逃し、強者には最大の敬意を払って勝負に挑む騎士道的精神を持っていた。

 

 

真のエースパイロットとは彼のことではなかろうか。

 

 

そんなことを私は考えていた…。

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。次回にも続きますので楽しみにしてください。
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