英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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千の妖精

 その巨体が倒されただけで大気が唸る。地面に体を叩きつければ路面はひび割れ爆風が吹き荒れる。

 

「あぐっ!」

 

 ゴロゴロと地面を転がったレフィーヤはフラフラと立ち上がる。先程ベルの手を払ったように、漸く身体が動くようになって来た。

 

「あ、え………?」

 

 そう、漸く。

 レフィーヤに、巨大花の攻撃を避ける手段は無かった。投げ飛ばされたのだ。ベル・クラネルに。

 何故一緒に回避しなかったか。レフィーヤになるべく触れないように気をつけた? それもあるだろう。それ以外の理由もある。

 

「っう………ぐ、な……何が………」

 

 巨大花を挟んだ向こう側。黒髪のエルフは背後から誰かに吹き飛ばされた。彼女だけでは無い。突然現れた規格外の大きさのモンスターの出現に呆然自失になっていたモンスターの攻撃範囲内すべての人間が誰かに突き飛ばされた。

 

「…………………」

 

 ズルリと瓦礫を引きずりながら起き上がる巨大花。その下に、赤い花が咲いていた。否、それは広がった血だ。その中央にはベル。人が何気なく踏み潰した虫のように地面にへばりつく様に倒れて。

 

「な、あ………え?」

 

 黒髪のエルフは赤緋の瞳を見開く。助けられたのだ。自分は。

 自分以外にも助けられた者は居る。全員見事に助けきった。なら、1人見捨てるだけで少年も助かった筈だ。だから、思う。誰よりも己を罪人だと思う彼女は、自分のせいだと。

 

「う、うわああああ!」

「に、逃げろ! 逃げろぉ!」

「どけ! 邪魔だ!」

 

 漸く我に返った冒険者、住人は我先にと逃げ出す。先程の衝撃で崩れた建物の瓦礫が行く手を阻み、誰もが己が助かるために目の前の相手を引っ張る。

 その光景を、黒髪のエルフは知っている。今も夢に現れ己を苦しめる、その絶望を覚えている。

 胸の奥からこみ上げる吐き気に蹲る。喧騒が、モンスターの咆哮が、視界に映るその全てが遠のいていくような感覚。そして同時に、聞こえるはずのないあの時の悲鳴が聞こえてくる。

 

「────」

「お、お姉……ちゃん」

「────っ!!」

 

 だが、視界や聴覚が乖離していく中触覚に何かが触れ、消えかけた聴力に幼い少女の声が交じる。意識を現実に戻し振り返れば先程自分を庇っていた少女が腕を掴んでいた。

 その瞳にはこの状況に対する恐怖と、黒髪のエルフに向けられた懇願と期待。もう一度助けてと、その目が語る。

 

「わ、私に触れるな!」

「っ!?」

「っ………無理、だ。期待するな。私は、お前が思うような、高潔な存在じゃないんだ………私は、あの時……」

 

 驚愕で尻もちをつく少女の視線から逃げるように顔をそらし蹲る。絞り出すような声に、少女の目から期待が消える。それでいい。助けなど、求めるな。求めたところで───

 

「に、逃げよう!」

「…………は?」

 

 少女は再び手を掴んでくる。今度は先程のように縋りつくでもなく、引っ張ろうとしている。非力なただの少女に出来るはずもないが。

 

「逃げろと、お前は私に言うのか?」

「だ、だって、ここに居たら危ないよ……」

 

 巨大花は何故か鎌首をもたげたまま動かない。しかし何時動き出すか解らない。そんな恐怖の中、少女は己を助けてくれた冒険者に、もう一度戦えではなく、共に逃げようと言ってくる。

 その姿はあまりに眩しくて、自分が惨めになってくる。

 

「はははははは! 5年、たった5年だ! あの時よりも衰退したなあ、オラリオォ!」

 

