英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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期待に答えて2話目


ギルド

 いやあ、大変だった。何だろうなあのミノタウロス。

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 先程の光景を思い出しながらベルはギルドに向かう。一応ミノタウロスが5階層に現れたことはきちんと報告するべきだろう。生き残りがいたら周りの冒険者も被害に合うわけだし。

 

「あ………」

 

 ミノタウロスの魔石、すっかり忘れてた。売れば金になっただろうに。

 師の料理が美味しすぎてすっかり大食いになったベルは今日もあまり食べれないなあ、と落ち込むのだった。

 

 

「エイナさーん!」

「あ、ベル君!」

 

 ギルド職員、エイナ・チュールは自分を呼ぶ声に振り返ると、白いふわふわした毛並みが見えた。

 つい最近冒険者になりエイナの担当にもなったベル・クラネルだ。己の背が低いを事を気にしてかピョンピョン跳ねながら駆け寄ってくる姿は髪や目の色のように兎のようで愛らしく、思わず笑みが浮かぶ。

 

「どーしたの、ベル君。今日は早いね?」

「いやぁ、実は5階層でミノタウロス3匹にあっちゃって、武器も壊れちゃったし今日はもう探索無理かなあ、って」

「……………ん?」

 

 エイナという美少女が微笑みかけてきて、照れくさそうに頭をかくベルだったがその発言にエイナは首を傾げる。いまなんつった?

 

「………ミノタウロス?」

「はい。ミノタウロスです。上層に出たので、一応報告に」

「3匹?」

「2匹と対面して、そっちは何とかなったんですけど悲鳴が聞こえた方に向かえば3匹目が。大変でした」

 

 ベルは今回起きたことを話す。

 しかし情報が足りず、エイナの中では2匹から逃げ、悲鳴に向かって慌てて走り3匹目に遭遇したことになった。

 

「良く無事だったね」

「えっと、確かに危なくなりましたけど金色の髪と目の女性に助けられまして」

「ああ、多分アイズ・ヴァレンシュタイン氏ね。【ロキ・ファミリア】のLv.5の………」

「【ロキ・ファミリア】って、確かLv5が7名居る?」

 

 確か師匠が勇者がいるとか言っていて、一目見ようとして門前払いを食らった覚えがある。因みに母からは【フレイヤ・ファミリア】と【イシュタル・ファミリア】には近付くなと言われている。

 

「そうだよ。綺麗な人だったでしょ? まあ、だからって好きになってもあんまりチャンスはないけど」

「いえ、お義母さんのほうが綺麗でした」

「…………ベル君って結構マザコンだよね」

 

 エイナは呆れたように言うのだった。

 

「でも、なんでミノタウロスが上層に」

「ヴァレンシュタインさんが逃げちゃって、って言ってましたけど……」

 

 と、彼女との会話を思い出すベル。だからミノタウロスを探していたらしい。

 

「それじゃあ、この事はギルド上層部に伝えておくね。【ロキ・ファミリア】は、まあ何らかのペナルティは負うと思うけど、ベル君から被害届も出せるよ。どうする?」

「いえ、大丈夫です。いい経験になったので………」

「そう、ならいいけど。ところでベル君、5階層って、どういうことかな? かな?」

 

 ベルは説教を食らった。

 

 

 

 

 すっかり日が暮れ、ベルは正座し続けて痺れた足と固くなった背中をほぐしながら帰路につく。

 オラリオの夜はあまり出歩かない方がいいので、人通りの多い所を通れとのことだ。人気のない所には【闇派閥(イヴィルス)】が潜んでいるかもしれない。

 ほんの4年程前まで猛威を振るっていた、混沌を起こそうとした集団。殺し、恐喝、強姦は当たり前。無秩序に暴れ、意味なく殺し、他を害することを良しとする恐るべき一団。未だ目撃情報がまことしやかに囁かれている。

 

「あれ? こぉら、駄目だよ子供がこんな時間に出歩いたら」

「え?」

 

 憲兵のようなものである【ガネーシャ・ファミリア】達を見ながら大変だなあ、と見ていると声をかけられる。振り返ると銀髪のあどけない笑みを浮かべた女性が立っていた。

 

「わあ、真っ白。うさぎみたいで可愛いね。ちょっと撫でていい?」

「え? え?」

「あはは。冗談だよ、冗談。でも、君みたいな子がこんな夜遅く出歩くのは本当に危ないよ? 最近では聞かないけど、まだまだ【闇派閥(イヴィルス)】が壊滅したとは言えないから」

「あ、えっと………すいません。ギルドから帰る途中で」

「あ、冒険者だったんだ。駆け出し、だよね? なら、ますます気をつけて。あいつ等ってば、冒険者を目の敵にしてるから…………送ってくよ。【ファミリア】は何処?」

 

 

 

 

 【ヘファイストス・ファミリア】のホーム。ベルは【ガネーシャ・ファミリア】の女性とともに、門まで歩く。門番はベルを見ると軽く挨拶した。

 

「ありがとうございました。えっと………」

「アーディだよ。アーディ・ヴァルマ。君は?」

「ベルです。ベル・クラネル」

「よろしくね、ベル君」

 

 

 

 

 【ヘファイストス・ファミリア】ホーム。その中の、主神室。この時間ならここだろう、とドアをノックする。「入りなさい」と中から声がかけられた。

 

「おかえりなさいベル。今日はやけに遅かったわね、心配したのよ?」

「うばあ〜」

 

 中にいたのは2柱の神。赤い髪を持ち、眼帯で顔半分ほどを隠した美女。鍛冶の神であり、【ヘファイストス・ファミリア】の主神ヘファイストス。

 そしてそんな彼女の神友でありニート街道まっしぐらだったがキレたヘファイストスにより働かされている駄女神にしてベルの主神、ヘスティアだ。




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