悪食は闊歩する。   作:萩山カオル

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連続投稿…時間はバラバラ。

夕方に確認したらお気に入り登録数がグッて伸びててびっくりしました!ありがとうございます!


毒はちょっと食べたくないわ

アリシアの言葉通り、この大監獄(インペルダウン)の署長はすぐに彼らの元へ駆けつけて来た。いつもの冷静なマゼランが怒り、焦り、色々な感情を剥き出しにし、脱獄を果たそうとする囚人たちを追いかけ、仕留める。LEVEL3では時間稼ぎとしてイワンコフが、LEVEL2ではイナズマが彼の前に倒れた。

 

そして今、遂にLEVEL1。脱獄も目前という所で彼は追いついてしまった。

 

「“毒竜(ヒドラ)”!!!」

 

額から血を流すマゼランによる毒攻撃。当たれば即リタイヤ、真っ直ぐとマゼランの“毒竜”は囚人たちへと向かっていき─

 

「“キャンドル(ウォール)”!!!!」

 

Mr.3の蠟により受け止められた。彼の蠟は鉄の高度を誇り、毒液など通さない。 今ここで彼以上の防御を誇るものはいなかった。

 

「全員早く先へ急げ!! 私も早く逃げたいんだガネ!!」

「へぇ、蠟ってすごいのね。やるじゃない。私が攻撃を任されてあげるわ、防御よろしくね。」

「聞いてたのか!? 私は逃げたいんだガネ!!??」

 

ハクロを先へ進ませ、アリシアはケツァルを担ぎMr.3の横へと並ぶ。

笑顔で圧を飛ばす彼女は斧を構え、ゆっくりとマゼランを見据える。

 

「さぁ、行くわよ。」

 

蠟の壁の前へ飛び出し、マゼランに向かってケツァルを縦に振り下ろした。空を切った筈のケツァルからは青白い斬撃が通路を分断するかのように突き進む。

 

「“断・壱奉(タチ・イッポウ)”」

 

技名を呟くように言い放つ。彼女が片手で振り下ろしただけで、そこらの男どもが放つ技よりも強大な威力を誇る一撃となる。マゼランは毒竜を向かわせ、相殺にかかるが所詮は毒液、毒竜は切り裂かれ、そのまま目標へと斬撃は突き進む。

 

「! クッ…!!! “毒の道(ベノムロード)”!」

「あら、避けられたわ…。」

 

アリシアが放った斬撃を毒竜の中を突き進み避ける。そのままマゼランは彼女へと近づき、腕に着けた角で貫きにかかる。

それをアリシアは笑みを浮かべながらケツァルで防ぎそのまま技を繰り出す。

 

「“弐法蹴(ジッポウゲ)”!」

 

彼の右腕を斧で抑えた状態からの蹴り。ルフィ達がまだ知らぬ覇気を纏った一撃だ。まともにマゼランの体に触れたのに毒に苦しむ姿を見せないことに周りの囚人たちはどよめき立つ。

 

「アリちゃん!そいつの体に触ったら…!!」

 

既にマゼランにより、生死の境を彷徨ったルフィが焦って心配するも、アリシアは笑顔でマゼランを吹き飛ばした足を彼に見せる。

 

「どうってことないわ。これくらい直ぐにルフィくんも出来るようになるもの…。ああ、言い忘れてたけど、あなたは戦ってはダメよ?」

「イヤだ! 俺も…」

 

ルフィの言葉をアリシアはマゼランの攻撃を防御しながら返す。

 

「ダメよ。許可できない。あなたの兄、エースを救うためにどれだけ多くの仲間が散っていったか、よく考えて。…あなたは次の戦場で充分暴れればいいわ。」

 

そう言うとアリシアは再びマゼランに斧による薙ぎを行う。それを避けたマゼランは彼女から少しばかり距離をとる。

 

「クッ…“禁じ手”を使わざるを得ないか…!!!」

 

突如としてマゼランを中心に赤黒い毒が溢れ出す。シュウシュウと音を立てながらその毒は彼を覆い尽くし天井程の高さにまで唐突する。

 

「“地獄(じごく)審判(しんぱん)”!!!」

 

彼を中心として出来上がったモノは毒によるとても大きな“悪魔”。赤黒い毒が羽と角を持ったドクロを形成したのだ。形成された毒から出てきてすぐ彼は右手を振り下ろす。当然、それと連動したかのように後ろの“悪魔”も腕を振り下ろしてくる。

 

「まずいわね…!! ルフィくん!! Mr.3!! 私が時間を稼ぐ!! 長くは持たないから急げ!」

 

笑みを浮かべずに真剣な表情。初めて見る彼女の真面目な顔にルフィですら従ってしまう。

 

「時間稼ぎだと…? 麦わらのルフィにそこまで賭ける貴様らの思考など理解に苦しむな。…俺が居る限り、貴様も!! 囚人たちは逃がしはせん!!!」

 

再び振りかぶるマゼランに再びケツァルを構えるアリシア。深く腰を落とし、左脇近くまで振りかぶる。

 

「…吹き飛びなさい…!!破伍砲(ハゴホウ)”!!!

 

切りつけるよりも叩きつけるかのような一撃に大きく仰け反る毒の“悪魔”。「ぬぅ…!!!」と衝撃に苦しむマゼランにアリシアは言い放つ。

 

「時間稼ぎ? 賭け? 何を言ってるか分からないわね。私が逃がすと言ったら彼らは逃げれるのよ…! 願望でも、目標でもないわ…これは決定事項なんだから…。」

 

冷たく微笑み言い放つ。突如として彼女の顔は黒い体毛に覆われ、口は伸び、爪は鋭さを増す。

 

「貴様…やはり能力を隠していたな…!!」

「見せるほどの相手とは思わなかっただけよ。…さて…」

 

──耐えれるものなら耐えてみなさい。

 

斧を両手で構え、飛び上がる。

 

「“冥闇捌火(メイアンハッカ)”」

 

黒く燃える斬撃が真っ直ぐとマゼランへと向かう。当然彼も何もせず食らうつもりはない。“地獄の審判”により防御を行うが、斬撃は“悪魔”の腕を切り裂き突き進む。

 

そしてマゼランへと到達した。

 

切り口から黒炎が立ち上り、マゼランを焼きつくそうとする。必死に消火を試みるが、一向に消えない。そしてついに事切れたかのように倒れ伏す。

 

「安心しなさい…。その炎は命までは奪えない。…ただ少しだけ、そこでじっとしていなさいな。」

 

気絶したマゼランに投げかけるが当然返事はない。

能力を解除し、ホコリを払う。そしていつもの笑みを浮かべ彼に背を向け歩き出す。

 

──あなたが起きた頃には全て終わっているわ…。

 

首だけマゼランに向け、邪悪な笑みを浮かべるのだった。





〜新技解説〜
断・壱奉(タチ・イッポウ)
ただ片手での振り下ろし。ぶっとい斬撃が直線上に切り裂いていく技。

弐法蹴(ジッポウゲ)
武装色の覇気を帯びた蹴り。間合いをとるのに多様

冥闇捌火(メイアンハッカ)
黒い炎と共に斬撃を飛ばす技。切り口から燃えます。

能力はまた今度。


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結局、初めしか能力を使わない3兄さん

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