 と、その時男の哄笑が響き渡る。振り返れば骨を被った男が両手を広げその場の惨状を見て笑っていた。恐らくは闇派閥(イヴィルス)なのだろう。何処か異質な気配を放つ男の登場にある者は恐怖をある者は怒りを向ける。

 

「やれ! 巨大花(ヴィスクム)! 『彼女』の威を、この目障りな街に刻め!」

 

 その言葉と同時に巨大花が動く。まさか、だれかが思う。あり得ぬと否定するが、そうとしか思えない。あの男はあの巨大なモンスターを操る調教師(テイマー)

 ならば必然的にモンスターより強いということになる。ただでさえ勝ち筋の見えないモンスターに加え、それ以上の実力者。怒りは冷め恐怖のみが支配し、懸命に逃げようとする住民に巨大花が迫る。 

 

「ははははははは!!───あ?」

 

 悲鳴に混じり、鐘の音が響く。

 白い光が高速で駆け抜け、巨大花の前に立ち塞がる。

 

「【福音(ゴスペル)】!」

 

 特大の鐘の音が響き渡り大気を揺する。巨大花は首を擡げるように仰け反り動きを止める。

 

「な、はあ!? 馬鹿な、何だ今のはぁ!」

「……………」

 

 魔法を放ったのはベルだ。今にも死にそうなほど血だらけで、右腕など完全に折れている。それでも立ちあがり、住民を庇うように立ち骨兜の男を睨みつける。

 

「っ! ふん、心意気だけは立派だな冒険者。だが、いつの時代も身の程知らずの馬鹿から死ぬ」

「………嘘ですね」

「なに?」

()()()()()()()()()()()

「─────! そのガキを殺せ! 巨大花(ヴィスクム)ゥ!」

 

 ベルの挑発にあっさり乗り、この辺り一体をものの数秒で瓦礫に変えるモンスターをベル一人に差し向ける男。

 ベルは迫りくる触手をかわし、振り下ろされる巨体が誰かを巻き添えにしないように駆ける。

 傷口から血が吹き出す。ゴボリと口から血が溢れるのを見て、男は笑う。

 

「ははは! 何だ貴様、既に死にかけではないか! そんな身体で何故戦う? 大人しくしていれば楽に殺してやるぞ!?」

「───!」

 

 動きが鈍くなっていくベルの脚を蔓が掠り肉を抉る。脚が止まり、別の蔓がベルの体に打ち付けられ吹き飛ばす。

 

「冒険者と言うのは何時の時代も愚かだ。身の程を弁えず、強者に挑み蹂躙される。貴様は私が知る中で最も愚かな男だった」

「貴様ぁ! 【一掃せよ、破邪の聖杖《いかずち》】!【ディオ・テュルソス】!」

 

 黒髪のエルフは、その男の笑いが妙に癪に触った。もとより闇派閥(イヴィルス)等到底受け入れられぬ存在ではあるが、その笑い方、姿、立ち振る舞いが誰かを連想させる。

 

「ぐあ!?」

 

 ベルに気を取られ完全に不意を疲れた男は魔法をもろに喰らう。だが、無傷。骨の眼窩の向こうからフィルヴィスを忌々しげに睨み付け───

 鐘の音が響く。男の腕が切り飛ばされた。

 

「ぐあああ!?」

「─────っ!」

 

 ベルだ。先程よりボロボロになりながらも男に接近し、腕を切り裂いた。男はすぐさま反撃に移るがリィンと鈴の音が響きベルがその場から高速で移動する。

 

「か、はっ! は────っ! ゲホ、はぁ………はぁぁ!」

 

 ただでさえ重症だと言うのに体力を大幅に消耗しその場で倒れるベル。片腕を失った男はベルを睨み、しかし睨み返されビクリと肩を震わせる。

 

「ふん、どうせ直に死ぬ命。せいぜい絶望に飲まれながら朽ちていけ!」

「ま、待て!」

 

 静止の声を振り切り逃げ出す男。残された巨大花は命令するものが居なくなり、しばらく殺すように命じられていたベルと餌である人間達に交互に振り返る。

 

「お、お姉ちゃん…………」

 

 キュッと己の手首を掴む小さな手。せめて、この子だけで逃さなくては。だが、今不用意に動けば……!

