悪食は闊歩する。 作:萩山カオル
「後で追いつくから先に行っててくださいな。」
「ん?なんだ? ウンコか?」
LEVEL5に到達した直後に、先に行ってて、と告げるアリシアにキョトンとした顔でとんでも無いことを聞くルフィ。そんな彼に周りは絶句。周りのオカマ達なら軽口叩くだけで済むだろうが、相手はアリシア。ここに集うもの全てが警戒する人物である。
「ふふふ、女の子には色々あるのよ。だから、ルフィ君は安心して先に進みなさい。」
「ん、わかった!」
素直に頷くルフィと違い、クロコダイルは「実年齢30超えてるくせに“女の子”かよ」と唾を吐く。そんなクロコダイルの態度をアリシアが見逃すはずもなく、突如『バコンッ!』と音とともにクロコダイルが雪に埋まる。
「何しやがる!?」
「私、今回はワニを食べて見ようかしら。 でも、なんだかこのワニジャリジャリしてそうね…?」
アリシアの笑顔にルフィ以外は顔を青ざめる。
クロコダイルも例外ではない。そんな彼らを笑顔で見渡す。
「そんなに警戒しなくたっていいのに。」
「まあいいわ。」と呟き彼女は背を向け、歩き出す。極寒の銀世界を迷いもせずに突き進む。アリシアはひとりLEVEL5の森の中に消えた。
鼻歌交じりに木々を抜ける。
まるで日の照りつける野原を歩くかのように、極寒のLEVEL5を歩いていく。まるでピクニックに来たかのような足取りでどんどん進む。
軍隊ウルフに囲まれようと、彼女は笑みを崩さなかった。
「ふふふ、わんちゃん。」
飼い犬に接するかのような態度で視線を向けるが、獣の本能で悟るのか軍隊ウルフたちは近づいてくる気配すらない。
「あらあら、臆病ね。そんなに遠くから威嚇して…。」
ふふふ、とまたひと笑い。
「…いい加減出てきてはくれないかしら? 私少し急いでるのよ…。」
雪景色に混ざるかのように一頭の大きな影。
大きな足音とともに現れたのはアリシアを囲む軍隊ウルフよりも大きな体を持つ、赤い目をしたオオカミだった。
「あなたがこの子たちのボスね?」
「…グルゥ…。」
ひと鳴き、まるでそうだ、と彼女の問いに対する返事のようだ。この大きなオオカミ、他の軍隊ウルフと同じように血走った目で、ジッとアリシアを見つめると彼女の前に歩み寄り、頭を垂れる。
「あらあら、どうしたの?」
「グガゥ…。」
アリシアの問いかけに対し、鼻先が雪に着くのでは、という程に頭を下げ、何かを訴える。彼女に何かを求めるかのように、彼女に何かを望むかのように。
「…。連れて行って欲しいの?」
オオカミはスっと顔を上げ、アリシアの金の目を見つめる。その血走った目は少しもズレることなく、彼女を見つめる。
「着いて行きたいのね…。いいわ。 着いてきなさい。…ただし、私はあなたの事を完全に守り切ることは出来ないわよ? それに、今から私が向かうのは戦場、あなたの望む外の世界を見せることが出来ないかもしれない。」
──それでもいいなら着いてきなさい。
その言葉を理解したのか、オオカミは顔を上げ、大きな遠吠えをLEVEL5に響き渡らせる。自分たちのボスの門出を祝うかのように、アリシアを取り囲む軍隊ウルフも遠吠えを、何度も何度も響き渡らせた。
アリシアとオオカミ、彼女らの姿が雪に消えようとも軍隊ウルフたちは遠吠えを続ける。
オオカミはというと、アリシアを乗せ極寒の地LEVEL5を抜ける為に駆ける。大きな体を持つこのオオカミにとって、アリシアを背に乗せ走ることなど大したことじゃないのだろう。
「…あなたに名前をつけてあげなきゃね。」
「グルゥ」とひと鳴きして返事をする。
