英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「あーあー、俺の名前はエレン」
「あーあー、僕はベルです」
「うん、本当によく似た声だわ。目をつぶったらどっちがどっちだか解らなくなりそう」
でもこっちの声は軽薄そうだわ! と、エレンと名乗った神をビシリと指差すアリーゼ。
「アリーゼ、それは流石に失礼です」
「あはは、いいよいいよ。なれてるからね………で、えっと。君達は同じファミリアなのかな?」
「いえ、僕は半月ほど前に出来たばかりの【ヘスティア・ファミリア】の団員です」
「私達は【アストレア・ファミリア】ですよ………え、まって、半月? あらやだ本当に新人じゃない。良くあんな動きできたわね」
「鍛えてますから」
と、アリーゼが感心したようにベルを見るとベルは祖父から学んだ返答をする。
「アストレアに、ヘスティアか…………天界きっての善神達じゃないか。なるほど、な〜るほど………まさしく『正義の使者』と『慈愛の使徒』との出会いだったわけか。実にいい、こういった出会いは。これだから散歩はやめられない」
「? …………何を言っているのですか?」
飄々としてどこか掴みづらい、神らしいその態度にリオンが思わず呟く。神の神意など理解できるものでもないが、つい口に出たようだ。
「何、君達に助けられて良かったって話さ。見事だ、本当に見事」
「フフーン。そうでしょうそうでしょう、私達は正義のファミリアだもの」
「アリーゼ、今回私達は何もしていない」
「いやいや、していたさ。各々の正義を探していたろ? 単なる勧善懲悪じゃないところなんか感動しちゃったよ」
「僕は、ただ甘いだけですよ」
「慈愛は時に救いとなる。ならそれも正義さ………うん。いい………君と、エルフの君。面白いなあ」
ベルとリオンを見ながら笑う神。
「エルフの君は、潔癖で高潔。しかし確たる答えは未だ持たず、まるで雛鳥だ。正しく有りたい心は誰よりも純粋なのに………一見平和ながら未だ『悪』は途絶えぬ薄氷の上の平和。こんな時代んだからこそ、君がどう考え、
「………………」
悪意はない、敵意も感じない。見下してる風でもないのに、
「なんだかその言い方、いやらしいわ! リオン、離れて! きっとその神様も『ふひひ』とか笑い出す変態よ!」
空気を読まず、或いは読んだからこそアリーゼが空気をぶち壊す発言をする。こんな反応は予想外だったのか、予想通りで演技なのか定かではないがエレンはショックを受けた! と言うような顔をする。
「あ、やめて。本気で傷つくからやめて! 俺そういうモブ神とは違うからぁん!」
「神様は皆そう言いますよね!」
と、そんなエレンの言葉に対してベルの後ろから現れたアーディが笑いながら結構ズバッといった。後ろからの気配には気づいていたベルだが基本的に敵意と下心もない女性の気配には大人しくなるように洗脳、もとい調教……でもなく教育されているゆえ大人しく抱きつかれ、すん、と大人しくなる。
「アーディ!」
「そうだよ! 品行方正で人懐っこくてシャクティお姉ちゃんの妹でリオン達と同じLv.4のアーディ・ヴァルマだよ! じゃじゃーん」
「誰に説明しているのですか、貴方は」
「やあリオン。相変わらず綺麗で可愛いね。いい匂いもするし、抱きついてもいーい?」
「話を聞いてください」
「フフーン! 私は昨日しっかりリオンを抱き枕にして寝たわ! リオンたら照れちゃって可愛かったんだから」
「私の周りには人の話を聞かない者が多すぎる! と言うかアーディ、みだりに異性に抱きついてはいけない」
「ていうか急に大人しくなったわね。え、もしかして気絶してる?」
ヒョイ、としゃがみこみ大人しくなったベルの顔を覗き込むアリーゼ。ベルはようやく正気に戻った。
「い、いえ。大丈夫です………! あの、アーディさん離して!」
「なんかね、この子。後ろから抱きつかれると………と言うよりは、抱かれそうになった時点で大人しくなる癖があるみたい」
「不思議な生態の小動物ね。自然界で生きてけるのかしら」
そう言いながらベルの頭を撫でるアリーゼ。モフモフのその髪に、これは! と目を見開く。
「ねー、気持ちいいでしょ? 捕まえれば撫で放題だよ」
「良いわね。撫で回してあげるから覚悟なさい!」
「いいよ〜」
「僕の意見は!?」