 と、ベルが立ち上がる。反応するように振るわれる蔓。避けることも叶わず吹き飛ばされ、運悪く近くにいた冒険者がひぃ! と叫ぶ。

 

「ま、待って、ください………助けて………」

「う、うるせぇ! 知るか! てめぇの方がどうせ強いだろ!? だったらてめえが戦えよ!」

 

 死にかけの人間に言う言葉ではない。黒髪のエルフは、少年の言葉に、助けを求める事ができるあり方にどこか安堵した。しかし………

 

「戦い、ます。だか、ら………彼処に、人が瓦礫に埋まって………」

「………は?」

「冒険者、なら……瓦礫をどけて……逃げられるはずです」

 

 助けて欲しいのは、自分の事ではないらしい。他人の為に立ちあがりボロボロの体で戦おうとするベル。男は、そのあり方を理解できない。

 蔓が振るわれる。今度はなんとか防ぐことに成功する。

 

「早く!」

 

 言うことを聞く道理はない。助かりたいから逃げるのだ。時間を稼ぐなんて言って、死にかけの男に何が出来ると言うのか。

 なのに、結果を示す。迫りくる蔓を躱し、切り裂き、巨大花を誘導する。少しでも誰かが逃げる時間が稼げるように、死にかけの体を動かす。自分の半分も生きてないような少年が、下手をすれば親子ほど年の離れている幼い子供が。

 

「…………っ! ああ、くそぉ! おいお前等、手伝え!」

 

 罪悪感を少しでも軽くしたいだけなのかも知れない。だが、冒険者達が怪我人や一般人達に手を貸す。その光景を見て安堵してしまったのか動きが鈍り、巨大花の巨体が降ってくる。

 

「【盾となれ、破邪の聖杯(さかずき)】【ディオ・グレイル】!」

 

 しかし現れた白い障壁が一瞬だけ防ぐ。ピシリと直ぐにひび割れるが、その一瞬で黒髪のエルフが己の純白の服が赤く染まるのも気にせずベルにタックルでもするかのように飛び付き抱き締め飛び、地面を転がりながら距離を取る。ズズン! と地面が揺れる。

 

「馬鹿かお前は!? そんな体で、何ができる!」

「─────」

「さっさと助けを求めれば良いんだ。どうせ、死にそうになれば助けを求めるくせに………どんな高等な志を持とうと、死の前には抗えぬくせに」

 

 何処か懇願を含んだその言葉に、ベルは固まる。己の首元を掴むその手に、己の手をそっと重ねる。

 

「………じゃあ、助けてください」

「─────」

「僕一人じゃ、勝てません。げほ! だから、力を貸してください……」

 

 そんな言葉を聞くのは、何時以来か。近付くなと、何度も言われた。『恥晒し』と同族達に罵られた。

 それは仕方のない事だと思っていた。だって、力を貸してくれと、そう言ってパーティを組んだ相手を、一人だと可愛そうだと手を伸ばしてきた相手を、死なせたのだから。

 だから、忘れていた。誰かに頼られるのは、こんなにも………

 

「それで、どうする………私の魔法では決定打にかける。お前のあの妙な光なら」

「あれは、その威力となると、多分もう無理です………」

 

 まああれだけの力を発揮できるのだ。代償は存在するだろう。だがそうなるとどう倒すか。

 救援が来るまで待つか? それまでベルが持つとは思えない。

 

「心当たりはあります。説得するので、時間を稼いでください!」

「あ、おい!」

 

 呼吸を整え少しだけ体力を回復させたベルが駆け出す。再びゆっくりと首を持ち上げ、鎌首もたげた巨大花が動き出す。黒髪のエルフは迫りくる蔓に舌打ちしながら元気になったら絶対文句を言ってやると心に誓った。