「どうせならかっこいい名前がいいでしょう?…ロウ…は単純すぎるし…シロはちょっとね…。」
「…グガゥ…。」
名前に悩むアリシアに、まるでそれでもいいとでも言うように優しく唸る。
「あなたの名前は…ハクロ。」
長い時間をかけ考えた名前は結局、白狼だからハクロと単純なものになっていた。
「ごめんなさいね…。誰かの名付けなんてしたことないのよ。」
少しだけ、申し訳なさそうに目を伏せるアリシアに、ハクロは「バウ!!」と礼を告げるかのようにひと鳴き。グングンと彼は加速した。
喜んでいるのか、テンションが上がったのか、ハクロはあっという間にLEVEL5終わりの階段まで来たのだ。
「ここから先はあなたにとって、とても辛いエリアよ。 雪国育ちのハクロには地獄かもしれないけど耐えなさい。」
「グルゥ!」
階段を駆け登り、LEVEL4【焦熱地獄】へと向かう。先に向かったルフィたちは既に戦闘中のようで上からは耐えやまぬ轟音が聞こえてくる。
おそらく、インペルダウンの全兵力との激闘…いや、ルフィを含め、七武海二人にイワンコフ。マゼランが出向かない限りは止まることは無いだろう。
「…(私の獲物…まだ残ってるかしら?)」
壊れた扉を確認し、ハクロは飛び上がる。残りの階段を一飛びで越える。そして、焦熱地獄LEVEL4へと足を踏み入れた。
「あらあら、殆ど倒しちゃってるじゃない。指揮官クラスが残ってたりするといいのだけれど…ささ、行くわよハクロ。」
「グガゥ!」
踏み入れたLEVEL4は囚人、看守と敗れ倒れた者たちが転がり、殆ど戦闘が終わったあとの様だった。すぐ下にある大釜は煮え滾り、汗が滲む。少しばかりかハクロのペースも落ち込んでいる。
「…見えてきたわね…!」
アリシアが見た光景。
「出さんと言ったら一歩も出さん!!!」
血まみれになりながら、傷付きながらも敵を見据え、挑み続ける副所長の姿だった。
「…なるほどね。副所長にもなれる訳だわ…。さてハクロ。もうすぐこのフロアは抜けられる。ただし、ここほどでは無いにしろまだまだ暑いわよ?」
「バルゥ!」
「いい子」とハクロの頭を撫でイワンコフの横に並ぶ。女の姿をしているイワンコフは「あら…遅かったじゃない。」と笑いかけてくる。
対するアリシアは「この子とお話してたのよ。」とハクロを紹介する。
「イワンコフさん?」
「なによ?」
「つまらない黒ブタが来るわ。」
「は?」とイワンコフは何言ってんだ、と言わんばかりに口を開ける。
「無駄に体力を使うことは無い。おそらく戦闘にもならないわ。…だけど、ルフィくんがどうなるかは分からない。」
「麦わらボーイが…?」
アリシア達がこう話してる最中にもルフィとハンニャバルの戦いは続いていた。顔面にパンチが炸裂し、壁に激突し、皮は裂け、骨は折れる。
それでもなお立ち向かう副所長にアリシアは素直に感心していた。
それだからこそ、この後起きるヤツの登場が少々気に食わない。
「ゼハハハ…!!!」
突如として響いた大きな笑い声。それを聞きあからさまに顔をしかめるアリシアをイワンコフは見逃さなかった。笑い声が聞こえた瞬間、ハンニャバルは顔を踏みつけられ、遂に気絶する。「ゼハハハ」と笑い声が特徴的な彼こそ、現七武海、マーシャル・D・ティーチ。“黒ひげ”だ。
「私“アレ”のこと生理的に受け付けないのよね…。」
でっぷりとした黒ひげを見るアリシアの目は酷く冷たいものだった。
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次回、次次回からアリシアちゃん戦闘の予定
モチベーション次第で今回のように不定期に投稿する予定です