黄色の13はやはりルーキー達とは仲が悪かった。さらにエルジア軍総司令部が用意した戦闘機を受け入れなかったがために、二度と戦闘機に乗れなくなってしまった。
だが、彼にはメビウス1がすべてぶち壊して、勝負することができることを確信していた。そして彼は密かに自らを鍛えていた。
黄色の13は自らの腕を落とさないためにも密かに戦闘機に乗っていた。
彼がいたのはファーバンティ北部に位置するレイニー岬にあるレイニー空軍基地である。
そこにはかつて黄色中隊の初期メンバーであるパイロットがいた。
黄色中隊4番機を務めた【ジョン・ハーバード】という男だ。
かつて【マクミラン・マーセナリー社】に勤めていた傭兵で、あのスカーフェイス1と共にクーデターを鎮圧した人物である。
彼の話によると、黄色の4が戦死し、初期メンバーが解散となったあと、彼らは経験不足の部隊を鍛えるため、さまざまな部隊に編入した。
だが、次第に反戦意識が強くなり、ジョン・ハーバードを除く黄色中隊隊員の部隊もろともISAFに亡命したらしい。
彼自身も亡命を計画していたがサンサルバシオン解放によってエルジア軍の監視が厳しくなり亡命ができない状況になってしまった。
今はエルジア軍の監視が届きにくいレイニー空軍基地でひっそりと訓練をしていた。
「お久しぶりです隊長。あなたのようなエースに再び会えて光栄です。しかし、なぜ私のところに…。」
黄色の13は初期メンバー解散以降のことを全て話した。
「あなたのような素晴らしいエースの教えを理解できないとはなんという腐ったルーキー達なんだ!それに総司令部はなにを考えている!」
「まったくだ。強者と戦う楽しみを理解できぬとは…。ところで頼みがあるんだが…。」
「なんでしょう隊長。」
少しの間が空いた後、黄色の13は口を開いた。
「しばらくここで訓練していいか。無理なら無理で構わんが…。」
「とんでもないですよ。私が尊敬する隊長には色々と世話になりました。どうぞ、ご自由にお使いください。」
「本当にいいのか。」
ジョン・ハーバードは凛々しい目を輝かせながら大きく頷いた。
ISAFはこの戦争を止めるべく、ファーバンティへと向かっていた。
最新の情報ではエルジア東部の砂漠地帯【ウィスキー回廊】にて窮地に追いやられていたISAF陸軍をメビウス1が助け、一瞬で形勢逆転したらしい。ほとんどのエルジア陸軍やエルジア空軍はメビウス1を見ただけで戦意を喪失し、撤退していった。
今やメビウス1の存在はエルジアに大きな絶望を与える死神と化していた。
これを知った黄色の13はメビウス1がすでに黄色の13自身を上回った存在になったことを確信した。
黄色の13は最大の好敵手の期待を裏切らないためにもさらに訓練に精を出した。
私と酒場の娘は青い空の下、毎日のように黄色の13とジョン・ハーバード率いる部隊の訓練飛行を見ていた。
レイニー空軍基地の敷地内の草原に寝っ転がりながら…。
太陽の光が暖かい…。
永遠に続くような青空の中から耳に残るような轟音…。
ある意味平和を感じていた。
私は酒場の娘にいつ黄色の13に本音を言うのかと尋ねる。
突然の問いに酒場の娘は動揺していた。
「な、な、何を言ってるのよ!わ、私があの男のことが好きなわけないじゃない!」
彼女は黄色の13に好意を抱いていることを誰にもわからないように隠していたらしい。
といってもずっと前から私は見抜いていたのだが…。
実は酒場一家や黄色中隊隊員も薄々気付いていた。
じゃあ、なんでついてきたのとツッコミを入れる。顔が真っ赤に染まっていた。
「そ、それは…その…。な、なんで隠していたのを見抜いたのよ!」
バレバレだったよ。だって顔に出てたもん、と私が言う。
さらに顔が赤くなって困惑する。
そんな彼女が可愛らしかった。
黄色の13が空から戻ると酒場の娘は姿を隠した。
きっと事実を知ったからだろう。もちろん、黄色の13も酒場の娘の気持ちを見抜いていた。
いつも私は酒場の娘と一緒にいたので黄色の13は疑問を抱いている様子だった。
「少年、娘はどうしたんだ。」
私は小さな声で全てを話した。
すると黄色の13は笑みを浮かべた。
「フフフッ、可愛らしい娘だ。昔のあいつみたいだ。フハハハッ!」
きっとあいつとは黄色の4のことだろう。
彼の傷口をえぐってしまったかもしれないが、たいして気にはしていなかったようだ。
しかし私は黄色の13が豪快に笑うのを初めて見た気がした。
これが私の見た最後の笑顔にならないことを祈りたいのだが…。
ISAFはすでにエルジアの90%を占領していた。
二人の決戦の日は近い。
ついに運命の日がやってきた。
2005年9月19日、戦争開戦と家族の命日から2年、そして黄色の13との初めての出会いからちょうど1年たった。
ISAFはすでにエルジア首都ファーバンティを完全包囲したまま待機していた。ISAFはエルジアに無血降伏を勧めるように交渉していた。
《我々ISAFはこれ以上無駄な血を流したくはない。素直に降伏すれば死傷者を出さずに済む。我々の言葉を信じてくれ!》
室内にある無線機からISAFの放送が流れている。
そんな中黄色の13はパイロットスーツに着替えていた。
「おそらく総司令部はISAFに攻撃する。だか、どっちみちメビウス1がいるはずだ。総司令部なんかすぐにぶち壊すだろう。俺はその時を待つ。俺はこれからファーバンティ空軍基地に向かう。少年、お前と一緒にいた時間は実に楽しかった。これが俺の遺言になるかもしれない。俺がいなくても強く生きろ!」
彼は死を覚悟していた。
死神と呼ばれるほどの強さを持つメビウス1と待ちに待った勝負をするためだろう。
《こちらエルジア軍総司令部。貴様らISAFなんざぶっとばしてくれるわ!全軍進行開始!ISAFを叩き潰せー‼︎》
無線でエルジアが攻撃を開始したことが分かった。
黄色の13はすぐに戦闘機に飛び込み空へと飛び立った。
無線の情報によると、今戦っているISAFは先遣隊でありメビウス1がいないらしい。メビウス1を含む後続隊が到着するのは後少しとのことだった。
私はまだ時間があると踏んだ。
ファーバンティに行って最後に黄色の13に会って、誇り高き戦いを見届けよう!
私はそう決心した。
私は酒場の娘を部屋から引きずり出した。
黄色の13が死を覚悟を話すと彼に会いたいと言い出し、酒場の娘もファーバンティに向かうことにした。
ファーバンティに向かう方法だが、意外にあっさりと決まった。
すでに私たちの話を聞いていたらしく、黄色中隊元隊員のジョン・ハーバードが4人乗りのプロペラ機を用意していた。
「話は聞いたぜ。俺のセスナに乗りな。隊長のとこに連れてくぜ。」
私たちはプロペラ機に乗り、ファーバンティへと飛んで行った。
お久しぶりです。1ヶ月近く投稿が遅れてしまい申し訳ありません。今回のも読んでいただけたでしょうか。この小説のクライマックスは近いです。またしばらく遅めの投稿になるかもしれませんが、最後まで見届けるようよろしくお願いします。