 

 

 

 

「レフィーヤさん!」

「え? あ、貴方は……無事、だったんですね」

 

 ベルが吹き飛ばされたのは丁度巨大花の反対側。レフィーヤからすれば潰されて起き上がって、謎の男の腕を切って吹き飛ばされて、流石にこれ以上は起き上がれないんじゃないかと思ったが、その予想をあっさり覆す。

 その結果に、ズキリと胸が痛む。

 

「何をしに………」

「力を、貸してください。レフィーヤさんは、沢山の魔法が使えるんですよね?」

「………無理、ですよ。貴方にも出来ない事が………私になんか」

「………レフィーヤさん?」

 

 断られるかもとは、思っていた。断り方は予想外だった。

 

「あの、でも………レフィーヤさんの方がレベルが」

「無理だって言ってるんですよ!」

「っ!」

「私は、私には………そんな事、できない。何時も、皆さんを足を引っ張って、助けられてばかりで………貴方みたいに、レベルの差を超えるなんて出来ない。あの人達に認められる貴方を、嫉妬する資格すらない………」

 

 ボロボロと涙を流すレフィーヤ。

 素直に認めよう。ベル・クラネルは強い。グリフォンを連れているということは、Lv.3のモンスターに実力差を示したと言うこと。それはレフィーヤには決して出来ないであろう偉業だ。

 あの人達が認めるのも解る。

 

「レフィーヤさん、気持ちはわかります」

「っ! 貴方に、何が! 解るわけないじゃないですか! 周りの皆さんは、すごくて、なのに自分が弱くて………追い付きたいのに、追いつけなくて……………」

「はい。()()()()()()()()

「……このっ! ………あ」

 

 思わず顔を上げ、ひっぱたきそうになった。しかし、その手は止まる。ベルが向けてくるその目は、知っている。強さを求めるめだ。誰かに追いつきたいと、願う者の目だ。

 そうだ、この人は、才能があったから強いんじゃない。自分は、それを聞いていたではないか。冗談みたいな、一歩間違えれば死んでもおかしくない、彼の修行時代を。

 

「大丈夫ですよレフィーヤさん。泣けてる内は………泣くともせず、どうせ勝てないからと諦める人達だって居るのに、貴方は悔しいと泣いてみせた。だから、泣ける間は大丈夫です………」

「それ、でも………やっぱり、私なんか」

「僕だって、そう思ってます。僕なんかって、思ったから助けを求めたんです…………貴方が勝手に僕に勝てないと思うなら、僕も勝手に貴方に魔法では勝てないと思う。だから、力を貸してください………」

 

 そう言って巨大花に向かって駆け出すベル。レフィーヤは、暫く固まったあとグシグシと涙を拭う。

 ベル・クラネルは凄い。それはもう疑いようのない事実だ。だけど………それを認めて涙が出る。悔しいと思える!

 

「………生意気…………な、生意気な、ヒューマン!」

 

 さらっと魔法()()と言った。魔法以外では勝てると暗に言ってるようなものだ。

 だったら見せてやる。魔法()()()()自分は貴方より強いんだと言うところを!

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

 ふと、遠征の際アイズに言われたことを思い出す。

 『次はレフィーヤが助けて』……次。未来を期待する言葉だ。当たり前だ。Lv.3がLv.5を助けるなどよほどの状況にならなくては。

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来たれ】」

 

 だけど、ベル・クラネルは()()()()()()()の力を欲している。

 

「【繋ぐ絆、楽宴の契。円環を廻し舞い踊れ】」

 

 私が貴方を認めたように、貴方も私を認めた。ならば、対等だ。負けるものか。約束しよう。二度と自分は貴方の下だと思わない。だから、貴方も、私が認めた貴方のままで居て。

 

「【至れ、妖精の輪。どうか──力を貸してほしい】」

 