「ははは。何だ、急に目の前で話してた少年が女の子に囲まれる光景を見せつけられたぞ。さては天然ばかりだなこの空間」
と、エレンはそんな光景を見て楽しそうに笑う。
「まあ良いさ。日もだいぶ傾いてきた。俺はこれから夜の街に出掛けるからね。少年も来るかい?」
「夜の街? もう夜になるんだから、どこでも同じじゃ……」
「…………ああ、なるほど………理解理解。ん〜、【イシュタル・ファミリア】に顔を出さない? 騙されたと思ってさ」
「すいません、【イシュタル・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】には近づくなとお義母さんに言われてるので」
「………まあ、困ってるようには見えないか」
アーディに抱きしめられアリーゼにワシャワシャ無で回されるベルをみて、うんうんと頷くエレン。じゃあね〜、と言いながら去っていった。
「は〜、すごいわこれ。くせになりそうなモフモフ! ほらほらリオンも、この前猫ちゃん撫でようとしてたのに逃げられて出来た傷を癒やすチャンスよ!」
「余計なことは言わなくて良い!」
アリーゼの手が離れ、ベルは何とかアーディの拘束からも逃れる。本当にこの癖何とかしたい。しかし自分が暴れているうちにすきあり! と飛んでくる祖父が家もろともに吹き飛ぶ光景を幼心に刻まれた故に、体が勝手に止まってしまう。
「申し訳ありません、アリーゼとアーディが迷惑をおかけしました」
「いえ、大丈夫です。なれてますから……」
どこか同情的にも見えるリオンの目に、ベルは遠くを見つめながら笑うのだった。
「迷惑なんてかけてないわ。リオンだって猫ちゃんを撫でようとしてたじゃない。それと同じよ」
「私はベル君に用事があったから来たんだよ。何も迷惑掛けに来たわけじゃないよ?」
「用事?」
「昨日の神の宴、美の女神様が来てね。その噂だけでも多くの神様達が集まるからご飯多めに用意したんだけど女神様がすぐに帰っちゃって、当然それ目当ての男神様達も。だから、ちょっと
「気持ちは嬉しいけど
ガーン、と口で言い大げさに落ち込むような仕草を取るアリーゼ。ちなみにもし畑を荒らす兎が出ても【デメテル・ファミリア】に捕まりその日の夕食になる。彼らは農家、畑を荒らす害獣に慈悲などない。
「僕って、何処に行ってもまず兎扱いされるんですね………」
「兎、かわいいよ?」
「でもあまり強くなさそうです」
「大丈夫大丈夫。ベル君は強い子」
落ち込むベルの頭をよしよし、と撫でるアーディ。行こっか、とベルの手を引く。
「あ、あの、まだ返事はしてないんですけど」
「食べないの?」
「食べます」
即答だった。
「………………」
日持ちしない物は昨日のうちに片付け、日持ちするものや冷蔵庫で保存が効くものは数日かけて消費するのが【ガネーシャ・ファミリア】の神の宴の後の恒例だ。
とはいえやはり出来たての料理が食べたいと若干思う者も居たが、今回は明日から好きな料理を食いに行けそうだ。
「すごいな、お前が連れてきた………ベル・クラネルだったか? なんというか、すごい」
「うん。私もここまでとは予想外だったよ」
「あの食いっぷりは、ガネーシャだ!」
ベルの食べ方は綺麗だ。口の周りを汚さず、音も殆ど立てない。育ちの良さが伺える。だけど速度と食う量が半端じゃない。
「いや〜、食べるねえベル君」
「あ、アーディさん。その、やっぱり遠慮したほうが良いですか?」
「ううん。あ、そうだ。実はこっからが本題なんだけどね」
「…………?」
「外部参加枠で、
「アーディ? お前、何を………彼はLv.1なんだろ?」
「んー。でも、ベル君が戦う姿見せないと納得しなさそうな女神様が居るというか」
「……?」
「……………」
アーディの言葉に姉であるシャクティは困惑し、主神であるガネーシャは神の宴のさい、アーディが言っているであろうとある女神を思い出す。
「そういう事なら俺からも是非頼もう。安心しろ、レベルにあった、それでいて見応えのあるモンスターを斡旋してやる。なぜなら俺はガネーシャ! 民衆の主だ!」
主神まで肯定したことにますます困惑するシャクティ。アーディは「ね、いいでしょ?」と首を傾げてくる。可愛らしい。年上だけど。
良く解らないが、ベルが
「わかりました。参加させていただきます」
感想お待ちしております