悪食は闊歩する。 作:萩山カオル
アリシアは長い間目を閉じ、耳を傾けていた。
王下七武海“海賊女帝”ボア・ハンコックが訪れても、軽口を言い合う仲のポートガス・D・エースが連行されても。
彼女は目を閉じずっとその音を聞き続ける。
兄を助けたい一心でマゼランに挑み、散り。
友に背を向け逃げ出したことに後悔する男…オカマの泣き声を聞き。
抵抗し押さえつけられたエースの悲痛な叫び。
そして盛り上がる「ヒーハー!!!」という笑い声。
アリシアはこの場所で全てを聞いている。
マゼランにより散った彼は友に助けられ奇跡的に生還。
そして不思議な仲間たちとここへ向かってくる。
「ふふふ、面白いことが起こりそう…。」
微笑むでもなく、心底愉快そうに顔を歪める彼女を眉間に皺を寄せ睨むクロコダイル、怪訝そうな表情の海侠の“ジンベエ”。
「お前さん…何を笑っとる…? 何を企んどるんじゃ…!?」
「ジンベエさん、私は何も企んでなどいないわ。…ただ、もうすぐね…。」
──今に階段を駆け下りてくるわ…。
アリシアはゆっくりと目を開け、微笑む。
「エースさんの…
「そうね、彼の義弟よ。」
ふふふ、と彼女の笑い声が響くLEVEL6がざわめき出す。
侵入者がここまで来るのかよ!とゲハゲハと下品な笑い声が響き渡る。
それにまじりアリシアは歪んだ笑みを浮かべる。
それはもう天女のような微笑みとは程遠かった。
「エース〜!!!助けに来たぞ〜!!!」
突如として現れた麦わら帽子の男と、異様に顔のでかいオカマ、そしてオレンジと白の目立つ服装の男。
彼らを確認し、アリシアは再び口角をあげる。
「ほらね、ジンベエさん。…でも残念。間に合わなかったわ。」
「…あれが…エースさんの…!」
──残念…残念…ふふふ
麦わらのルフィ一行はエースがいた檻、今はジンベエただひとりとなった檻を見て戸惑いを隠せない。
ルフィは小さく「いねェぞ」と呟き
大きな顔のオカマイワンコフは連れてきた看守を怒鳴りつけ
オレンジと白色のコートを着た男、イナズマは「遅かったか…!」と悔しそうに。
「お前さん“麦わらのルフィ”だな!!?? すぐに後を追え! エースさんはリフトで連行された!!! まだ間に合う!! 急ぐんじゃ!!!」
大きな声で吠えるジンベエに困惑しながらも三人は走り出す。
「…残念、それも“遅いわ”…。」
彼らの行動は遅かった。間に合わなかったのだ。
リフトは切り離され、階段は塞がれる。
そして階段から降りてくる睡眠ガス。
諦めない
そんな強い意志をアリシアは彼から感じ取ったのだ。
「麦わらのルフィさん?…私を檻から出してくださいな。 後悔はさせないわよ?
「ヴァナタ…もしかして“悪食修道女”アリシア!!??」
アリシアはイワンコフの反応に「大袈裟ね。」と笑みをこぼす。
「ルフィ君! 彼女はダメだ!! いくら戦力になるとしても、コイツは危険すぎる!! “悪食修道女”の名前くらい君でも知っているだろう!!??」
「あくじ…、なんだ?」
そんなイナズマとルフィの会話をアリシアは楽しそうに眺めている。
「どうするの? 私を外に出すのか、それとも出さないのか。」
「時間が無いのでしょう?」とアリシアは笑顔で急かす。
「んー…よし! カニちゃん!コイツ出してくれ!」
イナズマからは正気か!? とイワンコフからはヴァナタ…、と若干呆れ気味の反応をされる。
それをルフィは「シシシ」と笑って流す。
「おい。俺もここから出せ。どの道このフロアから出る術はねェんだ…。 俺ならこの天井に穴をあけられる…。」
イナズマがアリシアを檻から出している時にクロコダイルとルフィが何やら話をしていた。「ここから出せ。」と「俺ならこの階層から抜け出せる術がある」と。そして──
「後生の頼みだ!!!」
とジンベエまでもが声を上げる。クロコダイルのようにお互いのメリットを引き合いに出した取引ではなく、お願い。
ジンベエのどこかにルフィは、自分と同じような目標を見つけたのだろう。先の彼とは違い、あっさりといいぞ、と言う。
ジンベエまでもが檻から出たことによりLEVEL6の囚人達が「俺も出せ」といきり立つが、イワンコフの『
』により黙らされる。
「あらあら、なんだかいつもの顔が多いわ。」
「クハハハ…。面白くなってきやがる。」
「…待っとってくれ、エースさん…オヤジさん…!!」
それぞれが別々の目標、思いを抱えながらも彼らは今ひとつのチームとなった。インペルダウンを抜け、戦争にも関与する。
天井をくり抜き、イナズマによってかけた橋を各々がかけ上る。
ひとり遅れたアリシアは
「…臭い臭いLEVEL6の囚人さん達とお別れともなると…うぅ、なんだか込み上げてくるものがあるわ…。」
「およよ」と嘘らしく、わざとらしく泣き真似をするアリシアに、LEVEL6は騒ぎ出す。
「殺してやる」だとか「覚えておけ」だの。
「…インペルダウンから出るまでは覚えておいてあげるわ…。せいぜいつまらない人生を思う存分楽しむ事ね…。」
そう言い残し、彼女は橋をかける。
この時のアリシアは笑っていなかった。
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