「【エルフ・リング】」

 

 

 

「ッ!! オオオオオオオオオオオ!!」

 

 周りをチョロチョロ飛び回るベルと黒髪のエルフに鬱陶しそうに蔓を奮っていた巨大花は、その莫大な魔力に反応する。どうやら食人花と似ているのは見た目だけではないらしい。

 

「【──終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に渦を巻け】」

 

 魔法名が紡がれたあとも詠唱が続く。それは、ベルのスキルと似た魔法。スロットを越え魔法を扱うことのできる魔法。ベルは憧れを胸に愛する家族達の、レフィーヤは、同法の誇りを胸に誇り高き同胞たちの魔法を扱う。

 レフィーヤは理論上、エルフの魔法ならば千を越えようと扱える。故に【千の妖精(サウザンド・エルフ)】。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地】」

「オオオオオオオオオオオオオオっ!」

「この、大人しくしろ!」

 

 だが膨大な魔力は巨大花の前では餌が現れたと同義。その巨体は妨害など物ともせず突き進もうとする。故に、『新たな餌』を用意する。

 

「【祝福の禍根、生誕の呪い。半身喰らいし我が身の原罪】」

 

 自身の間近に現れた膨大な魔力に動きを止める巨大花。ベルは走りながら詠唱を続ける

 

「【禊はなく。浄化はなく。救いは───】っ! ゲホ、ガハ!」

 

 しかし詠唱は途切れ、魔力が霧散する。巨大花は再びレフィーヤに向かって首を伸ばす。だが──

 

「【吹雪け、三度の厳冬──我が名はアールヴ】!」

 

 詠唱はここに完成した。後は魔法名を唱え放つだけ。しかし、その位置が問題だ。まずい、この位置だと街を巻き添えにしかねないと、思わず固まるレフィーヤ。

 魔力の拡大を感じ取ったのか、巨大花は無数の蔓を伸ばす。

 

「────!!」

「させん!」

 

 ベルと黒髪のエルフがレフィーヤの前に飛び出す。黒髪のエルフは詠唱を完成させていた。だが、防げるか?

 

「そのまま防御を!」

 

 ベルの『アルゴノゥト』は、本来の歴史に対して名前が違う。そして名前以外にも、別の特性がある。

 それはベルの過去にある人物達が居るか居ないかの違い。

 多くの英雄譚は一人の主人公からなる。どちらのベルも、そんな英雄になりたいと願う。

 だが、こちらのベルは師から教わった【ファミリア】の数多の英雄達を知っている。英雄達が、共に強敵に挑む話を何度も語られている。こちらのベルにとって、自分だけが英雄になるのでは無い。数多の者達と手を取り合い、共に英雄になるのだ。

 鈴の音が響く。純白の清浄なる光が、ベルから黒髪のエルフに映る。

 

「【ディオ・グレイル】!!」

「─────!?」

 

 純白の巨大な障壁が、巨大花を文字通り吹き飛ばす。大きく身体をのけぞらせた巨大花の頭は、建築物より高い位置に。ここしか、ない!

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 時すら凍りつく絶対零度の吹雪が巨大花を凍らせていく。

 深い蒼色の、溶けることのない氷の檻に閉じ込められた巨大花の上にベルが降り立つ。

 

「【福音(ゴスペル)】──【サタナス・ヴェーリオン】!」

 

 ゴォォン! と鐘の音が響く。それは勝利を称える鐘の音。音の衝撃波により粉々に砕け散る巨大花。その位置に魔石があったのか、凍りつかなった部分は灰へと還る。

 氷の欠片と共に落ちるベルに慌てて駆け出す黒髪のエルフとレフィーヤだったが、空を舞う一つの影、グリフォンがベルを背に乗せ地面に降り立った。

 

「「「─────!!」」」

 

 歓声が、先程の鐘の音に負けぬほど響き渡りベルは意識を手放した。




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